フォトシンスの新スマートロック「Akerun Pro」、交通系ICカードでの開錠・施錠にも対応

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏

スマートロック「Akerun」シリーズを開発するフォトシンスは7月7日、オフィスや民泊物件などでの利用を想定して機能を強化した新プロダクト「Akerun Pro」を発表した。7月23日より契約者に対して順次発送を行う。本体価格は無料で、月額9500円のレンタルプランでのみ提供する。フォトシンスでは3年間で1万台の販売を目指す。

まずは従来のAkerun(7月7日開催の会見では「Akerun One」と呼ばれていたが、サイト上の表記に合わせて「Akerun」としている)についてご紹介。Akerunは2015年3月に発売された後付け型のスマートロック。一般的なドアの内側についた錠前の上に粘着テープで本体を貼り付けることで、専用アプリを通じた開錠・施錠が可能になるというものだ。

Akerun Proはこの従来機と比較して、バッテリー容量を2倍に拡大。またバッテリーに加えてACアダプタによる給電(停電時などはバッテリー駆動に切り換え可能)にも対応した。開錠・施錠速度は15倍にスピードアップしている。僕はこれまで従来機でのデモを何度も見る機会があったが、正直スピードの変化には驚かされた。

「Akerun Pro」のデモ

「Akerun Pro」のデモ

Akerun Proは本体に加えて、NFCリーダー(室内用と室外用の計2台)、ドアセンサーとBluetoothで接続して動作する。この組み合わせによってSuicaやPASMOをはじめとした交通系ICカードをはじめとしたNFC対応ICカードを使った開錠・施錠が可能になる(NFC搭載スマートフォンは非対応)。また専用のクラウドサービスで鍵や入退室の管理などもできる。ICカードを元にした勤怠管理なども実現している。

APIを提供することで、外部サービスとの連携も可能だ。例えば「その日最初の出社」を検知してオフィス全体の電気を付ける、「その日最後の出社」を検知してオフィスの電気を消す、なんてことも可能になる。

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏はAkerunについて「スマートロック」ではなく、「スマートロックロボット」だと強調した(ついでに言うと配布された資料にも「スマートロックロボット」と表記するよう指示があった)。例えば本体のボタンを押してドアを開錠したとき(内側からのみ本体操作で開錠可能)に本体スピーカーで雨が降っていることを知らせる、緊急地震速報をもとに自動開錠を行うといったことを実現するという。「(Akerun Proが)人間がすべきではない煩わしい仕事を奪う。クリエイティブな仕事ができるようにする」(河瀬氏)

フォトシンスでは3年間で1万台の販売を目指す。なおAkerun Proはレンタルでのみの提供となるが、個人利用などを想定して従来機も併売するとしている。

スマートロックで「不動産×IT」を開拓するライナフが資金調達、三菱地所と業務提携へ

ninja

スマートロック「NinjaLock」や、そのNinjaLockと連携するアプリケーションなどを開発するライナフは2月1日、三井住友海上キャピタルおよび三菱地所を引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。同社が外部から資本を調達するのはこれが初めて。金額は非公開だが、1億円以上資金を調達しているとみられる。同社は今回の資金調達をもとに人材採用を積極化。開発およびマーケティング体制の強化を計る。また三菱地所グループと業務提携し、不動産業界向けのソリューションを共同開発していという。

ライナフは2015年5月にNinjaLockの販売を開始した。国内でこの領域を手がけるのは、「Akerun」(2015年4月発売)を提供するフォトシンスや「Qrio SmartLock」(2014年12月にクラウドファンディングサービス「Makuake」で発表。2015年8月出荷)を提供するQrioなどがある。

スマートロック単体でなく、サービスと組み合わせて展開

NinjaLockでは、単にスマートロック単体を販売するのではなく、アプリやサービスと組み合わせることで「不動産業界のインフラ」になることを目指しているのだという。

実は同社は「シェアルーミング」という空きスペースのレンタルプラットフォームを提供している。これはスペースのオーナーが、サービス上で会員制の「シェアクラブ」を作成し、会員に限定してスペースを時間貸しするというもの。スペースにNinjaLockを取り付けており、会員はオンラインで事前にスペースの予約をしておけば、予約した時間にブラウザ経由で開錠できる。今後はこういった「スマートロック×サービス」の提供を進めていく考えだ。

