すでに利用可能なモバイルの「Hey Spotify」音声コマンド機能公開についてSpotifyは沈黙

2019年にSpotifyは「Car Thing」の愛称を持つ自動車オーナー向けハードウェアデバイスのテストを始めた。このデバイスではSpotify Premiumユーザーが「Hey Spotify」で始まる音声コマンドで音楽やポッドキャストの再生を開始できる。2020年にはモバイルアプリにも同様に音声を統合する開発を始めた。そしてここにきて「Hey Spotify」の音声機能が広く利用できるようになってきた。

多くの人からSpotifyアプリで音声オプションを使えるというレポートが山ほどあり、この機能を利用できるのかどうかで一部のユーザーが混乱しているにもかかわらず、Spotifyはこれについて正式に発表していない。

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例えばGSM Arenaは早い段階で、Androidユーザーにこの機能を知らせるプッシュ通知が送信されたとレポートした。通知には「マイクを有効にして『Hey Spotify、私のお気に入りの曲をかけて』というだけです」と書かれていた。通知をタップするとSpotifyの新しい音声インターフェイスが開き、聴きたい音楽を話し言葉でリクエストするために、まずマイクを使う許可をアプリに与えるように求められる。

画像クレジット:GSM Arena

いくつかのメディアはこの機能がAndroidユーザーに対して公開されたとレポートしたが、これは部分的に正しい。

結論をいうと、この機能はiOSデバイスにも展開されている。例えば我々はiOS 14.5が動作しているiPhoneでSpotifyアプリを起動し、同様の機能が有効であることを確認した。検索ボックスの横にあるマイクのボタンをタップすると音声機能を利用できる。いろいろな人に聞いたところ、iOSの異なるバージョンを使っているiPhoneユーザーにもこの機能が提供されていることがわかった。Spotifyの無料ユーザー、Premiumユーザー、Familyプランユーザーのいずれでも利用できた。

表示される画面には大きく太い文字で「Hey Spotify, play…」と話しかけるように書かれている。「play」の後にはアーティスト名がランダムで入る。画面下部には「Hey Spotify」を有効にする大きな緑色のボタンがある。

有効にするとアーティスト、アルバム、曲、プレイリストの名前でリクエストでき、停止、一時停止、この曲をスキップ、戻るなどのコマンドで再生のコントロールもできる。Spotifyは、デフォルトがロボットのような男声であることを認めている(好みに応じて設定で女声に変更できる)。

iOSのSpotifyのスクリーンショット

この画面には、アプリが「Hey Spotify」の音声コマンドを聞きとるとユーザーの声のデータやその他の情報がSpotifyに送信されるという注意事項も書かれている。音声データの取り扱いに関するSpotifyのポリシーへのリンクがあり、ユーザーの発言の録音とそれをテキスト化したものと、ユーザーに返された内容に関する情報を同社が収集することについてリンク先で説明している。同社は、このデータを機能の向上、新しい音声機能の開発、ユーザーに関連する広告のターゲティングに利用することがあるとしている。ユーザーの情報はクラウドストレージプロバイダーなどのサービスプロバイダーと共有されることもある。

このポリシーは2019年に開始した同社の音声対応広告のものと同じで「Hey Spotify」の公開にともなう変更を反映して更新されているわけではないようだ。ただし他社の音声アシスタントと同様に、Spotifyはずっと録音しているわけではなく、ユーザーがウェイクワードを発するまで待機していると記載されている。

「Hey Spotify」の音声コマンドがCar Thingから始まっていることを考えると、モバイルへの展開はSpotifyが自社製ハードウェアを近く発売する準備が整ったサインではないかと推測される。おそらくそれは当たりだと裏づけるような情報もすでにある。MacRumorsが最近、Spotifyアプリのコードの中にCar Thingと各種マウントについての言及と写真を発見したと報じた。これは2021年1月にCar Thingに関するFCCの書類が明らかになったことに続く発見で、FCCの書類はデバイスがまもなく発売されるという噂をあおった。

米国時間4月7日午前にSpotifyにコメントを求めたが、音声コマンド機能の公開に関する返答はなく「残念ながら現時点では共有できるニュースはない」とのことだった。これはもっと大きな何らかのプロジェクトがマイナーな機能の公開と関連している可能性があることを示唆している。

最近のユーザーはテック企業のデータ収集に対して用心深くなっている。ことにテック大手3社が扱いのお粗末さを認めてからというもの、音声データの使用には慎重だ。そうは言っても、特にアクセシビリティの観点やドライバーの安全性の観点から、音声コマンドの使い道はある。

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携帯電話の音声アシスタントにSpotifyのコンテンツを再生するように指示することはできるが(CarPlayやAndroid Autoで)、Spotifyに直接話しかけることができれば便利だと思う人もいるだろう。AppleがSpotifyをデフォルトの音楽サービスに設定できないようにしている現状では、特にそうだ。あなたのお気に入りのサービスとしてSpotifyを起動するようにSiriを鍛えるしかない。

「Hey Spotify」をいったん有効にしても、後から気が変わったらアプリの設定の「Voice Interactions(音声操作)」からオフにすることができる。

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タグ:Spotify音声アシスタント音声操作

画像クレジット:Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

音楽ストリーミングのSpotifyがパーソナライズプレイリストで広告を拡大

音楽ストリーミングサービスのSpotify(スポティファイ)はパーソナライズされたプレイリスト「On Repeat」にスポンサーシップ広告を導入する。2019年に提供が始まったユーザーのお気に入りの曲を特集するこのプレイリストは、Spotifyで2つめのスポンサーシップ広告が導入されたパーソナライズプレイリストとなる。Spotifyのフラッグシッププレイリスト「Discover Weekly」が1つめで、2019年に広告が入るようになった。

スポンサーシップはSpotifyのSponsored Playlis広告プロダクトを通じて可能だ。ブランドがSpotifyの無料ユーザーにオーディオ、ビデオ、ディスプレイ広告メッセージで販促できるというもので、広告主は「エンド・ツー・エンド」のエクスペリエンスにできる、とSpotifyは話す。

またSpotifyの最も熱心なユーザーにリーチするチャンスをブランドに提供している。

例えば「Discover Weekly」をスポンサーシップ広告対応にしたとき、Spotifyはこのプレイリストを聴くユーザーはプレイリストを聴かなかった人の倍以上ストリーミングしたと指摘した。同様に「On Repeat」はユーザーが最も頻繁に流した音楽に的を絞っているため、Spotifyをより頻繁に利用するユーザー向けのサービスだ。

2019年9月の立ち上げ以来「On Repeat」のプレイリストは世界で120億ストリームに達したとSpotifyは話す。ファンはまたプレイリスト再生に7億5000万時間を費やし、Bad Bunny、The Weeknd、Ariana Grandeといったアーティストが「最もリピートされた」再生リストの上位にくる。

Spotifyは現在、数多くの広告入りプレイリストを提供しているが、パーソナライズされたプレイリストでは「Discover Weekly」を除き、ほぼ広告禁止だった。パーソナライズされたプレイリストはかなり価値の高い財産であり、Spotifyは同社のアルゴリズムで動くストリームコレクションへとユーザーを誘導する。Spotifyはアプリで拡大し続けている「Made for You」ハブにそうしたコレクションを整頓している。そこではユーザーは「Discover Weekly」と、ジャンルやアーティスト、年代、ニューリリース、お気に入り、提案などによって整頓されたコレクションの間を行ったり来たりできる。

「On Repeat」にスポンサーシップを導入することで、北米や欧州、南米、アジア太平洋を含む30のグローバルマーケットのブランドはSpotifyのもう1つの最大のパーソナライズされた財産を所有できるようになる。

このスポンサーシップを活用する最初の米国の広告主はTurboTaxで、プレイリストのパーソナリゼーションの要素とユーザーエンゲージメントが広告を出す理由の1つだとした。

「音楽のように、税金も一長一短です。納税に関する状況は人によって異なり、それぞれのニーズは異なります」とTurboTaxのマーケティング担当副社長Cathleen Ryan(キャスリーン・ライアン)氏は述べた。「消費者に当社の存在をアピールし、税務申告をするときに必要とする専門性をTurboTaxで利用できると示すために、Spotifyの熱心なリスナーへのコネクションを使います。TurboTaxが提供するツール、ガイダンス、専門性について知ることができるよう、Spotifyでは正しいオーディエンスにリーチしてターゲットとすることができます」と付け加えた。

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タグ:Spotify広告

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Spotifyがパーソナライズされた新プレイリスト「Spotify Mixes」を公開

Spotify(スポティファイ)は米国時間3月31日、パーソナライズプレイリストを大幅に改定し、「Spotify Mixes」として3種類のカテゴリーを公開したことを発表した。新たなコレクションは「アーティストミックス」「ジャンルミックス」「ディケードミックス」の3つで、さまざまな新しいミックスを、2010s Mix、R&B Mix、Drake Mix(ドレイクmix)、Selena Gomez Mix(セレーナ・ゴメスMIX)といったわかりやすいタイトルで利用できる。個人のテイストや興味を反映したミックスもある。

Spotify Mixesのアイデアは、2016年秋に同社が公開したDaily Mixesにインスパイアされたと同社は言っている。

Daily Mixesは、同社のメインプレイリストであるDiscover Weekly以来の大規模なパーソナライズの拡張で、ユーザーのリスニング履歴を反映したさまざまなプレイリストが導入された。現在Daily Mixesはユーザーが最近聞いた楽曲にその他の楽曲をミックスしてユーザーをつなぎとめている。新しいSpotify Mixesは実質的に同じことをする。ユーザーの好きな音楽を集め、フレッシュな楽曲を加える。違うのは、新しいミックスには明快な名前がつけられ、焦点を絞ったミックスが作られる点だ。

