Spotifyのポッドキャストサブスクを米国の全クリエイターが利用可能に

米国時間8月24日、Spotifyはポッドキャストのサブスクリプションを米国の全ポッドキャストクリエイターに公開した。このサービスはテストとして2021年4月に少数のクリエイターを対象に開始されていた。大手から個人まですべてのクリエイターがSpotifyのポッドキャスト制作ツールであるAnchorを利用して特定のエピソードをサブスク利用者限定コンテンツに指定し、Spotifyや他のプラットフォームで配信できる。Spotifyによれば、サービス開始以降、100以上のポッドキャストがサブスクを利用しているという。同社はこのサービスを広く公開することにともない、早期に利用したクリエイターからのフィードバックに基づいて、価格と機能に関していくつか重要な変更を加えている

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これまでクリエイターは月額2.99ドル、4.99ドル、7.99ドル(約330円、550円、880円)のいずれかの価格を選ぶようになっていた。クリエイターは自分のオーディエンスにとって最適と思われる価格を選ぶことができた。

しかしクリエイターがもっと柔軟な価格設定を望んでいることがわかり、価格を20通りから選べるようになった。最低価格は0.49ドル(約55円)で、そこから徐々に上がっていって最高価格は150ドル(約1万6500円)だ。

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Spotifyは調査の結果、クリエイターは価格を完全に自由に設定するよりも最初にある程度設定されている方を望むことがわかったと説明している。そのため、現在はクリエイターが価格を自由に入力するようにはなっていない。今後はテストの結果が良かった3通りの価格として0.99ドル、4.99ドル、9.99ドル(約110円、550円、1100円)が先頭に表示され、その下に17通りの価格が表示される。SpotifyはTechCrunchに対し、先頭の3通りのうち4.99ドル(約550円)が最もパフォーマンスが良かったと述べた。

価格設定と、別のポッドキャストアプリを使いたいリスナーが利用できるプライベートRSSフィードへのアクセスに加え、ポッドキャストクリエイターはサブスク利用者の連絡先アドレスのリストをダウンロードできるようになる。クリエイターはサブスク利用者に追加のベネフィットを提供してエンゲージメントを高められるとSpotifyは説明している。クリエイターが自分の顧客との直接的なつながりを構築するチャンスを失うとなれば、有料サブスクのようなサービスを利用するつもりがなかったクリエイターにも訴求するかもしれない。

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有料ポッドキャストを提供しているのはSpotifyだけではない。Appleも2021年4月にポッドキャストのサブスクプラットフォームを発表した。しかし今のところ、Spotifyの方がクリエイターに有利だ。Appleは1年目はポッドキャストの売上の30%を徴収し、2年目には15%になる。これは他のサブスクアプリと同様だ。一方のSpotifyは、今後2年間はこのプログラムを無料に据え置く。つまりクリエイターは2023年まで売上の100%を受け取れる。その後はサブスクの売上のたった5%を徴収する計画だ。

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マーケットプレイスモデルに参入する第一歩にあたり、Appleの独占的な振る舞いを厳しく批判するSpotifyが手数料をこれほど小さなパーセンテージにしたことは注目に値する。Spotifyは長年、AppleがSpotifyのサブスクビジネスから手数料を取るのは競争を阻害する行為だと主張してきた。AppleはApple MusicのサブスクによってSpotifyのビジネス上のライバルになっており、今度はポッドキャストのサブスクでもライバルになる。

現在、Spotifyはサブスクベースのポッドキャストを多数配信している。NPRのような大手から、Betches U Up?、Cultivating H.E.R. Space、Mindful in Minutesといった独立系クリエイターまでさまざまだ(NPRはAppleの有料ポッドキャストサービスでも配信されている)。Spotifyで配信するクリエイターは他のプラットフォームを利用してもよい。プライベートRSSフィードを自分の顧客と共有し、Appleのポッドキャストなど他のプラットフォームに配信できる。

Appleのサブスクサービスが出だしでつまづいていることに対してクリエイターの不満の声が高まる中で、Spotifyはサブスクをクリエイターに広く公開することにした。The Vergeの記事には、バグや紛らわしいユーザーインターフェイス、相互運用性の問題などに対するクリエイターの不満が書かれている。これに対してSpotifyは、ポッドキャストのサブスクに関心を持つクリエイターから「数千件」の登録があったと述べている。

Spotifyは米国以外にも利用を広げるとしている。2021年9月15日には米国以外のリスナーもサブスク専用コンテンツを聴けるようになる。その後すぐにクリエイターもポッドキャストのサブスクを利用できるようになる予定だ。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

Spotifyが1100億円を投じて自社株購入へ、なぜ?

音楽ストリーミングサービスのSpotify(スポティファイ)は現地時間8月20日、これから2026年4月21日までの間に最大10億ドル(約1100億円)を投じ、自社株を買い戻すと発表した。金額は同社の時価総額の2.5%弱に相当する。同日午前の同社の時価総額は410億6000万ドル(約4兆5160億円)。自社株買いのニュースを受け、株価は5.1%上昇した。

同社は以前、2018年にも同様の買い戻しプログラムを実施した

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公開企業が現金の一部を使い自社株の買い戻しを行うことは、何も新しいことではない。Apple(アップル)、Alphabet(アルファベット)、Microsoft(マイクロソフト)など、多くの公開企業が積極的な自社株買いプログラムを実施している。成熟した企業や成熟に向かう企業が、バランスシートの一部やフリーキャッシュフローの一定割合を自社株買いに充てることはよくあることだ。

こうした取り組みの目的は株主に現金を還元することだ。自社株買いは配当と並び、企業が株主に報いるための重要な手段である。また、企業は自社株を購入することで、個々の株式の価値を高めることができる。流通する株式数を制限することで、企業の株式数は減少し、その結果、理論的には1株あたりの価値が上昇する。1株あたりの企業の所有権の割合が増えるからだ。

Spotifyの株式は、過去1年間で1株あたり387.44ドル(約4万2600円)という高値で取引されてきたが、現在は本日の上昇分を含めても215.84ドル(約2万3700円)の価値しかない。その意味では、同社が現金を投入して自社株の買い戻しを行うことは理に適っていると言える。

しかし、上場したばかりの企業に余剰現金をどうするつもりかと尋ねても、通常、自社株買いという答えは返ってこない。例えば、TechCrunchはRoot Insurance(ルート・インシュアランス)のCEOであるAlex Timm(アレックス・ティム)氏に、最近の2021年第2四半期決算の後、手元現金で自社株を購入するつもりか聞いてみた。同社の株価はここ数カ月で下落しており、おそらく自社株買いによって株主に報いるには魅力的な時期だ。ティム氏はその考えを否定し、同社は長期的な視点で事業を展開しているのだと話した。それはこういう意味だ。現金を株主還元ではなく成長のために使う。

しかし、Spotifyは依然として成長企業ではないのだろうか。確かに、同社の価値は利益が重視された上で評価されているわけではない。例えば、2021年上半期、45億ユーロ(約5760億円)の売上高に対し、純利益はわずか300万ユーロ(約3億8400万円)だった。

もしSpotifyがまだ成長に力を入れる企業であるなら、独占的なポッドキャストのようなものへの投資に備え、資本を温存すべきではないだろうか。そうすれば、将来的に価格決定力を握ることができ、時間の経過とともにより強い売上高の成長と粗利益が可能になるかもしれないのだ。

その問いに答えるには、同社のバランスシートを確認しておく必要があるだろう。2021年第2四半期の業績から主要な数字を紹介する。

  • Spotifyは第2四半期を「31億ユーロ(約3970億円)の現金および現金同等物、制限付き現金、短期投資」とともに締めくくった。
  • また、第2四半期において、3400万ユーロ(約43億5000万円)のフリーキャッシュフローを生み出した。この数字は「一部のライセンサーへの支払い(第1四半期より延期)、ポッドキャスト関連の支払い、広告関連の売掛金増加にともなう運転資本増加」にもかかわらず、前年同期比で700万ユーロ(約9億円)増加した。

簡単に言えば、Spotifyが長期的に粗利率、ひいては純利益率の向上に重要だと一般に理解されている取り組みに資金を使っているにもかかわらず、同社はなお現金を投げ出すのだ。世界的に見て現金や同等の資産の価格が下がっているため、銀行口座に莫大な金額があってもほとんど稼げない状況の中、同社は資金の一部を自社株買いに充てる。

今後数年間で10億ドル(約1100億円)を投じても、同社のキャッシュポジションが大きく損なわれることはない。実際、同社は非常に豊富な現金を保有している。だがこの動きは、同社のバリュエーションを維持し、投資家を満足させるのに役立つかもしれない。さらに、最近の市場の評価より大幅に割り引いた金額で株式を購入するため、同社が自社事業の価値に長期的な信頼を置いていることを考えれば、ほぼ得をする結果となるのかもしれない。

現時点でのより良い質問は、株主のために富の一部を切り離すことを決めたSpotifyが奇妙な会社なのかどうかではなく、そこそこのキャッシュフローと肥大した銀行口座を持つ、損益分岐点に近いハイテク企業がなぜ同じことをしないのか、というものだろう。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpotifyがラジオDJ風の番組フォーマットを拡大「Music + Talk」としてグローバル展開、日本でも利用可能

Spotify(スポティファイ)は2020年秋、音楽とスポークンワードコメンタリーを組み合わせた新しいフォーマットを導入した。これによりクリエイターは、再生しようとしている曲についてDJや音楽ジャーナリストが自分の見解を語ってくれるラジオのような体験を再現することができる。現地時間8月18日、同社はこのフォーマットを「Music + Talk」と名付け、ポッドキャスティングソフトウェア「Anchor」を通じて世界中のクリエイターに提供開始した。

このようなブレンドオーディオ体験を提供したいクリエイターは、Spotifyの7000万曲におよぶフルカタログへのアクセスを提供するAnchorの新しいツール「Music」を使い、スポークンワードオーディオ番組に曲を挿入できるようになった。Spotifyによると、この新しいタイプの番組では、Spotifyの他のプラットフォームと同様に、トラックがストリーミングされるとアーティストに報酬が支払われる。また、ユーザーは番組内の音楽コンテンツに対して、お気に入りする、曲の詳細情報を見る、保存する、共有するなど、通常の操作を行うことができる。

一方、番組自体は、Spotifyの無料会員とプレミアム会員の両方が視聴できる。有料会員はこれらの番組を聴く際にフルで曲を再生できるが、無料ユーザーの場合、ライセンス権の関係で30秒の曲プレビューしか聴くことができない。

このフォーマットは、2019年に導入された、同じく音楽とポッドキャストを組み合わせたPandora(パンドラ)の「Stories」をやや彷彿とさせる。ただしPandoraの場合は、アーティストが音楽に自らコメンタリー(曲のインスピレーションについて語るなど)を加えられるようにすることに重点が置かれていたが、Spotifyでは、誰もがお気に入りのプレイリストにオーディオコメンタリーで注釈を付けられるようにしている。

