マネーフォワードがRuby言語(オープンソース)の「パトロン」に

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Ruby言語のコア開発、卜部昌平氏(左)とマネーフォワード代表の辻庸介氏(右)

個人・法人向けの資産管理サービスを提供するマネーフォワードが今日、「フルタイムRubyコミッター職」として、Rubyコア開発者の卜部昌平氏(うらべ・しょうへい)を迎え入れたことを発表した。オープンソース開発者2人を「技術顧問」「Rubyコミッター職」として採用するということは、すでに2015年12月に発表済みで、TechCrunch Japanでも記事にしている。今回はRubyコミッター職に就任するとしていたのが卜部氏で、正式に3月本日付けで入社したという発表だ。

Rubyは日本生まれのプログラミング言語として、特にネット系企業で世界的にも人気が高い。卜部氏はこれまで過去に各Rubyのバージョンごとに選任される「リリースマネージャー」を担当するなどRuby開発チームの中では広く知られたベテランのソフトウェア・エンジニアだ。直近はDeNAでエンジニアをしていて、空き時間にボランティアでRubyの開発やRubyKaigiなどRuby関連イベントの開催に携わってきた。

そんな卜部氏は今後、マネーフォワードのプロダクト開発には関わらず、Ruby言語の開発に専念するという。

日本企業、それもリソースに余裕のないスタートアップ企業が本業に関わらなくて良いから基盤技術であるプログラミング言語の開発だけに専念してくれ、というのは、かなり思い切った施策と言って良いだろう。マネーフォワードは何を期待しているのだろうか? マネーフォワード代表取締役社長CEO 辻庸介はTechCrunchの取材に対して、以下のように話した。

「当社の直接的な業務に携わるわけではありませんが、社内のエンジニアとのコミュニケーションは大事だと思っています。基本的には社内に来て頂いて、(社内)勉強会とかにも、どんどん入っていただきたいなと思っています」

「すでに技術顧問として入っていただいた松田氏には技術的なところはアドバイスをしてもらっています。メンタリングのようなこともやっていただければと考えています。弊社のエンジニアと一緒にそのまま飲みに行ったりしていますし、開発の最前線の人と話をするのは健全なことだと思っています」

やはり今後のエンジニア採用にプラスの施策という認識だろうか?

「進んでる会社とか、スタートアップのように先を行ってる会社ではRubyエンジニア獲得は激戦になっています。エンジニアが働きたいと思う会社ってお金とかじゃないと思うんですよね。サービスを通して世界を良くできるのか、どういうメンバーが働いているか、自分はそこにいることでスキルが上がっていくのか。卜部さんとか松田さんが来るのはエンジニアにとって魅力的」

トップエンジニアがいる会社には良い人材が集まる。そうだとしてもリソースの限られたスタートアップ企業で、オープンソースプロジェクトの「パトロン」となるのは厳しいのではないか。マネーフォワードは社員数135人、エンジニア比率は4割程度だ。どうやってステークホルダーを説得したのだろう。

「ペイするかというと分かりません。コスト負担は大きいです。ただ、これはきれいごとかもしれませんけど、タダ乗りってフェアじゃないよねと思っているんです。アメリカにMBAを取りに行っていたときにコントリビューションということを、すごく言われたんです。自分が所属する世界に対して何を貢献するのか、と。コミュニティーに協力して貢献する。青臭いかもしれませんけど、そこの思いから始めています。もちろんVCや株主から出資してもらっているので取締役会でも議論しました。思いと狙いのバランス、実利と両方です」

フルタイムでRuby開発に携わっているのは、Rubyの生みの親であるまつもとゆきひろ氏のほかに、Salesforce傘下のHerokuが抱える笹田耕一氏、中田伸悦氏がいる。今回卜部氏がフルタイムとなることで、Ruby開発は加速するのだろうか? 卜部氏はTechCrunchの取材に対して「Rubyの開発はもちろん加速すると思います」と明言した上で、今回の「フルタイムコミッター職」というパトロン形式での採用について以下のように話した。

「開発者を丸ごとパトロンするという認識だと、(世界的にも)珍しいと思います。ただ研究開発職と考えるとどうでしょうか。最近でこそ不景気な話も聞きますが、昔から大手企業にはプログラミングに限らずいろいろな分野の研究所で開発する研究者などがいるかと思います。そう思えばさほど違わない境遇の人は、知られていないだけで案外いたかもしれません。今回の場合は研究職との違いはオープンソースにコミットすること、だと思います。インパクトのある仕事をすることが求められているという点では一緒でしょう。自分の場合はインパクトファクターのような指標ではなく、実際のコードで、ということですね」

