年商50億ドルに向かって着実に進むRed Hat、豊富なLinux経験が未来への資産

Red HatのCEO Jim Whitehurstにこの前会ったのは2016年の6月だったが、そのときの彼は売上50億ドルを目指すという、かなりの大風呂敷を広げた。当時のそれは、実現不可能な目標と思えた。そのころの同社は、売上が20億ドルを超えた初めてのオープンソース企業にすぎなかった。50億が相当な難関と思われたのは、彼も指摘したように、企業は大きくなればなるほど成長カーブが徐々にゆるやかになるからだ。

でも同社はその後も元気旺盛で、このまま行けば次の二つの四半期内には売上30億ドルを超えそうな勢いだ。Red HatはLinuxのエンタープライズ向けバージョンを提供していることがいちばん有名だが、クラウドやコンテナなどで変化していく世界にも積極的に適応している。そして同社のRHEL(Red Hat Enterprise Linux)の顧客も徐々に変わりつつあるが、変化を支える新しい技術を得るためにもRed Hatを使い続ける。Whitehurstが言うには、しかもそれは決して偶然ではない。

クラウドやコンテナは主にLinux上の産物であり、Red Hatの得意技(わざ)は何かといえば、それはLinuxだ。Whitehurstによると、レガシーのRHELビジネスも依然14%の高率で成長しているが、新顔のクラウドとコンテナの事業はそれを大きく上回る40%の成長を維持している。そしてそれが、売上に強力なインパクトをもたらしている。

先月発表された最新の決算報告では、全体的な売上は四半期ベースで21%増の7億2300万ドル、年商換算では28億ドルになる。投資家たちもそれを好感し、株価は上昇を続けている。2016年の12月に$68.71だった株価は、今日(米国時間2017/10/13)見ると$121とほぼ倍増だ。どこをどう切っても、良好なリターンと言えよう。

Whitehurstによると、同社のさまざまな事業部門が互いにシナジー効果を上げている。同社は、Googleで開発されたオープンソースのコンテナオーケストレーションツールKubernetesに早くから賭けてきたが、それがのちには、Kubernetesを使うコンテナ化アプリケーションのデリバリ、という新しい事業形態に結実して稼いでいる。Red HatはLinuxをエンタープライズのITにおいてもっとも有能であるようにパッケージして提供しているが、それと同じことを、KubernetesとOpenShiftプロダクトとの組み合わせでもやっている。というかWhitehurstが冗談で言うのは、OpenShiftは名前の中にKubernetesがあればもっと認知度が上がっただろう、と。

この分野での成功は、技術の適時適材適所という正攻法だけでなく、Red Hat独自の特性にも負っている。Whitehurstは曰く、“うちには、エンタープライズにとってベストなアーキテクチャを見分けることのできる独自のスキルがある”。しかもそれは初期からコミュニティに還元され寄与貢献しているだけでなく、今や同社は、Kubernetesに対してもGoogleに次ぐ最大のコントリビューターだ。

しかし彼が言うのは、やはりLinuxとの結びつきだ。コンテナがもともとLinux上の技術であることが、Red Hatのコンテナ〜Kubernetesビジネスを強くしている最大の要因であり、Linuxに関する同社の長年の知識と技術の集積を、コンテナにもそのまま応用できることが、大きな強みだ。

Red Hatの収益を支える大企業は、彼らのアプリケーションの全在庫をコンテナ化するほど急いではいない。これらの企業はもっとゆっくり進もうとしており、そこでRed Hatとしては、顧客が今どの段階にいてもしっかりサポートできる体制が必要だ。クラウドで仮想マシンを使うべき段階か、オンプレミスで行くべきか、それともアプリケーションをコンテナ化して動かすべきか、などなど。

Whitehurstは、彼の会社がフリーソフトウェアを売ってることを理解している。だから、売るものはあくまでも、実装を容易にするサービスや、これらのツールを顧客に代わって管理してさし上げるサービスでなければならない。“フリーなソフトウェアを売るときには、IPは無料だから何が価値かを真剣に考えなければならない”、と彼は語る。数字を見るかぎり、顧客は価値を実感しているようだ。50億ドルへの道は、かなり平坦なのではないか。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Red Hatはクラウドへの移行で50億ドル企業をねらうが、Linuxだけでは無理かもしれない

7047941495_7e934b62fa_k

長年(20+)、企業顧客にLinuxを売ってきたRed Hatが、オープンソース企業としては初めて、20億ドル企業になった。次の目標は(売上)50億ドルだが、そこまで到達するためには、Linux以外のものも必要だろう。

2年前にRed HatのCEO Jim Whitehurstは、売り上げが伸びているにもかかわらず、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)だけでいつまでも成長を続けることはできない、と自認した。RHELは好調だが、世界は変わりつつあり、彼の会社もそのほかの企業相手の企業と同じく、変わらなければならない。変わらないことは、大きなリスクを抱えることだ。彼は当時、そう語った。

