メルセデスやBMWもCES出展を断念、パナソニックは会場での会見中止

対面でのCES出展を辞退する大企業の数が増え続けており、開幕まで残り1週間を切ったところで、さらに大手自動車メーカー2社が名を連ねた。米国時間12月29日、Mercedes(メルセデス)は、対面イベントを見送ると表明した。

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「顧客、パートナー、従業員、ゲストの健康と安全が最優先のためです」と同社は声明で述べた。「参加者の数が多く、国ごとに異なる規制があるため、すべての参加者のために堅実で安全かつ無害な計画を立てることは、残念ながら現状では不可能です。非常に残念な決定ですが、必要なことだと考えています」。

米国時間12月30日、BMWもこれに続いた。同社はメディアリリースを発表し、バーチャル記者会見への移行を発表した。「BMWグループは長年にわたり、ラスベガスで開催されるCESでイノベーションを発表してきました。パンデミックのため、BMWグループはCESで予定していたすべてのメディア活動を、ドイツからライブ配信する完全なデジタルプログラムに移行します」と述べた。

一方、LiDAR会社のVelodyne(ベロダイン)は、12月26日の週に同社の決定についてフルプレスリリースを発表し、次のように述べた。

Velodyne LiDARは、新型コロナウイルスの感染率が急上昇しているため、CES 2022に対面参加しません。従業員、パートナー、一般市民の健康と安全がVelodyneにとって最優先事項であり、この決定の主な要因です。

IBMも米国12月30日、対面イベントからの撤退を決定したことをTechCrunchへの声明の中で表明した。

新型コロナの感染状況が悪化しているため、また慎重を期して、IBMは2021年ラスベガスで開催されるCESに参加しません。バーチャルでのイベントに参加することを楽しみにしています。

また、パナソニックは、米国時間1月4日に会場での記者会見を予定していたが、新たに中止を決めた。同社は、バーチャルイベントにシフトし、会場でのプレゼンスは限定的となる見込みだ。

これらの企業は、GM(ゼネラルモーターズ)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)、AMD、OnePlus(ワンプラス)、MSI、Lenovo(レノボ)、Intel(インテル)、T-Mobile(T-モバイル)、AT&T、Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、Proctor & Gamble(プロクター&ギャンブル)、TikTok(ティクトック)、Pinterest(ピンタレスト)、そしてTechCrunchを含む多くの大手メディアの仲間入りをする。存在に気づいてもらうのにCESのような展示会に依存しているスタートアップにとって、オミクロンの懸念が高まる中で撤退を決断することは、特に難しいことだろう。しかし、展示会への参加を見送るという難しい決断をした中小企業から筆者のもとに入る連絡は増えている。

CESを運営する全米民生技術協会(CTA)は、米国時間1月5日(メディアデーは3日と4日)から始まるCESを断固として開催する姿勢を示している。

「CES 2022は、強力な安全対策を取って1月5日から8日までラスベガスで対面式で開催されます。また、ラスベガスに行きたくない、または行けない人々のために、デジタルアクセスも用意されます」と、CTAは12月22日付の声明で述べている。「私たちの使命は、業界を結集し、直接参加できない人々にもCESの魅力をデジタルで体験してもらうことに変わりはありません」。

クリスマスの日、ラスベガス・レビュージャーナルは「CESはラスベガスで開催されるべき」という見出しのCTA代表Gary Shapiro(ゲーリー・シャピロ)氏の論説を掲載した。その中で同氏は、メディアが「ドラマと有名企業のレンズを通してのみ物語を語る」と非難した。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

LiDAR業界の勢力争いとVelodyneの内部問題

1年前にSPAC(特別買収目的会社)企業Graf Industrial Corp(グラフ・インダストリアル・コープ)と合併して公開を果たしたVelodyne Lidar(ベロダイン・ライダー)が、米国時間8月5日に第2四半期業績報告を行った。それによれば、同社は徐々に費用がかさみ始めた内紛に苦しみながら、製品の新しい顧客を開拓するためにより多くの経費を投じたことがわかる。

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同社の第2四半期レポートによれば、ほんの数週間前に、Velodyne(ベロダイン)のCEOであるAnand Gopalan(アナンド・ゴパラン)氏が辞任し、800万ドル(約8億8000万円)の株式報酬を受け取っている。ゴパラン氏の辞任の時点で、同社は2021年の収益に関する事業見通しを再び述べ、7700万ドル(約84億9000万円)から9400万ドル(約103億6000万円)の間という予想は変更しないとした。