Spotify Mixesは世界の全ユーザーに提供され、無料会員とプレミアム会員の両方が利用できる。Made for You(メイド・フォー・ユー)ハブのSearchの中にある。

もっと簡単に見つけることもできる。SpotifyがアプリのMade for Youハブのトップ3行にミックスのセレクションを表示しているからだ。「Your Genre Mixes」「Your Artist Mixe」「Your Decade Mixes」の3つがそれぞれ横スクロールするミックスセレクションとともに表示される。ミックスのカテゴリーは随時更新され、常に複数のプレイリストが利用できる、とSpotifyはいう。

この新機能と一部競合するのが、Pandora(パンドラ)が 3年前に公開した同様の機能だ。SiriusXM傘下の音楽アプリは同社のMusic Genomeテクノロジーを使って、さまざまな属性、ジャンル、ムードなどからパーソナライズプレイリストを作った。必ずしも直接比較できるものではないが、新機能によってPandoraユーザーはすぐに数十ものパーソナライズされたプレイリストを利用するようになった。実際、Spotifyが競合機能の提供にこれほど時間がかかったのは少々意外だ。

今回の発表は、今週SpotifyのWorkoutハブにセレブにちなんだプレイリスト が追加された直後のことだった。

新しいプレイリストは本日全世界のユーザーに公開される、とSpofityはいう。

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タグ:Spotify音楽ストリーミング

画像クレジット:Spotify

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpotifyもClubhouseに負けじとライブオーディオに参入

SpotifyがライブオーディオのLocker Roomを運営するBetty Labsを買収すると発表したことを受けて、米国時間3月30日朝にSpotifyの株価が若干上がった。Crunchbaseのデータによると、この発表より前にBetty Labsは900万ドル(約9億9000万円)以上を調達していた。

Spotifyは音楽ストリーミング事業が最も有名だが、コアの市場における競争力、そして価格面の支配力を生み出す手段の両方を探しながら新しいオーディオフォーマットに進出してきた。

近年、同社はポッドキャストに多額の資金を投入し、プラットフォーム上で人気番組を独占的に提供してきた。自社のオーディオの世界をできる限り差別化することで、将来的に同社は課金を増やして成長していけるかもしれない。

Spotifyは自社ブログでBetty Labsを買収する目的について「スポーツ、音楽、カルチャーのさまざまなプログラムや、クリエイターがリアルタイムでオーディエンスとつながることのできる多くのインタラクティブ機能」などが今後登場し「これまで以上に幅広いクリエイターとファンに向けてLocker Roomのライブオーディオエクスペリエンスが進化し広がります」と堂々と書いている。

ラジオとClubhouseを融合させたようなものになるのだろうか。TechCrunchはここ数週間でClubhouseや、Clubhouseに似ているTwitterのSpacesについて掲載したが、これと同様に今後わかり次第取り上げていく。

関連記事:Twitterの音声ソーシャルネットワーク機能「Spaces」がClubhouseより先にAndroidで利用可能に

Clubhouseは現在のオーディオブームを盛り上げて、有力な支援者と多くの初期ファンを獲得した。しかしAppAnnieのデータによると最近の数週間ではオーディエンス数の減少が見られ、おそらくSpotifyなどのオーディオ関連企業が参入してClubhouseを脅かす余地はあるだろう。

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Spotifyにはオーディオの新しいカテゴリーに参入して成功してきた歴史がある。3月の初めにTechCrunchで報じたとおり、eMarketerのデータによると「2021年にSpotifyでポッドキャストを聴く米国のリスナーは1カ月2820万人以上、Appleのポッドキャストリスナーは2800万人となり、SpotifyがAppleを初めて上回ると予測されている」。

費用がかかっていることは確かだが、Spotifyはオーディオのあらゆるカテゴリーでトップに立ちたいようだ。Clubhouseの領域に進出しようとしているSpotifyの動きは、この分野のスタートアップにとって心配の種に違いない。

Spotifyはすべてのプラットフォームに対応し巨大なインストールベースを持っているので、展開していく上での優位性がある。この優位性を活かしてオーディオの世界で新しい分野を獲得しようとする取り組みがどうなるかは2021年中にわかるだろう。それまでは、iOSデバイスを持っていれば引き続きClubhouseで楽しめる。

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タグ:Spotify買収Clubhouse音声ソーシャルネットワーク

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Kaori Koyama)

Spotifyがテスクトップ用アプリとウェブ版プレイヤーをアップデート

Spotifyは米国時間3月25日、デスクトップ向けのストリーミングサービスを刷新すると発表した。MacおよびWindows用アプリの新バージョンを配信するとともに、ウェブ版プレイヤーをアップデートした。全世界のユーザーに提供される今回の変更では、ナビゲーションの改善に重点が置かれ、プレイリスト、検索、ラジオ、キュー、ライブラリなどの新しいコントロールや機能にアクセスできるようになっている。

今回の刷新により、Spotifyアプリは全体的に、従来のバージョンに比べて、より合理的で整頓されたルック&フィールになった。

画像クレジット:Spotify

特筆すべき変更点は、これまで画面の左上にあった奇妙な検索バーが廃止され、左側にあるすっきりしたナビゲーションバーの「Home」と「Your Library」の間に移動したことだ。

また、この新しいナビゲーションバーでは、これまで「Your Library」下にあった「Made For You(メイド・フォー・ユー)」「Recently Played(最近再生した曲)」「Albums(アルバム)」「Artists(アーティスト)」「Podcasts(ポッドキャスト)」という各項目がなくなった。代わりに新バージョンでこれらを選択するには「Your Library」をクリックして表示させる必要がある。

「Your Library」ページでは、ページ上部に4つのカテゴリーが表示される。まず「Playlists」には「Liked Songs」「Discover Weekly」「Daily Mixes」「Release Radar」などの項目がある。「Playlists」の隣には「Podcast」(今回のアップデートで2番めの位置にランクアップした!)「Artists」「Albums」が並ぶ。

画像クレジット:Spotify

「Your Library」の新しいドロップダウンメニューでは、各ライブラリを「Most Relevant(最も関連性の高い順)」「Recently Played(最近再生した順)」「Recently Added(最近追加した順)」「Alphabetical (アルファベット順)」、さらには設定可能な「Custom Order(カスタム順)」など、さまざまな方法でソートすることができる。

一方、プレイリストを作るのが好きな人には、今回のアップデートでいくつかの新機能が追加されている。

新しいプレイリストの作成画面(Create Playlist)では、説明文を書き込んだり、カバー画像をアップロードしたり、既存のプレイリストに曲をドラッグ&ドロップで追加できるようになった。上部に埋め込まれた新しい検索バーを使って、新しい曲やポッドキャストのエピソードを探し、プレイリストに追加することもできる。これによって楽曲を見つけてからプレイリストに登録するまでの手順が減り、面倒なプレイリスト作成作業が大幅にスピードアップするはずだ。

画像クレジット:Spotify

この変更は、特にキュレーターへの対応にSpotifyの関心が高まっていることを物語るものだ。このことは、同社共同創業者でCEOのDaniel Ek(ダニエル・エク)氏が最近、Clubhouse(クラブハウス)のPressClub(プレスクラブ)ショーに出演した際に言及していた。

エク氏は、サービスのコンテンツライブラリが増えるとキュレーターが必要になるため「キュレーターシップに期待している」と説明していた。

「Spotifyのプレイリスターはすばらしいと思いますが、そのプレイリスターとリスナーが相互に関わる機能が限られているように思われます。例えば、プレイリスターが、自分の作成したプレイリストを聴いている人について理解したり、他の人が体験できるコンテンツを見つけるのを手助けすることで間接的にクリエイトする、いわばセカンド・クリエイターを育てるような機能です」と、エク氏は語っていた。

この課題に対処するため、Spotifyはユーザーが(ソーシャルベースでなくとも、自分自身で)より良いキュレーターになれるようなツールを増やしていくという。

「ロードマップで我々が優先的に注力しているのは、例えば、プレイリストに登録した内容に関連するコンテンツを提案するなど、ユーザー自身がより良いキュレーターになれるようにすることです」と、同氏は続けた。

今回のプレイリスト作成ツールの更新は、Spotifyがこの分野でより大きな目標を達成するための然るべき第一歩と言えるだろう。

画像クレジット:Spotify

その他の変更点としては、リスナーのプロフィールページが刷新され、トップアーティストとトップトラックの両方が表示されるようになったこと、3つのドット(…)メニューから曲やアーティストのラジオセッションを開始できるようになったこと、デスクトップアプリケーションでキューの編集や「最近再生した曲」の表示が可能になったことなどが挙げられる。

プレミアムの有料会員なら、デスクトップアプリケーションのダウンロードボタンを使って、音楽やポッドキャストをダウンロードし、オフラインで聴くことができる。

Spotifyは、今回の変更を発表したブログ記事の中で、サービスの成長にともなうデスクトップアプリの開発が遅れていたことを認めており、今回のアップデートはそれを正すために行われた。

「Spotifyでは、リスナーのみなさまが常に音楽やポッドキャストを発見し楽しんでいただけるように、できる限り最高の体験を提供する方法を常に模索しています。その中には、ルック、フィール、そして機能が含まれます。私たちは絶えず新しい機能のテスト、開発、発表を続け、新しいデバイスに最適化し、提供するコンテンツを拡大していきます」と、このブログ記事には書かれている。「その過程で、私たちはデスクトップアプリケーションの体験が追いついていないと感じていました。そしてそれが変わる時が来たのです」。