「シェアルーミング」のイメージ

「シェアルーミング」のイメージ

三菱地所グループとの取り組みもこのシェアルーミングの延長線上にあるサービスからスタートする。両者は三菱地所レジデンスが開発する高品質賃貸マンション「ザ・パークハビオ」にNinjaLockを導入。「スマート内覧」と呼ぶ無人内覧サービスを開始する。

競合製品も含めて、これまでもスマートロックを利用した内覧サービスはあった。しかしその多く現場まで不動産仲介業者が同行してスマートロックで開錠する、もしくは現場で不動産仲介業者に電話をしてスマートロックを遠隔操作で開錠するというものだったのだという。今回のスマート内覧は、不動産のデベロッパーが直接内覧の機能を提供するかたちとなるため、あらかじめウェブ上で日時を指定して内覧予約していれば、現場では仲介業者等に連絡することなく、ブラウザ経由で開錠して自由に内覧ができるという(エントランス用の後付け式スマートロックも用意している)。

ライナフは今後もスマートロック単体だけでなく、連携サービスにも注力するとしている。「例えば月額1万円でスマートロックのサービスだけ提供するというのではお金を払ってもらえないかも知れない。だがカギの入退室からセキュリティまでスペースの『運営システム』として一括で提供できるようになればビジネスは大きく変わる」(ライナフ代表取締役社長の滝沢潔氏)

LINEで鍵の授受も、後付型スマートロック「Akerun」が3万6000円で4月に販売開始へ

昨年のTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルのファイナリスト、フォトシンスのスマートロック「Akerun」が、いよいよ発売開始となる。発売日は4月23日で価格は3万6000円。予約は本日こちらからできる。

Akerunは「サムターン」と呼ばれる指でひねるドアの鍵に取り付けることで、スマホから鍵の開閉ができるデバイス。建物の中、ドアの内側につけたAkerunは、ドアの外でユーザーがかざすスマホとBluetooth通信による認証を行い、モーターによる制御で物理的に既存ロックを開閉をする。スマホによる明示的な開閉のほかにも、お出かけのときには扉が閉まったことを検知してオートロックする機能もある。内側からはスマホなしでも、Akerunに指でタッチするだけでサムターンを回して開けることができる。

スマホが鍵となるだけでも結構便利そうだが、ネットワーク上での鍵のシェアも可能で、FacebookやLINEを使って友人や家族のスマホに対して鍵をシェアすることが可能だ。登録者の入退室はスマホのアプリ上でリアルタイムで閲覧できる。

サポートするスマホOSはiOS7以上、Android4.4以上でBLE4.0に対応する。バッテリは2年間もち、残量が減ったときにはアプリが通知したり、交換バッテリを郵送するオプションもある。

不動産の内見やホテルのフロント業務、空きスペース貸しに市場

ネットワーク上で鍵のやり取りや無効化ができることから、フォトシンスでは鍵の受け渡し業務があるホテルや不動産関連ビジネスを行う企業との提携も進めており、今日都内で行われた製品発表会では、3つの事業会社との実証実験的な取り組みを発表した。

1つは、NTTドコモ・ベンチャーズがドーミーインと4月から始める「Webチェックインシステム」。同社代表取締役社長の栄藤稔氏は、アメリカでヒルトングループが2016年までに4000の施設でスマートロックを導入するような事例をあげて「米国ではゆるかに、しかし着実に(スマートロックが)拡大している。日本でも追いつきたい」と話した。

2つめは、不動産のネクストが3月19日から足立区、江戸川区、横浜など一部地域で開始している「スマート内覧システム」。これまで不動産の内覧には内覧日時の調整や鍵の受け渡しなど煩雑な手続きが必要だったが、ネット上で鍵の受け渡しができれば業務が簡素化する。さらに「法規制の緩和を見込めば、空き家の不動産運用も簡単になる」と、発表会に登壇したネクスト代表取締役社長の井上高志氏はいう。テストは4月末まで行う。

もう1つは、三井不動産が今週以降に実験を開始する「どこでもオフィス」(仮称)だ。三井不動産は300棟のビル、80万坪のオフィス床を運用しているが、ニーズの変化に対応するためにあえて満室とせずに一定の空室率を保っているという。この空きスペースを有効に活用するために、机や椅子、無線LANなどの環境を用意することを検討しているという。

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏によれば、電子鍵市場自体は496億円程度とみているものの、鍵の開閉を高齢者見守りに使えば、この市場は132億円、ホテルのフロント業務は876億円、不動産の仲介市場は2328億円、店舗の防犯・勤怠管理市場は1263億円など関連市場は大きい。例えば、アルバイトに物理的な鍵を渡さずに済むことや退職時に鍵を無効化できること、タイムカード代わりになることなども考えられるという。