Spotifyによると、2020年のローンチ以来、ユーザーからのフィードバックを受けてこの製品には多少の調整が加えられたという。現在では、1つのエピソードの中で音楽とトークのセグメントを視覚的に明確に区別し、エピソードページに音楽のプレビューを掲載している。SpotifyはTechCrunchに対し、これまでにクリエイターがこのフォーマットを使って「何万」もの番組を制作したと述べているが、現時点では正確な数は明らかにしていない。

「Music + Talk」番組を制作する機能は今回のグローバル展開に先立ち、米国、カナダ、英国、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドなど、一部の市場で提供されていた。

今回の拡大により日本、インド、フィリピン、インドネシア、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、オランダ、スウェーデン、メキシコ、ブラジル、チリ、アルゼンチン、コロンビアなど、多くの主要国のクリエイターが利用できるようになった。これにともない、SpotifyのMusic + Talkオリジナル番組のカタログもアルゼンチン、ブラジル、コロンビア、チリ、インド、日本、フィリピンの番組が新たに追加される。

またSpotifyは、独自のSpotify Original番組である「Music + Talk.Unlocked」を立ち上げ、この機能のマーケティングをより強力に開始する予定だ。同番組では、このフォーマットを試してみたいと考えているクリエイターにヒントやアイデアを提供していく。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Spotify音楽ストリーミングクリエイター

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

書く瞑想ジャーナリングアプリ「muute」が「Spotify」と機能連携、音楽と感情の関係性をAIで分析可能に

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「楽しくワクワクするデジタル体験を創造するデジタルプロダクト」の企画開発・運営を行うミッドナイトブレックファストは7月28日、AIジャーナリングアプリ「muute」(ミュート。Android版iOS版)と音楽ストリーミングサービス「Spotify」とを機能連携させ、「いつ・どのような音楽を聴いたか、どのように感情と関係しているか」を振り返る機能を追加したことを発表した。同時に、muuteに書き込んだ自分の感情の推移や記録をAIが分析してフィードバックを行う「インサイト機能」のリニューアルも実施した。

muuteは、ジャーナリング、つまり頭に浮かんだことをありのままに記述することで日々の行動を振り返り、自己肯定感につなげるという「書く瞑想」とも呼ばれるマインドフルネスの技法を中核に、メンタルヘルスを支援するアプリ。muuteでは、ユーザーが書き込んだ記録からAIが感情や思考を分析して提示することで、感情や思考が客観視でき、自分でも気がつかなかった価値観や願望を発見できるという。

今回はこれに「Spotify」が連携することとなり、「よく聴いたアーティスト」「よく聴いたアルバム」「聴いた音楽の特徴」などから、「最近視聴した曲TOP15」「最近視聴したアルバムTOP15」「最近聴いた中で一番明るい曲」「最近聴いた中で一番しんみりした曲」といった分析結果が示されるようになる。また、ジャーナリングの分析結果と音楽の分析結果を比較して、感情の変化と聴いた音楽との関係も知ることができる。

ミッドナイトブレックファストでは、「音楽視聴という行動軸での新しい観点から、さらに自分自身に対する理解を深め、muuteのミッションである『一人一人が自分らしさを受け入れられる社会をつくる』ことにより貢献できるツールとなることを期待しています」と話している。

書く瞑想アプリ「muute」が「Spotify」と機能連携、音楽と感情の関係性をAIで分析可能に

インサイト機能のデザインを一新、毎週フィードバックを示する「ウィークリーインサイト機能」も強化

インサイト機能のリニューアルでは、毎週フィードバックを示してくれる「ウィークリーインサイト機能」が強化された。これまでは、「muuteからのレター」「よく使った言葉」「印象に残った瞬間」「感情の空模様」「感情のリズム」「頭の中を占めるもの」「歩数と感情の関係」が提示されていたが、新たに「週間サマリー」「ポジティブ/ネガティブな投稿分析」「行った場所」「投稿状況」が加わり、前週のインサイトの比較も可能になった。

またインサイト機能のデザインも一新され、テキストの表示を縦スクロールから横スクロールに変更、1枚ごとに読み物風に表示することで振り返りやすさを向上、各フィードバック項目に画像や端的な説明を加えて理解度を高める、といった改良がなされた。

書く瞑想アプリ「muute」が「Spotify」と機能連携、音楽と感情の関係性をAIで分析可能に

muuteは、2020年112月にリリースされ、2021年1月にはAppStoreの「フィットネス/ヘルスケア部門」で1位を獲得した。同社の利用実態レポートによれば、ユーザーの9割が「よりよく自分を知ることにつながった」と回答しているという。

オーディオメーカーSONOSが2019年11月に発表したレポート 『音楽がもたらすストレス社会に生きる現代人への様々な効果』でも示されたように、音楽には「ストレス解消」や「モチベーションの維持・向上」といった効果があるとのことだが、「Spotify」との連携により、その相乗効果も期待されている。

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カテゴリー:ヘルステック
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Spotifyがユーザーを駆り立て中毒性を高める通知機能「What’s New」フィードを導入

Spotify(スポティファイ)はFacebook(フェイスブック)などのソーシャルネットワークからヒントを得た新機能を導入する。モバイルアプリの「ベル」アイコンの下で通知を流し続けてユーザーに最新コンテンツを見せるやり方だ。米国時間7月26日、Spotifyは「What’s New」フィードを公開した。新着情報を見たいモバイルアプリユーザーに最新情報を送る。

同社によると、What’s Newフィードは、Spotifyユーザーが同サービスでフォローしている番組やアーティストが公開した新曲やポッドキャストの最新情報を追いかける新しい方法だという。これは普段、聴いている曲に基づいてパーソナライズされたフィードであり、万人向けのフィードでも個別に選んでカスタマイズしたものでもない。

このフィードは、ホームタブのトップに最近聞いた曲や設定アイコンと並んで右上に新設された「ベル」アイコンの中にある。

画像クレジット:Spotify

フィードはリアルタイムで更新され、前回アプリを開いた時以降に新しい曲やエピソードが届くと、ベルアイコンに青いドットがつく。これまで新曲に関する情報は、ホームタブやアプリの検索ページのハブの中などさまざまな場所にあった。

この新機能は、新しいものはすべてSpotifyアプリだけを見ればわかるようになるので便利に違いないが、ドットを利用した「通知」機能は、アプリの中毒性を高める心理トリックでもある。ドットは緊急な印象をあたえ、新着情報を見るため、あるいはドットをクリアするためにクリックしなくてはならないと感じさせる。実際、ソーシャルアプリにこの手のドットが多すぎると反感が高まり、Facebookも数年前目障りな赤い通知ドットをオフにするツールを配布した(正確にいうと、Facebookは赤のドットを完全に排除していない。デフォルト設定は今でも「オン」で、現在同サービスのウェブサイトのあちこちに通知ドットがある)。

Spotifyアプリに追加されたこの一見したところ大したことのなさそうな新機能も実はよく計算されている。そしてこれは、グロースハックやアプリの中毒性を高めようとする小技の過剰利用に反対して近年出現している人道的テクノロジー運動からは何歩か後退するものだ。

今、多くの企業は中毒性機能から離れようとしている。たとえばAppleは、アプリが通知を送れるタイミングをユーザーが制御できるようにする消費者向けツールを追加し、近日公開のiOS 15リリースでは重要性の低いアプリの通知を1日のサマリーにまとめたり、気を散らしたくない時のための「フォーカス」モードを提供する。一方TikTok(ティックトック)は、長い時間見すぎていることを知らせる動画を挿入している。Instagram(インスタグラム)は「You’re all caught up(コンテンツは以上です)」を2018年に導入した。

注意を促すための通知機能追加したSpotifyは、逆方向に進んでいる。たとえユーザーの心地よさと喜びを犠牲にしてでも、ユーザーエンゲージメントを増やしたいのだろう。

What’s Newは、今後数週間のうちに全世界のiOSとAndroidユーザーに公開される。

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SpotifyとGIPHYが提携、GIFを通じた新しい音楽の発見をサポート
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タグ:Spotifyアプリ音楽ストリーミング

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpotifyとGIPHYが提携、GIFを通じた新しい音楽の発見をサポート

Spotify(スポティファイ)は現地時間7月22日、GIFを通じて新しい音楽を発見できるよう、オンラインGIFデータベースのGIPHY(ジフィー)との提携を発表した。あなたが思い浮かべているかもしれないので断っておくが、GIFそのものは曲のクリップを流さない。その代わり、SpotifyがリンクされたGIFを通じて、直接アーティストの音楽を聴くためにSpotifyに誘導されるボタンをクリックするというオプションがある。導入にあたって、Doja CatThe WeekndPost MaloneNicki MinajThe Kid LAROIConan Gray、その他のアーティストが、自身の公式GIPHYプロフィールページでSpotifyがリンクされたGIFを展開する。今後さらに多くのアーティストが加わる。

今回のインテグレーションの目的は、テキストやグループチャット、その他のGIFが使われている毎日のコミュニケーションからユーザーをSpotify音楽とつなげることにある。これはSpotifyのSnapchatInstagramのようなソーシャルメディアアプリとの既存のインテグレーションに似ている。これらのインテグレーションではユーザーは投稿したStoriesやメッセージを通じて音楽をシェアできる。基本的にはオンラインソーシャルアクティビティ(今回の場合はGIFの共有)を活用するユーザー獲得戦略であり、その一方で作品が露出することでアーティストにも恩恵がある。

SpotifyがリンクされたGIFはGIPHY.comのアーティストページ、あるいはGIPHYのモバイルアプリで探すことができる。サポートされているGIFには、シェアされたときにGIFの下に「Listen on Spotify(Spotifyで聴く)」ボタンが付いてくる。ボタンをクリックすると、ユーザーはGIFからSpotify上のアーティストのページにリダイレクトされ、そこでユーザーはアーティストの音楽をストリームしたり、もっと聴きたい曲を探すためにブラウズできる。GIPHYはアーティストの音楽をプラットフォームに持ってくるために、アーティストのレーベルではなくアーティストとコラボした、とTechCrunchは理解している。

画像クレジット:Spotify/GIPHY

Spotifyは今回の機能はGIPHYとの幅広い提携の一部であり、今後はよりインタラクティブなリスニング体験をユーザーに提供することに注力する、と話す。

GIPHYと提携するという動きは、GIPHYの親会社であるFacebookとSpotifyの間での既存の提携の拡大に続くものだ。ソーシャルネットワーキング大企業のFacebookは人気のGIFプラットフォームGIPHYを2020年に、報道されたところによると4億ドル(約442億円)で買収した。GoogleがGIPHYのライバル、Tenorを買収してから数年後のことだ。買収以来、FacebookはFacebookやInstagramといった自社のアプリへのGIPHY統合に取り組んできた。

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2021年初めにFacebookとSpotifyは、FacebookユーザーがFacebookアプリをブラウズする際にSpotifyでホストされている音楽を聴けるようにする新しい「Boombox」プロジェクトでもタイアップした。これはミニプレイヤーによって動いており、共有された音楽を通じてやってきたユーザーがフィードをスクロールしている間にクリックしてコンテンツを再生できるようになっている。

