イーロン・マスク氏のLas Vegas Loopはいまだ想定された移動速度を達成できていない

ラスベガス観光局(LVCVA)のCEO、Steve Hill(スティーブ・ヒル)氏は、市の広大なコンベンションセンター(LVCC)のキャンパスのさまざまな場所に乗客を運ぶ、The Boring Company(ボーリングカンパニー、TBC)による地下シャトルの計画を発表したとき、最も遠いステーション間の移動にかかる時間は2分弱だと予測していた。

ラスベガス・レビュー・ジャーナルによると、ヒル氏は2019年6月「もしシステムが機能しなければ、すべてのお金を返してもらいます」と述べたという。

TBCの担当者とLVCVAとの間で交わされたメールによると、その「2分間の約束」は、最近では4月にもメディアに対して繰り返している。そのメールは、Plainsiteが公文書法に基づいて入手した5051ページに及ぶ文書の一部だ。

今のところ、その2分間という目標は達成されていないようだ。

同じ記録請求で入手した詳細な運行報告書によると、LVCC LoopのTesla(テスラ)タクシーは、運行開始から6週間で、システムのステーション間の移動に平均4分近くかかっている。

3万回以上の無料乗車と7万5000人以上の乗客を対象としたデータによると、平均3分未満で移動した日はなく、平均5分かかった日もあった(TechCrunchは、システムの総輸送人数が1000人未満の日は除外している)。先週行われた大規模な自動車のカンファレンスの際に撮影されたビデオ(最近のものなので、今回の公開資料には含まれていない)でも、同様の所要時間が記録されている。

数分の遅れは、一般のコンベンション参加者にとってはもちろん大きな違いではないが、CESのような大規模な展示会の際にTBCが乗客数の目標を達成できない場合、多額の金銭的ペナルティが課される可能性がある。この目標と実績の乖離は、最近ゴーサインが出た、ラスベガスのより広い地域の公共Loopネットワークに対するTBCの約束にも疑問を投げかけている。結局のところ、LVCC Loopの実績は、マスク氏の地下タクシーが都市交通の手段として成り立つのか、それともテスラが支援するアミューズメントとしての性格なのかを示すものとなるだろう。

2021年4月9日、ネバダ州ラスベガスで開催されたLVCC Loop(ラスベガス・コンベンションセンター・ループ)のメディアプレビューで、セントラルステーションにデジタルマップが表示された(画像クレジット:Getty Images / Ethan Miller)

より大規模なVegas Loopシステムは、51のステーションと約29マイル(約46km)のトンネルで構成され、市内の多くの観光地を結ぶ計画だ。TBCはVegas Loopのプロジェクトページで、NFLスタジアムからコンベンションセンターまでの距離が、現在のLVCC Loopの4倍以上であるにもかかわらず、4分で移動できるとしている。

また、このままでは、LVCC Loopが1時間あたり4400人の会議参加者を輸送するという目標を達成できるかどうかについても、現実の運行データからは疑問が残る。

TBCは5月のデモイベントで、62台のTesla Model 3、X、Yに3人の乗客(荷物なし)を乗せて、その数字を達成した。しかし、実際には、6月初旬から7月中旬までの間に、それぞれのLoop車両に乗ったのは平均2人にすぎなかった。

2019年にTBCが締結した契約では、大規模なコンベンションでTBCが1時間あたり約4000人を移動できない場合、その度に30万ドル(約3420万円)のペナルティが規定されている。これほど大きな違約金が発生すると、Loopの存続に影響を与える可能性がある。Loopが6月の操業開始月に輸送サービスで稼いだのはわずか23万500ドル(約2630万円)だ。TBCは、運行台数にかかわらず、毎月16万7000ドル(約1900万円)の管理費も得ている。

また、LVCC Loopが7月中旬までに輸送した1時間当たりの最高乗客数は1355人だった。これは、LVCCがネバダ州の夏の暑い時期に最大規模の会議を行うことがあまりなく、輸送を必要とする乗客がそれほど多くなかったことが大きな理由だ。例えば、6月に開催された美容関係のコンベンションでは、Loopの運行エンジニアがLVCVAに「乗客数が極端に少ないので、車両数を減らしました」と書いていた。夕方に15分間乗客が入らなかったため、Loopの経営陣が早々にシステムを閉鎖したことも何回かあった。

Loopのサービスには3つのレベルがある。レベル2は、LVCCキャンパスで開催されるコンベンションがないときに、車両5台のみをアテンダントなしで運行する。レベル3は、23台の車両で最大2万人の来場者に対応する。レベル4は、30〜62台のTesla車を使い、最大規模のイベントに対応する。

大きな技術テスト

おそらく1月に開催されるCESには、18万5000人程度の来場者が集まる。Loopは先週、8月にTechCrunchが予測したとおり、70台の車両で運行する許可を得た。それでも、乗客数のペナルティを避けるには、所要時間を短縮するか、説得して1台の車両に少なくとも3人の乗客を乗せる必要がある。また、乗客を乗せずに走行する「ゴーストカー」を削減する必要もある。6月上旬に行われたLoopのオープニングイベントでは、ゴーストカーが大半を占めていた。

