NPOや医療機関・研究分野に資金調達手段を展開するクラウドファンディング「READYFOR」が10億円調達

NPOや医療機関・研究分野に資金調達手段を展開するクラウドファンディング「READYFOR」が10億円調達

クラウドファンディングサービス「READYFOR」(レディーフォー)を手がけるREADYFORは3月29日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による約10億円の資金調達を発表した。引受先は、グロービス・キャピタル・パートナーズ、セールスフォースベンチャーズ、JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、南都キャピタルパートナーズ、ベンチャーラボインベストメント、あおぞら企業投資。

NPOや医療機関・研究分野に資金調達手段を展開するクラウドファンディング「READYFOR」が10億円調達

2011年3月29日、6名の実行者たちとともにクラウドファンディングサービス「READYFOR」はスタート。10周年を迎える2021年、同社は、これまでクラウドファンディングサービス・基金運営で培ったノウハウとテクノロジーを活用し「寄付市場のデジタル化」(補助金・助成金等を含む)を推進。今後進んでいく官民連携を牽引することで「社会を持続可能にする新たな資金流通の仕組み」を実現する。実施予定の取り組みとしては、以下を挙げている。

実行者向け:継続的に活動を続けるための資金獲得の基盤へ

  • クラウドファンディングでの資金調達をよりスムーズで負担なく実施できる機能の開発
  • 継続的に資金を集められる機能の開発
  • 様々な機関から多様なお金を受け取れる機会を提供

支援者向け:想いを適切に届ける支援体験の強化

  • 企業:企業の理念・SDGs方針に合う活動や、従業員・顧客が望む未来を作る活動とのマッチングの強化
  • 自治体、財団:資金を必要としている活動と適切にマッチングを行う

2014年7月設立のREADYFORは、国内初のクラウドファンディングサービスとして、既存の金融サービス・資本主義ではお金が流れにくい分野、主にNPOや医療機関、研究分野、地域活性化などに資金調達の手段を展開。約2万件のプロジェクトに対して約200億円のお金が流れるようにしてきた(2021年3月29日時点)。

特に直近では、「より多くの想いとお金をマッチング」すべく、30社を超える企業と連携、オンライン従業員寄付やポイント寄付で5億円以上の支援金を受け付け、社会全体で実行者を支える支援のネットワークを構築している。

新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年には、東京コミュニティー財団と連携し「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」(コロナ基金)を運営。これまで得てきたファンドレイジング・審査・資金分配の知見を活かし、「資金が必要な現場」に対して最短14日とスピーディにお金を届けてきたという。

その結果、国内クラウドファンディング史上最高額となる約8億7000万円の寄付金を集め(同社調べ・国内で運営している購入型・寄付型クラウドファンディングサービスの実績より)、165件の医療機関・エッセンシャルワーカーの活動に助成を行った。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:クラウドファンディング(用語)資金調達(用語)READYFOR日本(国・地域)

ピアボーナスを用いた新たな“従業員寄付体験”でSDGs推進企業を後押し、UniposとREADYFORがタッグ

ピアボーナスサービスを展開するUniposとクラウドファンディング事業を運営するREADYFORは2月18日、従業員が「Unipos」上で獲得したピアボーナスをSDGs活動を行う団体へ寄付できる「SDGsプラン」の提供をスタートした。

知っている人も多いかもしれないがUniposについて簡単に説明しておくと、同サービスでは業務中の良い行動に対して従業員間で感謝のメッセージとともに「ポイント」を送り合う。もらったポイントはピアボーナスとして給与などの報酬に変換できるのが特徴だ。

たとえば資料作りを手伝ってもらったり、企画の相談に乗ってもらったり。そんな時にタイムライン上で“ありがとう”というメッセージと合わせて、ポイントを送る。もしくはタイムラインに流れてきた別のメンバーの投稿に対して“拍手(いいね!のような仕組み)”をすることでポイントを送ることも可能だ。