アップデートされたMac用とWindows用のアプリ、そしてウェブプレイヤーは、これから順次展開されていく。このアプリの刷新とは別に、Spotifyは同日、新曲のプロモーション用ツール「Marquee(マーキー)」の利用範囲を拡大することも発表した。この機能は「Spotify for Artists」の新しいキャンペーン管理ツールを通じて、米国ではすべてのチームが利用できるようになる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Spotify音楽ストリーミングポッドキャスト

画像クレジット:Spotify

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

2021年にSpotifyのポッドキャストリスナー数がアップルを上回るとの予測

Spotifyはポッドキャスティングに多額の資金を投入し、投資家たちは有料サブスクリプション利用者が増え収益が改善してその資金投入に見合う結果が出ることを待っている。しかし結果を出す前に、Spotifyは同社のアプリでポッドキャストを聴く人をもっと増やさなくてはならない。その面で同社には勢いがある。新しい市場予測によると、2021年にSpotifyでポッドキャストを聴く米国のリスナーは1カ月2820万人以上、Appleのポッドキャストリスナーは2800万人となり、SpotifyがAppleを初めて上回ると予測されている。

eMarketerのアナリストは、2021年にSpotifyのポッドキャストリスナーが41.3%増え、その結果逆転が起きると見込んでいる。

さらにその後の2年間でSpotifyはAppleとの差を広げ、2022年までにSpotifyの米国ポッドキャストリスナー数が月間3310万人に対しAppleは2850万人、2023年までにSpotifyが3750万人でAppleはほぼ横ばいの2880万人と予測されている。

画像クレジット:eMarketer

eMarketerは、同社が2018年にポッドキャスト市場の調査を始めて以来Appleのリスナーのシェアは減少していると指摘する。2018年のシェアは34%だったが、2021年には23.8%に下がる見込みだ。

全体としては、米国で毎月ポッドキャストを聴く人は2021年に1億1780万人となり、対前年比で10.1%増えると予想される。ポッドキャストリスナーは毎月デジタルオーディオを聴く人の53.9%となり、初めて50%を超えるだろうとeMarketerは述べている。この成長はSpotifyにとってはメリットがあり、Appleにとっては痛手となりそうだ。

SpotifyやAmazon、Pandoraなどのストリーミングミュージックサービスが音楽とポッドキャストを組み合わせてエクスペリエンスを統合しているのに対し、Appleはポッドキャストを専用アプリとして分けている。このため、ストリーミングで音楽を聴いている、あるいは聴くつもりだったがやはりポッドキャストを聴こうとか、逆にポッドキャストから音楽へというクロスオーバーが起きにくい。Apple以外のアプリでは音楽とそれ以外のオーディオとの切り替えが簡単だ。Pandora Stories、SpotifyのShows with Musicメディアをミックスしたプレイリストのように、音楽とポッドキャストを組み合わせる聴き方もある。

eMarketer予測アナリストのPeter Vahle(ピーター・ヴァーレ)氏は「ポッドキャストと音楽を1カ所にまとめることで、Spotifyは短期間でデジタルオーディオのすべてが揃う便利なワンストップショップになりました。Appleは長くポッドキャストのデファクトの配信場所でしたが、近年ではポッドキャストのコンテンツとテクノロジーに関してSpotifyの投資とイノベーションのペースについていっていません。Spotifyは独自のホスティング、制作、収益化ツールに投資し、ポッドキャストのクリエイターと広告主を育てています」と述べている。

Appleは現在もポッドキャストに関して実験をしているようだ。最近ではエディターによるキュレーションを増やして質の高いポッドキャストに目を向け始めている。Apple TV+の「For All Mankind(フォー・オール・マンカインド)」に関連するポッドキャスト音楽を取り上げるポッドキャストのようなオリジナルのプログラムもいくつかリリースした。しかしAppleはポッドキャストに関する市場の勢いはほとんど無視しているようで、代わりにストリーミングTVや映画、あるいはサブスクリプションベースのフィットネスといった新しい分野への拡大に取り組んでいる。

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Spotifyは買収によってオリジナルや独占のプログラムをすでに手に入れ、次へ進もうとしている。例えば2021年2月下旬には、有料ポッドキャストのサブスクリプション、ブログをポッドキャストにするためのWordPressとの統合、ポッドキャストをインタラクティブにするツールなど今後登場するプロダクトや機能を多数発表した。インタラクティブ機能は、Clubhouseなどソーシャルオーディオアプリが関心を集めていることへの対策だ。

Spotifyは新たにポッドキャスト関連の広告ビジネスにも投資し、オーディオ広告マーケットプレイスのSpotify Audience Networkを始める計画だ。

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画像クレジット:eMarketer

eMarketerの予測からすると、Spotify Audience Networkは良いタイミングでの開始になると思われる。eMarketerは、ポッドキャスト広告は2021年に初めて10億ドル(約1073億円)を超えて前年比41%増の12億8000万ドル(約1373億4000万円)に達すると予測している。この数字は今後も増え続け、2021年にはデジタルオーディオ広告全体のうち24%をポッドキャストが占め、2024年には29%になると見られる。

Spotifyがポッドキャストリスナーを実際にどの程度有料サブスクリプションに転換できるか、あるいは広告による収益化がうまくいくかどうかは、もちろんこれから見ていかなくてはならない。ウォール・ストリートジャーナルが2020年第4四半期の収支報告に関する記事で最近指摘したように、何といっても現在のSpotifyは損失を出しているのだ。これは、同社が当面は利益を出すよりも、サブスクリプション利用者の増加とポッドキャスティングに対する投資を引き続き優先していることによる。そして同社の独占モデルには問題があるかもしれないと示す兆しがいくつかある。例えば2020年には同社にとって初の大物ポッドキャストスターであるラッパーのJoe Budden(ジョー・バドゥン)氏との契約を更新できなかった

一方のAppleも独自のポッドキャストサブスクリプションサービスを模索しているようだ。クラウドストレージ、ストリーミングTV、ゲームなどのサービスとバンドルした価値の高いサブスクリプションを検討していると見られる。Amazonはポッドキャストへの投資としてポッドキャストネットワークのWonderyを買収した。これらの要素が今後数年間の動向に影響して、今回発表された成長予測やSpotifyの今後のポッドキャストリスナー数の増加を鈍化させるかもしれない。

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タグ:SpotifyAppleポッドキャスト

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

Spotifyが要望の多かった高品質サブスクプラン「Spotify HiFi」を提供へ

Spotify(スポティファイ)は米国時間2月22日、新コンテンツの契約やクリエイター向けの機能といったものと合わせてSpotify HiFiというハイエンドなサブスクサービスを提供する計画を発表した。同社は2021年後半にいくつかのマーケットでSpotify Premium購読者向けに「Spotify HiFi」の提供を開始、このサービスでは「CD品質、オーディオフォーマット圧縮なし」で音楽を聴くことができると述べた。

このニュースはSpotifyのオンラインイベント「Stream On」で発表された。

高品質の音楽ストリーミングは常にユーザーが最も要望していた機能の1つだったとSpotifyは述べ、ライブストリーミングイベントでSpotifyに代わってBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)氏が高品質オーディオのパワーを宣伝した。

画像クレジット:Spotify

Spotifyはまた、HiFiサービスはSpotify Connectが利用可能なスピーカーを含むデバイスでも利用できると説明。そしてSpotify Connectを介してSpotify HiFiをより多くのファンが利用できるようにするために世界最大のスピーカーメーカー数社と協業していることも明らかにした。

しかしこのSpotifyのニュースには、料金やサービス開始日、どのマーケットで展開されるのかなど、ユーザーが本当に知りたい情報が不足している。明らかにサブスクがPremiumサービス料金を上回ることは理解しているが、正確な料金はマーケットによって異なるだろう。Premiumの「アドオン」として展開されるかもしれない。

Spotifyは既存のアーティストプログラムもアップデートした。初めてプレイリストに7万6000人ものアーティストを加え、編集とマーケティングをサポートするRadarプログラムを通じて新進気鋭の175人のアーティストを特集した。また、いかにアーティストがEnhanced Albums、Stories機能、より多くのアーティストに間もなく提供されるClipsといった新しいツールを使っているかも特集した。加えて、曲をともなうルーピングビジュアルを全Spotifyアーティストが利用できるようになっている、とも話した。

同社は、今後数日で新たなマーケットに進出して世界の10億人超にリーチできるようになると話し、グローバルで同サービスへのアクセスを拡大する計画だとした。10億人超というとすでにインターネットを使用している人口のおおよそ半分だ。アジア、アフリカ、カリブ、欧州、中南米など新たに世界85のマーケットに進出すると話す。

ポッドキャスト事業に関しては、同社は新しい朝の番組「The Get Up」、Russo Brothersのエンターテインメント会社AGBOとの複数年にわたる新コンテンツ契約、台本なしポッドキャストのためのAva DuVernayとの契約、Higher Groundとの提携によるムスリム教徒の声をピックアップする新ポッドキャスト「Tell Them I Am」に言及した。また、Warner Bros.とDCがテキストのある物語ポッドキャストを展開するとも述べた。

R&Dに関しては、新機能、そしてアルゴリズムや既存のテクノロジーを改良することでポッドキャストのレコメンデーションとディスカバリーを改善する計画を明らかにした。

とある機能では、実際の番組やエピソードの名称を調べなくてもカテゴリーでポッドキャストを特定できる。たとえばユーザーは検索バーに「クッキング」と入力すると、マッチするポッドキャストが表示される。この機能は現在米国でテスト中で、2021年他のマーケットでも展開される予定だ。