現在のトンネルでは、さらに多くの車両を入れることはできない。先週行われた70台のテストでは、市の検査官が「ステーション内のトンネルの中で、1~2秒の差で車両が出入りする場面が複数あった」と指摘した。Loopによる安全分析は、車間距離を6秒に保つことを前提としている。

ポジティブな評価

良いニュースはといえば、乗客はLoopを気に入っているようだということだ。「顧客はこのシステムをとても気に入っていて、キャンパス内の移動手段として利用しています。待ち時間は、最大の混雑時でも2分程度になるよう管理できます」と、Loop OperationsのディレクターSeth Hooper(セス・フーパー)氏は6月末に書いている。当初は15分ごとに2分間だけ点灯していたマルチカラーのトンネルライト「レインボーロード」も、利用者の要望に応えて現在ではほぼ常設となっている。

実は、このシステムの最大の問題の1つは、無許可の侵入者だ。Loopでは、10月にTechCrunchが報じた侵入車両に加え、コンベンションセンターの職員がのぞきに来たと思われる侵入が何度もあった。「無許可車両の最大の犯人は、LVCVAのカートです」とフーパー氏は書いている。

また、動物も侵入した。7月下旬、TBCの社員2名が、サウスステーション近くの雨水管に落ちた子猫を救出しようとした。

TBCとLVCVAは、この猫が最終的にどうなったのかという質問、また、運行データに関するその他の詳細な質問にはすぐに回答しなかった。しかし、TBCは、あらゆる交通機関が直面する安全に関わる事件をカタログ化している。少なくとも3回、Loopのドライバーがカーブを見誤ってフェンスかポールに衝突し、軽度の損傷を受けた。6月末までに発生した乗客のけがは、他の乗客が車両のドアを閉めた際、Loopの乗客が指に小さな裂傷と挫傷を負った1件のみだった。

こうしたデータは非常に貴重だ。TBCは1つの都市全体にサービスを提供するために、この技術を拡大する計画を立てているからだ。なお、LVCCとは異なり、Vegas Loopでは、子どもやペットの乗車が可能かどうか、また、有料の乗車券がいくらになるのかはまだわかっていない。

画像クレジット:Ethan Miller / Getty Images

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(文:Mark Harris、翻訳:Nariko Mizoguchi

イーロン・マスク氏のBoring Companyがラスベガス地下ループ拡張の初期承認を取得

Elon Musk(イーロン・マスク)氏のBoring Company(ボーリングカンパニー)は米国時間10月20日、ラスベガスの地下トンネルネットワークを介して、Tesla(テスラ)車に乗った乗客を輸送する交通システムを構築するために必要な最初の承認を取得した。

クラーク郡当局が特別使用許可とフランチャイズ契約を承認したことにより、Boring Companyはラスベガス・コンベンション・センターのキャンパスを結ぶ現在長さ1.7マイル(約2.7km)のVegas Loopシステムを、ラスベガス・ストリップ沿いのカジノ、市のフットボールスタジアム、UNLV(ネバダ大学ラスベガス校)など51のステーションを持つ29マイル(約46km)のルートに拡大することができる。また、最終的にはマッカラン国際空港まで延伸する。この承認については、Las Vegas Review-Journal(ラスベガス・レビュー・ジャーナル)が最初に報じた。

Boring Companyはトンネルの費用を負担するとこれまでに述べているが、クラーク郡当局は10月20日、その点を繰り返し強調した。クラーク郡との契約によると、フランチャイズ契約は50年間続くことになっている。

このプロジェクトは重要なマイルストーンを通過したものの、まだ完了したわけではない。今回の特別使用許可は、Boring Companyが各駅やトンネルの土地使用許可や建築許可を申請するためのものだ。同社はラスベガス市から別途フランチャイズ契約の承認も得なければならない。

画像クレジット:Ethan Miller / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

マスク氏の地下交通システム「Loop」は約束した無人ではなく運転手必須のテスラ「オートパイロット」を採用

正式公開から2週間足らず、The Boring Company(ザ・ボアリング・カンパニー)がラスベガスで運営するLoop(ループ)システムに初のセキュリティ侵害が発生した。

6月21日、Internationl Beauty Show(インターナショナル・ビューティー・ショウ)最終日の午前、地下を走行する同システムのTesla(テスラ)車団に「無許可車両」が侵入したことが、Loopの運営管理者とクラーク郡当局で交わされたメールでわかった。当該メールはTechCrunchが情報開示法に基づいて入手した。