SpotifyとFacebookの結びつきにもかかわらず、GIPHYはFacebookとは別に独立した機会としてSpotifyとの提携を模索したとしている。GIPHYは、ユーザーエクスペリエンスを将来もっとインタラクティブなものにするためにSpotifyとの関係が続く限り提携機会をさらに追求する計画だと述べた。

新しい機能は認証されたGIPHYアーティストのページから誰でも利用できるようになる、とSpotifyは話している

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SpotifyGIPHYFacebook音楽ストリーミング

画像クレジット:Spotify/GIPHY

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Shopify特化型グロースプラットフォームを手がける「StoreHero」が5000万円を調達

Shopify特化型グロースプラットフォームを展開するStoreHeroは6月21日、5000万円の資金調達を2021年5月に完了したと発表した。引受先はインキュベイトファンド。また、インキュベイトファンド共同代表のポール・マクナーニ(以下マクナーニ)氏がStoreHeroの取締役に就任した。調達した資金は、グロースデータアーキテクト、サーバサイドエンジニア、フロントエンドエンジニア、グロースコンサルタント、データアナリストなど、グロースプラットフォーム開発を担う人材の採用に活用する。

オンラインコマース市場では、Amazonや楽天などが市場シェアを占める一方で、「商品ページのカスタマイズが可能な範囲が限られるためブランディングが難しい」「獲得できる顧客データの質・量が限定されている」など、自社ブランディングや顧客とのコミュニケーションを行いたい出店者も散見される。コマースプラットフォームのShopify(ショッピファイ)は、こういったニーズに応えるものとしてグローバルで利用が増加している。

しかしStoreHeroによると、日本国内では、グロース人材や実装できるエンジニアの不足から、順調に成長できていないコマース事業者も存在しているそうだ。

2019年11月設立の同社は、「Grow the Friendships」のビジョンの下、コマース事業者向けに独自のグロースプラットフォームをベースとしたグロース支援サービスを提供しているという。具体的には、Amazonなどメガプラットフォーマーが持つ高度なデータ分析基盤やレコメンデーションの仕組みなどを、Shopifyを活用するコマース事業者が使えるようにしているとした。直近の1年間ではANNA SUIやPAUL&JOE、LADUREE、益子オンライン陶器市などを利用企業として挙げている。

今回取締役に就任するマクナーニ氏はマッキンゼー・アンド・カンパニーに18年間在籍し、シニアパートナーとしてアジア太平洋地域のマーケティング・アンド・セールスグループや小売・消費財グループの責任者を歴任。アジア全体の消費財・小売のトップ企業のデジタルとアナリティクスを活用した成長戦略に携わってきた人物だ。StoreHeroにマクナーニの経験を融合することで、グロースソリューションの進化とグローバル展開を加速するとしている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:EC(用語)Shopify(企業)StoreHero(企業)ネットショッピング / eコマース(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

Spotifyがポッドキャスト発見プラットフォーム「Podz」を買収

ポッドキャストが大流行しているが、聴きたいポッドキャストを見つけ出すのは難しいものだ。Spotify(スポティファイ)は6月17日、ポッドキャスト発掘にかかる問題を解決しようとしているスタートアップであるPodz(ポッズ)の買収を発表した。

「Spotifyでは、我々は世界で最高の(そして最もパーソナライズされた)ポッドキャストディスカバリーのエクスペリエンスの構築と展開に投資しています」と同社は述べた。「Podzのテクノロジーは発見を促進し、リスナーに正しいコンテンツを正しいときに届け、そしてこの部門の成長を世界中で加速させるためのSpotifyの集中的な取り組みを補い、発展させます」。

ポッドキャストは通常30分ほどの長さであり、リスナーは新しい番組をブラウズするのは難しい。ポッドキャストのエピソードを視聴するのは、新しいアーティストの曲を試すほどに簡単ではないのだ。そのため、Podzはユーザーにさまざまな番組の60秒のクリップを提示する「初のオーディオニュースフィード」と呼ぶものを開発した。ポッドキャスト配信者は往々にして、自身のソーシャルメディアアカウントでの宣伝に使うクリップを制作するためにHeadlinerのようなアプリを活用する。Podzはそれと同じアイデアを踏襲している。しかしポッドキャスト配信者が番組をどのように宣伝するかを手作業で行うのに代わって、Podzは機械学習モデルを使ってクリップを選ぶ。この機械学習モデルは、ジャーナリストやオーディオエディターの監修のもとに10万時間超のオーディオを使って訓練されている。

画像クレジット:Podz

Spotifyに買収される前、PodzはプレシードラウンドでM13、Canaan Partners、Charge Ventures、Humbitionなどから250万ドル(約2億7560万円)を調達した。Katie Couric(ケイティ・クーリック)氏、Paris Hilton(パリス・ヒルトン)氏といったセレブも投資した。

「平均的なポッドキャストリスナーは7つのポッドキャストを購読していますが、Podzでは30近いポッドキャストをフォローしています」とM13のゼネラルパートナーLatif Peracha(ラティフ・ペラチャ)氏は2021年2月に電子メールでTechCrunchに語った。「初期のサインを受け、チームがこの分野で変革的なプロダクトを構築できると我々は楽観的にとらえています」。

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買収は、ポッドキャスティングマーケット、概してオーディオエンターテインメントを独占しようというSpotifyの野心を示すものだ。ちょうど6月16日に同社はClubhouseのライバルとなるライブオーディオ「Greenroom」をデビューさせた。ポッドキャストサブスクからの収益の促進という点では、SpotifyとAppleは互角だ。4月にAppleはポッドキャストサブスクへの進出を発表している。そしてその翌週、Spotifyは2月に予告していたサブスクプラットフォームの展開を開始した。Appleは初年度にポッドキャスト売上の30%を徴収すると述べたが、この割合は2年目に15%に下がる見込みだ。一方、Spotifyのプログラムは2023年までクリエイターから手数料を徴収せず、その後は5%となる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:SpotifyポッドキャストPodz買収機械学習

画像クレジット:Spotify

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

Spotifyがライブオーディオアプリ「Greenroom」を提供開始、Clubhouseのライバル誕生

Spotify(スポティファイ)は2021年3月、ライブオーディオマーケットへの参入を加速させるために、スポーツ専門のオーディオアプリLocker Roomを運営する会社を買収する発表した。そしてSpotifyは6月16日のSpotify Greenroomの立ち上げでその目的を遂行する。Spotify Greenroomは、世界中のSpotifyユーザーがライブオーディオルームに参加したりルームをホストしたり、ときにそうした会話をポッドキャストに変えることができる新しいモバイルアプリだ。同社はまた、新しいアプリに将来多くのコンテンツが加わるようにするためのCreator Fundも発表した。

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Spotify GreenroomアプリそのものはLocker Roomの既存のコードをベースにしている。実際、現在のLocker Roomユーザーは6月16日からブランドとデザインが改変されたGreenroomエクスペリエンスになるのを目にするとSpotifyはTechCrunchに語った。

Locker Roomは白と赤みがかったオレンジ色のスキームを使っていたが、新しいGreenroomアプリはかなりSpotify派生物のような外観で、Spotifyと同じカラーパレット、フォント、イコノグラフィーを使っている。

新アプリを利用するには、Spotifyユーザーは現在のSpotifyアカウント情報を使ってサインインする。そして関心のあるものを結びつけるためのオンボーディングがある。

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当面、聴くオーディオプログラムを見つけるプロセスは主にアプリ内でのユーザーのグループ参加に頼る。これはLocker Roomが展開してきたものに似ている。Locker Roomではユーザーはお気に入りのチームを見つけてフォローしていた。しかしGreenroomのグループはもはやスポーツにだけ結びついているのではなく、より大衆的だ。

聴きたいと思われるコンテンツにユーザーをつなげるためにSpotifyのパーソナライゼーションテクノロジーを活用するというのがGreenroomの計画だ、とSpotifyは語った。例えばすでにSpotifyでフォローしているポッドキャスターがSpotify Greenroomでライブを行う場合、ユーザーにノーティフィケーションを送ることができる。あるいは、ターゲットを絞ったレコメンデーションをするために、あなたがどのような種類のポッドキャストや音楽を聴いているのかを活用することもできる。

Spotify Greenroomの機能セットは、ClubhouseやTwitterのSpaces、FacebookのLive Audio Roomsなど、他のライブオーディオサービスのものとほぼ同じだ。ルームのスピーカーは丸いプロフィールアイコンでスクリーン上部に表示され、リスナーはスピーカーのものより小さなアイコンで下部に表示される。ミュートオプションやモデレーションコントロールがあり、ライブオーディオセッション中にリスナーをステージに登場させることもできる。ルームは最大1000人をホストでき、Spotifyは今後この数をさらに増やす見込みだ。

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リスナーはアプリで「ジェム」をあげることでスピーカーにバーチャルの拍手を送ることができる。この機能はLocker Roomから来ている。スピーカーが稼いだジェムの数はセッション中、プロフィール写真の横に表示される。差し当たってはこうしたジェムに金銭価値はないが、Greenroomがまだ収益をあげる方法を提供しておらず、これは明らかに次のステップのようだ。

Spotify Greenroomと同種のライブオーディオアプリの間にはいくつかの主な差別化要因があることは記すに値する。まず第一に、Spotify Greenroomはホストが好きな時にオンにしたりオフにしたりできるライブテキストチャット機能を提供している。ホストはライブオーディセッションが終わった後にそのオーディオファイルをリクエストし、ポッドキャストのエピソード用に編集することもできる。

おそらく最も重要なことは、ライブオーディオセッションがSpotifyによって録音されることだ。これはモデレーション目的のためだと同社は話す。ユーザーがGreenroomオーディオルームに関して何か問題を報告すると、Spotifyはどのようなアクションが必要かを判断するために録音を調べることができる。これはClubhouseが対応に苦慮してきた部分だ。Clubhouseのユーザーはときに、アプリ内でリアルタイムに有害性や乱用に直面してきた。ここには人種差別や女性差別のような問題の多い分野も含まれる。直近では、反ユダヤ主義やヘイトスピーチのために数多くのルームを閉鎖しなければならなかったとClubhouseは述べた。

SpotifyはSpotify Greenroomのモデレーションは既存のコンテンツモデレーションチームによって管理されると話す。もちろん、Spotifyがいかに早く不適切なユーザーに対応したり、行動規範に違反したライブオーディオルームを閉鎖したりできるかは今後明らかになる。

6月16日のアプリの立ち上げはユーザーがつくるライブオーディオコンテンツにフォーカスしている一方で、SpotifyはGreenroomでさらに大きな計画を持っている。今夏、同社はプログラムが組まれたコンテンツに関する発表を行う計画だ。これは他の新機能の立ち上げとともに最優先事項だとしている。Locker Roomで知られていたスポーツコンテンツに加え、音楽、カルチャー、そしてエンターテインメントに関連するプログラミングが含まれる。

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同社はまた、Spotify Greenroomに音楽にフォーカスしたコンテンツを根づかせることを期待して、Spotify for Artistsチャンネルを通じてアーティストにSpotify Greenroomを売り込むとも話す。そしてクリエイター向けの収益化オプションも今後視野に入ってくることも認めたが、それらがどのようなものになるか具体的な詳細は示していない。