ポッドキャスト制作アプリAnchorに関しては、テキストをオーディオに変えたり、ビデオをポッドキャストに加えたり、またリアルタイムのファンとのコミュニケーションを番組に加えるために投票やQ&Aなど新しいインターラクティブな機能にアクセスできるようにするためにWordPressと提携していると話した。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Spotifyが新たに85の市場へ拡大、全世界178カ国・地域で利用可能に

Spotify(スポティファイ)は今後数日の間に、85の新しい市場でサービスを開始し、36の新しい言語をプラットフォーム上に展開する予定だ。このニュースは、米国時間2月22日に開催された同社のオンラインイベント「Stream On」で発表された。

新たに拡大する市場はアフリカ、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、カリブ海地域の国々が含まれ、これらの市場には合計すると10億人以上の人々が住む。今回の発表でSpotifyは「かつてはローカルに留まっていたサウンドやストーリーが、約180もの市場におよぶ世界中のファンに届けられることになります」と述べている。これはクリエイター、リスナー、コンテンツをつなぐ、真のボーダレス・オーディオエコシステムの構築に向けた同社の継続的な取り組みの一環であり、同社のこれまでの市場拡大で最も広範なものとなる。

Spotifyによると、各市場では現地のクリエイターやパートナーと緊密に連携し、言語翻訳の拡大や決済フォーマットの適応など、それぞれの市場の独自性や需要に合わせてカスタマイズされた体験を提供するという。また、Spotifyの市場拡大により、アフロビーツ、アマピアノ、K-POP、レゲエトンなど、世界的な音楽シーンで存在感が増している新たなジャンルの発見が加速する可能性も高まる。

「これらの各市場に存在する豊かな音楽文化が、Spotifyのグローバルなオーディエンスに届くようになります。このような未開拓の音楽エネルギーと我々の革新的なクリエイターツールへのアクセスは、アーティストを新たな高みに引き上げ、情熱を職業に変える力を与えるでしょう」と、同社の声明文には書かれている。

現地のクリエイターやパートナーと協力して、Spotifyが各地域でどのように音楽サービスを展開していくのかというと、全体的なアプローチは次のようなものだ。

まず、無料プランとPremiumプランはすべての市場で利用できるようになる。個人向けのStandard、家族向けのFamily、一緒に暮らすカップル向けのDuo、学生向けのStudentといったプランも一部の市場で提供される予定だが、Spotifyは地域名を明らかにしていない。これらの新しい市場では、Spotifyはすべてのグローバル向けカタログを提供する。さらに同社は、現地の権利者やパートナーと継続的に協力して、カタログを拡大し、より多くの現地アーティストの作品をグローバルに提供できるようにしていくと付け加えている。

これらの新たな市場の大部分では、世界的なストリーミング大手のポッドキャストも、全カタログが提供される予定だ。それ以外の地域では、Spotify独自のクリエイタープラットフォーム「Anchor」を使ったポッドキャストに加え、現地のパートナーと緊密に協力して、より多くのポッドキャストをカタログから紹介していく。

他には、ホーム画面でパーソナライズできる機能や、ブラウズおよび検索する機能も提供される。これらの新市場でサービスが開始されると、Spotifyはまず、モバイルとデスクトップのウェブプレーヤーで利用できるようになるが、今後数カ月以内には、テレビやスピーカー、ウェアラブル機器、クルマの中など、より多くのプラットフォームにSpotifyを導入できるように、現地のパートナーと協力していくという。

「当社のプラットフォームがより多くのリスナーを獲得すれば、アーティストやポッドキャスターが自分の作品で生計を立てるチャンスが増えます。そしてクリエイターが増えるということは、ユーザーが発見できるオーディオコンテンツが増えるということです」と、Spotifyの最高フリーミアム事業責任者であるAlex Norström(アレックス・ノーシュトレム)氏は述べている。「これにより、クリエイターとリスナーの間に不可欠なフライホイールが生まれ、それが私たちのビジネスの基盤となり、最終的にはオーディオ業界を推し進めることになります」。

Spotifyは現在、93の市場で3億4000万人以上のアクティブユーザーを獲得しており、1億5000万人以上の加入者が広告なしのPremiumプランを利用している。この巨大ストリーミング企業は、今回の拡大により、市場の数を全世界で178にまで増加させることになる。新たに展開を開始する市場はアフリカでは、アンゴラ、ベナン、ボツワナ、ブルキナファソ、ブルンジ、カーボベルデ、カメルーン、チャド、コモロ、コートジボワール、ジブチ、赤道ギニア、エスワティニ、ガボン、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウが含まれています。ケニア、レソト、リベリア、マダガスカル、マラウイ、マリ、モーリタニア、モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、ニジェール、ナイジェリア、パプアニューギニア、ルワンダ、サントメ・プリンシペ、セネガル、セイシェル、シエラレオネ、タンザニア、トーゴ、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエといった国々だ。

アジア地域にはアルメニア、アゼルバイジャン、バングラデシュ、ブータン、ブルネイ・ダルサラーム、カンボジア、キルギス、ラオス人民民主共和国、マカオ、モルディブ、モンゴル、ネパール、パキスタン、スリランカ、東ティモール、ウズベキスタンが含まれる。

ヨーロッパではグルジアとサンマリノ。カリブ海とラテンアメリカの市場には、アンティグア・バーブーダ、バハマ、バルバドス、ベリーズ、キュラソー、ドミニカ、グレナダ、ガイアナ、ハイチ、ジャマイカ、セントクリストファー・ネイビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、スリナム、トリニダード・トバゴが加わる。

そしてオセアニア地域はフィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツだ。

この市場拡大のニュース以外にも、Spotifyはこの日、ロスレスオーディオ形式の高音質配信サービス「Spotify HiFi」を一部のグローバル市場で開始することを発表。また、新ツール「Discovery Mode」のベータ版も公開した。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Spotifyが購読者に新作をアピールできるアーティスト向けツール「Marquee」のベータ公開を発表

Spotify(スポティファイ)は米国時間2月22日のライブイベントの一環として、Marqueeの拡張機能となるDiscovery Modeと呼ばれるツールのベータテストの開始や、ループビジュアル機能であるCanvasのすべてのアーティストへの開放、Spotify for Artistsプラットフォームを25カ国語に拡大する計画といった、一連の新しいクリエイターツールやリソースを発表した。

2020年にローンチされたMarqueeは、アーティストとそのチームがフルスクリーンのスポンサー付きレコメンデーションを通じて、無料と有料の両方の購読者に新作を宣伝できるツールだ。Spotifyによると、Marqueeのポップアップを見たユーザーは音楽を保存する率が2倍になるという。

現在、Marqueeはアーティストのセルフサービスでの購入体験として利用可能で、チームはアーティストプロフィールを更新するのと同じくらい簡単にいつでもキャンペーンを予約できる。

このセルフサービス機能は米国で開始され、2021年夏には北米以外の英国、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドに拡大される予定だ。

また、Spotifyはオーディエンス開発ツールであるDiscovery Modeのベータ版も公開している。パイロットテストではレーベルは拡大された楽曲の発見によってより高いロイヤリティの支払いを達成することができたと、同社は主張している。

また、この機能を開始するための先行予算もゼロで済むという。

最後に、音楽の再生中にループするビジュアルを表示するアートワーク機能Canvasも、すべてのアーティストが利用できるようになると発表した。

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Spotifyの世界市場が85の新しい市場に拡大したことにともない、同サービスのアーティスト向けダッシュボードも25の言語へと拡張される。

「アーティストが自分自身を表現するための新しい方法を提供したり、発見される機会を増やしたり、プレイリストに向けて音楽を売り込む能力を与えたりしたりと、私たちはアーティストのフィードバックに基づいて試行錯誤を続け、新しいファンにアーティストを売り込む新しい方法を構築し続けています」と、Spotifyのマーケットプレイス責任者のCharlie Hellman(チャーリー・ヘルマン)氏は今回の拡大について語った。「あらゆる規模のアーティストやレーベルが私たちのツールをより多く採用するようになってきています」と、彼は付け加えている。

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(文:Sarah Perez、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Spotifyがオーディオ広告マーケットプレイス「Spotify Audience Network」を開始

Spotify(スポティファイ)は米国時間2月22日、ポッドキャストへの投資を収益化する計画について詳細を明かした。同社は、新しいオーディオ広告マーケットプレイス「Spotify Audience Network」を立ち上げると発表し、これにより広告主は、同社独自のプログラムであるSpotify OriginalsとExclusives、さらにはMegaphoneや作成ツールAnchorによるポッドキャストや、広告付きの音楽などのリスナーにリーチできるようになるという。また同社は、セルフサービス広告プラットフォームであるSpotify Ad Studioでもポッドキャストを提供する計画で、米国ではSpotify OriginalsとExclusivesを皮切りに、ベータテスト段階での提供を開始すると述べている。

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これは将来的にはサードパーティ制作のポッドキャストにも拡大していく予定だと、同社は22日のオンラインライブイベント「Stream On」の中で述べた。

現在、Spotify Ad Studioは2017年のサービス開始後、22の市場で広告主に利用されており、音声広告と動画広告の両方でSpotifyの音楽リスナーにリーチしている。Spotifyは、同サービスが最も急成長している購買チャネルであると述べたが、その成長を詳細に示す具体的な数字は提供しなかった。

画像クレジット:Spotify

しかし、広告サイドの大きなニュースは、新しいオーディオ広告マーケットプレイス「Spotify Audience Network」の立ち上げだった。将来の見通しに関する他のいくつかの発表と同様、Spotifyは、実際にSpotify Audience Networkがどのように機能するかの詳細については触れたがらなかった。同社は「サービスを開発する初期段階」にあるということ、そして後日、より多くの情報を共有できるだろうとだけ述べた。