一連のメールには、侵入事件以外にもLoopの運用に関する新たな詳細が記されていた。システムの非Teslaの電気自動車への驚くべき依存、Tesla車両に運転支援システムであるAutopilot(オートパイロット)の使用を許可する計画、および社内でテクノロジーが自律システムではないと位置づけられていることなど。

The Boring Company(TBC)はラスベガス市警察に侵入事件の捜査を依頼した。「無許可車両のドライバーは協力的で最終的にシステム外へと誘導された」とあるメールに書かれていた。

セキュリティ侵害による負傷や死亡はなかったが、TBCにとってなんとも不名誉な事件であることは間違いない。同社は5300万ドル(約58億2000万円)をかけた同システムのセキュリティと安全性をLVCC(ラスベガス・コンベンション・センター)に売り込んでいた。

TBCとLVCCの間で結ばれた経営合意によると、システムは「偶発的、悪意による、あるいはその他の無許可車両のトンネル内侵入を防ぐための物理的障壁」を備えることになっていた。システム進入路の防犯ゲート、地上駅を囲う数十基のコンクリート製車止めポールなどだ。

TBCもLVCCも、本事象に関する問い合わせに答えていない。TechCrunchはいずれかの回答が得られ次第本稿を更新する予定だ。

オートパイロットにチャンス到来

TechCrunchが入手したメール群は、スリルを求めた侵入者以上の情報を提供している。

そこにはTBCがLVCC Loopを走るTesla車の台数を62から70に増やし、Teslaのオートパイロットテクノロジーの使用を許可する計画の詳細が書かれている。これまでTBCは、全車両の運転支援テクノロジーを無効化し、人間ドライバーに操作させている。

新たな運用計画では、7つのアクティブセーフティ技術として、自動緊急ブレーキ、前方・側方衝突警報、障害物対応加速、死角監視、車線逸脱抑制、緊急車線逸脱警報、および2つの「フル・オートパイロット」技術である、車線中央維持と交通量感知型クルーズコントロールの仕様を要求している。

TBCがオートパイロット利用の必要性を説明するためにネバダ州クラーク郡の建築物・防火局に送ったレターをTechCrunchが他のメールとともに入手した。

TBCのプレジデントであるSteve Davis(スティーブ・デービス)氏は、当該機能を無効化することは「実績ある公道仕様技術」から「積極的に安全レイヤーを取り除く」ものであると書いた。デービス氏は「Tesla車でオートパイロットを作動させていたドライバーは、オートパイロットあるいは能動的安全機能を使用していなかったドライバーと比べて走行1マイルあたりの衝突が1/4以下だった」というTeslaの2021年第1四半期安全レポートの記述を引用した。「ここで明らかにされているように、Tesla車のこれらの機能を無効化することは事故の可能性を高めるものです」とデービス氏は書いた。

しかし、幹線道路交通安全局(NHTSA)は先週、いくつかの衝突事故を受けて同テクノロジーの正式な安全調査を開始した。

クラーク郡建築物・防火局責任者のJerry Stueve(ジェリー・スチューブ)氏はメールで次のように返信した。「我々はこの件を検討する予定ですが、『autodrive』(自動運転)という用語の定義とそれに何がともなうかをより明確にしていただければ、当部におけるこの要望の評価に役立つと思われます」。

「『オートパイロット』という用語がしはしば曖昧であり、車両とシナリオによって多くの異なる意味をなしうることに同意します」とデービス氏は返信した。(ここでデービス氏は上司であるElon Musk[イーロン・マスク]氏と意見を異にしているようで、マスク氏はオートパイロットの名前に対する批判に対して、誤解を与え「ばかげている」と反論している)。

「これらは『自律走行車』(autonomous)でも『自動運転車』(self-driving)でもありません」とデービス氏は続けた。「Teslaのオートパイロットと能動的安全機能を利用することで運転中の安全性に新たなレベルを加えることができますが、この機能を利用するためにはいつでもハンドルを取り戻せる十分注意深いドライバーが常に必要です」。

オートパイロットvs自律走行運転

TBCがLVCCに初めてLoopシステムを売り込んだ時の約束と矛盾することもあり、この区別は非常に重要だ。2019年、工事契約署名前に提出した地上利用申請書でTBCは次のように書いた。「Tesla Autonomous Electric Vehicles(AEVs、テスラ自律走行電動自動車)は高速、地下トンネルの乗客を3か所の地下駅まで運びます」。

2019年7月の計画書には「自律走行電動自動車の地下トンネルにおける活用は、既存の建造物や輸送システムに関わる妨害や対立を最小限にする独自の輸送ソリューションです」と書かれている。以来、同社は他の申請書類に同じような文言を使用しており、ラスベガス地域に数十の駅を設置する提案書も同様だ。

2021年1月、TechCrunchはLVCCとTBCの間で交わされた経営合意文書を入手し、そこにはこう書かれていた。「LVCCがPeople Mover Systemを購入した理由の1つはPeople Mover System車両の自律走行する能力にある【略】本契約書は、システムが有人運転を自律走行に切り替え、2021年12月31日までに、価格交渉を前提に、この変更を運用に織り込む意志があることを認識している」。