加えて、Spotifyは米国のオーディオクリエイターが収入を得られるようにするのをサポートするSpotify Creator Fundを発表した。しかしこのファンドの規模や、クリエイターが受け取れる額、基金分配のタイムフレーム、選考基準、その他の要因など詳細は明らかにしなかった。将来この機会について話を聞きたい人向けのサインアップフォームを提供しているだけだ。これはクリエイターにとって、オプションがたくさんある中で比較検討を難しいものにしそうだ。

Spotify Greenroomは世界135マーケットのiOSとAndroidで6月16日から利用できるようになった。Spotifyそのものが展開されている178マーケットと同じ規模ではない。差し当たっては英語のみだが、今後成長とともに拡大する計画だ。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Spotifyがオーディオブックに進出、Storytelと提携し新プラットフォームを活用

Spotify(スポティファイ)がオーディオブックに手を広げる。といってもあなたが想像するような方法でではない。同社は米国時間5月20日、オーディオブックプラットフォームのStorytel(ストーリーテル)との提携を発表した。この提携では既存のStorytel購読者はSpotifyのアプリ内のオーディオブックにアクセスするのにSpotifyを通じてアカウントをつなげられる。提携は、クリエイターやパブリッシャーがリーチを広げられるようにすることを目的にSpotifyが最近導入したオープン・アクセス・プラットフォーム(OAP)で可能になった最初の注目すべき例だ。

同社は2021年初めの報道機関向けイベントStream OnでOAPの計画について手短に語っていた。イベントでは有料ポッドキャストサブスクSpotify HiFiその他の新機能についての詳細も明らかにした。OAPでは、顧客がSpotifyを通じてコンテンツをストリームできるようにすることで、コンテンツを既存サブスクベースに届ける新しい方法をパブリッシャーやクリエイターに提供する。StorytelはOAPを取り入れた初の主要パブリッシャーだが、StratecheryのBen Thompson(ベン・トンプソン)氏は自身もOAPを使っていると述べた

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クリエイターやパブリッシャーの既存ログインシステムの使用をテクノロジーがサポートし、リスナーとの関係を引き続き直接コントロールできる。例えば有料のポッドキャストは既存の購読者にストリームするためにシステムを使うことができる。しかしStorytelの場合、ポッドキャストではなくオーディオブックのコンテンツを提供している。

「みなさんにすばらしいストーリーへのアクセスを持って欲しいと考えています。本日、Storytelは世界25マーケットで50万超のオーディオブックを提供しています」と同社の創業者でCEOのJonas Tellander(ジョナス・テランダー)氏は発表の中で述べた。「Spotifyとの提携は驚くほどのオーディオブックエクスぺリンスにし、既存の作者はこれまで以上に簡単に当社の顧客にアクセスできます。その一方で現在Spotifyを利用しているもものオーディオブックのマジックをまだ体験していないという新たなオーディエンスにリーチする機会を当社は利用します」と付け加えた。

Audibleの競合相手であるStorytelは英語を含むさまざまな言語のオーディオブックを、月額固定料金で提供している(月約20ドル、約2200円だがマーケットによって異なる)。ライブラリーへの無制限アクセスは1カ月にオーディオブックを1つ以上聴く人にとってはお得かもしれない。通常、Storytelmの顧客はiOSかAndroidのモバイルアプリを通じてストリームする。

ロイターの報道によると、Storytelは購読者160万人を抱える。一方、Spotifyは178マーケットでの購読者1億5800万人を含む、ユーザー3億5600万人を抱える。

インテグレーションそのものは2021年後半に行われ、Storytelのユーザーは自分のアカウントでサインアップでき、その後アカウントをリンクさせることでSpotifyを通じてストリームできるようになる。Spotifyは自社アプリからStorytelのサブスク登録をユーザーに勧める計画は持っていないが、アカウントをリンクさせる時点でユーザーはログインではなく登録するよう案内されるかもしれない。

SpotifyはStorytelとの提携の前にオーディオブックを倍増させた。たとえば2021年1月にSpotifyは、セレブがナレーションを担当した「フランケンシュタイン」「ジェーン・エア」「説得」などいくつかのクラシック作品でフォーマットのテストを開始した。同社はDaniel Radcliffe(ダニエル・ラドクリフ)氏やDavid Beckham(デイビッド・ベッカム)氏、Dakota Fanning(ダコタ・ファニング)氏といったスターがナレーションを行った最初の「ハリー・ポッター」も以前提供した。

今夏、OAPのさらなるパートナーが発表される、とSpotifyは話している。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpotifyがようやくApple Watchでオフライン視聴できるように

Spotify(スポティファイ)とApple(アップル)の関係においては、当然のことながらときに対立することがあった。結局のところ、AppleはSpotifyの最大のライバルとなっているストリーミングサービスを運営している。しかし、Apple WatchとSpotifyはそれぞれの部門で大差でトップの座を維持している。そして協業することは最終的にベン図で重なっている部分のかなりの数のユーザーに利便性を提供する。

Spotifyは米国時間5月21日、明らかに最もリクエストの多かった機能の1つをとうとうスマートウォッチに持ってくると発表した。プレミアム会員は同日から音楽とポッドキャストをオフライン視聴のためにApple Watchにダウンロードできるようになった。つまり、ユーザーはジョギングするときスマートフォンを家に置いたまま出られるようになる。

新機能は標準的なダウンロードとシェアとなる。ユーザーはアルバム、プレイリスト、ポッドキャストの横にある3つの楕円をクリックし、それから「Apple Watchにダウンロード」をクリックする。ダウンロードされると、緑の矢印がタイトルの横に登場する。そしてヘッドフォンをペアリングすると、ウォッチから直接ストリームできるようになる。

Samsungはすでに同様の機能を同社のGalaxy Watchシリーズを含むスマートウォッチに提供している。また、I/O開発者会議での発表によると、Google Wear OSのウォッチでも間もなく提供される。もちろんApple Musicはかなり前からApple Watchでのオフライン視聴を提供しており、Pandoraも同様だ。DeezerもSpotifyに負けず数日のうちにApple Watchにダウンロードできるようになる。

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

Spotifyが独占公開とオリジナルのポッドキャストに自動文字起こし機能を追加

Spotifyが同社サービス上のポッドキャストを文字起こしする第一歩を踏み出す。米国時間5月18日、同社はSpotify独占とオリジナルの番組で自動文字起こしをする機能の限定ベータ版をまもなく公開すると発表した。将来的には同社プラットフォームで公開されている全ポッドキャストで文字起こしができるようにすることを目指す。同社はこの発表と同時に、リーダビリティや文字サイズ変更などアクセシビリティ機能の向上もいくつか発表した。

この新しい機能によりSpotify独自の番組に自動で文字起こしが生成され、ユーザーはiOSとAndroidデバイスで音を出していてもいなくてもポッドキャストのテキストを読むことができる。

文字起こし機能はアクセシビリティの観点から有用だろう。聴覚障がい者も含めてこれまでより幅広いオーディエンスがオーディオのプログラムを利用しやすくなるからだ。そしてすべてのリスナーにとって、早送りや早戻しで探さなくても話の特定の箇所にこれまでより簡単にジャンプできるようになる。

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文字起こしをスクロールし、任意のパラグラフをタップしてそのカ所からストリーミングを開始できるとSpotifyは説明している。

Spotifyが言っているようにポッドキャストライブラリすべてで文字起こし機能を利用できるようになれば、ポッドキャスターが番組の文字起こしをして自分のウェブサイトで公開する作業が必要なくなる。代わりに、Spotifyで文字起こしを利用できるとリスナーに知らせるだけでいい。しかも他社製の文字起こしアプリを使う必要がなくなり、Appleのポッドキャスト文字起こし検索にも対抗できる(Appleは最近Podcastアプリに投資して再デザインしサブスクリプションも発表したことから、文字起こしに関しても近い将来のアップデートを準備しているかもしれないと見られる)。

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Spotifyによると、文字起こし機能は「今後数週間」以内に公開される。

Spotifyは文字起こし機能のベータ版とともに、リーダビリティの改善についても発表した。これはボタンの色やテキストの書式と大きさを調整して、ロービジョンなどの視覚障がいを持つユーザーが再生開始やシャッフル再生などアプリ内のさまざまなボタンを見やすくするための改善だ。

また、SpotifyはDynamic Typeというシステム全体のテキストサイズの変更にすでに対応しているが、今後はiOSの「設定」でテキストをさらに大きくできるようになる(「設定」→「アクセシビリティ」→「画面表示とテキストサイズ」をタップし「さらに大きな文字」を有効にしてスライダをドラッグする)。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

SpotifyのCEOがライブオーディオコンテンツを次の「Stories」だと有望視

ライブオーディオエクスペリエンスは、Storiesがそうだったようにメジャーなプラットフォームすべてに受け入れられるだろう、とSpotifyのCEOであるDaniel Ek(ダニエル・エク)氏は米国時間4月28日の決算会見で投資家に話した。Spotifyはこのほど、ライブオーディオアプリのLocker Roomを買収した。スポーツやカルチャー、そしてもちろん音楽などを中心にさまざまな種の新しいライブオーディオを展開するのにLocker Roomのテクノロジーを使う予定だ。

同社は録音されたコンテンツである音楽とポッドキャストを流すことを専門としており、ライブのソーシャルネットワーキング分野の経験はほぼないことから、Locker RoomがどれくらいSpotifyの現在のサービスに馴染むのかについて投資家らは興味ありげだった。

業界の多くがすでに検討していることを反映して、ライブオーディオをすべての人に広く受け入れられる新しい機能としとらえている、とエク氏は述べた。同氏はそれを次の「Stories」と呼んだ。StoriesはSnapchatによって人気になった機能だが、徐々にどのプラットフォームにも登場した。

「Storiesと変わりません」と同氏は述べ、ライブオーディオに関する自身の考えを説明した。「Storiesは今日、Spotify、もちろんInstagram、Snap、その他も含め数多くのプラットフォームのフォーマットで存在しています。ですので、私は本当にライブオーディオを魅力的な機能としてとらえています。そしてクリエイターは、求めているインターラクションのためにベストなファンとの親和性を持てるところで従事すると考えています。これは、Storiesがこれまでにいかに機能してきたかにかなり似ています」。

言い換えると、各プラットフォームは特定の種のライブオーディオクリエイターを引きつけるかもしれず、Spotifyは音楽とカルチャーの領域に可能性を見出している。カルチャーに関してはポッドキャストへのこれまでの大規模投資のおかげだ。

ライブオーディオへの関心はパンデミックの最中に湧き起こった。人々は家に閉じ込められ、従来のネットワーキングやカンファレンスのような大型イベントは禁止となった。しかしそれは、世界がコロナ後の世界へと向かうときに将来性がないということにはならない。

もちろん、排他的な招待制が次の大きなものに参加することを求めている、見極めたネットワーカーたち(と人気にあやかろうとする人たち)を引きつけたことで、Clubhouseはライブオーディオ分野において関心を集めた功績が認められている。しかしTeslaの創業者Elon Musk(イーロン・マスク)氏、FacebookのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏、俳優から投資家に転向したAshton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏、Drake(ドレイク)、Oprah(オプラ)、その他たくさんのビッグネームのセレブゲストなどの利用でアプリの人気が高まるにつれ、他のテック企業も注目し始めた。ほどなくして、多くがClubhouseのクローンを作っていた。