しかし、特に広告で収入を得ようとしているポッドキャスターや、Spotifyの内外から、同社の数億におよぶオーディエンスにリーチしたいと考えている広告主にとっては、同社はこのマーケットプレイスを「ゲームチェンジャー」だと位置づけている。

このニュースは、2021年の初めにThe Vergeが報じた調査レポートに続くもので、それによれば、同社は小規模なポッドキャスターのためにスポンサーを見つけると約束したにもかかわらず、実はSpotifyが現在までのAnchorの広告のメインスポンサーであることがわかったという。Spotifyはそうした約束を果たすために広告マーケットプレイスとツールを構築する過程で、広告主へのアウトリーチを優先していなかったように見受けられる。

画像クレジット:Spotify

またSpotifyは、最近Megaphoneを買収したことで、2020年初頭に開始したストリーミング広告挿入(Streaming Ad Insertion、SAI)技術を、自社のオーディオ番組OriginalsやExclusives以外のパブリッシャーにも拡大していくことが可能になると明らかにした。現在、SAIは米国、カナダ、ドイツ、英国で利用可能だが、2021年には他の新しい市場にも拡大する予定だという。

SAIはデビュー以来、オーディエンスベースのバイイング、ネイティブ広告プレイスメント、クリエイティブパフォーマンスのレポートなどの新機能を展開している。2021年後半には、Megaphoneのポッドキャストパブリッシャーや「主要な」AnchorのクリエイターがSAIを利用できるようにするとSpotifyは述べている。

しかし、Anchorのクリエイターが収益を伸ばす方法は広告に限られない。

TechCrunchが以前報じていたように、数カ月以内に、Anchorクリエイターが最も熱心なファンに向けて有料のポッドキャストコンテンツをSpotifyで公開できるようにする新機能のベータテストを開始すると、Spotifyは簡単に述べた。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

Spotifyがようやく米国でも歌詞をリアルタイムで表示する機能のテストを開始

Spotify(スポティファイ)は米国時間2月9日朝、Engadgetの報道を受けて、米国市場で歌詞を同期させる新機能のテストを始めたことを認めた。このストリーミング音楽サービスは現在、27もの市場(最近サービスを開始した韓国も含む)で歌詞のライブ配信を行っているが、米国では何年も前から提供されていなかった。代わりにSpotifyはGenius(ジーニアス)と提携し、歌詞と再生中の曲に関するトリビアを合わせて閲覧できる「Behind the Lyrics」機能を提供している。

コメントを求められたSpotifyは、新しい歌詞機能は同日より米国の一部のユーザーを対象とするテストとして提供を始めたと述べた。

「現在、米国内の一部のユーザーを対象に歌詞機能のテストを行っていること認めます」と、同社の広報担当者はTechCrunchに語った。「Spotifyでは、ユーザー体験を向上させるために、定期的にいくつかのテストを行っています。これらのテストの中には、より広範なユーザーエクスペリエンスへの道を開くことになるものもあれば、重要な学習としての役目のみを果たすものもあります」。

同社は計画の詳細を公表することは拒否したが、米国における新しい歌詞機能のパートナーがMusixmatch(ミュージックスマッチ)であることは明らかにした。Musixmatchは、すでにこの機能が導入されている米国以外の市場で歌詞を提供している。

Spotifyが米国で歌詞表示機能を導入するのは、実は今回が初めてではない。もともとSpotifyは、2011年から2016年までの間、Musixmatchと提携していたのだが、その関係を終わらせ、代わりにGeniusと提携を結ぶことになったのだ。歌詞機能の復活を求めるユーザーの継続的な要求にもかかわらず、Spotifyはこの機能を米国で復活させることはなかった。

しかし近年、Spotifyは再びMusixmatchとの関係を復活させた。2020年、Spotifyは東南アジア、インド、ラテンアメリカにわたる世界26の市場でリアルタイム歌詞機能を導入すると発表した。このうち22の市場では、歌詞が提供されるのは初めてのことでタイ、ベトナム、インドネシア、メキシコだけは、他のプロバイダーを経由して、何らかのかたちですでに歌詞がサポートされていた。

米国でSpotifyが歌詞をサポートしていないことは、ストリーミング音楽の競合他社に優位性を与えてきた。たとえばAmazon Music(アマゾンミュージック)は、ユーザーが曲の再生に合わせて歌詞を表示することができ、その機能を音声プラットフォームのAlexa(アレクサ)に結びつけることで、Alexaに歌詞で曲を検索してもらうことが可能だ。一方、2018年のiOS 12で刷新されたApple Music(アップルミュージック)は、単にアーティスト名やアルバム、曲のタイトルだけでなく、歌詞で曲を検索する機能が搭載された。その後、iOS 13では歌詞をライブで同期する機能も追加。Siriに歌詞の一部を伝えれば曲を検索することもできる。

Musixmatchも、米国で行われる新しいテストでSpotifyと提携したことを認めた。

「Musixmatchは、10年間の継続的な投資を行ってきたおかげで、速いペースで成長しています。私たちは今、世界中でオーディオ体験を豊かにし続けるために、より多くのデータを提供することに注力しています」と、MusixmatchのCEOであり創業者であるMax Ciociola(マックス・シオシオラ)氏は、TechCrunchに語った。

今回の歌詞機能はテストに過ぎないため、対象者が限定されており、実際にSpotifyアプリで歌詞を見ることができない人もいるだろう。このテストが拡大される可能性はあるのか、もしあるなら、いつになればさらに多くの人が利用できるようになるのか、ということについて、Spotifyは明言していない。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Spotifyがポッドキャストのサブスクリプションやアラカルト課金のプランを示唆

Spotifyはポッドキャストに対する投資から収益を得る新たな手段を考えていることを再び示した。第4四半期の業績発表でCEOのDaniel Ek(ダニエル・エク)氏は、今後ポッドキャストに広告つききサブスクリプションとアラカルトのオプションのような複数のビジネスモデルが存在することになるとの予測を示唆している。

Spotifyはポッドキャストのプログラム数が220万に増えたことも公表し、ここ数カ月でオーディオフォーマットの需要の増加が見られると述べた。

例を挙げると、Spotifyの月間アクティブユーザーの25%はポッドキャストを聴いており、直前の四半期の22%から増加している。ポッドキャストの消費量も増え、第4四半期の聴取時間は前年同期比で2倍近くになった。

現在、Spotifyプラットフォームでは無料ユーザーも有料ユーザーもポッドキャストを聴くことができ、広告で収益化している。これが同社にとって重要であることには変わりない。同社は最近、ポッドキャストのホスティングと収益化のプラットフォームであるMegaphoneを買収し、ストリーミングに広告を挿入するテクノロジーを他社パブリッシャーに提供すると同時にターゲティング可能なポッドキャストのプログラム数を増やそうとしている。

しかしSpotifyには最近、ポッドキャストを収益化する別の手段を探る動きもある。

たとえば2020年に同社は顧客に対し、ポッドキャスト単体のサブスクリプションに費用を支払うかどうか、支払うとしたらどのようなものにいくら支払うかを尋ねるアンケートを実施した

このとき、アンケートにはコンセプトがいくつか示されていた。

低価格帯のサブスクリプションは、1カ月3ドル(約315円)で広告つきの限定エピソードとボーナスコンテンツを聴けるものだ。これは人気番組の限定コンテンツやその他のボーナスエピソードを提供するStitcher Premiumに似ている。ただしSpotifyが提示しているのは広告つきで、Stitcher Premiumには広告が入らない。

中価格帯はStitcher Premiumにさらに近く、限定番組とボーナスコンテンツがあり広告がないプランが提示されていた。価格もStitcher Premiumと同じく、1カ月5ドル(約525円)となっていた。高価格帯では広告なしのインタビューやエピソードを先行して聴くことができ、1カ月8ドル(約840円)となっていた。

もちろんアンケートはこの種のサブスクリプションに対する消費者の意向を測定するものであり、Spotifyが開発中の新しいプロダクトを示唆するものではない(Spotifyがこのニュースについてコメントを求められたときにこう答えていた)。

しかしSpotifyはポッドキャストに対する相当な投資をどう回収しようと考えているのか、投資家も知りたがっていることは明らかだ。

顧客はポッドキャストに費用を支払うと思うかという質問に対し、業績発表でエク氏は調査対象となるような新しいモデルがいくつかあると思うと答えた。

エク氏は「インターネットでオーディオをどう収益化するか、我々はその長期的な進化の初期段階にいると思います。以前にお話ししましたが、万能な方法はないと考えています。我々にはあらゆるビジネスモデルがあり、それがすべてのメディア企業の未来です。広告つきサブスクリプションとアラカルトのようなものが同じ空間にあり、未来のどのメディア企業もそうなるでしょう」と述べた。

さらに同氏は「Spotifyはそのような戦略とパターンに従うと期待してください」とはっきり補足した。

この答えはSpotifyが最近のアンケートにあったアイデアを検討していることを示唆すると考えられる。消費者は無料ですべてのポッドキャストを聴取したり音楽のサブスクリプションにポッドキャストがバンドルされたりするのではなく、ポッドキャストに費用を支払うようになるということだ。

これは「ポッドキャスト」という言葉の意味を変えることになるかもしれない。現時点ではこの言葉はRSSフィードを利用して無料で配信されている連続もののオーディオプログラムを指している。

もしSpotifyがサブスクリプション以外に費用を支払わないと利用できないポッドキャストやアラカルト方式の課金を選択すれば、それはもはや本当の意味でのポッドキャストではなく、新しいタイプのプレミアムオーディオプログラムだ。