メッセージとポイントの送付はタイムラインを介して行われるため、メンバーの影での貢献が可視化されやすくなり、メンバー間・部門間の連携強化やバリューの浸透にも繋がる。そんな効果を見込んで、スタートアップから大手企業まで340社以上がUniposを活用している。

さて、ここからが今回スタートしたSDGsプランの話だ。今までのUniposではもらったポイントは報酬に変換する仕組みだったが、SDGsプランを活用するとそのポイントを自分が選んだ寄付先へ寄付することができるようになる。

Uniposを導入する企業は最初にポイントの配当方法をインセンティブプラン(従来のプラン)とSDGsプランから選ぶ。SDGsプランの場合はあらかじめ自社に最適な寄付先をいくつかピックアップしておき、各メンバーはその候補の中から自分の共感した団体へ寄付をする仕組みだ。寄付先の団体からは活動レポートが送られてくるため、自分が届けたピアボーナスのインパクトもわかる。

企業ごとの寄付先の選定については、これまで1万件以上のクラウドファンディングプロジェクトを支援してきたREADYFORが同社のデータベースやノウハウを活用してサポート。これによって企業は自社の事業や理念にマッチした寄付先をスムーズに見つけられるだけでなく、Uniposを使って従業員を巻き込みながらSDGs活動を推進できる。

寄付先についてはジャパンハートやカタリバ、フローレンス、Learning for Allなどの特定非営利活動法人をはじめ、さまざまな領域の団体から選べるとのことだ。

ピアボーナスを用いた新しい従業員寄付体験の創出へ

Unipos代表取締役社長の斉藤知明氏(写真左)とREADYFOR代表取締役CEOの米良はるか氏(写真右)

2016年1月に持続可能な開発目標(SDGs)が発表されてから4年、日本国内でもSDGsへの取り組みに関する話をよく耳にするようになった。

SDGsに対する考え方や取り組み方は企業ごとにも異なるが、UniposとしてはSDGsを「単に社会にとって善い行いをする」ことではなく、それが「組織の成長」にも繋がる状態、最終的に社会と組織と個人全ての成長を促進するような取り組みだと捉えているそうだ。

「今までUniposでは自分の頑張りがチームや会社への貢献に繋がっていくことが実感できることで、互いの信頼関係が向上する仕組みを提供してきた。今回はそこに社会が加わり、『個人の貢献がチームへの貢献、会社への貢献だけでなく社会への貢献にも繋がる』仕組みを作っていきたいと考えている」(Unipos代表取締役社長の斉藤知明氏)

Uniposでは昨年11月からドイツで先行してSDGsプランの試験導入を進めてきた。たとえばドイツのコンクリート会社では、従業員がピアボーナスを使って植林団体へ寄付をした事例がある。この会社の事業は成長していて社会の役にも立っている反面、CO2の排出量が多くサステナビリティの点を気にするメンバーもいたそう。Uniposがメンバーの日頃の行動が企業・社会それぞれへの貢献に結びつくことを示した一例と言えるだろう。

この仕組みを広げていく上で重要になるのが「従業員が支援したいと思えて、なおかつ会社の成長にも繋がるような団体が寄付先として選定されていること」(斉藤氏)であり、今回UniposがREADYFORとタッグを組んだ理由もまさにそこだ。

日本には膨大な数のNPO団体が存在するため、各団体の活動や実績を見極めた上で、企業ごとに適切な団体をピックアップすることは簡単ではない。クラウドファンディングの支援を通じて様々な団体と付き合ってきたREADYFORが“企業と団体の橋渡し役”を担うことで、企業の負担を増やすことなく、ピアボーナスを軸とした新しい従業員寄付体験を実現することができるという。

そのREADYFORは昨年7月に始めた「READYFOR SDGs」によって、企業とSDGs活動のマッチングを進めてきた。同社代表取締役CEOの米良はるか氏の話では、企業の担当者とやりとりをしている過程で「従業員の中でのSDGsの認知が低い」という課題を聞く機会が何度もあったようだ。