その期日はほぼ間違いなく守られない。2021年6月、スチューブ氏はデービス氏に次のように話した。「プロジェクトのはじめに話したように、自律走行運用の承認には、大がかりな監視、試験、検証が必要です。このプロセスには非常に多くの時間がかかります」。

それに答えてデービス氏は「私たちが自律走行あるいは自動運転の機能、運用を要求していないことを明らかにさせていただきたい」と述べている。

Loopの中の人間たち

問題は2つある。第1はTeslaのオートパイロットシステムが当面、ドライバーなしでは完全な動作ができないこと。第2は、おそらくもっと深刻で、Loopは国の標準が定める地下輸送システムの安全要求を満たすために、強くドライバーに依存していることだ。その種のシステムの乗客は、モノレールであれ電動車を使う地下的であれ、停電、火災、洪水などの非常時の安全が保証されなくてはならない。

TechCrunchがメールとともに入手したLVCC Loopの設計文書にはこう書かれている。「(我々の)訓練されたドライバーはシステムの安全面で重要な役割を果たします。緊急時にドライバーが乗客を適切に安全な場所に誘導する行動は、主要なリスク軽減措置です」。

TechCrunchが入手したいくつかの文書がこれを裏づけている。火災の際、ドライバーは「乗客の降車を補助し、歩ける乗客を最も近い出口に誘導する。ドライバーは口頭で指示を与える他乗客を身体的に補助すること場合もある」。ドライバーが乗客を率いて歩く場合「頻繁に振り返って全員がすぐ後に続いていることを確認する」。

ドライバーは、手に負えない問題がある乗客の判定と対応に責任を持ち、オートパイロット自体の動作状況の監視も行うとTBCはいう。「Loopにはドライバーが同乗し、能動的安全機能の使用を監督して必要に応じてブレーキや操舵を取って代わる人間が常に存在することを保証します」とデービス氏が6月に述べている。

TechCrunchが入手した数十件の文書と数百通のメールの中に、LVCC Loopの将来拡張の詳細や、TBCが完全自律走行に移行する方法や日程について書かれたものは1つもない。

Loopが米国土木学会の定める自律走行システムの安全原則に合致しているかについての質問に対して、TBCは次のように回答した。「自律走行運用に特有の基準はLVCC Loopには当てはまりません、なぜなら当システムは車両を操作するドライバーを有するからです」。

果たしてTBCがクラーク郡に伝えていることが、あるいはLVCCに伝えていることが、将来のLoopの運行にどれほど近いものなのかを知るには、時を待つしかない。

ちなみに、もしLoopの車両がまだドライバーレスではないのなら、LVCCはせめて全車両がTesla最新のモデルになると期待できるのか?おそらく違うだろう。

Loopのもう1つの要件は、米国障害者法(ADA)を遵守していることだ。クラーク郡担当者への7月のメールで、TBC幹部は、LVCC LoopのためにTesla以外のADA準拠電動車を購入する予定であることを明かした。

メールに具体的モデル名は書かれていなかったが、短距離用鉛酸蓄電池を備え、Tropos Motors(トロポス・モーターズ)の電動多目的車、Able(エーブル)と同じ仕様だ。この件に関してTroposもTBCも質問への回答はない。

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画像クレジット:Ethan Miller / Getty Images

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(文:Mark Harris、翻訳:Nob Takahashi / facebook

イーロン・マスク氏のLoopのドライバーには同社の「偉大なリーダー」に関する台本が渡される

Elon Musk(イーロン・マスク)氏がラスベガスで展開している地下システム「Loop」のドライバーたちは、同社での運転歴を尋ねる乗客の質問をはぐらかしたり、衝突事故については知らないと宣言したり、マスク氏自身についての会話を遮断したりするよう指示されている。

TechCrunchは、公文書法を利用し、6月にオープンしたLoopの通常業務を詳細に記した文書を入手した。このLoopは、ラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)の周辺で、改造したTesla(テスラ)車を使って参加者を輸送する。文書の中には、好奇心旺盛な乗客が質問してきたときに、新入社員が必ず従う「Ride Script(乗車に関する台本)」も含まれている。

この台本は、システムを構築・運営するThe Boring Company(TBC)が、新システムやその技術、特に創業者であるイーロン・マスクのパブリックイメージをコントロールすることにどれだけ真剣かを示している。

台本のアドバイスによれば「あなたの目的は、乗客に安全なドライブを提供することであり、楽しいドライブを提供することではありません。会話は最小限にして、道路に集中しましょう」「乗客はあなたに質問を投げかけてきます。質問される可能性のある内容と、推奨される回答がこちらです」。