Spotifyが数年にわたって巨額の投資をしてきたことを考えると、同社にとってポッドキャストは十分に成長の余地がある分野だ。SpotifyはこれまでにGimlet MediaやThe Ringer、Parcastなどのコンテンツ制作企業を買収し、Joe Rogan(ジョー・ローガン)氏、Addison Rae(アディソン・レイ)氏、Kim Kardashian West(キム・カーダシアン・ウェスト)氏、DC Comics、Michelle Obama(ミシェル・オバマ)氏、ヘンリー王子とメーガン妃などのトップクリエイターとも契約してきた。Anchorのようなポッドキャスト用ツール、広告テクノロジー、ホスティングサービスも買収した。

広告に加えてサブスクリプションや直接の課金という手段をSpotifyが選ぶとすれば、このように同時に複数の手段で収益化できるのがポッドキャストのアドバンテージとなる。そしてもちろん、音楽ストリーミングのようなライセンス料やロイヤルティも発生しない。

地域の事情や、ポッドキャストコンテンツの聴取と支払いに関する世界中の顧客の好みに合わせ、必要に応じてポッドキャストの課金モデルを調整することもできるだろう。

エク氏は、いずれも近いうちに開始するものではないことも明らかにした。

どのようなモデルになるかについて同氏は「どう実現するかを具体的に検討するのはまだ早いと考えています。しかしその時がくれば、収益構造は音楽とは明らかに異なるものになるでしょう」と述べた。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

Spotifyが映画監督エイヴァ・デュヴァーネイとの独占ポッドキャスト契約を発表

Spotifyは、ポッドキャストの取り組みにビッグネームを起用し続けている。最新の参加者は、映画監督のAva DuVernay(エイヴァ・デュヴァーネイ)と彼女のアート集団のARRAYだ。

デュヴァーネイ監督は「Selma(グローリー / 明日への行進)」や「A Wrinkle in Time(五次元世界のぼうけん)」などの劇場公開作品を監督してきたが、Netflix向けに「13th(13th -憲法修正第13条-)」や「When They See Us」も制作しており、彼女は自分の物語をより身近に伝える方法としてストリーミングを強く提唱してきた。

Spotifyによると、エイヴァ(・デュヴァーネイ)氏はこの複数年にわたるパートナーシップを通じて、ストリーミングオーディオプラットフォーム向けに脚本つきおよび脚本なしの番組を独占的に制作する予定だという。これらの作品については、Spotifyが2019年に買収したポッドキャストネットワークのGimletと連携する。

デュヴァーネイ監督は声明の中で「声と音の持つ確かな力を認識し、ARRAYのストーリーテリングをポッドキャストの領域にまで広げることに興奮しています」と述べている。「Gimletのコンテンツ責任者であるLydia Polgreen(リディア・ポルグリーン)氏と彼女の情熱的なチームと一緒に仕事をする機会を得たことで、私たちのオーディオ・ナラティブのホームとしてSpotifyに惹きつけられ、新しい創造の旅を始めることができ、これ以上の喜びはありません」。

SpotifyはGimletの買収に加えBarack Obama & Michelle Obama(バラク・オバマとミシェル・オバマ)Joe Rogan(ジョー・ローガン)Prince Harry & Meghan Markle(ハリー王子とメーガン・マークル)とPodcast契約を結んだ。

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

音楽は2020年を良いものにしてくれたが、私たちはミュージシャンを幸せにしていない

音楽が命綱だった年に、恩返しをしよう。

「Are you okay?」(大丈夫ですか?)

その問いかけに、私は良い答えを持ち合わせていない。私がアルゴリズムの問いかけに対して答えようとしていること(Puddingサイト)は承知しているし、違うバンドに入れ替えて誰に対しても同じ質問をしていることも知っているが、その質問の重みが和らぐことはない。私が?私たちが?誰もが?

実際にここで尋ねられているのは、Waxahatchee(ワクサハッチー)のことだ。今年はワクサハッチーをたくさん聴いた。ワクサハッチーは良い。ワクサハッチープロジェクトのアルバム「Saint Cloud」(セイント・クラウドは、今年私が一番気に入ったアルバムの1つだ。私にとって、(ワクサハッチーの)Katie Crutchfield(ケイティ・クラッチフィールド)氏の音楽は、エリオット・スミス氏やレナード・コーエン氏の音楽の中には見出すことができないものだ。まあこの記事で私のSpotify(スポティファイ)ソーシャルフィード上の好みのバンドを紹介しようというわけではない。

今週のSpotifyの熱いAIの動きは、音楽ファンにとって面白いものとなっている。それはまた、より大きな真実をあぶり出しているかもしれない。Spotifyが毎年恒例の「今年のまとめ」を繰り出してくる中で、少なくとも私たちは今年の過ごし方に思いを馳せたはずだ。

この史上最悪の年にふさわしいサントラは何だろう?世界が燃えているときに、私たちは何を聞くのか?2009年に、CNNの元インターンが偶然アーカイブのビデオテープを見つけた。そのタイトルは「ターナー・ドゥームズデイ・ビデオ」(ターナー最後の審判ビデオ)というものだ。(JALOPNIKサイト)この1分間のビデオには、沈没したタイタニック号で最後に演奏されとされる「Nearer My God To Thee」(主よ御許に近づかん)を演奏する楽団が登場する。そのビデオには「世界の終わりが明らかになるまで公開しないこと」と明記されていた。

土壇場でのサプライズがない限り、2020年は完全な黙示録からはほど遠い状況で終えることができそうだ(おそらく)。しかし私にとって、Spotifyの年間まとめはこの大変な一年を証言するものだ。それはちょうどパンデミックがニューヨークのクイーンのわたしの家を襲撃して、3月の後半から4月にかけて私のApple Watchのエクササイズ記録がゼロとなり、自分自身の健康問題に対処していたことと同じだ。

これまでの12カ月の私の聴き方の習慣がまとめ上げられた内容が、音楽との付き合いも不可能になるのではと思わせた長い時間の証言として、機械から流れ出てくる。歌詞を聞き咀嚼することに疲れを感じるようになったとき、アンビエント音楽とポストロックが再び私を捉えていた。そして、いくつかのお気に入りのトラックを、取り憑かれたように繰り返し聴き続けたことがあるのは、私だけではないと確信している。

こうやって振り返ることは、多くの人にとって過去最悪になったこの一年の中で、聴いた音楽が果たした役割を思い出すのに役立つ。2020年は音楽が私の命を救ってくれたと言ったら言い過ぎだが、あまりにも多かった感情面への打撃の一部を確実に和らげてくれた。

神経学者だった故オリバー・サックス氏は「音楽は、憂鬱から救い出したり、涙を流させたりすることができます。それは治療であり、強壮剤であり、耳のためのオレンジジュースなのです」と書いている。「しかし、私が担当した神経症患者の多くにとって、音楽とはそれ以上のものなのです。それは、たとえ他の治療が効果がないときにさえ、動きや、発話や、生活そのものに影響を及ぼすことができるのです。彼らにとって音楽は贅沢品ではなく必需品なのです」。

ルイ・アームストロング氏の言い方はさらに簡潔だ「音楽は人生そのものさ」。

残酷な皮肉は、音楽が多くの人にとって重要な意味を持つこの年に、ほとんどのミュージシャンが生活費を稼ぐのに苦労しているということだ。もちろん今年苦労しているのは音楽の分野だけではないが、ストリーミング収入がミュージシャンのレコード売上に比べてわずかなものに過ぎず、大物を除けばツアーが最も重要な収入源となっている時代には、彼らの苦境は顕著だ。この10ヶ月間、それらはすべて干上がっていた。

「パンデミックはライブ・ミュージック業界を完全に崩壊させました」とWilco(ウィルコ)のフロントマンであるJeff Tweedy(ジェフ・トゥイーディ)氏は最近のインタビューで述べている(ウォール・ストリート・ジャーナル記事)。「この1年はまったく収入がない状態が続いています」。

5月に行われた音楽家ユニオンの調査(NME記事)によれば、ミュージシャンの19%が新型コロナウィルスの影響でキャリアを諦めることになるかもしれないと答えている。それから7カ月が経った今、その数字はおそらく楽観的だったのではないかと考えられている。

トゥイーディ氏は付け加える「演奏できる場所はみつかるでしょう。しかし見える風景は全く異なるものになる筈です。多くの小さなビジネスやレストランと同じように、気軽に寛げる音楽会場の多くがなくなるのではないかと想像しています」。

関連記事:音楽配信のBandcampが手数料免除の「Bandcamp Friday」を2021年5月まで延長

音楽配信のBandcamp(バンドキャンプ)は多くの人にとっての道標となっている。同サービスの、手数料を免除した「Bandcamp Fridays」(バンドキャンプ・フライディズ)は、現時点までに4000万ドル(約41億4000万円)の売上を達成している。同サイトは、少なくとも来年5月までは同機能の提供を継続することを約束している。

今年の苦境は、ストリーミングの印税をめぐる懸念を浮き彫りにすることになった。Spotifyがこの話題の焦点となっているのは当然のことだが、一方で同社はポッドキャスト番組を強化するためにこれまで数億ドル(数百億円)を費やしてきた。7月にCEOのDaniel Ek(ダニエル・エク)氏は「過去に成功していても、将来的にはうまくいかないアーティストもいるかもしれません。3~4年に一度レコーディングを行えば十分という時代ではありませんから」と、彼にとって何の得にもならない発言をした。

関連記事:Justice at Spotify demands better compensation and increased transparency for musicians(未訳記事)