今日ではFacebook、Instagram、Reddit、Twitter、Discord、Telegram、そしてLinkedInですらさまざまな開発段階にあるライブオーディオの計画を持っているか、サービスを提供している。

ただし、ゼロから始めるのではなく、Spotifyは買収した。もともとはスポーツを論じる場だったLocker Roomのおかげで、Spotifyはより多くのプロのアスリートやライター、ミュージシャン、ソングライター、ポッドキャスター、そしてリアルタイムの会話をホストしたい「その他のグローバルボイス」に対しライブオーディオを間もなく利用できるようにする。Locker Roomのサービスは「Spotify Greenroom」としてブランド変更されるとエク氏は会社のポッドキャストで述べた。

この買収が発表されてから初めての四半期決算会見で、投資家はSpotifyが話し言葉のオーディオが音楽ストリーミングよりもおもしろいと信じているかどうか尋ねた。

エク氏は、話し言葉のコンテンツがフォーマットの進化として今後くるものの始まりにすぎないことを説明した。

「多くの人が媒体にある機能で従事し始めるにつれ、あなたはより多くのプロのクリエイターが加わるのを目にし始めます。ですので、おそらくまず話し言葉のコンテンツで始まると考えています」とエク氏は述べた。「しかしSpotifyに関して具体的にいうと、ファンへの語りかけからリスニング・パーティーの開催、他の多くのことに従事したい多くのミュージシャンがいると考えています。というのも、ミュージシャンにとってSpotifyプラットフォームでは、当社の売上高モデルベースに基づくだけでもエンゲージメントが売り上げ機会への意義ある転換につながることが明らかだからです」。

Spotifyは、800万人超のクリエイターから受け取った最多のリクエストが、ファンとつながる手段をより多く持ちたい、というものだったと明らかにした。ユーザー3億5000万人超というSpotifyのリーチを考えたとき、ライブオーディオはその性質上、ミュージシャンにとってファンとつながるかなり直接的な方法となる。

別の言葉でいうと、投資家の質問が暗示したように、ライブオーディオは音楽ストリーミングにとってシナリオではない。1つのことが他のことに絡んでいるループ以上のものだ。そして明らかに「ライブ」は単にチャットではなく、音楽を意味し得る。

例えばアーティストが販促したいアルバムがあるとき「ファンとしてあなたは他の消費者よりも早く体験できるかもしれません」とエク氏はほのめかした。本当だろうか?

アーティストはまた、曲作りに関する自らの考えについて話すためにライブオーディオを使うこともできる。これはすでに利用できる「Behind the Lyrics」の統合と類似している。

「コンテンツの質によるところが本当に大きいと考えています」とエク氏は話した。「800万人のクリエイターに目を向けると、世界でベストなストーリーテラーがプラットフォームにいます。究極的にはそれが人々が聴くものであり、大切なのはそういうことです」。

しかし 難しいものになりそうなのが、ライブコンテンツのモデレーションだ。会話はあっという間に常軌を逸することがあるため、ライブオーディオはどの企業にとってもまったく新しい課題だ。そして自由な言論と誤情報や不適切なコンテンツの取り締まりの間の線引きに関するSpotifyの立場はまだ少しはっきりしていない。例えば同社のトップポッドキャスターJoe Rogan(ジョー・ローガン)氏は最近、もし若くて健康なら新型コロナウイルスのワクチンを接種しないようリスナーにアドバイスした。Spotifyはこの特異な論争について意見を述べるのは却下した。しかし同じポッドキャストから過去の40超のエピソードを削除した。ブレットプルーフ(完全無欠)コーヒーとその健康への効果についてのエピソードなど、削除されたものの一部はさほど規則に反していないようだ。

ライブオーディオに進出する前に、Spotifyはクリエイターのコンテンツに関する価値を最初に固めたいかもしれない。ライブセッションが決められた範囲外へと飛び出しときに何が起こるのかについて、注意深い、最悪のケースを想定したシナリオも必要だろう。

ライブオーディオに関してエク氏が楽観しているにもかかわらず、AppleやAmazonのようなライバルからの増大するプレッシャーのために成長が減速する兆しがあるとして、Spotifyの株価は決算報告の後に大きく下げた。Spotifyは第1四半期に有料購読者を300万人増やしたが、予想されていた月間アクティブユーザー数には届かず、通年のガイダンスも下回った。同四半期の売上高は21億ユーロ(約2760億円)で、前年同期比16%増だったが、2020年第4四半期に比べると1%減となり、懸念を生んだ。しかし、もしSpotifyが統合をうまくこなせば、ライブオーディオは将来、ファンにもっと頻繁にSpotifyを利用しようと思わせるかもしれない。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Spotifyが米国で有料ポッドキャスト開始、2年間クリエイターの取り分は100%

Spotifyは米国時間4月27日、2021年2月に開催された同社のイベント「Stream On」で新しいサブスクリプションプラットフォームを発表したのに続き、ポッドキャストの有料サブスクリプションの提供を正式に開始した。Spotifyのポッドキャスト作成ツールAnchorを通じて、ポッドキャスターは特定のエピソードをサブスクライバー専用コンテンツとして設定し、Spotifyやその他のプラットフォームに公開することができるようになる。このサービスは当初、12の独立系クリエイターを対象にテストされていたが、順次ウェイトリストに登録済みのクリエイターへと展開される予定だ。

当面は米国のクリエイターのみを対象に有料サブスクリプションを提供し、今後数カ月のうちに海外展開を目指すとしている。

このローンチは、ポッドキャスト、特に有料ポッドキャストの市場が過熱している中で行われた。Appleは先に、Apple Podcastプラットフォームを通じてポッドキャストの有料サブスクリプションを提供する計画を発表している。

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しかし、Spotifyの取り組みとAppleの計画には大きな違いがある。それはサブスクリプションの収益をどう分配するかだ。

Appleは、初年はポッドキャスト収益の30%を徴収し、2年目からは15%に引き下げる。これはApp Storeのストリーミングサービスと同じである。一方Spotifyは、同社のプログラムは今後2年間、クリエイターに無料で提供されると述べている。つまり、クリエイターは収益の100%を得ることになる。そして2023年春、Spotifyはこのツールへのアクセスに5%の課金を導入する計画だ。

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12のクリエイターからなる最初のグループは、サブスクライバー限定の有料ボーナスエピソードをフィードに公開し、プラットフォーム上の他のポッドキャストのエピソードと同じように発見や検索が可能になる。これらの有料エピソードはポッドキャストのメインフィードに表示され、再生ボタンに鍵のアイコンが表示される。アーリーアダプターには、Wild Thing、Tiny Leap、Big Changes、The Mindful Minuteなどが名を連ねている。

クリエイターはサブスクリプション料金を、月額2.99ドル(約325円)、4.99ドル(約542円)、7.99ドル(約868円)の3つの価格帯から選択できる。

Spotifyは、Anchorのクリエイターがフィード全体を有料としてマークできるようにする一方で、クリエイターが有料化を選択的に行う場合、無料エピソードの魅力はリスナーをまず惹きつけることにつながり、より賢明なアイデアであると考えている。後からボーナスコンテンツをアップセルすることもできる。ただし、大規模なポッドキャストでは別のアプローチの可能性もあるだろう。

例えば、Spotifyは有料フィード全体を含む有料サブスクリプションの契約をNPRと結んだ。NPRは5つの番組―How I Built This with Guy Raz、Short Wave、It’s Been a Minute with Sam Sanders、Code Switch、Planet Money―を公開し、5月4日から有料サブスクライバーには無料で提供される。これらの番組は「Plus」としてブランド化され(例:Planet Money Plus)、無料フィードと一緒に配信される。このケースでは、リスナーはボーナスの材料を得られないが、NPRをサポートすることになる。今後数週間のうちにさらに多くのNPR番組が独自のPlusバージョンとして公開される予定だ。

The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)は、Spotifyの有料サブスクリプションが今週登場することを報じた。記事の中で、購読を希望するiOSユーザーは取引を処理するためにウェブサイトに送られ、Appleのアプリ内購入要件を回避することに言及している。これはSpotifyにとってトリッキーな一線になる可能性がある。同社はApple批判の中心的存在であり、先週議会でApp Storeに関してAppleの反競争的行動を証言している。

アプリ内購入を迂回して、ユーザーにウェブサイトに行ってサブスクリプションを購入するように誘導しているわけだが、同社は、その説明はポッドキャストの制作者に任せているとしている。

Anchorの共同創設者であるMichael Mignano(マイケル・ミニャーノ)氏は次のように述べている。「基本的に、ポッドキャストを購読する方法や場所についてリスナーに情報を提供するのは各クリエイターに任されています。実際のサブスクリプションはAnchorのウェブページ—Anchorのクリエイターのプロフィールページで行われますが、認証後にSpotifyに戻ってくると、ロックは解除されます」。App Storeのルール上、Spotifyアプリが実際にこのウェブページを開くことはないという。(また、Spotifyはサブスクリプションベースの売上の一部を徴収していないため、Appleが数年前に設立したクリエイターへの寄付に対しては、たとえアプリ内課金を採用していたとしても、当面はカーブアウトを通じて保護されることになる。)

有料のポッドキャスト機能を利用するために、クリエイターは最初にエピソードを録画またはアップロードした後、Anchor内でエピソードにマークを付ける。別のポッドキャスティングアプリでコンテンツにアクセスしたいリスナーには、購読後にプライベートRSSフィードが提供される。

またSpotifyは、初めてSpotify Open Access Platform(OAP)を発表した。これにより、すでに他のプラットフォーム(競合サービスやプライベートRSSフィードを含む)で有料サブスクライバーとなっているクリエイターが、既存のログインや課金ソリューションを使って、そのコンテンツを現在のサブスクライバーに提供できるようになる。Spotifyによると、これはクリエイターが関係を直接コントロールするのに役立つという。しかしSpotifyは、そのコンテンツを同社のサーバー上で再ホストすることで、結果としてより広範な有料ポッドキャスト市場への洞察を得ることになる。

同社は、まだこのソリューションの完全な詳細を発表する準備はできていないが、今週中にいくつかのニュースを発表すると述べている。

有料ポッドキャストの提供に加えて、Anchorを使ってオーディオ広告のマーケットプレイスSpotify Audience Network(SPAN)を独立系ポッドキャストに開放する計画だという。これもまた、SpotifyがAppleと差別化されている領域だ。Apple Podcastでは、クリエイターは自分の広告を販売する責任があるため、収益の100%にとどまる。

これに対してSpotifyは、ポッドキャスト視聴者にサービスを提供することを目標に、広告技術に投資してきた。同社はこれまで、ネットワーク経由でMegaphone(2020年に買収)のインベントリのロックを解除していたが、今後はAnchorのクリエイターの一部がSPANを利用できるようになる。同社によると、5月1日に50のクリエイターを集めてスタートし、その後徐々に拡大していくとしている。