特に大企業では社内の理解を得ることが物事を上手く進めていく上でも不可欠なため、「SDGsや社会課題を知るための取り組みに社員全体を巻き込みたい」という要望が強いという。

「(Uniposのピアボーナスの仕組みによって)チームへの貢献やメンバーへの感謝が寄付に繋がるといったように、個人の負担が少ない形の寄付体験を作ることで、従業員に社会課題や社会貢献を身近に感じてもらうきっかけになる。企業にとっても、入りやすいSDGsの取り組みになると考えている」(米良氏)

両社によると欧米諸国では従業員寄付の仕組みを導入する企業が増えているそう。従業員が自分で興味のある団体を選び、主体的に寄付できるサービスも「Yourcause」、「Catalyzer」、「Smartsimple」、「Salesforce Philanthropy Cloud」を始め続々と台頭しているという。

日本ではまだこれといったサービスがないだけに、UniposのピアボーナスとREADYFORのネットワークをミックスさせた新しい寄付体験がどのように広まっていくのか、今後に注目だ。

READYFORが4.2億円を調達、新たな資金流通インフラ確立目指す——8年でプロジェクト数は1万件を突破

写真右からREADYFOR代表取締役CEOの米良はるか氏、Salesforce Ventures日本代表の浅田慎二氏

クラウドファンディングサービス「Readyfor」を展開するREADYFORは3月29日、セールスフォース・ドットコムの投資部門であるSalesforce Venturesを引受先とした第三者割当増資と、みずほ銀行を含む金融機関からの融資(当座貸越契約の極度額を含む)を合わせて約4.2億円を調達したことを明らかにした。

今回は2018年10月に実施したシリーズAラウンドの追加調達という位置付け。10月時点ではグロービス・キャピタル・パートナーズなどから約5.3億円を調達していた。

またREADYFOR代表取締役CEOの米良はるか氏が「シリーズAは次の事業を作ることに向けて、経営力をあげるのが大きな目的のひとつ」と話すように、前回に続き同社に強力な助っ人が加わった。

具体的にはアドバイザーにSalesforce Ventures日本代表の浅田慎二氏、技術アドバイザーにディー・エヌ・エー執行役員の小林篤氏、ソーシャルプロデューサーにGOの砥川直大氏が就任している。

READYFORでは「社会を持続可能にする新たな資金流通メカニズムの確立」に向けて経営体制を整えつつ、クラウドファンディング事業のシステム強化やSaaS事業の立ち上げを進めていく計画だ。

お金が流れにくい領域に、資金が行き渡る仕組みを作る

Readyforは「CAMPFIRE」などと共に、日本のクラウドファンディング市場を黎明期から支えてきたサービスと言えるだろう。ローンチは2011年の3月29日。今日でちょうど8周年を迎えたことになる。

これまでのReadyforの変遷については、10月の記事で詳しく紹介したのでそちらを参照頂ければと思うが、マーケットの拡大と共に同サービスもまた、様々なアップデートを行ってきた。

特に近年、資金調達の方法が多様化し国内でもプレイヤーが増加する中で、Readyforでは「社会的な意義はあるが、既存の金融サービスではなかなかお金が流れにくい領域」に注力。具体的には地域や医療、大学、裁判などの分野にクラウドファンディングを通じてお金を流通させる仕組みを作ってきた。

たとえば地域との取り組みについては、2016年に自治体向けの「Readyfor ふるさと納税」をローンチ。返礼品合戦が問題視されていた旧来のふるさと納税に、新しい仕組みを持ち込んだ。直近ではこの仕組みを活用して広島県呉市と起業家支援プロジェクトにも取り組んでいる。

医療領域では前回も紹介した国立がん研究センターがん研有明病院など、医療施設がクラウドファンディングを活用して資金を集める事例が増加。大学関連では2017年1月に立ち上げた「Readyfor College」を通じて、複数の大学と包括提携を結んだ。