Justice at Spotify(ジャスティス・アット・スポティファイ、Spotifyに公正な収入分配を求める運動)の代表であるDamon Kurkowski(デイモン・クルコウスキー)氏は、10月に以下のように私に語った「業界の特定の一部からの反応は、私たちの予想通り冷たいものでした。要するに『君たちは単なるミュージシャンで商売のことがわかっちゃいない』ということです。それに対して私が言いたいのは『私たちが注意を呼びかけている問題は、まさにミュージシャンがそうした会話から取り残されている』ということなのです。ストリーミングビジネスは私たちの仕事の上に成り立っているのにもかかわらず、支払いと相談が来るのはいつでも最後になっているのです」。

音楽で生き抜くための苦労は、もちろん目新しい話ではない。ジャズの天才セロニアス・モンクには、パノニカ・ドゥ・コーニグズウォーター男爵夫人(Baroness Pannonica de Koenigswarter)というパトロンがいたことは良く知られている。しかし、これまでミュージシャンたちを助けられなかったからといって、この先上手くやれないわけでも、上手くやらなくて良いわけでもない。

私は大丈夫だろうか?まだよくわからないが、音楽を聴くことは役に立ちそうだ。

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画像クレジット:Jon Feingersh Photography Inc / Getty Images

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(翻訳:sako)

Spotifyに好きな楽曲の作詞家や作曲家を表示するハブが追加

ロイヤリティはさておき、作詞家と作曲家などのソングライターは音楽制作の主役として知られていないことがよくある。もちろんCarole King(キャロル・キング)やJimmy Webb(ジミー・ウェブ)のように有名になった人もいるが、大抵の場合、その名前はライナーノートに書かれていないことも少なくない。

Spotifyの新機能は、それを正そうとしている。あるいは、少なくともリスナーが自分のお気に入りの曲の背後にいる人々のカタログを深く掘り下げる方法を提供しようとしている。Songwriter Hubは、業界最大かつ最も多くのソングライターの情報を集めた新しいサービスだ。中にはビッグネームも、そうでない人も含まれる。

Browseタブからアクセス可能なこのハブには、ソングライターのプレイリスト、ポッドキャスト、専用のソングライターページが用意されている。その中にはGregg Wattenberg(グレッグ・ヴァッテンベルク)、Ant Clemons(アント・クレモンズ)、Noonie Bao(ヌーニー・バオ)、Sia(シーア)、Bebe Rexha(ビービー・レクサ)、Irving Berlin(アーヴィング・バーリン)、Ashley Gorley(アシュリー・ゴーリー)、Meghan Trainor(メーガン・トレイナー)、Fraser T Smith(フレイザー・T・スミス)、Missy Elliott(ミッシー・エリオット)、Teddy Geiger(テディ・ガイガー)、Ben Billions(ベン・ビリオンズ)、Justin Tranter(ジャスティン・トランター)などが含まれる。

「作曲家のためのハブを持つことは非常に重要です。なぜなら、人々はサウンドトラックを作るのを手伝っているのが誰なのか知る必要があるからです」と、Ariana Grande(アリアナ・グランデ)やCardi B(カーディ・B)、Meek Mill(ミーク・ミル)のソングライターであるNija(ニヤ)氏は、ニュースに関連したプレスリリースで述べている。「ソングライターはアーティストやプロデューサーと同様に、その貢献を賞賛されるに値します。多くの場合、ソングライターは注目されにくいので、誰がお気に入りの曲を書いているかを見ることができる場所があるのはうれしいです」。

この機能は米国時間12月17日から利用できる。

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タグ:Spotify

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

Spotifyが英ヘンリー王子とメーガン妃との複数年のポッドキャスト契約を締結

ポッドキャストの独占配信で競合他社に打ち勝つ最新の試みとしてSpotify(スポティファイ)は米国時間12月15日朝、サセックス公爵のPrince Harry(ヘンリー王子)とサセックス公爵夫人のMeghan Markel(メーガン・マークル)妃が設立したArchewell Audioと複数年契約を結んだと発表した。金銭的な詳細は明らかにされていないが、知名度やこれまでの独占契約の費用を考えると、同社がかなりの金額を支払ったのは間違いなさそうだ。

最初のポッドキャストシリーズは2021年のいずれかの時点で配信される予定で、他のすべてのSpotifyポッドキャストと同様、無料で聴くことができる。しかしそれに先立ち、ArchewellとSpotify傘下のGimletは、公爵夫妻が共催するホリデースペシャルをリリースする。想像通り、これは2020年12月中にリリースされる予定だ。そして契約期間中は、彼らは番組の制作とホストの両方を担当する。

以下は、Spotifyに提供された2人の共同声明だ。

ポッドキャスティングの好きなところは、私たちみんなが時間を割いて本当に耳を傾け、気を散らさずにお互いにつながっていることを思い出させるところです。2020年の課題に直面しているいまほど、重要なときはありません。なぜなら、私たちはお互いの話を聞き、お互いの話を聞くことで、どれだけ相互につながっているかを思い出すからです。

Spotifyはここ数年、数億ドル(数百億円)をかけてポッドキャスティングコンテンツのライブラリーを構築してきた。2020年11月、音楽ストリーミングサービスは広告会社のMegaphoneを2億3500万ドル(約243億6000万円)で買収した。他にもGimlet、The Ringer、Parcast、Anchorなどの買収が注目を集めている。同社はまた、物議を醸したホストのJoe Rogan(ジョー・ローガン)氏と1億ドル(約103億7000万円)を超える複数年契約を結んでいる。

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タグ:Spotifyポッドキャスト

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

Spotifyがユーザーパスワードをリセット、バグによる個人アカウント情報流出後に

Spotifyによると、同社のシステムのソフトウェア脆弱性がビジネスパートナーにプライベートアカウント情報を公開したとして、ユーザーパスワードをリセットしたという。

Spotifyはカリフォルニア州司法長官事務所に提出したデータ漏えいに関する通知の中で、「特定のビジネスパートナーのメールアドレス、好みの表示名、パスワード、性別、生年月日が含まれているかもしれません」と述べている。同社はビジネスパートナーの名前を挙げておらず、「この情報を一般公開していない」と付け加えている。

Spotifyによるとこの脆弱性は4月9日までは存在していたが、11月12日まで発見されていなかった。しかし他の多くのデータ漏洩と同様に、Spotifyは脆弱性が何であったのか、ユーザーアカウントのデータがどのようにして流出したのかについては述べていない。

「我々は内部調査を行い、お客様のアカウント情報にアクセスできた可能性のあるすべてのビジネスパートナーに連絡を取り、誤って開示された可能性のある個人情報が削除されたことを確認しました」と、Spotifyは述べている。

Spotifyの広報担当者であるAdam Grossberg(アダム・グロスバーグ)氏は、Spotifyユーザーの「ごく一部の人数」が影響を受けていることを確認したが、具体的な数字は示さなかった。Spotifyのユーザー数は3億2000万人以上で、加入者数は1億4400万人となっている。

同社がユーザーのパスワードをリセットするのは、この数カ月で2度目だ。

2020年11月にセキュリティ研究者は、ハッカーによって運営されていると思われる安全ではないデータベースを発見し、約30万件のユーザーパスワードが盗まれていることを発見した。このデータベースはおそらく、盗まれたパスワードのリストを同じパスワードを使用している別のウェブサイトと照合する、クレデンシャルスタッフィング攻撃のために使用されたと考えられる。

今回流出したデータはSpotify経由のものではなかったが、同社は影響を受けたユーザーアカウントのパスワードをリセットした。

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タグ:Spotifyデータ漏洩

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter)

Spotifyがループ再生されるアートワーク「Canvas」のマーケットプレイスを開設

米国時間11月19日、Spotify2019年に買収したSoundBetterをベースに、アーティスト向けとしてCanvasのマーケットプレイスを開設すると発表した。Canvasはループ再生される短いビジュアルで、2019年に広く導入が開始された。通常のアルバムアートワークの代わりに、もっと注目を集めるビジュアルとしてテクノロジーを活用する試みだ。

2019年10月の記事で指摘したように(未訳記事)、この機能に対する当初の反応はさまざまだったが、Spotifyはユーザーのエンゲージメントに関する新しい数字をいくつか公表した。同社によれば、リスナーに以下の結果が見られるという。

  • 曲を共有する可能性が145%高い
  • ストリーミングを継続する可能性が5%高い
  • 曲を自分のプレイリストに追加する可能性が20%高い
  • そのミュージシャンのプロフィールページにアクセスする可能性が9%高い

マーケットプレイスの開設は、このテクノロジーを広く使ってもらうための施策の一環だ。マーケットプレイスでは、Kanye West(カニエ・ウェスト)からBillie Eillish(ビリー・アイリッシュ)といった人気ミュージシャンのビジュアルを制作してきたトップクラスのデザイナーにアクセスできる。また、世界中のさらに多くのミュージシャンにCanvasを提供していく予定だ。

同社は「CanvasはSpotifyだけのフォーマットなので、できるだけ簡単にミュージシャンがビジュアルデザイナーを見つけて、目を引くビジュアルを制作できるようにしたいと考えています。ミュージシャンはデザイナーを選んだら、曲調とクリエイティブのビジョンを詳しく共有します。するとデザイナーはそれを考慮して、ミュージシャンのニーズに合ううオリジナルのCanvasを作ります」と説明している。

一般にアーティストが報酬を得るのは、トータルで見ればおそらく良いことだ。しかし1曲あたり何百ドル(何万円)もかかるのでは高すぎる。ミュージシャンは、ストリーミングから得る報酬に関して直面している問題のバランスを考えなくてはならないだろう。ミュージシャンの実態やストリーミング数によっては、投資しても元がとれるかもしれない。

この種のコストはこれまではレコードレーベルが負担してきた(レーベルのスタッフに良いデザイナーがいなければ)。しかし最近の音楽業界はそのようにはなっていない。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Spotifyがアーティストやレーベル自身が曲のプロモーションを行える機能を追加