国内のスマートロック市場といえば、2014年12月にはソニーがWiLと共同で新会社「Qrio」を設立して現在製品化を進めているのが注目されている。スマートロック市場は後付け方式で立ち上がり、数年もすれば新築住宅やホテル、商業施設では標準装備となる可能性もある。とすれば、勝負は管理サービス側の作り込みと大手企業との提携数ということになるかもしれない。実証実験的な側面があるとはいえ、製品リリースと同時に大手3社と提携を発表できたことでAkerunが一歩市場をリードしているといえそうだ。

ところで、Akerunは一般的には「スマートロック」と呼ばれることが多いが、フォトシンスでは「スマートロックロボット」と自社製品を呼んでいる。これには、ドア一体型のコンシェルジュのようなものを目指しているという意図があって、今後は天気が悪いと「傘を持っていったほうがいいよ」と教えてくれたり、次の電車の時刻を教えてくれたりといったホームオートメーションの一角を担うという将来像も見据えているということのようだ。


WiLとソニーがIoTの新会社「Qrio」設立へ――第1弾プロダクトはスマートロック

ベンチャーキャピタルのWiLが、彼らのファンドに出資するソニーと組んで新会社「Qrio」を12月中旬にも設立する。新会社の資本金は3億3350万円で、出資比率はWiLが60%、ソニーが40%。代表取締役には、WiL General Partnerの西條晋一氏が就任する。

WiLは設立当初から、スタートアップへの投資に加えて、大企業とスタートアップの架け橋になったり、大企業の保有する技術を世に出したりするといったことをうたっていた。今回の新会社は、そんな取り組みの1つの形だ。西條氏に聞いたところ、新会社設立はWiL側からの提案だったそう。「ソニーは構造改革をしつつ、新しいことに挑戦している最中。カーブアウトについても検討しているが、まずは僕らから提案した」とのこと。

Qrioが提供するのはスマートロック「Qrio Smart Lock」だ。すでにクラウドファンディングサービス「makuake」を通じて購入が可能だ。価格は2つセットで2万2500円からとなっている。12月12日にプロジェクトは発表されたが、すでに現在(17時40分)時点で目標金額150万円中、約122万円が集まっている。

西條氏はQrioの設立に向けて、海外製品を中心に、実際に複数のスマートロックを取り寄せ、ソニーの技術者とともに分解したり、使用してみたりしたのだそう。だが中には品質に満足いかないものも少なくなかったようで、「Airbnbが登場し、人の働き方も変わってきた。ベビーシッターやシェアハウスなどのニーズがある中で、ちゃんとした製品ををちゃんとしたメーカーが作ることは大事」と語る。僕も建築業界の関係者から「セキュリティ面が担保されないと、ウィークリーマンションやAirbnbで貸すような部屋など導入は限定的になるかもしれない」という話を聞いたことがある。

ちなみにWiLでは日本版Airbnbとも言える「TOMARERU」を手掛ける百戦錬磨にも出資している。同社のサービスとスマートロックの連携は「可能性はあるし、比較的容易だと思う」(西條氏)とした。

スマートロックはQrioの第1弾のプロダクトということで、今後もIoT関連の製品を提供することを検討中だそうだ。また、ソニー以外の出資者と組んで別領域での新事業を展開するという可能性もあるとしている。

海外では、「August」や「Kevo」、「Goji」などのスマートロックがあるようだが、最近では国内でもスマートロックを手掛けるプレーヤーが増えてきている。TechCrunch Tokyoのスタートアップバトルに登壇してくれたフォトシンスの「akerun」や、電通子会社の電通ブルーの「246(ニーヨンロック)」などもそれぞれ発売を控えている。


スマートロックとクラウドソーシングが連携するとどうなる?エニタイムズとAKERUNが試験サービス


先日インキュベイトファンドとディー・エヌ・エーからの資金調達を発表した生活密着型クラウドソーシングサービス「Any+Times」運営のエニタイ ムズ。同社がスマートロックシステムの開発を手がけるAKERUN(アケルン:現在法人化準備中)と連携したサービスを9月から試験的に提供することを明らかにした。

Any+Timesは家事代行を中心としたクラウドソーシングサービス。これに、AKERUNが開発するスマートロックシステムを組み合わせることで、家事代行の際のセキュリティの向上や入退室管理、鍵共有の効率化を図るという。