関連記事:Spotifyがポッドキャストのホスティングと広告会社のMegaphoneを約250億円で買収

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックがアプリ内でSpotifyをストリーミングできる新機能を導入、日本でも提供

Facebook(フェイスブック)は先週、アプリ内で直接音楽やポッドキャストを聴く新しい方法を導入しようと、音楽ストリーミングサービスSpotify(スポティファイ)とのProject Boomboxという提携拡大を発表した。そして米国時間4月26日、両社は新しい「ミニプレイヤー」エクスペリエンスとして統合の展開を開始した。この新機能では、FacebookユーザーはiOSとAndroidのFacebookアプリを通じてSpotifyからストリーミングできる。無料のSpotifyユーザー、プレミアム購読者いずれも利用可能だ。

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ミニプレイヤーそのものは、Spotifyのアプリ内ですでにサポートされているソーシャルシェアリングオプションの拡張機能だ。現在、SpotifyユーザーがFacebookで共有したいコンテンツを聴いているとき、既存の「シェア」メニュー(スクリーン右上の3つのドットのメニュー)をタップし「Facebook」か「Facebook News Feed」を選べる。

ユーザーが個人のトラックやポッドキャストエピソードをシェア機能を通じてFacebookに投稿するとき、投稿は新しいミニプレイヤーに表示されるようになっている。これにより、ユーザーの投稿を目にした他の人がコンテンツを再生したり、再シェアしたりできる。

Spotifyの有料購読者はフル再生もできる、と同社は話す。一方、無料ユーザーはクリップではなく、シェアされたトラックを聴くことができる。しかし結局、無料ユーザーはSpotifyのアプリでそうしているように、広告入りのコンテンツをシャッフルモードで聴くことになる。

これがどういう仕組みになっているのか、注意すべき大事なことは、統合によって音楽あるいはポッドキャストのコンテンツが実際にSpotifyのアプリから再生するようになっているということだ。ユーザーがミニプレイヤーでプレイボタンを押すとき、ユーザーがSpotifyにログインできるようにアプリの切り替えが起こっている。ミニプレイヤーはSpotifyアプリの立ち上げと再生を起動してコントロールしている。これがユーザーがFacebookをスクロールしたり、Facebookアプリを最小化しても再生が続く理由だ。

この設定はユーザーがスマートフォンにSpotifyアプリをインストールし、ミニプレイヤーを機能させるのにSpotifyアカウントを要することを意味する。初めてSpotifyを使うユーザーは、ミニプレイヤー経由でシェアされた音楽を聴くために無料のアカウントを申し込む必要がある。

Spotifyは、ミニプレイヤーのエクスペリエンスそのものを通じて有料アカウントを申し込むことはできない、と説明する。そのため、新規購読でFacebookと分け合う売り上げはない(ユーザーはSpotifyアプリをダウンロードし、アップグレードしたければさらに有料アカウントに申し込まなければならない)。

この提携でSpotifyは新型コロナウイルス特需による購読者の増加がなくなりつつある現在、配信を増やし、アカウント申し込みとアプリのリピート使用を拡大するのにFacebookのリーチを活用できる。しかし、ストリーミングを行なっているのは実際にはSpotifyのアプリであるため、これまで同様、ストリームで支払われるロイヤルティには責任を持つ、と同社はTechCrunchに説明した。Spotifyはまた、音楽カタログそしてコンテンツとともに流れる音声広告も全面的に受け持つ。

Facebookにとって、この契約はユーザーがFacebookサイトでもっと時間を費やすようにする貴重なツールを持つことを意味する。過去数年、ユーザーがFacebookで費やす時間は減ってきていると報道で指摘されている。

SpotifyとFacebookは、音楽に関する取り組みで協業してきた長い歴史を持つ。2011年にFacebookは、今回のように音楽サブスクのユーザーがFacebook上で直接音楽を楽しめるようにするアップデートを計画していた。しかしそうした計画は後に振り出しに戻った。おそらく音楽の著作権かテクニカル上の問題のためだ。SpotifyはFacebookのティッカーにおける最初のメディアパートナー企業の1社だった。ティッカーはユーザーに友達がFacebookや他のサービスで何をしているのかをリアルタイムに示すというものだ。Spotifyはかつて、モバイルアプリ向けにFacebookログインをデフォルトで提供してもいた。展開されてもう何年にもなるが、Facebookとの統合のおかげでデスクトップのSpotifyユーザーは、Facebookでつながっている友達がSpotifyで何をストリーミングしているのか知ることができる。

今回の提携の更新と拡張のタイミングは興味深い。FacebookとSpotifyには、Apple(アップル)という共通の敵がいる。Appleのプライバシーにフォーカスした変更はFacebookの広告事業に影響を及ぼしており、またAppleのApple Musicとポッドキャストへの投資はSpotifyにとって脅威だ。ここ数年のFacebookの自社による音楽の取り組みは、音楽レーベルとの合意による音楽ビデオの統合など、提携へとシフトした。Facebookの収益化ツールとクリエイター経済をターゲットとするサービスに関する幅広い取り組みを支える新しいストリーミング機能を稼働させるのに、Spotifyのようなパートナーに目を向けるのは理に適っている。

ミニプレイヤー機能は4月26日のグローバル展開の前にメキシコとタイでテストされた。

今回のインテグレーションは、米国に加えてアルゼンチン、オーストラリア、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、ガテマラ、ホンジュラス、インドネシア、イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、南アフリカ、タイ、ウルグアイで展開されている。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがポッドキャストの有料定額サービス開始を発表、米国では番組あたり約53円から

Spotify(スポティファイ)との競争が激化する中、Apple(アップル)は米国時間4月20日、ポッドキャストのサブスクリプション(有料定額制)配信サービスを開始すると発表した。同社の「Spring Loaded」イベントで発表された「Apple Podcasts(アップル・ポッドキャスト)」のサブスクリプションサービスは、リスナーが定額料金を支払うことで、広告なしの聴取、エピソードへの早期アクセス、お気に入りのクリエイターをサポートする機能などの「利点が追加」される。このサービスは、Apple Podcastsアプリのアップデートで利用可能になる。このアップル純正ポッドキャストアプリでは、引き続き無料のポッドキャストも探して聴くことができる。

今回の新サービス「Apple Podcasts Subscriptions(アップル・ポッドキャスト・サブスクリプション)」の発表は、Spotifyのポッドキャストリスナー数が、2021年に初めてアップルのそれを上回る見込みとの業界レポートが発表された直後のことだ。

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アップルのTim Cook(ティム・クック)CEOは、イベントの開始時にこのサブスクリプションを簡単に紹介し「Apple Podcastsのデビュー以来最大の変更」と言及した。

今回のアップデートでは、番組やエピソードのページが新たにデザインされ、ポッドキャストの聴取、フォロー、共有が容易になると、クック氏は述べている。また、お気に入りのクリエイターの番組を探したり、おすすめの番組を見つけられる「チャンネル」機能も新たに追加された。ここには無料チャンネルの他に定額料金を支払うことでさまざまな特典がある会員向けの有料チャンネルが用意される。

チャンネルとは要するに、クリエイターがキュレーションした番組のグループで、チャンネルごとに「独自のタイトル、説明、アートワーク」が付けられるという。

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また、エピソード型の番組では最新のエピソードから、連続型の番組では各シリーズの最初から自動的に開始できるようにする「スマートプレイ」ボタンも搭載される。その他の新機能としては、ユーザーが個々のエピソードを保存してオフラインで再生できるようになったほか、トップチャートにすばやくアクセスできるように検索タブが強化された。ポッドキャスター用のApple Podcasts Connect(アップル・ポッドキャスト・コネクト)ダッシュボードも刷新され、番組のメタデータの編集、番組の配信予約と管理、チャンネルへの追加、複数のユーザーと役割の管理、そして新たに用意されたパフォーマンス指標と可視化ツールによる番組の再生記録の追跡などが可能になる。

アップルはこの新サービスを、170以上の国と地域のリスナーに2021年5月から提供すると発表した。

アップルはプレスリリースの中で、最初のプレミアム有料配信は、Tenderfoot TV(テンダーフットTV)、Pushkin Industries(プーシキン・インダストリーズ)、Radiotopia from PRX(ラジオトピア・フロム PRX)、QCODE(キューコード)の他、NPR、Los Angeles Times(ロサンゼルス・タイムズ)、The Athletic(アスレチック)、Sony Music Entertainment(ソニー・ミュージックエンタテインメント)といった大規模ブランドなど「独立系の音声と一流のスタジオ」の双方から番組を提供すると述べている。

「15年前、アップルはポッドキャストを普及させ、クリエイターに最高のオープンプラットフォームを提供して、世界中の何億人ものリスナーに情報を提供し、楽しませ、刺激を与えてきました」と、アップルのインターネットソフトウェア&サービス担当上級副社長のEddy Cue(エディ・キュー)氏は声明の中で語っている。「現在、Apple Podcastsは、リスナーが何百万ものすばらしい番組を発見し、楽しむことができる最高の場所となっています。そして今回、私たちはApple Podcasts Subscriptionsによって、ポッドキャスティングを次の章に導くことを誇りに思います。このパワフルな新しいプラットフォームを世界中のクリエイターに提供できることに、私たちはワクワクしています。これを使ってクリエイターのみなさまがどのような作品を配信するのか、それを聴くのが楽しみで仕方ありません」。

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アップルがポッドキャストのサブスクリプションサービスを計画しているということは、Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)が同社のポッドキャストアプリに有料配信オプションを追加する準備が行われていると報じたほか、Vox Media(ヴォックス・メディア)のPeter Kafka(ピーター・カフカ)氏が、アップルは新製品発表イベントで有料のポッドキャスト配信を発表するだろうと語ったことから、すでに予想されていた。

また、iOS 14.5ベータ版には、デザインが変更されたPodcastアプリの「今すぐ聴く」タブにアカウントボタンが設けられているなどのヒントも見られた。MacRumors(マックルーマーズ)は、番組の通知がこの場所に移されたことを報じ、将来的には有料サブスクリプションの管理もこの新しいエリアで行われるのではないかと予想していた。

定額制ポッドキャストへの参入は、Apple PodcastsおよびApple Musicの競合相手であるSpotifyが長年にわたって多額の投資を行ってきたことを受けたものだ。Spotifyはアップルに対する批判の先鋒でもある。

Spotifyは2021年2月、自社のプラットフォームに登録されているポッドキャストの数が、前年比3倍の220万件に増えたことを発表した。同社はまた、Joe Rogan(ジョー・ローガン)氏、Kim Kardashian(キム・カーダシアン)氏、 DC Comics(DCコミックス)、Michelle Obama(ミシェル・オバマ)氏、サセックス公爵および公爵夫人などのビッグネームと、長年にわたってさまざまな独占契約を結んできた。ポッドキャスト関連のスタートアップやアドテクノロジー、スタジオの買収も続けており、その中にはホスティングや広告を手がけるMegaphone(メガフォン)、Anchor(アンカー)の制作ツール、Gimlet(ギムレット)、The Ringer(ザ・リンガー)、Parcast(パーキャスト)といったコンテンツ制作会社が含まれている。