これらは今まで補助金や助成金といった形で国がサポートしてきた領域。そこを補完するような形で、Readyforが使われることもここ1〜2年で増えてきているのだという。先日紹介した名古屋大学医学部附属病院のプロジェクトや、すでに1000万円以上の資金が集まっているエボラ出血熱の新薬開発に向けたプロジェクトはまさにその一例だ。

今後もパブリックセクターの支援強化へ

サービスローンチから8年間でReadyfor上に掲載されたプロジェクトは1万件を突破。57万人から80億円以上の資金が集まった。提携パートナー数も新聞社や金融機関、自治体など約250機関に及ぶ。

READYFORが8周年記念に公開している特設ページに詳しい記載があるが、ジャンル別では病院や医療施設への寄付が累計で約1億円、大学や研究が約1.5億円、ガバメントクラウドファンディングが約1億円、裁判や社会的活動の費用が約1500万円ほど集まっている。

まだまだ全体に占める割合は大きくないものの、こういった領域にお金を流通させる仕組みとしてクラウドファンディングが機能し始めているとは言えそうだ。米良氏も「(ここ数年の間に)パブリックセクターにおいてもお金が必要になった際に、1つの選択肢として検討されるようになったのは大きな変化」だという。

「(補助金などでは)カバーできない部分を補うということに加え、補助金の対象にはならないような“ちょっとチャレンジングな取り組み”のために資金を集めたいという新たな需要が生まれている。クラウドファンディングが社会に広がってきた中で『数百万円でもあれば何かしら新しいことが始められる』というプロジェクトに対して、以前よりもお金が集まりやすくなってきている」(米良氏)

READYFORとしては、今後もパブリックセクターの支援を強めていく方針。その一環として3月には裁判費用やアドボカシー、社会実験、政治活動などを目的としたプロジェクトを応援する「Readyfor VOICE」をスタートした。

過去にもこういった形でクラウドファンディングが利用されるケースはあったが、たとえば裁判費用を調達する場合、弁護士法などに照らした法的整理が必要となることもある。Readyfor VOICEではそのような専門的な知識が求められる領域を、弁護士資格を持つ法務担当者らがしっかりとサポートするのが特徴。すでに1件目のプロジェクトも始まっている。

「自分たちの特徴は『これまでお金が流れにくかった領域』に対して、民間の人たちの応援金を通じてお金が流れる世界を作っていること。これからも医療や大学の研究費、裁判費用などこれまでは国が支援していた公的な分野を中心に、必要な資金が行き渡る仕組みを開発していきたい」(米良氏)

「Readyfor」で「小児医療」プロジェクトのクラウドファンディングが始動

READYFORは、同社が運営しているクラウドファンディングサービス「Readyfor」で、名古屋大学医学部附属病院が立ち上げたクラウドファンディングプロジェクトの支援者募集を開始した。プロジェクト名は「小さな身体で闘う命。新生児・小児医療、最前線の現場に光を」。

名古屋大学医学部附属病院は、2013年に国が国内15拠点を指定した「小児がん拠点病院」の1つ。小児科や小児外科をはじめとする35の診療科と、総合周産期母子医療センターや小児がん治療センターなど28の診療施設が連携して治療にあたっている。しかし、国からの補助金や公的研究費用の削減で資金不足が問題なっているそうだ。

Readyforで過去に7つの医療機関のプロジェクトで総額1000万円の支援を取り付けた実績があるほか、名古屋大学とは2018年3月から業務提携をしていることから、今回のプロジェクトの実施に至った。

実行者は、名古屋大学医学部附属病院で病院長を務める石黒直樹氏、目標金額は2500万円、支援募集期間は5月31日23時までとなっている。支援者から募った資金は、新生児や小児用の搬送用ドクターカー購入の費用、小児用医療器具の購入の費用、CT・MRI室の子ども向け装飾の費用にあてられる。