乗客がドライバーに勤続年数を尋ねると、次のように答えるように指示される。「このトンネルをよく分かっているくらいには運転していますよ!」と答えるように指示されている。さらに「(何百回も運転しているとしても)1週間しか運転していないと思われると、お客様は安心できません。従って、勤務年数を話すのではなく、質問をかわすか、焦点をずらす方法を考えてください」とドライバーにアドバイスしている。

このシステムでどれくらいの衝突事故が発生したか(台本では「事故」という言葉を使っている)を聞かれたドライバーは、こう答えるように言われている。「非常に安全なシステムなので、よくわかりません。会社に問い合わせてみないとわからない」。TBCの従業員やドライバーの数、トンネルの掘削費用などを質問しても、同じように曖昧な答えが返ってくるはずだ(掘削費用は合計で約5300万ドル[約57億8800万円])。

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TBCでは、Tesla(テスラ)の先進的な運転支援システムであるAutopilotの使用が明らかに弱点となっている。クラーク郡は現在、自動緊急ブレーキや障害物を認識しつつ車線内にとどまる技術を含むさまざまな運転支援機能の使用をLoopシステム内のいかなる場所でも許可していない。

群は、整備士にこれらが作動していないかどうかを確認することを義務付けているほどだ。

文書には「初期点検チェックリストに基づくアクションの完了に加えて、整備スタッフは、手動によるループ操作のため、ハンドル操作やブレーキ・加減速アシスト(通称Autopilot)などの車両の自動機能が無効化されていることを確認します」と書かれている。TechCrunchが閲覧した車両整備プランによると、その後の確認はCWPMの技術者によって毎日行われる。

万が一乗客が、Loopのテスラ車がAutopilotを使用しているかどうかを尋ねた場合は、ドライバーは回答するだろう。しかしこれに関する内容は、TechCrunchが入手した文書では「公共の安全に関わる機密事項」とされ、他の多くの技術的な詳細と同様に編集されていた。

この決定について、TechCrunchは関係者に何度も説明を求めたが、回答は得られなかった。

名前を言ってはいけないあの人

台本には、マスク氏自身に関する質問への回答も含まれている。「この種の質問は聞かれることが非常に多く、非常にデリケートな質問です。当社の創業者に対する世間の関心は必然的なものであり、会話の大部分を占める可能性があります。可能な限り簡潔に、そしてそのような会話を止めるために最善を尽くしてください。乗客がその話題を強要し続ける場合は、『申し訳ありませんが、本当にコメントできません』と丁寧に伝え、話題を変えてください」。

にもかかわらず、このスクリプトには、マスクのよくある質問に対する答えがいくつも用意されている。マスクはどんな人かと聞けば、こんな答えが返ってくるはずだ。「彼はすごい人です!刺激的 / やる気にさせてくれる、など」。

さらにこんな追い打ちをかける。「彼の元で働くのは好きですか?」と尋ねると、北朝鮮のような答えが返ってくる。「はい、彼はすばらしいリーダーです!私たちがすばらしい仕事ができるようにやる気を与えてくれます」。

乗客が、マスク氏がどのようにビジネスに関わっているのか疑問に思った場合、ドライバーは次のように答えるだろう。「彼は会社の創設者であり、非常に深く関与し、サポートしてくれています」。また、マスク氏の不規則なツイートについての質問は「イーロンは有名人なのです。私たちはただ、すばらしい移動体験を提供するためにここにいるのです!」と跳ねのけられる。

しかし、ある質問は、すべての人がマスクの下で働くことに満足しているわけではないことを示唆しているようだ。「新聞で読んだ彼についての記事で、彼は『意地悪な上司である/マリファナを吸う/従業員に休暇を取らせない / など』というのは本当ですか?」ドライバーはどちらかというと曖昧な返事をするだろう。「その記事は見ていませんが、私の経験ではそんなことはありません」。

余談だが、TechCrunchが入手した数百ページに及ぶトレーニング文書や業務マニュアルには、Loopでの薬物使用やハラスメントを防止する強いポリシーが詳細に記されているが「休暇」という言葉は出てこない。

認められている技術

クラーク郡は現在、Loop内での自動運転機能の使用を禁止しているため、しばらくは人間のドライバーがシステムの一部となる可能性がある。しかし、クラーク郡に提出された設計・運用文書によると、このシステムには他にも多くの先進技術が導入されている。地下のLoopに設置された62台のテスラには、非接触型決済システムに使用される固有のRFIDチップが搭載されており、車道、駅、駐車場に設置された55個のアンテナの上を通過すると、その位置が特定されるようになっている。

また、各車両は、速度、充電状態、乗車人数、シートベルト着用の有無などのデータを24のホットスポットに送信する。乗客が気を付けるべきなのは、車内に設置されたカメラからの映像も常時ストリーミングされていることだ。これらのデータは、Loop内に設置された81台の固定カメラの映像とともに、コンベンションセンターから数ブロック離れた場所にあるオペレーションコントロールセンター(OCC)に送られる。映像は最低でも2週間は録画・保存される。

OCCでは、オペレーターがカメラの映像やその他のセンサーを監視し、セキュリティ上の脅威や、ドライバーの携帯電話の使用やスピード違反などの問題を発見する。OCCは、Bluetoothヘッドセットや車載用iPadを使ってドライバーと通信し、メッセージや警告、トンネル内の車両の位置を地図上に表示する。車両には、駅構内での時速16.09キロメートルからトンネルの直線区間の時速64.37キロメートルの範囲で厳しい速度制限があり、前の車と6秒以上の間隔を保たなければならない。

2021年の春に行われたテストでは、クラーク郡の職員が、一部のドライバーが規則を守っていないことを発見したことが文書に記されている。「速度制限について質問したところ、何人かのドライバーは、直線および / またはカーブしたトンネルの速度を間違って答えていた。駅、急行レーン、傾斜部の速度については誰も答えられなかった」とある文書には書かれている。「ドライバーは乗客にシートベルトを締めるようにアナウンスしておらず、質問されても、任意であるまたは必要ないと『答えていた者がいた』」。

また、何人かのドライバーは、前の車との安全のための距離を6秒維持できていなかった。TBCはクラーク郡に対し、これらの分野で再教育を行うと答えた。

TBC、クラーク郡、およびLVCCを管轄するラスベガスコンベンション・観光当局は、この件に関する複数のコメント要求に答えなかった。

LVCVAは最近、Alphabet(アルファベット)がスピンアウトした都市型広告代理店Intersection Media(インターセクション・メディア)とLoopシステムの命名権を販売する契約を結び、450万ドル(約4億9100万円)の利益を見込んでいる。

TBCは現在、近隣のホテルにサービスを提供するためLoopの2つの拡張工事を行っているが、最終的にはストリップとラスベガスのダウンタウンの大部分をカバーし、40以上の駅を持つ交通システムを構築したいと考えている。このシステムは、TBCが資金を提供し、チケット販売によってサポートされることになる。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:LoopElon MuskTeslaAutopilot運転支援システムThe Boring Company

画像クレジット:Ethan Miller / Getty Images

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(文:Mark Harris、翻訳:Dragonfly)

財政苦境に直面するイーロン・マスク氏のラスベガスループ地下輸送システム、The Boring Companyに賠償金数億円の可能性

米国ネバダ州の規制当局が課した制限により、イーロン・マスク氏のThe Boring Company(ザ・ボーリング・カンパニー、TBC)は、同氏初の地下交通システム「LVCC Loop(ラスベガス・コンベンションセンター・ループ)」の契約目標達成が困難になっている。

ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)のLoopシステムは60台以上の完全自律型高速車両を使い、展示ホール間で毎時最大4400人の乗客を輸送することになっている。しかしTechCrunchの取材によると、クラーク郡の規制当局がこれまでに承認したのは人間が運転する車両わずか11台で、さらに厳しい速度制限を設け、Tesla(テスラ)の「完全自律走行」先進運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」の一部であるオンボード衝突回避技術の使用を禁止しているという。そのようにブランディングされているものの、TeslaのAutopilotシステムは技術的には完全自動運転のレベルには達していない。Teslaとカリフォルニア州の規制当局との間で交わされたやり取りによると、内部的にも、Autopilotは特定の機能を自動化できる先進的な運転支援システムと見なされている。

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LVCCの母体であるラスベガス観光局(LVCVA、Las Vegas Convention and Visitor’s Authority)は、マスク氏にインセンティブを与え、TBCが約束を確実に果たすように促す契約を結んだ。契約は固定価格で、TBCがすべての支払いを受けるためには、特定のマイルストーンを達成しなければならない。この契約では、トンネル掘削完了、全体の作業システムの完成、テスト期間の終了と安全レポート、そして乗客を輸送できるという証明など、プロセスのさまざまな段階で支払いが行われる。最後の3つのマイルストーンは、何人の乗客を輸送できるかに関するものだ。Loopが1時間に乗客2200人の輸送能力を示すことができれば、TBCは440万ドル(約4億8000万円)を受け取ることができ、3300人を達成すれば再び同じ額をもらえる。4400人を達成した場合も同様だ。これらの輸送能力に応じた支払いの総額は、固定契約金の30%に相当する。

1時間に4000人以上の乗客を運ぶどころか、制約されたシステムでは1000人以下のキャパシティに制限される可能性があり、TBCは契約目標を達成できなかった場合、多額の違約金を支払うことになる。TBCは乗客から料金を徴収して収益を得ることはない(乗車は無料)。

【更新】本記事の公開直後にラスベガス観光局のSteve Hill(スティーブ・ヒル)代表は、今週行われた数百人規模のLoop試験で、予定されていた1時間あたり4400人の乗客を輸送できるキャパシティが実証されたとツイートした。これにより、後述の追加建設資金が確保される可能性がある。TBCは罰金を避けるためには、今後数カ月の間に実際のカンファレンスでこの数字をまだ達成しなければならない。TechCrunchは記事公開に先立ち数週間にわたり、LVCVA、クラーク郡、そしてTBCと何度も報道内容を共有した。実質的な回答をしたのはLVCVAだけで、キャパシティの問題や、子どもやモビリティの問題を抱える乗客についての未解決の質問については回答を得られなかった。

例えばTechCrunchが新たに入手した管理契約によると、CESのような大規模なトレードショーの際には、LVCCはTBCがシステムを運営・管理する1日ごとに3万ドル(約330万円)を支払うことになっている。しかし、2019年にTBCが締結した当初の契約書には、TBCが1時間あたり約4000人を輸送できない大規模なイベントごとに、30万ドル(約3300万円)の賠償金が課されると明記されている。

つまり、3~4日間のイベントで、TBCはシステムの運営費に加え数十万ドル(約数千万円)の損失を被ることになるのだ。パンデミック前の通常の年であれば、LVCCではこのような大規模なイベントを年12回ほど開催している。なお、TBCが車内広告などによる別の収益手段を計画しているかどうかは不明だ。

このキャパシティの問題は、すでにTBCにコストをかけている。契約では、TBCがパフォーマンス目標を大幅に下回った場合、マスク氏の会社は建設予算のうち1300万ドル(約14億3000万円)以上を受け取ることができないとされている。LVCVAはTechCrunchの取材に対し、契約に基づきTBCが1時間に数千人を輸送できる能力を実証するまで、建設費を保留していることを確認した。

年間20回ほど開催されるより小規模なイベントの場合、キャパシティ賠償金は適用されないが、契約によればTBCに支払われる1日あたりの使用料は1万1500ドル(約126万円)へと激減する。また、コンベンションの数にかかわらず、TBCは毎月16万7000ドル(約1830万円)の支払いを受けてシステムの稼働を維持することになっている。

米国時間5月25日に行われたLoopのキャパシティテストに参加したのはわずか300人と報じられているが、LVCVAの担当者は、1時間あたり4400人という数字は「十分に達成可能な範囲」と述べた。

管理契約によると、TBCは人間のドライバーチームの他にも、オペレーションセンター、メンテナンス・充電施設にスタッフを配置し、制服を着たカスタマーサービススタッフ、セキュリティスタッフ、フルタイムのレジデントマネージャーを提供しなければならない。

この料金体系は「予想される自律走行への移行」を考慮して、2021年末までにおそらく下方修正されることになっている。

画像クレジット:Ethan Miller / Getty Images

衝突警告システムは使用不可

Loopの初期運用に関する制限事項のいくつかは、クラーク郡の建築消防局に提示されたものだ。その内容は、ルート全体での制限速度を時速40マイル(時速約64km)に抑える、Loopの3つの駅構内では時速10マイル(時速約16km)に減速する、車両を11台までに制限することなどである。

クラーク郡消防局のWarren Whitney(ウォーレン・ホイットニー)副消防局長は、TBCからLoop内でTeslaの衝突警告システムを使用することは許可されていないと聞いている、と述べている。クラーク郡が米国時間5月27日に発行した交通システム運営ライセンスでは、Loopは「非自律走行」で「手動運転」の車両を使用しなければならないと規定されている。このライセンスは、計画されている62台の車両に対して発行された。クラーク郡当局およびTBCのいずれも、この運用制限に関する詳細な質問には回答しておらず、いつ、どのような場合に解除されるのかについても言及していない。

トヨタは以前、レーダーを使った衝突警告システムがトンネル内で正しく機能しない可能性があると警告していた。

衝突警告レーダーを欠いたTeslaが安全に「完全自律走行」できるかどうかは定かではないが、マスク氏は、車両からレーダーセンサーを取り除いてカメラのみを使用することを提案し、現在その計画を実行している。Teslaは2021年5月から、レーダーセンサーを搭載していない「Model 3(モデル3)」と「Model Y(モデルY)」の納車を開始した。レーダーセンサーがないことを受けて、米国道路交通安全局は、2021年4月27日以降に製造されたModel 3とModel Yには、自動緊急ブレーキ、前方衝突警告、車線逸脱警告、ダイナミックブレーキサポートについて、同局の認定がなくなると発表した。またこの決定を受け、Consumer Reports(コンシューマー・レポート)はModel 3をトップピックとして掲載しなくなり、米国道路安全保険協会はModel 3のトップセイフティピック+指定を外す予定だという。

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同消防局は他にも、何時間も続く可能性のあるバッテリー火災など、トンネル内での緊急事態への対応に懸念を抱いていた。ホイットニー氏はTechCrunchに次のように述べている。「電気自動車が事故を起こさずに炎上したケースは過去ありました。今のところ我々の計画は、まず人々を避難させ、その後、撤退して火が燃え続ける間待つことです」。

ホイットニー氏は、Loopシステムには多くのカメラや煙探知機が設置されていることに加え、毎分40万立方フィートの空気をトンネル内の両方向に移動させることができる「強力な」換気システムを備えていることを指摘した。これにより、乗客やドライバーは車の周りを歩いて脱出できるはずだという。TBCはそれほど深刻ではない事故のために、故障した車両を回収するための牽引車(これもTesla)を用意している。

TechCrunchの問い合わせに対し、TBCとクラーク郡はいずれも、Loopが車イス利用者、通常はチャイルドシートが必要な子どもや幼児、その他のモビリティの問題を抱えている人々、ペットや介助犬などの動物の輸送を許可するかどうかについては答えなかった。

消防隊員たちは、駅から遠く離れた場所で、2〜3台の他の車両が行く手を塞いでいるような事故を想定した地下システムでの訓練をすでに何度も行っている。ホイットニー氏は「11台であれば問題ありません」という。「しかし、クルマの数が増えてくるとそれは問題かもしれません。TBCは営利企業であり、効率を最大限に高めたいと考えていますから、キャパシティを増やそうとした時に、さらに議論が必要になるかもしれません」とも。

拡張計画

TBCは、既存のLoopでより多くの車両を使用したいと考えているだけでなく、すでにシステムの拡張を計画している。2021年3月末、TBCはクラーク郡に対し、LVCCの1駅から新しいResorts World(リゾート・ワールド・ラスベガス)ホテルまでの延長工事に着工したことを報告し、近くにあるEncore(アンコール・アット・ウィン・ラスベガス)までの同様の延長工事の許可も得ている。

さらにTBCは、ラスベガスのストリップやダウンタウンの大部分をカバーし、40以上の駅で数多くのホテルやアトラクション、そして最終的には空港を結ぶ交通システムを構築したいと考えている。そちらのシステムはTBCが資金を提供し、チケット販売によって支えられることになる。

このような拡張が可能かどうかは、TBCが比較的シンプルなLVCC Loopで約束した技術や運用をどれだけ早く実現できるか、また、トンネル内のタクシーがマスコミに書かれる量と同じくらい収益を上げられると実証できるかどうかにかかっている。

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(文:Mark Harris、翻訳:Aya Nakazato)

イーロン・マスク氏のThe Boring Companyがオースティンで事業立ち上げか

最近の求人広告を見ると、Elon Musk(イーロン・マスク)氏の、トンネル掘削と輸送のスタートアップであるThe Boring Companyはオースティンで次をプロジェクトを狙っているようだ。

2019年にラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)のピープルムーバーの建設と運営に関する契約を獲得したThe Boring Companyは、米国時間11月9日にオースティンでの採用に関するツイートを投稿した。同社のウェブサイトにはエンジニアリング、会計士および事業開発の職種など募集する職種が記載されており、これによりThe Boring Companyがオースティンにおける恒久的な事業を行おうとしていることががわかる。

The Boring Company:「オースティン・チョーク」は地質学的にトンネル掘削に最適な土壌の1つだという噂がある。​それが本当か知りたい?オースティンに仕事がある。

オースティンは、イーロン・マスク氏の活動の中心地になりつつある。マスク氏が率いるTeslaも2020年7月に、米国の第2工場の立地としてオースティン近郊を選び、そこに11億ドル(約1155億円)を投じて400万から500万平方フィート(約40万平米)の工場を作り、同社の未来的なCybertruck(サイバートラック)とTesla Semi、そして東海岸地区の顧客に販売するためのModel YとModel 3を生産する予定だ。

マスク氏は未来の工場を「エコロジカルパラダイス」と呼び、遊歩道や自転車レーンがあり、一般の人も歓迎される場所だとしている。The Boring Companyの最初の顧客がTeslaになるのかは不明だ。

The Boring Companyには5つの製造ラインがあり、そのすべてがトンネル関連だ。同社は2019年夏に1億2000万ドル(約126億円)を調達した。顧客だけでなく、公益事業者、歩行者、貨物、そしてLoopと呼ばれるサービスが利用するために設計されたベースとなるトンネルを提供している。

同社は「Loop」を、自動運転車で駅間のトンネルを通って時速150マイル(時速約241km)で乗客を輸送する地下公共交通システムだと説明する。また自律走行車はTesla Model S、3、Xだという。ちなみにTeslaの車両には強力な先進的な運転支援システムが搭載されているが、米国運輸省といった政府機関は完全な自動運転車と認めていない。

ラスベガス・コンベンション・センターの職員たちが飛びついたのはこのLoopだ。契約によると、LVCCのLoopは、会議などへの参加者を長さ1kmの2つのトンネルで、一度に4、5台のTesla車に乗せて運ぶ。TechCrunchが確認した計画文書によると、LoopはLVCCが期待しているほど多くの人を運べないようだ。The Boring Companyもそれを認めている。

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(翻訳:iwatani、a..k.a. hiwa