最近では、SpotifyはAnchorの機能を利用して独自のポッドキャストのサブスクリプションを計画していることを発表したり、ライブチャットアプリ「Locker Room(ロッカー・ルーム)」を運営するBetty Labs(ベティ・ラボ)の買収を通じてライブオーディオ分野にも投資を行っている。ちなみにSpotifyは、定額購読料による収入をポッドキャストの制作者に分配し、制作者は収益の大半を確保できると語っていた。

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ポッドキャスト制作者が知っておくべきこと

  • Apple Podcast Subscriptionsに詳しい人の話によると、アップルはポッドキャスト制作者がサブスクリプションの一部として提供する条件には口出ししないとのこと。これはオープンな市場であり、ポッドキャスト制作者は、広告なしの聴取、ボーナスエピソード、過去に配信された番組へのアクセスなどを提供するかどうかを選択することができる。
  • 番組は完全無料か有料、または誰でもアクセスできる無料コンテンツと有料会員へのアップグレード機能を組み合わせた「フリーミアム」のいずれかを選択できる。
  • 価格は、米国では月額約0.49ドル(約53円)からとなっており(App Storeとは違うようだ!)、クリエイターは自分で価格を設定することができる。
  • アップルは、ストリーミングサービスやその他のサブスクリプション製品と同様に、1年目は売上の30%を受け取り、2年目には15%に下げる。
  • ポッドキャスターは自分の番組をどこにでも配信することができる。Apple Podcast専用にする必要はない。つまり、Spotifyなどの他のプラットフォームにも有料コンテンツを提供し、収益を増やすことができるということだろう。
  • アップルは、現時点ではポッドキャスター向けに広告を販売していない。広告収入は、クリエイターが100%取得できる。
  • クリエイターは、Apple IDやそれに関連するメールアドレスなど、リスナーの個人データにアクセスすることはできない。ポッドキャストのアナリティクスでは、匿名化され、集約されたインサイトが提供される。
  • しかし「最も熱心なリスナー」や「上位の都市」などの新たな指標を追跡することはできる。これは、クリエイターが最大のファンに合わせてポッドキャストを調整したり、次のライブショーを計画したりするのに役立つだろう。
  • サブスクリプションは、個々の番組またはチャンネルと呼ばれる番組グループのいずれかに対して設定することができる。例えば、有料のポッドキャスト配信サービス「Luminary(ルミナリー)」は「チャンネル」だ。Radiotopia(ラジオトピア)のようなポッドキャストネットワークもチャンネルになる。
  • チャンネルも、個々の番組と同様に、無料、有料、フリーミアムのいずれかに設定することができる。また、国ごとに配信の有無や価格を設定することも可能。
  • サブスクリプションコンテンツのアップロードは、RSSではなくApple Podcasts Connect経由で行われる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックが音声関連の新機能を発表、Clubhouse類似機能やポッドキャスト支援ツールなど

Facebook(フェイスブック)は米国時間4月19日、一連の新しい音声関連機能を正式に発表した。これは同社がClubhouse(クラブハウス)や他の音声ソーシャルメディアの脅威を真剣に受け止めていることの現れだ。Facebookは単にClubhouseに類似した機能を開発するだけでなく、ポッドキャスト制作者が長いオーディオを共有するためのツールや、音楽を聴くための新たなSpotify(スポティファイ)との統合、そしてまったく新しい「Soundbites(サウンドバイツ)」と呼ばれる短い音声フォーマットの体験機能を発表した。

音声ネットワーク市場における関心の高まりを受け、新機能の中で今回の発表以前から最も話題になっていたのが、Facebookによる「Clubhouseクローン」だろう。

この「Live Audio Rooms(ライブオーディオルーム)」と名づけられた機能では、Clubhouseと同じように、ユーザーが特定の話題について「部屋」に集まり、話し合うことができる。

「私がFacebookで最も期待している分野は、基本的に、数多くのコミュニティやグループが存在することです。興味のあることを中心に構成されたコミュニティにすでに参加されている方は多いと思いますが、さらにそれらの人々が集まって話ができる部屋を持てるようになることは、非常に有益なことだと思います」と、同社のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOは、今回の発表と同時に行われたPlatformer(プラットフォーマー)による親しげなインタビューで語っている。「2020年前半にビデオチャット機能を導入した際、グループやコミュニティではそれが盛んに利用されるようになりました。だから、音声に関しても、さらに気軽に使えることを考えると、大きな盛り上がりが期待できると思います」。

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Facebookの公式ブログによると、Live Audio RoomsはFacebookとMessenger(メッセンジャー)の両方で利用できるようになるという。

Live Audio Roomsは、まずFacebook Groups(Facebookグループ)でテストが行われ、月間18億人のグループユーザーから利用できるようになる。また、公人や専門家にも提供される予定だ。Facebookによると、この機能をいち早く採用したのは、アメリカンフットボールのクォーターバックであるRussell Wilson(ラッセル・ウィルソン)氏、グラミー賞にノミネートされたエレクトロニッミュージックアーティストのTOKiMONSTA(トキモンスタ)氏、アーティストで映画監督のElle Moxley(エル・モクスリー)氏、5度のオリンピックメダリストで起業家のNastia Liukin(ナスティア・リューキン)氏などだという。

Live Audio Roomsは2021年の夏から、Facebook上で誰でも利用できるようになる予定だ。また、同時期にはMessengerにも導入されるので、友人同士で音声による会話を楽しめるようになる。

他社の技術製品を焼き直したようなこの音声機能に加え、FacebookではTikTok(ティックトック)の競合である「Instagram Reels(インスタグラム・リールズ)」の音声専用バージョンも開発中であることを、ザッカーバーグCEOは明らかにした。この「Soundbites(サウンドバイツ)」と名づけられたプロジェクトは、アルゴリズムでソートされた短い音声クリップをすばやく扱うことができるというもので、まずは少人数のクリエイターのみで数カ月間のテストを行い、それからFacebookユーザーに広く利用できるようにする予定であると、Facebookはブログ記事で書いている。

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「このアイデアは、短時間の音声フォーマットで、人々がおもしろいと思ったことや、他の人にも教えたいと思うような、ちょっとした短い音声クリップを、さまざまなジャンルやトピックをカバーしながら共有できるようにするというものです」と、ザッカーバーグ氏は語っている。

ポッドキャストの制作者に対しては、ユーザーがFacebookページでフォローしているポッドキャスト制作者のコンテンツを、Facebookアプリで直接聞けるようにするツールを開発していると、ザッカーバーグ氏は述べている。ポッドキャストのFacebookページにアクセスしているユーザーが現在1億7000万人もいることを、同CEOは指摘し、この音声コンテンツにもっと簡単にアクセスできる方法を確保したいと語った。

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ユーザーは好みのポッドキャストを発見したら、バックグラウンドでも再生を開始できるようになる。あるいは別のアプリを起動して、そちらで再生を続けることも可能だと、ザッカーバーグ氏は述べている。これは例えば、ポッドキャストのコンテンツをSpotifyで聴きたいと思った場合、直接Spotifyで開くこともできるという意味だと思われる。

この機能はユーザーの興味に基づいた新しいポッドキャストの発見に役立ち、ユーザーはポッドキャストにコメントしたり、友人に勧めることができるようになる。

このような音声機能の取り組みに関連して、ザッカーバーグCEOはFacebookとSpotifyの提携拡大についても言及した。現在社内で「Project Boombox(プロジェクト・ブームボックス)」と呼ばれている機能は、ユーザーがSpotifyでお気に入りのアーティストのコンテンツやプレイリスト、その他の種類のオーディオを、Facebookのフィードで共有できるようにするものだ。これを他のユーザーがクリックすると、小さなインラインプレイヤーが表示され、コンテンツを再生する。

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Spotifyとの統合に詳しい関係者からの情報によると、このプレイヤーは音楽とポッドキャストの両方に対応するとのこと。すでにメキシコやタイなど、米国以外の市場でテストされており、1週間ほどで利用可能になる見込みだ。

「Facebookがオーディオに興味を持ったということは、このカテゴリーへのさらなる評価であり、私たちがずっと以前から知っていたこと、つまりオーディオのパワーと可能性が無限であることを裏付けるものです」と、Spotifyの広報担当者はTechCrunchに語った。「私たちの目標は常に変わりません。それはSpotifyをプラットフォームやデバイスの垣根を越えてユビキタスなものにし、音楽やポッドキャストをより多くの人に届けることです。今回のFacebookとの統合は、こうした取り組みの新たな一歩となります。私たちはFacebookとの継続的なパートナーシップにより、世界中のオーディオディスカバリーを促進していくことを楽しみにしています」。

また、ザッカーバーグ氏は、新機能の導入が、成長するクリエイター経済に貢献する必要性についても言及している。

Live Audio Roomsでは、ファンはFacebookのアプリ内チップ機能である「Stars(Facebookスター)」を通じて、クリエイターを支援したり、寄付したりできる。Facebookによると、Live Audio Roomにアクセスするためのサブスクリプションなど、その他の収益化ツールも後に導入する予定だという。また、同社はSoundbitesの起ち上げに合わせて、新たなクリエーターの誕生を支援するAudio Creator Fund(オーディオ・クリエーター・ファンド)も用意する。

さらにザッカーバーグ氏は、Facebookが計画しているニュースレターという機能についても語った。これはクリエイターコミュニティに提供される課金ツールの1つで、Twitter(ツイッター)が計画している「Super Follows(スーパーフォロー)」と同じようなものだ。

関連記事:Twitterが同社初となる有料クリエイターサブスク機能「スーパーフォロー」発表、サービスの構造が劇的に変わる可能性

「ジャーナリストやクリエイターが、自分をフォローしたいと思ってくれる人に向けて、ニュースレターとポッドキャストの両方でサブスクリプションを設定できる仕組みは、本当に強力なものになると思います」と、ザッカーバーグ氏はいう。「これは私たちが実現しようとしているポッドキャスト関連の課金ツールで大きな部分を占めるもので、我々が計画していること、つまり独立系ジャーナリストにニュースレターなどのツールを提供する取り組みと密接に関係しています。これら2つのことが、ジャーナリストやクリエイターにとって非常に有利な条件で可能になれば、かなり強力なものになると思います」と、同氏は強調した。

Vox(ヴォックス)が4月18日にスクープしたこれらの新機能の発表は、ファンとクリエイターがつながる場所が他にも増えているせいで、Facebookの優位性が崩壊しつつあることを、同社がいかに深刻に捉えているかを示している。現在のFacebookにとっての脅威は、ClubhouseやSubstack(サブスタック)のニュースレター、さらにはPatreon(パトレオン)のような新しいアプリだけでなく、全般的なクリエイター経済をFacebook自身の手に集約・所有できなくなりつつあるという事実である。

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タグ:Facebook音声ソーシャルネットワークSNSポッドキャストSpotify

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(文:Sarah Perez、Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックがSpotifyとの提携拡大を発表、新プロジェクト「Boombox」の一環で