READYFORと広島県呉市が「Readyfor ふるさと納税」にて起業家支援プロジェクトを開始

READYFORは2月4日、自治体向けクラウドファンディング「Readyfor ふるさと納税」にて、広島県呉市の3件のプロジェクトを開始することを発表した。今回のプロジェクトはすべて「ふるさと起業家支援プロジェクト」となる。これは2018年4月1日に総務省が立ち上げたプロジェクトで、自治体が地域の起業家を支援するとともに、地域外から資金を調達することによって、それぞれの地域の産業を持続的に振興させ、経済循環を促すことを目的とするもの。

広島県では「さとやまよ、甦れ!広島に眠る廃校をみんなの居場所に再生しよう」というプロジェクトが3800万円以上の資金を集めるなど、これまで97件のプロジェクトがクラウドファンディングを活用している。READYFORは今回のプロジェクト開始を通じて、広島県での「想いの乗ったお金の流れを増やす」取り組みをさらに進めて行くという。

クラウドファンディングで支援できるプロジェクトの概要は以下のとおり。3件ともAll-in/寄附型の投資となる。

1.広島県呉市で、竹チップを活用した新たな事業を生み出したい!
実行者:中原佑介(TEGO代表)
目標金額:300万円
公開期間:2019年3月22日(金)23時まで
資金使途:竹粉砕機購入費用
概要:放置竹林や牡蠣筏の竹を使って竹チップを作り、レモン農家の方々に除草剤の代替として竹チップを活用いただくことで、広島県の2大産業である「牡蠣」「レモン」産業を繋げる役割となる

2.地元の呉にUターン。高齢者・障がい者も住み良い街に!
実行者:長谷信行(えん代表)
目標金額:100万円
公開期間:2019年3月22日(金)23時まで
資金使途:事務所改装費
概要:介護タクシー事業に加えて新たに訪問介護事業を開始するために事務所を改装し、スタッフも増やすことで呉市の福祉事業に貢献する

3.呉を創業で溢れる街に!賑わいをつくるチャレンジ応援拠点を!
実行者:下野隆司(NPO法人SYL理事長)
目標金額:300万円
公開期間:2019年2月6日(水)〜3月22日(金)23時
資金使途:空調機器・厨房機器購入費、大工・電気工事費
概要:呉市に誰もが気軽に短期間でも使えるイベントスペース兼創業者向けのレンタルスペースをつくる

サービス開始から7年、READYFORが初の外部調達で目指すのは“資金流通メカニズムのアップデート”

READYFORの経営陣および投資家陣。前列中央が代表取締役CEOの米良はるか氏

「今は変化するタイミングだと思っている。小規模な団体から国の機関まで、さまざまな資金調達のニーズが生まれていて、毎月何千件という相談が来るようになった。そこに対してどのようにお金を流していくのか。新たなチャレンジをするためにも資金調達をした」——そう話すのはクラウドファンディングサービス「Readyfor」を展開するREADYFOR代表取締役CEOの米良はるか氏だ。

これまでもCAMPFIREMakuakeといった日本発のクラウドファンディングサービスを紹介してきたけれど、Readyforのローンチはもっとも早い2011年の3月。今年で7周年を迎えた同サービスは、日本のクラウドファンディング領域におけるパイオニア的な存在とも言えるだろう。

そんなReadyforを運営するREADYFORは10月17日、同社にとって初となる外部からの資金調達を実施したことを明らかにした。調達先はグロービス・キャピタル・パートナーズ、Mistletoe、石川康晴氏(ストライプインターナショナル代表取締役社長兼CEO)、小泉文明氏(メルカリ取締役社長兼COO)。調達額は約5.3億円だ。

また今回の資金調達に伴い今年7月に参画した弁護士の草原敦夫氏が執行役員CLOに、グロービス・キャピタル・パートナーズの今野穣氏が社外取締役に就任。石川氏、小泉氏、Mistletoeの孫泰蔵氏、東京大学の松尾豊氏がアドバイザーとして、電通の菅野薫氏がクリエーティブアドバイザーとして加わったことも明かしている。