その変化とは、Microsoftのコマーシャルが言っている“To the cloud!”(クラウドへ)だ。

Whitehurstが2014年に、同社はOpenStackを軸とするクラウド企業になると宣言したとき、かなりの人が驚いただろう。同社の長年の社員の中にも、びっくりした人はいたと思う。でもWhitehurstは、大きな変化のように思えるかもしれないが、実際にはそれほどでもない、とそのとき言った。

Linuxとオープンソースの未来

クラウド企業に変わることが同社にとってささやかな変化にすぎない理由は、クラウドがLinuxとそのほかのオープンソースソフトウェアで構成されるシステムだからだ。この二つ、すなわちLinuxとオープンソースソフトウェアは、Red Hatが長年、何にも増していちばんよく知っているものである。Red Hatでプロダクトとテクノロジーを担当している上級役員Paul Cormierは、そう語る。

CEOのWhitehurstもこう言う: “クラウドを軸に今起きつつあるイノベーションが、オープンソースの中で起きていることは、弊社にとって本当にすばらしいことだ。Linux, Kubernetes, Docker, OpenStack, …主要部位はすべてオープンソースだ。弊社のユニークな立場は、オープンソースソフトウェアに取り組んで10年以上自分たちがやってきたことをそのまま、企業のサポート、企業の消費物、そして企業のためのライフサイクル管理に応用できることだ”。

弊社の事業計画の前提は、既存のポートフォリオだけで無理なく50億ドルに到達できる、という感触だ。
— Jim Whitehurst, Red Hat CEO

ただしそれは、移行は簡単、という意味ではない。営業のやり方が違うし、R&Dから営業からマーケティングに至るまでの、全社的な機構を考えなおす必要がある。これまでは費用低減と選択の自由を軸とする価値提案を売っていけばよかったが、クラウドの場合は、顧客が購入する理由がそれほど単純明快ではない。

“それは、それまであった何かを別のものに代えることではなくて、プラットホームを作ってその上で何かを開発することだ。だから価値提案が事業価値の理解に基づくものになる”、とWhitehurstは説明する。だから企業だけでなく、その市場もよく知らなければならない。新しい課題が山積みになる。

“うちも、ぐーんと背伸びをして、顧客に接近し、彼らのニーズを深く理解しなければならない。彼らがどうやって価値を作り出しているのか、それのどこをどうやってうちが助けるのか、それを理解することだ”。

そこで問題は?

Crumpled cap with Red Hat logo on it.

Photo by Paul Hudson on Flickr。 CC by 2.0のライセンスによる。

Forresterでエンタープライズを追っているアナリストDave Bartolettiによると、それがRed Hatの難関だ。

“これまでのように、高価でプロプライエタリなもの〔Windowsなど〕に代わる安いものを売るのではなくて、誰もがどこででも使えてソフトウェアをより迅速に作れるための、一連のツールを売らなければならないのだ”、と彼は語る。

またIDCのアナリストAl Gillenは、それだけではなく、Red Hatはパブリッククラウドのベンダたちと直接、競合することになる、と言う。

“顧客がパブリッククラウドのインフラストラクチャへ移行していくことに関して、Red Hatにはコントロールがあまりない。それは、コアとなるインフラストラクチャレイヤとしてノンブランドのプロダクトに大々的に依存している。たとえばオペレーティングシステムも、実質的にはノーブランドだ。これが、Red Hatの成長にとって向かい風になる。なぜなら同社は、低コストで汎用的なインフラストラクチャのソリューションに、勝たなければならないからだ”、とGillenは説明する。〔*: たとえばAWSでは、ユーザーからの‘見かけ上は’、オペレーティングシステムとして何を使っているかは、知る必要のないこと。つまりノーブランド。〕

彼の考えでは、従来どおり企業のために分散アプリケーションを作っていくコアビジネスで当面は快調でも、顧客をクラウドに移行させて次世代のアプリケーションを作っていくことになると、Red Hatは上記のような低コストのコンペティターたちとの競合対策、その必勝対策が必要になる。

厳しい目標

しかしそれでもなおWhitehurstとCormierは、この変化を乗り切ることに自信満々であり、それまでの単なるRHELの企業だったときよりも大きく伸びる、と考えている。Whitehurstによるとその目標は、5年後に50億ドル企業になることだ。

“弊社の事業計画の前提は、既存のポートフォリオだけで無理なく50億ドルに到達できる、という感触だ。”、と彼は述べる。

彼によると、クラウドとRHELをそれぞれ個別のサイロと見なすことはできない。お互いがお互いに供給しあっているし、ミドルウェアのレイヤもある…これも別の収益源だ。

オープンソースだけではなくもっと一般的に、エンタープライズソフトウェア企業で50億ドルの売り上げを達成したところはひと握りしかいない、とWhitehurstは指摘する。MicrosoftとOracleとSAPとSalesforceとVMwareだ。Ciscoもソフトウェアの売り上げだけならそれぐらいになるし、Adobeも今年は$5Bを超えそうだ。

彼自身も認める。今20億ドルで5年後に50億ドルなら、年率約58%で成長しなければならない(ぼくの暗算が正しければ!)。相当厳しい目標だ。もっと多様なプロダクトをテーブルに並べれば、それは不可能ではないかもしれないが、それもかなり厳しい。