「最近はオープンソース開発がただの一過性の流行などではなく、企業の競争力の源泉として認識されてきているかと思います。最近でもMicrosoftが.NET CLRをオープンソースにしていたり、あるいはAppleがSwiftをオープンソースにしていたりします。このように、企業がコアコンピタンスとしてオープンソースを位置づけることはもはや珍しくないし、その中で開発力をどのように得ていくかということで、オープンソースを常時開発して、企業に貢献していく開発者という働き方が、以前よりは増えているのではないでしょうか。一般的とまで言えるかは分かりませんが」

「いま、国内でもオープンソースを技術力の源泉として『利用』している企業は、結構増えてきてると思います。これからはさらに一歩先、オープンソース『開発』を自社の技術力の源泉としていく企業が増えてほしいです。望む未来を実現するには発明してしまうのが一番早いとも言います。企業の側からのメリットはそこにあると思います」

「今回は自分としてもチャレンジングな仕事をオファーしていただいたと思っています。働き方のモデルケースとなれるように頑張っていきたいです。後に続く人が増えてほしいと思います」

マネーフォワード、フルタイムのRuby開発者を「Rubyコミッター職」で採用へ

日本のオープンソース開発者に明るいニュースが入ってきた。Fintechスタートアップのマネーフォワードが日本で有数のオープンソース開発者2人に「技術顧問」「Rubyコミッター職」というポジションを用意して、国産プログラミング言語のRubyの発展に貢献すると発表した

技術顧問に就任したのはRuby言語と、Rubyを使ったWeb開発フレームワーク「Ruby on Rails」の両方のコミッターである松田明氏。「コミッター」とは、オープンソースのプロジェクトにおいて直接ソースコードに改変を加える権限のあるコア開発メンバーのことだ。

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マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏(左)と、技術顧問に就任した松田明氏(右)

モバイル時代とはいえ、サーバ側のバックエンドにビジネスロジックを組み入れるとなると、PaaSやBaaSで済まない。今でもスタートアップ企業の多くがRuby on RailsやNode.jsを使っていることだろう。松田明氏は、日本人で唯一のRuby on Railsのコミッターとして知られていて、クックパッドやForkwellなど各社サービスのバックエンドの開発においてフリーランス的な立場から技術支援してきた経歴がある。

松田氏はマネーフォワードの技術顧問に就任したと発表があったが、もう1人、Ruby開発者がマネーフォワードに参画するという発表があった。こちらはまだ名前は伏せられているものの、フルタイムの「Rubyコミッター職」というポジションで、来年初旬の入社を予定しているという。これまでセールスフォース傘下のHerokuが、日本人のRubyコミッターをフルタイム採用するという例はあったが、日本企業の、しかもスタートアップ企業が採用するのは聞いたことがない。このコミッター職というのは、その名が示す通りRuby言語の開発が主な業務であって直接はサービス開発に関わらない。これは、かなり思い切った採用だ。

Rubyはまつもとゆきひろ氏によって生み出されたオープンソースのプログラミング言語として1995年から徐々に国内で、そしてRuby on Railsの登場で2000年代半ばからはアメリカを始めとする世界中で人気となった。一方で、Ruby言語については開発の中心メンバーは日本人の有志だけという状態が長く続いていた。2011年にHerokuがRuby開発のキーパーソンである笹田耕一氏や中田伸悦氏を雇い入れるまでは、Ruby言語を開発し、改善していたコア開発者たちは、Ruby創始者のまつもと氏をのぞいては本業のあるエンジニアが空き時間を使うケースがほとんどだった。

一般にスタートアップ企業はリソースに余裕がなく、オープンソースを利用することはあっても積極的に貢献することができないケースが多い。オープンソース開発者の中には、「使うだけ使って何の貢献もフィードバックもしないフリーライダーが多すぎる」と苦言を呈する人もいる。ある程度の売上規模になれば、バグ修正や、ちょっとしたライブラリの公開くらいできるはずなのに、それすらやらないのはイケてないということだ。逆に、今回のマネーフォワードのようにサービスを支える基盤技術と、それを陰で支えている人材に投資をしてコミットメントを示すのは、今後のエンジニア採用という面でも良い方向に働くだろう。エンジニアリングの価値を評価しているという強いシグナルになるし、著名開発者を引き入れることでエンジニアが働きやすい環境であると示すことができるからだ。いずれにしても、日本発のプログラミング言語Rubyに対して国内企業が踏み込んで支援するというのはすばらしいことだと思う。

(情報開示:この記事の著者、TechCrunch Japan編集長の西村賢は、松田明氏とは地域Rubyコミュニティーを通した数年来の友人)

妊娠を助けるアプリGlowから性教育アプリRubyがリリース、アメリカでも正しい性知識がまず重要

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女性の懐妊(または避妊)を助けるGlowから今日(米国時間7/30)、女性の健康的な性を支援するiOSアプリ、Rubyが登場した。