READYFORでは調達した資金も活用しながら、既存事業の強化に向けた人材採用やシステム強化を進める方針。また同社が取り組んできた「既存の金融サービスではお金が流れにくかった分野へ、お金を流通させるための仕組みづくり」をさらに加速させるべく、新規事業にも着手するという。

ここ数年で変わってきた日本のクラウドファンディング市場

Readyforはもともと東大発ベンチャーであるオーマの1事業として2011年3月にスタートしたサービスだ。

約3年後の2014年7月に会社化する形でREADYFORを創業。同年11月にオーマから事業を譲受し、それ以来READYFORが母体となって運営してきた。現在はサービスローンチから7年半が経過、会社としても5期目を迎えている。

初期のReadyfor

ローンチ当初は日本に同様のサービスがなかっただけでなく、そもそもクラウドファンディングという概念がほとんど知られていなかったこともあり「サービスのマーケティングというよりも、クラウドファンディング自体の世界観や認知を広げる感覚だった」(米良氏)という。

それから代表的なサービスが着々と実績を積み上げるとともに、国内で同種のサービスが次々と立ち上がったことも重なって、クラウドファンディングへの注目度も上昇。特に直近1〜2年ほどで状況が大きく変わってきたようだ。

「自社のデータではクラウドファングの認知率が60%くらいに上がってきている。実際、創業期の事業者や社会的な事業に取り組む団体など、“お金が必要だけど、金融機関から借り入れるのが簡単ではない人たち”にとっては、クラウドファンディングが1つの選択肢として検討されるようになってきた」(米良氏)

この仕組みが徐々に浸透してきたことは、いろいろなメディアで「クラウドファンディング」という言葉が詳しい説明書きもなく、さらっと使われるようになってきたことからも感じられるだろう。

また認知度の拡大と合わせて、クラウドファンディングを含むテクノロジーを使った資金調達手段の幅も広がった。たとえば国内のスタートアップが投資型クラウドファンディングを使って数千万規模の調達をするニュースも見かけるようになったし、賛否両論あるICOのような仕組みも生まれている。

そのような状況の中で、主要なクラウドファンディング事業者はそれぞれの強みや特色が際立つようになってきた。READYFORにとってのそれは、冒頭でも触れた「既存の金融サービスではお金が流れにくい領域」にお金を流すことだ。

「担保がなくてお金がなかなか借りられない創業期の事業者、ビジネスモデル的には難しいけれど社会にとって必要な事業に取り組む団体、あるいは公的な資金だけではサポートが十分ではない公共のニーズ。そこに対して民間のお金が直接流れるテクノロジーが生まれることで、しっかりお金が行き届いていく。Readyforではそういった世界観を作っていきたい」(米良氏)

ローンチから数年間がマーケット自体の認知を広げる期間だったとすれば、ここ2年ほどは今後作っていきたい世界の下地を作るための期間だったと言えるのかもしれない。

READYFORはNPOや医療機関、大学、自治体や地域の事業者など約200件のパートナーと連携し、お金を流通させる仕組みを広げてきた。

9000件超えの案件を掲載、約50万人から70億円以上が集まる

たとえば2016年12月には自治体向けの「Readyfor ふるさと納税」をローンチ。県や新聞社、地銀とタッグを組んだ「山形サポート」のような特定の地域にフォーカスした事業も始めた。

2017年1月に立ち上げた「Readyfor Colledge」は大学や研究室がプロジェクト実行者となる大学向けのサービスだ。筑波大学准教授の落合陽一氏のプロジェクトが話題になったが、同大学を含む国立6大学との包括提携を実施している。

これらに加えて、米良氏によると最近では国立がん研究センター国立成育医療研究センターのような国の研究機関からの問い合わせが増えているそう。イノベーションの種となる研究や、長期的に人々の生活を支えるような機関をバックアップするシステムとして、クラウドファンディングが使われるようになってきたというのは面白い流れだ。