Facebook(フェイスブック)のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOは米国時間4月19日、Facebookは音楽ストリーミングサービスSpotify(スポティファイ)との関係を深め「Project Boombox」と呼ばれる新たなイニシアティブの一環として、ユーザーが同社のアプリをブラウズしながらSpotifyでホストされている音楽を聴けるようにしていく、と明かした。

Facebookは、ユーザーがプラットフォーム上で共有されている曲やプレイリストを、Spotifyのアプリやウェブサイトに外部リンクすることなく聴くことができるインラインオーディオプレイヤーを構築しているという。ザッカーバーグ氏はこの機能を、プラットフォーム上のクリエイターエクスペリエンスを向上させるために設計された新たな製品だと紹介し、特にミュージシャンが自分の作品を共有しやすくすることで「基本的には、オーディオをファーストクラスメディアにします」と述べた。

Spotifyとの統合に関する情報に詳しい関係者によると、このプレイヤーは音楽とポッドキャストの両方に対応するとのこと。すでにメキシコやタイなどの米国以外の市場でテストが行われており、おそらく約1週間後に利用可能となる予定だという。

このニュースは、FacebookがClubhouse(クラブハウス)のような新興の取り組みやポッドキャスティングの世界での活動増加に対応しようとしている中、レポーターのCasey Newton(ケーシー・ニュートン)氏との幅広いインタビューで、オーディオの世界における同社の今後の取り組みについて聞かれ明らかにされた。

「オーディオは第1級のメディアになると考えており、このスペクトル全体でさまざまな製品が作られると考えています」とザッカーバーグ氏は語った。「もちろんそこには、ポッドキャスティングやこのようなライブオーディオルームのように、最近人気のある分野も含まれていますが、この分野全体ではまだあまり検討されていない興味深いものもあると思います」とも。

Spotifyは、すでにFacebookやInstagram(インスタグラム)のプラットフォームとかなりの製品関係をサポートしている。音楽とポッドキャストのプラットフォームであるSpotifyは近年、ユーザーが同サービスのコンテンツを共有できるようInstagramストーリーズに深く統合されており、この機能はFacebookストーリーズにも組み込まれている。

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(文:Lucas Matney、Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

Apple Musicでのストリーミング売上詳細をアーティストへの手紙に記載、やはり中堅や独立系たちには厳しい

ストリーミング収入はミュージシャンにとって長年の懸案事項であり、特にレコード会社が業界全体で崩壊したことにより何とか生活しているミュージシャンにとって、大きな問題だった。もちろんツアーが不可能になった2021年は、多くのミュージシャンにとって主要な収入源が完全に絶たれたため、こうした問題を浮き彫りになった。

Apple(アップル)はアーティストに送ったレターの中で、ストリーミング売上げに関する主要な疑問の一部を明らかにしたいと考えている。The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)が報じたこのメモには、Spotify(スポティファイ)が支払う金額の約2倍に相当する売上高の概要が記されている。

「ストリーミングのロイヤリティについての議論が続く中、私たちは価値観を共有することが重要だと考えています」と、Appleは述べている。「私たちは、すべてのクリエイターに同じ料金を支払うこと、1回の再生には価値があること、そしてクリエイターはそのサービス上の最高のディスプレイスペースで音楽をフィーチャーするために料金を支払うべきではないことを信じています」。

Appleのコメントは、Spotifyのはるかに多様な支払いモデルを明確に指摘している。しかし、それが実際にどのくらいの金額になるのかはもう少し複雑な問題だ。Spotifyの支払いモデルは、最初は1ストリームあたり1ペニー(1円)程度だった(さらに下がることもある) 。この金額はレコード会社であれ出版社であれ、権利者に支払われる。この問題は、2021年に多くのミュージシャンが仲介業者の存在意義に疑問を持つようになった、一連の問題のうちの1つだ。

SpotifyのDaniel Ek(ダニエル・エク)CEOは2020年のインタビューで「3〜4年に1度も音楽をリリースせず、それで十分だと考えているような過去に成功を収めたアーティストは、将来はうまくいかない人もいるかもしれません」と述べ、この騒動を煽った。

結局のところ、多くのアーティストにとっては小銭、あるいはさらに小さな金額の奪い合いの戦いだ。そして、世界がストリーミングモデルに移行した現在、中堅や真の独立系アーティストたちが生活を維持するのは非常に難しくなっている。BandcampやSoundcloudのようなサービスは、小規模なアーティストがより管理しやすいように努力してきたが、現代のミュージシャンの生活は、特に新型コロナウイルス(COVID-19)の時代では依然として苦しいままだ。

関連記事:音楽は2020年を良いものにしてくれたが、私たちはミュージシャンを幸せにしていない

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Spotifyが車載用エンターテインメントシステム「Car Thing」を米国内でリリース

Spotify(スポティファイ)は米国時間4月13日朝、Spotify Premium加入者を対象とした初となるハードウェアデバイス「Car Thing」の米国内限定リリースを正式に発表した。なんと無料(送料のみ請求)で提供されるこの奇妙な名前のデバイスは、2019年に初めてテストが開始されて以来大幅に進化しているようだ。アップグレードされた今回のモデルには、タッチスクリーン、ナビゲーション用の大きくてつかみやすいダイヤル、音声コントロール機能の他、モバイルデバイスのSpotifyと同様に、お気に入りの音楽やポッドキャスト、プレイリストのための4つのプリセットボタンが上部に搭載されている。

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同社によると、車内でも「よりシームレス」でパーソナライズされたリスニング体験を味わいたいというユーザーのニーズに応えることがCar Thingの目的だという。現在多くの自動車がApple CarPlayやAndroid Autoに対応しているが、実際には米国における自動車の平均使用年数は11年、自動車の平均寿命は18年であると同社は指摘している。つまり、最新の車載インフォテイメントシステムに対応していないクルマがまだ大量に走っているということだ。

Car Thingはこういった市場に対応するために誕生したわけである。また、Spotifyが車内のユーザーとより直接的な関係を築くことで将来的なビジネスモデルを検討する機会にもなると思われるが、同社は現時点では長期的な目標について言及していない。

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新Car Thingは軽量(96g)で薄型(11.7×6.4×1.8cm)の音楽&ポッドキャストプレイヤーで、音声コントロール、ダイヤル、ボタン、タッチスクリーンディスプレイを組み合わせてメニューを操作し、聴きたいメディアを選択することができる。デバイスの設定は、普段カーステレオと携帯電話を接続して音楽を再生するのと同じ方法で、Bluetooth、AUXまたはUSBケーブルのいずれかを使用することが可能だ。

また、カーチャージャーとUSB-Cケーブルに加えて3種類のダッシュボードマウントとベントマウントが付属しているため、さまざまな方法でCar Thingをダッシュボードに取り付けることができる。

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Car Thingの起動時にはクイックツアーが始まり、スタート方法を説明してくれる。ユーザーインターフェースはSpotifyのモバイルアプリと似ているため、初めてでもすぐに慣れることができるだろう。タップ、スワイプ、音声を使って画面を操作でき、またダイヤルを使えばすばやく曲を選ぶことができるため、車の内蔵ステレオのダイヤルに慣れている人にとってはより快適に感じるかもしれない。

本体上部には4つのプリセットボタンがあり、お気に入りのコンテンツを保存して簡単にアクセスすることが可能だ。デフォルトでは自分の「お気に入りの曲」、Spotifyの「Daily Drive(毎日のドライブ)」「Morning Commute(通勤時の1曲)」のプレイリストが設定されており、最後のプリセットは空になっている。そのままにしておくユーザーも多いかもしれないが、これはいつでも変更することができるという。

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このデバイスのリリースに先立ち、Spotifyは「Hey Spotify」という音声コマンドのサポートを密かに開始しているが、Car Thingにもこれが活用されている。曲、アルバム、アーティスト、プレイリスト、放送局、ポッドキャストなどのリクエストをSpotifyに声で直接伝えると、Car Thingが上部にある4つのマイクでそれを「聞く」。(4つあるのは、音楽を爆音で流していたり窓を開けていたりして車内が騒がしくてもCar Thingが反応できるようにするためだという)。

関連記事:すでに利用可能なモバイルの「Hey Spotify」音声コマンド機能公開についてSpotifyは沈黙

モバイルデバイスでは「Hey Spotify」の使用は任意で、アプリの設定からオフにすることが可能だが、当然Car Thingではよりスマートで、より安全性を重視した音声コントロールの使用が必要とされている。画面やダイヤルを触る代わりに声で指令を伝えることができ、おそらく子どもたちが後部座席から選択肢を叫んでも大丈夫だろう。

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Spotifyは音声データの使用に関するポリシーとして、ユーザーが話した内容の録音とトランスクリプト、およびユーザーに返されたコンテンツに関する情報を収集し、機能を改善するためにデータを使用することがあると説明している。同社は音声データ以外の情報は、モバイルアプリですでに収集している以上のものが新たに収集されることはないと説明しているが、Car ThingによってSpotifyは通勤時や長時間のドライブ中に人々が何を聴いているかをより直接的に知ることができ、それが将来の製品やプログラムプレイリスト、その他の機能に反映される可能性は大いにあるだろう。

「通常の1年間において、アメリカ人は合計で700億時間以上を車の中で過ごしており、現在アメリカの道路には2億5000万台の車が走っています」。Spotifyのグローバルカルチャー&トレンド部門の責任者であるShanon Cook(シャノン・クック)氏は説明する。「非常に多くの時間を路上で過ごしていることになりますね。だからこそ、車内での時間を乗り切るために何をするか、何を聴くのかというのは非常な重要な情報です」。

この限定リリース期間中、Car Thingは無料で提供され、選ばれたユーザーは送料のみを支払うことになる。これはCar Thingがまだ実験段階であるという理由からだという。

「これはSpotifyにとって初めてのハードウェアであり、当然成功させたいと考えています。最初に多くのことを知っておきたいため、この始め方が自然だと感じています」とSpotifyのハードウェア製品責任者であるAndreas Cedborg(アンドレアス・セドボーグ)氏は伝えている。

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Spotifyによると、同デバイスの現在の小売価格は80ドル(約8700円)となっているが、いつ販売を開始できるか、または実際に発売されるかもわかっていないという。ただしソフトウェアのアップデートを行うことは可能なため、Spotifyがいつか別の方向に進むことになっても、少なくともデバイスがすぐに使えなくなることはない。

今回ハードウェア製造に挑戦したSpotifyだが、ハードウェア企業になることを目指しているわけではないと同社は強調している。どちらかというと、Spotifyは車内に特化した体験を提供することで、次のSiriusXMになることを考えているようにも受け取れる(ダッシュボードに物理的にCar Thingを取り付けなければならないため、SiriusXMよりは付加的ではあるが)。長期的に見ると、自動車が年々スマートになり、インフォテインメントシステムが標準化されていく中で、Car Thingの製品ラインを開発することに大きな意味があるかは分からない。

Car Thingはスマートフォンを持つ米国のSpotify Premium加入者を対象に、carthing.spotify.comを通じて招待制で提供される予定だ。同社は出荷台数については明らかにしていないため、興味のある読者は早めにウェイティングリストに登録することをおすすめする。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)