RubyもGlowのそのほかのプロダクトと同系列だが、生殖ではなく、もっと一般的な性を扱う。うむ、女性の性って、赤ちゃんを作ることだけじゃないもんね。

嘆かわしいことに、モバイルの世界には、若い女性のための性教育が皆無だ。アプリはあることはあるけど、Googleで情報を調べた方がまだまし、というレベルのものばかり。

たとえばiOSアプリのSex Positiveは、学生のための性教育を意図している。たしかに学生には、性に関する、これはOK、これはノーという知識が必要だ…女性の4人に1人が大学時代にレイプされたり、されかかったりしている。でも学生がそこらの適当なアプリをダウンロードしても、そんな目に遭わないための正しい行動や態度を教えてはくれない。

Rubyが一味違うのは、まず、女性をサポートするコミュニティがある/作られること。そこで自分の性の状態やそのほかの健康状態を、ほかの人たちと対照して理解することができるし、また生理の記録をつけて今後の周期を知ることもできる。そしてRuby自身も、年上の賢いお姉さんのように、性について主体的に考えるための情報やリソースやアドバイスを教えてくれる。

若い女性に自分の体を肯定的に受け入れ健康に関する理解を深めるための方法を提供することが、私たちの使命だ。
— Jennifer Tye, Glow

これらは、従来のアプリになかったポジティブな特徴だ。ティーンと若い女性は、性や人間関係や身体像に関する、大量の間違った情報に毎日触れている。ティーンの妊娠率は保守的な南部の州でいちばん高いが、それらの州では性教育が実質的にゼロで、またある調査によると、合衆国の18歳から29歳までの女性の60%以上が、正しい避妊知識を持っていない。

今女性の心理を支配しようとしている社会的な動向を知りたければ、コンビニの雑誌(女性誌)売り場へ行ってみるとよい。女性の性的魅力を高めるため、と称する、化粧、ファッション、振る舞いなどに関する、ばからしい記事が満載だ。ほとんど笑えてしまうような記事も多いが、知識と情報に基づく主体性をまだ獲得していない女性は、これらの記事を鵜呑みにしてしまうかもしれない。

Rubyのねらいは、女性、とくに、往々にして間違った自己像を持ちがちな若い女性に、健康と受胎調節と安全な性に関する、正しい意思決定能力を持ってもらうことだ。

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Rubyは、未成年妊娠を防止しようとするNPO National Campaign to Prevent Teen and Unplanned Pregnancyが運営する受胎調節教育サイトBedsiderとパートナーして、当アプリの重要な情報を得ている。

“若い女性に自分の体を肯定的に受け入れ健康に関する理解を深めるための方法を提供することが、私たちの使命だ”、とGlowのマーケティング担当VP Jenifer Tyeは語る。

Rubyはまた、ローンチ時に、開発途上国の若い女性に生理用品と性教育を提供するNPO Huru Internationalとパートナーした。ウガンダのような途上国では、生理時の女の子が学校を休むことが多い。生理用品がなくて、教室を汚すからだ。Rubyはソーシャルメディア上のキャンペーンで、そういう少女たちが学校に行けるよう、助けようとしている。だれかがハッシュタグ#TalkRubyToMeにツイートやポストをするたびに、Glowは1人の若い女性の一日分の生理用品をこのNPOに寄付する。

関連TCTV

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

日本のスタートアップはRubyがお好き? PHPと人気ほぼ互角に

ソーシャルリクルーティングサイト「Wantedly」を運営するウォンテッドリーが25日、スタートアップ企業に人気のプログラミング言語に関する調査結果を発表した。それによれば、2009年に創業した企業の間ではPHPが最も人気だったが、2011年以降に創業しているスタートアップ企業の使用言語はPHPとRubyがほぼ半々であることが分かったという。

詳しくグラフを見ると、2009年創業の企業のうち、PHPを使用していたのは38%、Rubyは15%と倍近くの差があったが、2011年に創業した企業ではPHPとRubyが24%で同率。2013年創業の企業ではPHPが32%、Rubyが27%と再び差が広がったが、2014年に創業した企業ではPHPが22%、Rubyが25%と、初めてRubyがPHPを上回っている。

調査は、Wantedlyの登録企業で使用言語を記載している企業390社の中から、各社の創業年度別にサーバーサイドで使用している言語を集計したもの。JavaScriptはフロントエンドの使用が多いため除外した。JavaはAndroidでの使用とサーバーサイドでの使用の両方をカウントしている。

プログラミング言語は時代とともに人気が移り変わるもの。PHPとRubyの人気が伸びている理由についてWantedly代表取締役の仲暁子は、「PHPはCakePHP、RubyはRuby on Railsなどの代表的なフレームワークが存在するため」と見ている。