このように少しずつ対象を広げていった結果、Readyforには7年で9000件を超えるプロジェクトが掲載。約50万人から70億円以上の資金が集まるプラットフォームへと成長した。

実行者と支援者双方に良いユーザー体験を提供するため、初期から重視していたという達成率は約75%ほど。全てのプロジェクトにキュレーターがついて伴走する仕組みを整えることで、規模が拡大しても高い達成率をキープしてきた。

それが良いサイクルに繋がったのか、支援金の約40%を既存支援者によるリピート支援が占める。個人的にもすごく驚いたのだけど、もっとも多い人は1人で800回以上もプロジェクトを支援しているそう。

支援回数が500回を超えるようなユーザーは他にも複数いるようで、一部の人にとってはクラウドファンディングサイトが日常的に訪れるコミュニティのような位置付けになってきているのかもしれない。

7月からは料金プランをリニューアルし、12%という手数料率の低さが特徴の「シンプルプラン」とキュレーターが伴走する「フルサポートプラン」の2タイプに分ける試みも実施した。

「これまで膨大なプロジェクトをサポートしてきた中で、どうやったら成功するかといったデータやノウハウが蓄積されてきた。その中には(ずっとキュレーターが伴走せずとも)サービスレベルでサポートできる部分もある。2つのプランを展開することで、より多くのチャレンジを支援していきたい」(米良氏)

これからREADYFORはどこへ向かうのか

1期目から4期目までは自己資金で経営を続けてきたREADYFOR。プロジェクトの数も規模も拡大してきているタイミングであえて資金調達を実施したのは、一層ギアを上げるためだ。

では具体的にはどこに力を入れていくのか。米良氏は「パートナーシッププログラムの強化を中心とした既存事業の強化と、これまで培ってきたリソースやナレッジを活用した法人向けの新規事業の2つが軸になる」という。

既存事業についてはシステム強化やプロモーション強化に加え、ローカルパートナーシップをさらに加速させる。

これまでもREADYFORは地域金融機関65行との提携を始め、自治体や新聞社といった地域を支えるプレイヤーとタッグを組んできた。この取り組みを進めることで、地域の活動に流れるお金の量を増加させるのが目標だ。

山形新聞社や山形銀行、山形県などと一緒に取り組む「山形サポート」

新規事業に関しては、現時点で2つの事業を見据えているそう。1つはプロジェクト実行者がより継続的に支援者を獲得できるSaaSの開発だ。こちらはまだ具体的な内容を明かせる段階ではないが、実行者と支援者が継続的な関係性を築けるような「ファンリレーションマネジメント」ツールを検討しているという。

そしてもう1つの新規事業としてSDGs(持続可能な開発のための2030アジェンダ)に関する事業も始める。READYFORではすでに社会性の高いプロジェクトを実施する団体と企業のCSR支援金をマッチングする「マッチングギフトプログラム」を整備。アサヒグループやJ-COMなどと連携を図ってきた。

今後社内で「ソーシャルインパクト事業部」を立ち上げ、企業とSDGs達成に寄与する活動を行う団体やビジネスとのマッチングなど、Readyforのデータを活用した事業に取り組む計画だ。

同社の言葉をそのまま借りると、READYFORのこれからのテーマは「社会を持続可能にする新たな資金流通メカニズム」を確立すること。既存の仕組みでは富が偏ってしまうがゆえに、本当に何かを実現したい人たちに対して十分なお金が流れていないので、その仕組みをアップデートしていこうというスタンスだ。

「今は自分たちのことを『本当に必要なところにお金が流れる仕組み』をいろいろな形で実装する会社と考えているので、クラウドファンディングというものを広義に捉えていきたい。お金を流すという役割を果たすべく、新しいやり方にもチャレンジしていく」(米良氏)