AKERUNが手がけるスマートロックシステムの中核となる「鍵ロボット」は、あらかじめスマートフォンとBluetoothでペアリングしておけば、スマートフォンが扉(というかロック)に近づくだけで自動で鍵を開けることができるというもの。他者のスマートフォンへの開錠権限を付与したり、時間を設定して開錠するといった機能も備える。単三電池1本で1年間利用できるそうだ(電池の残量についてはスマートフォン経由で知らせてくれるらしい)。現時点では詳細を聞けなかったが、特許申請中の新技術でセキュリティも強化しているということだ。

この鍵ロボットを持つAny+Timesユーザーは、家事代行を依頼する際、サポーターズ(Any+Timesで家事代行を請け負うユーザー)のスマートフォンに対して開錠権限を付与できるようになる。これによって、サポーターズは直接依頼人と会う必要なく、スマートフォン1つ持って家事を代行できるようになるというわけだ。以前エニタイムズ代表取締役社長兼CEOの角田千佳氏に聞いたところ、「最近ではAirbnb向けに提供している部屋の掃除などでAny+Timesを利用するユーザーもいる」と話していたのだけれど、そんな場合でもサポーターズ向けに合い鍵を作ることは少しためらわれる。その点、この仕組みがあれば、いらぬトラブルを避けることができる。

AKERUNはハードウェアエンジニアやソフトウェアエンジニアなど9人からなるチーム。エニタイムズのウェブディレクターである小林奨氏もそのメンバーだったことから、今回の連携が実現したという。まずは数人のAny+Timesユーザーに鍵ロボットを無料貸与して、Any+Timesのスマートフォンアプリの提供に合わせて試験的にサービスを開始する。年内にも正式に鍵ロボットを販売するよう準備中とのことで、今後はクラウドファンディングなどを通じて資金を集める予定だという。価格は現時点では未定だが、2万円程度での販売を目指すそうだ。また、Any+Timesで利用する場合は割引購入できるプログラムも用意するとのこと。

これまでにも、「Kevo」や「Lockitron」(現在プレオーダーとなっている)、「Goji」といったスマートロックシステムが海外ではあったようだが、日本発のスマートロックはクラウドソーシングと連携してどのようなイノベーションを起こしてくれるのだろうか。


TEOは、スマートフォンからBluetooth経由で解錠できるスマート南京錠

スマートロック[錠]が最近大流行している理由はよくわかる。ハードウェアキーの代わりにスマートフォンを使えば、解錠する手段を失う可能性がずっと減るし、通信手段さえあれば遠隔操作も可能だ。新しいKickstarterプロジェクトのTEOがスマート機能を取り入れようとしているのはもっとも基本的な錠、南京錠だ。

TEOはアプリを使ってBluetooth LE錠を制御する。基本的には南京錠だが、デザインは一目で他と区別がつく。この錠は所有権管理プラットフォームでもあり、TEOロックがどこにあるかを地図上で知ることができ、ユーザーが選んだ人ならたれでもTEOアプリ経由でアクセスできる。だから、もし昨晩友達のアパートの外に止めてきた自転車を持ってきてもらいたければ、一時的にその友達にアクセスを許可するだけでよい。

南京錠自体のつくりは、市販されている錠並みの盗難防止能力はあり、悪天候でもスマート機能を守る頑丈さも備えている。製造するHeliox Techは、カリフォルニアにあるメーカーで、米軍や潜水技術を10年近くてがけている。デザインはバンクーバー拠点のForm3が担当している。

Bluetooth LEを使うということは、当然バッテリーが問題になることを意味している。TEOによると、高度なスリープモードを使っているため最終製品では少なくとも1年間持続するという。またユーザーは、鍵がかかったままバッテリー切れを起こさないよう、付属アプリで残量をモニターすることができる。メーカーは、疲弊したバッテリーの交換や、バグによって反応しなくなった場合のサポートも行う。

TEOを作っているOckCorpは、製品出荷のために16万5000ドルの資金を目標にしており、本稿執筆時点で3万4000ドルが集まっている。今なら79ドルのプレッジ(寄付/投資)で、最初の製品ユニットの1台が手に入る、出荷予定時期は2014年12月だ。この錠前が形になるまでにはまだしばらく時間がかかるが、貸し自転車や宅配ロッカーなど分散管理を必要とする人たちのニーズにはぴったりだろう。もちろん、好奇心あふれるアーリーアダプターたちにも。

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(翻訳:Nob Takahashi)