Spotify(スポティファイ)は米国時間11月3日、同社のプラットフォーム上でどのように音楽が見つけられるかと言う点において、アーティスト自身の意見がより尊重されるようにするための新サービスのテストを開始すると発表した。アーティストやレーベル自らが優先的に売り出したい曲を特定し、その後Spotifyがその曲がパーソナライゼーションアルゴリズムによって浮上するようにする信号を加えるという仕組みである。

この新サービスは有料プロモーションではなく、アーティストやレーベル側は前もって料金を払う必要はないが、同社によるとアーティストやレーベル、権利者は同社がサービスを提供しているストリームに対して「プロモーション用の録音使用料」を支払うことに同意することになるという。ただし、アプリ内の他のカテゴリーからのストリームに関してはこの規約は適用されない。

同サービスの開始直後は、Spotify Radioや自動再生などSpotifyアプリの一部でのみプロモーション料金が適用される。プロモーションされたトラックはアルゴリズムでも編集でもプレイリストに表示されることはない。しかし同社は将来的な拡張を否定しているわけでもない。

「弊社は、あらゆる段階にいるどんな規模のアーティストにもこのツールを提供できるようにしたいと考えていました」とSpotifyのプロダクトマーケティングリーダーであるCharleton Lamb(チャールトン・ラム)氏はこの新サービスについて説明する。同氏によると、これが同社がアーティストやレーベルに前払い料金を要求しない理由である。

「我々はより受け入れられやすく、より民主的で公平なモデルを追求していました。このモデルにより本当に無名のアーティストでも一流レーベルと同じレベルのプロモーションが行えるようになるのです」とラム氏。

画像クレジット:Spotify

このプロモーションによってあるトラックが成功した場合、音楽の人気が高まりプロモーション料金が低いエリア以外での再生回数が増えると、権利所有者は全体的にプラスのROIを得ることができる。このツールにプラスの経済的利益がない場合、アーティストはいつでもプロモーションをオフにすることができる。

同社はプロモーションの使用料の変更に関しては明らかにしていないが、同テストの結果として調整される可能性はあると伝えている。

同社はまた、リスナーの興味の度合いを考慮した上で変更を考えていきたいと強調している。音楽のパフォーマンスが良ければプロモーションを継続するし、そうでない場合は中止されるとのことだ。

「我々はレーベルやアーティストに曲のあっせんを保証するわけではなく、あくまでもリスナーが聴きたいと思うもののみをお勧めするまでです」とSpotifyは発表の中で伝えている

プロモーショントラックは、ユーザーが既にそのジャンルやそのアーティストを聴いている場合に現れるのが通常だが、それ以外にもユーザーがその音楽を気に入る可能性があることを示すシグナルが見られる場合にも提示されるとラム氏は言う。例えばユーザーが既に聴いている音楽と音響的に類似している場合、その類似したプロモーショントラックがユーザーに提示される可能性がある。また、ユーザーが似たようなアーティストを聴いていたり、同じような趣味の人がその音楽を聴いていたりする場合にも、その曲がユーザーに提示されることがある。

その逆もまたあり得る。ユーザーと似たような音楽の趣味を持つ人がセッション中にその曲をスキップしたり、ラジオからのストリーミングの頻度を減らしたりして、プロモーショントラックに否定的な反応を示した場合、その音楽のプロモーションは中止される可能性がある。

「レコメンデーションのせいでリスナーが否定的な反応をしたり、ラジオシステムにあまり関心を示さない場合、推薦の仕方を調整することになります」とラム氏。

また、リスナーへ勧める曲のプールは24時間ごとに更新されるため、このユーザーフィードバックのループはトラックのプロモーション範囲にすぐに影響を与えることができると同氏は指摘する。

現時点ではアーティストやレーベルが一度にプロモーションできる楽曲数に制限はなく、プロモーションの時間枠にも制限はない。

アーティストはいつリリースした曲でもプロモーションを行うことができるが、Spotifyとしてはこのツール最大の焦点は音楽をある文脈に当てはめるカタログ化であると考えている。例えばアルバムのアニバーサリーを祝ったり「文化的瞬間」を利用したいと考えている場合である。

つまり、あるアーティストの古い曲が突然人気を得た場合、このサービスが役立つかもしれない。これはTikTokの存在により最近頻繁に見られるようになった現象だ。TikTok上でのバイラル動画である古い楽曲がBGMとして使用された場合にこういった古い曲が表面化して人気となる場合があるからだ。

例えば、TikTokユーザーで@420doggface208として知られているNathan Apodaca(ネイサン・アポダカ)氏が、バンドFleetwood Mac(フリートウッド・マック)の「Dreams」に合わせてOcean Sprayのクランラズベリージュースを飲みながらスケートボードをしているビデオを録画したところ、1977年のこの名曲が再びチャートのトップに返り咲いたと言う例がある。

@420doggface208Morning vibe #420souljahz #ec #feelinggood #h2o #cloud9 #happyhippie #worldpeace #king #peaceup #merch #tacos #waterislife #high #morning #710 #cloud9♬ Dreams (2004 Remaster) – Fleetwood Mac

TikTokによると、9月25日の動画公開から10月中旬までの間に、TikTok動画内での「Dreams」の1日における平均利用率は1380%に達し、売上は374%、ストリームは89%増しとなったとのことだ。これによりこの曲は43年ぶりにBillboard Hot 100に21位で再登場し、またSpotifyのグローバルチャートと全米チャートのトップ10入りを果たし、Apple Musicでも1位を獲得した。

これこそがSpotifyが今後利益を得ようとしている「文化的瞬間」と言うわけだ。

このサービスはいわゆる「有料再生」モデルではないものの、音楽プロモーションのための有料サービスであり、ストリームが新ツールで「プロモーション」されるとSpotifyは効果的に利益を得ることができるようになる。

Spotifyは数年前から有料再生市場への参入を進めてきた。2019年には、アーティストがレコメンド用の画面を購入して、Spotifyがファンとして特定したユーザーにニューアルバムのプロモーションを行うことができる新機能を導入した。ローリングストーン誌が内部文書を引用して述べたところによると、広告クリック1回あたりのコストは55セント(約57円)だという。

この機能はこういった通知を歓迎する可能性の高いユーザーをターゲットにしてはいたものの、多くの資金を費やすことができるレーベルが最も多くの再生を得ることを意味するため、ある意味での賄賂であると批判されていた。

ここ数年間、Spotifyはプレイリストに賄賂が絡んでいるとして批判の対象となってきた。2018年にはアプリ内のブラウズやプレイリストなどのセクションにラッパーのDrake(ドレイク)の画像やアルバムを次々と並べ、ダンスヒットやポップスなど彼の音楽が一切含まれていないプレイリストにさえにもDrakeの画像を使用したあまりにも大掛かりなアルバムプロモーションでユーザーの怒りを買ったことで有名だ

一方で、この新サービスはすでに気に入って聴いているユーザーにトラックをおすすめするという方法のため、これまでのプロモーションの問題点に対処することが可能となるだろう。ポップアップ広告や過剰なグローバルプロモーションよりも控えめなものとなる。

Spotifyはこれまでに少数のパートナーと技術テストを行なってきたが、今後は米国内でのテストを本格的に開始すると伝えている。

テスト期間中、同社はインディーズとメジャーの両方を含む少数のレーベルと連携し、さまざまなフィードバックを得る予定だ。Spotifyによるとこの機能を今後グローバルに拡大していく予定であるという。

関連記事:Spotifyがポッドキャストのホスティングと広告会社のMegaphoneを約250億円で買収

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(翻訳:Dragonfly)

Spotifyがポッドキャストのホスティングと広告会社のMegaphoneを約250億円で買収

最近ミュージシャンの報酬をめぐる問題で批判を浴びている​Spotify(スポティファイ)だが、ポッドキャスティングに関していえば巨額の資金がある。米国時間11月10日朝、同社は2億3500万ドル(約250億円)でMegaphone(CNBC記事)を買収したことを認めた(Spofiyリリース)。

Megaphoneは​2015年2月にThe Slate GroupによってPanopolyとして設立され、2019年に現在の名称に再ブランド化された。当初はBuzzfeed、The Wall Street Journal、Voxなどの有名メディアブランド向けの主要なポッドキャストを多数制作していた。​しかしブランド変更に合わせ、ホスティングや広告ツール、配信といったバックエンドの懸念事項に注力するため、編集作業を中止していた。

Spotifyはすでにホスティングサービスの利用などで、Megaphoneとパートナーシップを結んでいた。​今回の買収は主に、同社の広告ツールに焦点を当てているようだ。​Spotifyはプレスリリースで、「SpotifyとMegaphoneはPodcastのパブリッシャーに、より多くの収入を得るための革新的なツールを提供すします」と述べた。​「これにより彼らのコンテンツを収益化し、忠実なリスナーと広告主からのさらなる需要をマッチングするために、オプトインする機会が含まれます」と述べている。

Megaphoneの買収は、Spotifyが最近ポッドキャスト事業を中心とした買収の中でも最新のもので、その額は数千万〜数億ドル(数十億〜数百億円)に及ぶ。​これはメディア大手の1社になるという、同社の長年の夢を実現するための一歩となるはずだ。

買収した企業のリストにはGimlet、The Ringer、Parcastなどのコンテンツ制作企業や、Anchorなどのテクノロジー企業も含まれている。​2020年5月には非常に大人気のポッドキャスト番組「Joe Rogan Experience」の独占権を、1億ドル(約105億円)以上で購入した。この買収は物議を醸している同番組の題材に異議を唱えている従業員の間で、いくらかの不安を引き起こしたとされている。

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter