株式のように自分の価値を取引できる「VALU」が5億円調達、Android版アプリも公開

まるで株式のように自分の価値を取引できる「VALU」を運営するVALUは1月21日、シリーズAラウンドでグローバル・ブレインから5億円を調達したと発表した。また、今回の資金調達を期に、グローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏がVALUの社外取締役に就任する。

VALUは、ソーシャルメディアのフォロワー数・友達数などの情報に応じて算出された価格で模擬株式(VA)を発行し、ユーザー間で取引できるサービスだ。また、株式の優待制度と同様に、各ユーザーは株主(VALUER)に向けてイベントの参加権やノベリティといった優待を設定することもできる。VALUERは将来に期待が持てる人のVALUを購入し、優待を楽しみながら、その人がさらに有名になったときに値上がったVAを売却して利益を得ることができる。その点では、VALUは文字通り「ヒトに投資」できるサービスだと言えるだろう。

2017年5月にベータ版をローンチしたVALUはこれまでに、約10万人のユーザーを獲得。ユーザーの累計支援総額(VAの取引総額)は10億円を突破したという。

そのVALUは2017年12月に個人投資家の千葉功太郎氏から数千万円規模の資金を調達。そして今回シリーズAラウンドとして5億円の資金調達に踏み切った。同社はこの資金をもとに、開発強化のための人材採用、新規事業開発に取り組むという。加えて、VALUは同時にAndroid版アプリのリリースも発表している。

今後の方針として、VALU代表取締役の小川晃平氏は「2019年の春までに、SNS機能の追加拡張と優待機能の改善を行います。また、夏までには、取引機能の大幅な刷新・改善を予定しています」とコメントしている。

VALUが千葉功太郎氏から4500万円を調達、SNSを軸に継続的な関係性を築けるプラットフォームへ

個人個人が自分の価値を「模擬株式(VA)」として発行し、他のユーザーと取引できる斬新なサービスーー「VALU」をそのように紹介したのは、ベータ版がローンチされた翌日の2017年6月1日のこと。

ローンチ直後からインフルエンサーを始め続々とユーザーが集まり話題を呼んだ一方で、運営側が想定していた以上に投機的な使い方がされ、人気YouTuberの株式の大量売却騒動など問題も発生していた。

それ以降は誤解を招くとして「株式のように」という文言を削除。売却できるVA数を制限したり、短期的な売買ができない仕組みを取り入れたりなどルール作りを急ピッチで進めるとともに、社内の体制整備に力を入れてきたという。

そのVALUは7月24日、個人投資家の千葉功太郎氏から4500万円を調達したことを明らかにした。今回調達した資金を基にプロダクトの開発体制を強化する方針。現在iOSアプリの開発も進行中で、使い勝手を改善させながらさらなるグロースを目指す。

なお同社は昨年にも千葉氏から資金を調達をしているほか、過去にクリエイティブエージェンシーのPARTYや堀江貴文氏からも出資を受けている。

改めてVALUについて説明しておくと、同サービスは各ユーザーが自身のVAを発行し、売り出すことを通じて支援者(VALUER)を集めることのできるプラットフォームだ。VAの取引にはビットコインを用いる。VAには優待を設定することも可能。現在のユーザー数は約10万人、そのうち約2万人がVAを発行している。

ローンチ時には投機目的のユーザーが多かったが、それから約1年が立ちユーザー層にも少し変化があるようだ。現在は仮想通貨が好きな人や純粋に誰かを応援したいという人が利用者の中心。VAの発行者に関しても当初はインフルエンサーの存在が際立っていたが、今は色々な分野のクリエイターが増えてきている。

この1年で変わったのはVALUの中だけではない。「評価経済」や「信用経済」といったキーワードが徐々に浸透し始め、「タイムバンク」など個人の価値や信用に着目したサービスが台頭してきた(コミュニティやグループの価値に着目したサービスも同様に)。

その中でVALUの軸になっているのは、SNSをベースとしてVAの発行者と支援者が継続的な関係性を築けること。

「ファンクラブ会員権にも近いと思っている。(タイムラインを通じて)ユーザーに対して独自の情報を公開したり、その中で相互のコミュニケーションを楽しんだり、そういった空間を目指したい。イメージとしてはFacebookとTwitterの中間のようなコミュニティ。友達でもなくフォロワーでもなく、自分を応援してくれる特別なファンがついて、その人達と関係性を築ける場所にしていきたい」(小川氏)

小川氏の話を聞いているとオンラインサロンないし、「pixivFANBOX」のようなプラットフォームとかにも方向性としては近いのかなとも思ったけど、そことの違いは支援の仕方がポイントになるようだ。

具体的には上述したようなサービスは月額○○円のようなサブスクリプション型。VAを購入して(保有して)支援をするVALUとは形式が異なり、それによって発行者や支援者の捉え方や使い方も変わってくるという。

小川氏によると、徐々にVALUならではの新しい使い方も生まれているそう。例えばあるフリーランスのイラストレーターは、自身のコミュニティで出会ったアーティストのCDジャケットのデザインを担当。その報酬をお互いのVAを持ち合うことで支払う、といったことがあったのだとか。

今後もVALUでは軸となっているSNSの機能を中心にプロダクトを改善していく計画。冒頭で触れたアプリの開発も含め、今以上に発行者による情報公開や支援者とのコミュニケーションが取りやすいプラットフォームを目指していくという。

株式のようにコミュニティの価値を売買できる「fever」が3月オープン、事前登録ユーザーは3万人超える

2017年7月にサービスを発表したメタップスの「タイムバンク」は、人の時間を売買するサービスとして話題を集めた。株式のように自分の価値を売買できる「VALU」もある。それらのサービスに対し、3月よりリリースを予定しているAsobicaの「fever(フィーバー)」は、複数人で構成された“コミュニティ”の価値を売買できるサービスだ。

3名以上のメンバーが所属するコミュニティがfeverに“上場する”ことで、コミュニティの価値を表す「コミュニティコイン」を発行できる。コミュニティの活動に共感したり将来性を感じたりしたユーザーは、発行されたコインの購入を通してコミュニティへの金銭的な支援を行うことができる。

コインの購入に利用できるのは今のところ日本円のみだ。株式のように、1コインあたり〇〇円という価格で購入できる。コミュニティが発行できる総コイン数はAsobicaとコミュニティの運営側が協議の上、決定する。一方、コイン売り出し時の発行価格は、Asobicaがコミュニティの所属人数、SNSアカウントのフォロワーの人数などを参考に算出するという。

新規発行後のコインの価格は、株式と同じように取引所での需給関係で決まる。なので、将来性のあるコミュニティに“投資”をしておき、コインの価格が上がったところで売却したり、取引所で他のユーザーからコインを購入したりすることも可能だ。

また、コインは取引所で売買できるだけでなく、そのコミュニティが提供するサービスやプロダクトを意味する「チケット」と交換することもできる。例えば、コミュニティが何かしらのイベントを行うとすれば、その参加券やVIP席へのアップグレードがチケットで、その購入に利用できるのがコミュニティコインとなる。

ここまで聞くと、仮想通貨を発行することで広く資金を集める「ICO(イニシャルコインオファリング)」の仕組みと非常に似ているように感じる。こんなご時世でもあるから、気になるのはfeverで取引するコインは仮想通貨にあたるのかという点だ。

それについてAsobica代表取締役の今田考哉氏は、「コミュニティが発行するコインは、feverのサービス内でのみ売買できるものであり、不特定多数への売買を前提とした仮想通貨には当たらないと認識している」とコメントした。ただし、同社は将来的に、コインの決済手段として日本円だけでなくBitcoinなどの仮想通貨も受け入れていきたいとも考えており、そのために仮想通貨交換業者としての登録を現在準備中だとしている。

Asobicaは、2018年1月26日から2月9日にfeverへ上場するコミュニティの事前募集を行った。また、その事前募集したコミュニティの中からサービスリリース時点で上場できる5つのコミュニティを選ぶため、ユーザーによる投票を行うことも併せて発表した。

その結果、事前募集には計107のコミュニティが応募し、投票に参加した事前登録ユーザーの数は2万人以上となった。投票の後もユーザーの事前登録は受け付けており、現時点における事前登録ユーザーは約3万人だ。

ユーザー投票で選ばれた上位5つのコミュニティに加え、6位から20位のコミュニティから抽選で選ばれた2つのコミュニティがfeverの取引所へ上場することが決定している。

  • 黄桜すいプロジェクト: 秋田県由利本荘市の地域おこしを行う非営利民間団体
  • TOLAND: ビルを一棟単位でプロデュースし、カフェ、BAR、イベントスペースなどを運営
  • 日本ドローンレース協会(JDRA): オリンピック正式種目化を目指して活動するドローンレース団体
  • ぺーたーず: フリースペースの「ひみつきち」運営。昼はイベント、夜はカフェバーに変身
  • 箕輪編集室: 編集者の箕輪厚介氏が率いるクリエイティブチーム
  • イケハヤ経済圏:バーチャルブロガー「イケハヤ」を取り巻く経済圏
  • YBP PROJECT TEAM:日本初の世界基準BMXレースコース「YBP(Yuta’s Bike Park)」を運営

なお、各コミュニティの上場日や提供するチケットは、今後fever運営とのすり合わせの上で決定する予定だ。

今田氏は、2018年の終わりまでに数百のコミュニティを上場させたいと話す一方で、ユーザーが購入するコインの対価となるサービスやプロダクトを当該コミュニティが本当に持ち合わせているのかなど、コミュニティの質をチェックしながら徐々に数を増やしていきたいと語る。

Asobica代表取締役の今田考哉氏

今田氏は学生時代、出身地の福井県を盛り上げたいとの思いから、現地で野外音楽フェスティバルの運営活動を行っていた。その活動は徐々に規模を増し、福井県では「最大規模」とも呼べるほどに成長したという。しかし、今田氏は4回目の野外フェスティバル運営で失敗し、学生にして約50万円の借金を背負うことになった。

その時、「応援しているよ」という支援の“声”と、実際の金銭的な支援のあいだには大きなギャップがあることを改めて実感したと今田氏は話す。

「その経験で資金調達の仕組みに興味をもつようになった。その結果たどり着いたのが『クラウドファンディング』だったが、クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げる側は毎回ページを作り込む必要があるなど、ハードルが高い。一方で、支援する側には『応援はしたいけれど、その代わりに受け取る商品はいらない』という人もいる。支援の見返りとして受け取るコインを売買できるようにすれば、支援する人のモチベーションを高めることができるのではないかと考えた」(今田氏)

feverを運営するAsobicaは2017年9月の設立。これまで外部調達を行っていないが、同社初となる資金調達ラウンドに向けて準備を進めている最中だという。

自分株式の取引サービス「VALU」が千葉功太郎氏より数千万円調達、投機でない支援のためのSNSを目指す

模擬株式で自分の価値を取引できる「VALU」は本日、個人投資家の千葉功太郎氏を引受先とする第三者割当増資を実施した。金額は非公開だが、VALUの広報担当者によると数千万円規模という。

VALUは2017年5月31日にベータ版をローンチ。ローンチ当初、自分の価値が「時価総額」として数値化され、自身が発行する模擬株式「VA」を取引できるVALUは大きな反響を呼んだ。YouTuberやブロガーなど、多数のインフルエンサーがVALUに参加したが、全てが順風満帆でもなかった。

2017年8月、YouTuberのヒカル氏、ラファエル氏、いっくん氏、3人の株式を保有する井川氏が一斉に株式の大量売却を行い、彼らの株式を保有していたユーザーが損失を被る騒動が起きた。VALUは売買注文をすべてキャンセルし、一連の取引で発生した手数料収入は寄付するという措置を講じたことで騒動は収束したものの、ユーザーが安心してサービスを利用するためのルールの整備が追いついていないという印象を与えた。

この騒動後、VALUでは価格操縦行為の規制と利用者保護のためのルール作りを進めてきたと広報担当者は説明する。中でも大きな変更は、売却できるVA数を制限したことだ。騒動前までユーザーは自分のVAを制限なく売買できる状況だったが、現在は1回に売買できるVA数が発行発行数全体の10%未満までと制限をかけている。

投機目的ではなく、ユーザー間のコミュニケーションを促進するため、流動性が高くならないよう運営しているという。「騒動前は、売買を楽しむ場でしたが、今はSNSを楽しむ場、そこに支援したい方がいたら売買が発生するという投機ではないコミュニケーションができてきています」と担当者は説明する。

その効果があってか、現在、ユーザー数は8万人を超えたそうだ。VALUはファンや支援者を募ることができるサービスであるが、最近ではSNSとしても機能し、一緒に作品を作ったり、個展を開いたりする仲間が見つかる場にもなっていると担当者は話す。

今回の資金調達により、サービスのアプリ開発とグローバル展開を進める予定だ。まずはアメリカと中国でローンチし、その後欧州などの地域にも広げる。VALUはビットコインで取引する性質上、暗号通貨の法整備が進んでいる国から順次サービスを提供していく考えだという。

仮想通貨やICOは資本主義をどう変える?——CAMPFIRE、VALU、Timebankが語る

左からフリークアウト・ホールディングス代表取締役の佐藤裕介氏、メタップス代表取締役の佐藤航陽氏、VALU代表取締役の小川晃平氏、森・濱田松本法律事務所の弁護士・増島雅和氏、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏

8月3日から4日にかけて北海道・札幌市で開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2017 Summer in Sapporo」。初日のセッション「仮想通貨がもたらす信用経済と新たなビジネス」には、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、森・濱田松本法律事務所の弁護士・増島雅和氏、VALU代表取締役の小川晃平氏、メタップス代表取締役の佐藤航陽氏が登壇。ICOの可能性や評価経済のこれからについて語った。モデレーターはフリークアウト・ホールディングス代表取締役の佐藤裕介氏が務めた。

そもそも、ICO(Token Sales)とは何か?

最近ではTechCrunchの誌面でもよく見かける「ICO」というキーワード。Initial Coin Offering、つまり仮想通貨を発行することでの資金調達を指すこの言葉だが、実はまだその実情を理解できている人は少ないのではないだろうか。モデレーターの佐藤氏はまずそう語り、増島氏がICOの特徴を解説するところからセッションはスタートした。

ICO(増島氏はToken Salesとも表現した)はつまりトークン(独自の仮想通貨)を発行することで、資金を調達する手法。これを有価証券(株式)を使った資金調達と比較すると、次の図の通りだ。

増島氏が説明した有価証券とICO(Token Sales)の違い

株式でもトークンでも、特定の資金調達目的のために発行するが、その価値の基準は、株式での調達は事業体のキャッシュフローの割引現在価値を表す(ざっくり言えば、事業体が金を稼いでいるか、今後稼げるか)ことに対して、トークンでの調達はネットワーク全体の価値を表す(事業体が稼げるかだけでなく、ソーシャルグッドなアクションをすることで価値が高まることなども価値になる)という。

また株式はリアルな取引を行うため、流動性は低く国ごとの規制がかかる、トークンの取引はインターネットで完結するため、流動性が高く、国ごとの規制にはかからないという。流動性が高い分、ボラティリティも高くなるという。増島氏はICOについて、「やってることの本質は『グローバルな購入型のクラウドファンディング』だ」とまとめる。

ICO設計時の注意点

日本では昨日テックビューロがICOプラットフォーム「COMSA」を発表したばかりだが、世界を見ると、すでに直近12カ月(6月時点)でブロックチェーン関連企業がICOで調達した資金の総額が、VCからの調達額を上回っているのだという。

そのCOMSAの導入第3弾企業としてプレスリリースにも名前が挙がっていたのがCAMPFIREだ。家入氏は「早速株主から電話がかかってきて『どういうことだ』と聞かれた」と導入についてぼかして語った上で、クラウドファンディングとICOの関係について説明する。

「サービスを開始して6年、7年とやってきて、ICOの流れが急にやってきた。クラウドファンディングとしてこの波に対して“我関せず”のままではむしろ死んでしまう。自分たちに何ができるかを考えた結果、自分たちがICOをやろうかと。そう検討している中で(COMSAに)声をかけてもらった」(家入氏)

CAMPFIREが取り組むのはICOだけではない。ビットコインでプロジェクトを支援できる仮想通貨取引所の「FIREX」、プロジェクト終了後の資金ニーズを支援する融資サービス「CAMPFIREレンディング」なども展開している。家入氏は、「インターネットの本質は声を上げたくても上げられなかった人が声を上げられるという1点に尽きる。経済格差も広がっている中で、社会からこぼれ落ちてしまう人がいる」と語った上で、ICOが社会貢献的な領域の資金ニーズを解決できることがまだまだあるのではないかとした。

仮想通貨でプロジェクトを支援する「FIREX」

ここでフリークアウト佐藤氏は、ICOがIPO、つまり既存の証券取引所に上場することの代替になるのかを増島氏に尋ねる。

「まだ実証されていない領域なので試行錯誤ではあるが、現状トークンを出している上場企業があるかないかというとある。(東証JQGの)フィスコが『フィスココイン』をやっている。問題があるか、ないか、というと『ないはず』だと思っている。トークンと株の関係が論点になるかもしれないが、(トークンは)有価証券ではないので不明だ」(増島氏)

VALUのユーザーは想定の10倍に成長

テック業界から人気に火が付いたVALUは、ユーザーが自身を上場企業に見立てて、自分の価値を「VA」という単位でビットコインをつかって売り買いできるサービスだ。小川氏はVALUが直接的にICOであることを否定した上で、「個人をトレーディングカードのようにして上場させるサービス」だと説明する。

サービスのローンチは6月だが、ICOの隆盛といった追い風もあって、「想定していたユーザーは5000人くらい。だがそれが10倍ほど集まった。土日や夜9時以降のサービスは提供していなかったが、想定外の反響を集めている」(小川氏)と語る。サービス開始当初は取引の制限がなかったこともあって、価格が高騰するような事態にもなったが、その後はマンガ家やクリエーターなどが続々参入。コミュニティも形成されつつあるという。小川氏はVALUのミッションについて、「人の価値を発掘し、高める」ことにあると語る。

Timebankは個人の価値が大きい時代のためのサービス

メタップスが今秋提供予定のサービスは「Timebank」。これはスペシャリストの「時間」を時価で売買するというサービスだ。メタップスの佐藤氏はサービス提供の経緯について、「『空間』を売買することは『不動産』として以前からあるが、『時間』を売買できないのが不思議だった。時間こそ時価でやり取りすべきものではないか」と語る。

「Timebank」のイメージ

また佐藤氏は、Timebankがいわゆる「評価経済」の文脈から提供されているのではなく、中国のライブストリーミングなどに影響されて企画されたサービスだと語る。「中国の女の子たちが、働かないで(ライブストリーミングで)歌って投げ銭が来るとかそういうところからきた。まずは私の価値か会社の価値、どちらが大きいか試してみたい。個人的には個人の(価値が大きい)時代になって欲しいと思っている」(佐藤氏)

ところで、こういった新しい「価値」たちは、実際にどんな機能を果たしているのだろうか。小川氏はVALU上でのクリエーターの立ち位置についてこう語る。「今は画像しか投稿できないが、クリエーターやマンガ家さん、面白いことをやっている人はかなり人気になっている。フリーランスは社会的信頼は低いが、VALU内では人気を集めている」(小川)。これに対して、増島氏は、ネットワークを作るタイプのビジネスと、ICOや新しい価値の経済がマッチすると語る。

評価経済は資本主義をひっくり返す?

フリークアウトの佐藤氏は、最後にICOをはじめとした新しい価値の経済が広がれば、どんな世界が待ち受けているのかとパネリストに問いかけた。

「あまり中央集権化が重要ではなく、経済も自由に選べるようにしたい。選択肢が増えれば、勝ち組負け組もない。(今の経済での負け組は)『自分の経済が違う』となる。それをやっていきたい」(メタップス佐藤氏)

「色んなものが『価値化』されていくと思う。NPO法人などを、今のVCが支援してもいい。それをトークンで担保したりできる。生まれた時点で違う価値をどう評価するのか、そこに面白みを感じる」(小川氏)

「CAMPFIRE自体はいろいろ考えていかないといけないが、ICO的な手段がどうなっていくかというと、時代がやってくるのは分かっていて、その先にあるのが評価経済。『こいつだめだなあ』という人を助ける世界。今シェアハウスを作ろうとしているが、ICO的なものでできないか考えている」(家入氏)

“専門家の価値×スキマ時間”を売買する時間市場「タイムバンク」、メタップスが今秋ローンチ

5月末にローンチした「VALU」はユーザー自身の価値を株式に見立てて、ビットコインで取引を実現するサービスとして注目を集め続けている。特にシェアリングエコノミーという言葉を聞くようになってからだろうか、自分の信頼や価値をどうお金に変えるのかという話は至るところで話題にされている。

そんな中でマザーズ市場に上場するメタップスが打ち出したのは、ユーザー自身の価値、そして使う時間を10秒単位で取引する「時間市場」を作り出すという構想。同社は7月18日、時間取引所「タイムバンク(Timebank)」を提供すると発表した。サービスのローンチは初秋の予定だが、時間発行者(専門家)の申請を受付中だ。

メタップスいわく、タイムバンクはさまざまな専門家(時間発行者)の「時間」を売買できる取引所。ユーザーは専門家が発行する時間を購入、使用、売却、保有可能。保有した時間を使って専門家に事業の相談をしたり、食事をしたりできるという。また専門家は隙間時間を売り出すことで、収益を得ることができる。専門家を長期的に応援したい場合は、時間を使用せずに保有し続ける「タイムオーナー」という選択肢もあり、保有する時間はいつでも市場価格で欲しい人に譲ることができるという。また、運営アドバイザーとして、元陸上競技選手の為末大氏やキッズライン代表取締役社長の経沢香保子氏らが参画している。

冒頭で紹介したVALUに、「ココナラ」や「TimeTicket」といったタイムシェアリング系のサービスを組み合わせたサービスと考えるとしっくりくるだろうか。メタップスはこのタイムバンクで、「個人が主役の経済」「時間を通貨とする経済」「経済を選べる時代」の実現を目指すとしている。

なお、時間発行者の申請には、Twitter、Facebook、Youtubeいずれか、もしくは複数にアカウント連携が必要となる。これら各SNSのネットワークグラフデータをもとにメタップスがスコアを算出。スコアが57以上でない場合、申請ができない仕組みとなっている。

メタップスではタイムバンクのリリースに向けて、YouTuberやInstagramer、ライブ配信者などのインフルエンサー、エンジニアやクリエイター、ライターなどのフリーランス活動を支援する企業に対して1社あたり3000万〜1億円程度を出資して資本業務提携を進める。複数の企業と連携することで、個人の時間の価値を最大化するエコシステムの形成を進めるとしている。