いずれにせよWhitehurstによれば、この目標は同社のパートナーカンファレンスで発表したものであり、今の同社はそれが実現できるだけの、良い立ち位置にいる。さてしかし、彼が正しいかは、時だけが知っている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 7.0がリリース、デフォルトで10年保証を提供

Red Hatが今日(米国時間6/10)、同社Linuxディストリビューションの企業向け商用製品Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のバージョン7.0をリリースした。その主な特長は、Windowsとの相互運用性、新しいデフォルトのファイルシステム、Dockerによるコンテナ化、そして、今後のすべてのメジャー/マイナーなリリースを対象とする10年間保証だ。

LinuxのカーネルがRHEL 6.xの2.6.32から3.10にアップデートしたことも大きい。調査会社Forresterのインフラとオペレーション担当アナリストRichard Ficheraは、それはRHELの、待ちに待たれていた現代化が目的だ、と言う。

Ficheraは次のように言う: “カーネルを3.xにアップしたことは、SUSEに追いつき追い越す意味でも重要だ。顧客向けにも大量の便利な改良が提供されるだろう”。

Red Hatのマーケティング担当シニアディレクターMark Cogginは、10年保証によって顧客が得られる安定性と安心感も大きい、と語る。これはRed Hatの顧客へのコミットメントの真剣さを表しており、10年保証とはバグフィクスとセキュリティリリースと公式アップデートが今後10年提供される、という意味だ。

また今回のバージョンは、RHELのインストールと管理と展開を容易にすることにも力が注がれ、その一環としてWindows Active Directoryとの相互運用性、スクリプトによってアップグレードの過程を自動化、などの機能が導入された。Cogginは曰く、顧客先のシスアドはニーズの変化を十分に把握してから、それらに合わせてアップグレードのプロセスを進めなければならないが、今回はそのために役に立つ重要なツールをいくつかご提供した、と。カーネルの件も含めて、今回はかなり重要なバージョンアップだ、と彼は強調している。

Ficheraによると、そのために今回は、シスアドの仕事を楽にするという点で大きく進歩したという。“RHEL 7ではインストールが簡単になり、管理のオーバヘッドが下がり、ユーザがすぐに使い始めることのできる既存のRHELからの更新や、ロールバック、それに、“プロファイル”と呼ばれる、用意されたテンプレートからの展開などが導入された。プロファイルでは、各種の構成オプションをワークロードの特性に合わせて指定できる。またインストールが終わると、大幅に改良されたランタイム管理とモニタリングの機能が提供され、ランタイムのパフォーマンスの最適化が図られる。

IDCでサーバとシステムソフトを担当しているAl Gillenは、重要なのはDocker対応化だ、と言う。“今回のリリースからDockerがデフォルトでサポートされたことの意義は大きい。サービスプロバイダや、アプリケーションの複数バージョン間のポータビリティを重視する顧客は、コンテナのサポートをとても便利に感じるだろう。 Red Hatの連中も、それを言っていた”。

デフォルトのファイルシステムが、EXT4からXFSに変わった。ただし、必要に応じてそのほかのファイルシステムもサポートされる。ForresterのFicheraは、この点が重要だと言っている:

“今のLinuxカーネルには、いろんなファイルシステムがある。もっとも多く使われているのが改良版(今では‘4’)のEXTファイルシステム、0.5PBまでの巨大なファイルをサポートするXFS、“Better File System”の頭字語btrfsのベータバージョン、などなど”。

RHELのメジャーアップデートは3年半ぶりだが、顧客のニーズはどこにあったのか。連続性を重視したゆるやかなアップデートが、望まれているのではないか。この点に関してIDCのGillenは、業界は二分している、と言った:

“Amazon Web ServicesやMicrosoft Azure、Google App Engineなどのプラットホームは利用の連続性を保証しつつアップデートを行わざるをえない。これに対して古典的なITショップは、何をいつどのようにアップグレードするかを個別にいちいち自分で意思決定する。どちらを採るか。今業界は、その分岐点に来ていると思う”。

彼の説では、今でも後者のやり方を必要とする企業はある。とくに、政府などの厳しい規制下にある業種の場合だ。Red HatのCogginによると、同社はアップデートの配布方法について検討しているが、顧客自身が具体的な要望を持っている場合も多い、と言う。

“うちは商用Linuxのマーケットリーダーで、大量の顧客がリリースの一定のリズムやライフサイクルを暗黙裡に期待している。ただし、そのライフサイクルの内容的な意味を、われわれベンダとしてはしっかり見定める必要がある”。同社はすでに、頻繁なリリースを必要とする企業には特殊なソフトウェアやツールセットを提供しているが、しかし大半の顧客は安定性を重視している。同社としては、両方のタイプのアップグレードパスを提供しなければならない、とCogginは言う。

Cogginによると、RHEL 7のベータに参加した顧客は1万弱だった。そして、とくに熱心だった60社からは、今後も継続的にフィードバックをいただいていく予定だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))