2021年の初め、創業者のDavid Hall(デイビッド・ホール)氏は取締役会の議長を解任され、妻のMarta Thoma Hall(マルタ・トーマ・ホール)氏は、取締役会が「不適切な行動」を理由に夫婦を調査した後で最高マーケティング責任者の役割を失った。VelodyneのCFOであるDrew Hamer(ドリュー・ヘイマー)氏によると、この大問題のために、同社はこの四半期に140万ドル(約1億5000万円)、2021年上半期には合計370万ドル(約4億1000万ドル)の法的費用を費やしたという。

取締役会とホール夫妻との戦いはエスカレートした。5月の書簡の中で、デイビッド・ホール氏は、SPACならびに、合併会社の取締役会の中の、SPACが任命したメンバーの財務実績の低さを非難し、 ゴパラン氏と2人の取締役の辞任を求めた。

米国時間8月5日の投資家への業績報告会で、ヘイマー氏は公開にともなう費用と法的費用の増加により、2021年の一般管理費は約35%増加すると予想されていると述べた。つまり紛争は終わっていないことを意味している。第1四半期から第2四半期にかけて、それはすでに21%増加しており、1700万ドル(約18億7000万円)から2060万ドル(約22億7000万円)となっている。

この「一般管理費」のカテゴリーは、第2四半期は第1四半期の支出の約2倍である8480万ドル(約93億5000万円)となった、より大きな運営費用カテゴリーに含まれている。

法的費用の増加は、加速するコストプロファイルの一部にすぎない。同社はまた、成長、すなわち販売とマーケティングに多額の投資を行っている。

運営費用の大部分は販売およびマーケティングに費やされたのだ。販売およびマーケティングにVelodyneは第2四半期に4720万ドル(約52億円)を費やしたが、これは第1四半期の710万ドル(約7億8000万円)から大幅に増加している。

2020年に行われたCMOへのサーベイによれば、(目安に過ぎないものの)企業は平均して総収益の約11.3%をマーケティング予算に費やしている。資金が投下された同じ四半期中には、販売およびマーケティング支出の完全な効果が現れることは決してないことには注意することが大切だ。言い換えれば、Velodyneの第2四半期の拡大された販売およびマーケティング費用が、より多くのビジネスをもたらしたかどうかはまだわからないということだ。

同社の収益は第1四半期から第2四半期にかけて減少し、1770万ドル(約19億5000万円)から1360万ドル(約15億円)になった。販売に対してこれほど多額の投資をしている企業にとっては、仮に第2四半期の支出によってもたらされる結果の大部分が、企業の第3四半期の収益報告まで現れないとしても、収益の減少を目の当たりにすることは望ましくはない。

Velodyneは、その努力が今後の四半期の売上高の加速につながることに賭けているのだ。

同社は、LiDAR(ライダー)製品の需要の増加により、下半期にはさらに4600万ドル(約50億7000万円)から6200万ドル(約68億3000万円)の収益を見込んでいると語った。実際、第2四半期の総収益は第1四半期よりも少なかったものの、同社の製品ベースの収益は約30%増加した。このことをヘイマー氏は「新型コロナウイルスのパンデミックによる不確実性のために、購入が遅れた顧客からのLiDARセンサーの需要が新たなものとなった」ためだと説明する。

「私たちのパイプラインは成長を続けています」とヘイマー氏はいう。「8月1日時点では213のプロジェクトがありましたが、これは5月1日の198プロジェクトからは増加しています。【略】署名および合意されたパイプラインの中には、2026年から増加し始めると予想される、新しいADAS(先進運転支援システム)の複数年におよぶ契約たちが含まれています」。

ヘイマー氏は、2025年までに、Velodyneは、署名および合意されたプロジェクトから10億ドル(約1102億円)を超える収益が得られる機会を有しており、さらにまだ署名および合意がされていないプロジェクトのパイプラインからは、最大45億ドル(約4960億円)に及ぶ収益が得られると推定している。

4月末、VelodyneはEV(電気自動車)企業のFaraday Future(ファラデー・フューチャー)から、来年発売予定のフラッグシップ高級電気自動車FF91の独占LiDARサプライヤーに選定された。Faradayの車は、その自動運転システムのために、VelodyneのVelarray H800 LiDARセンサーを使用する。

Velodyneは他にもいくつかの既存のパートナーシップを有しているが、自動車分野では激しい競争に直面している。

例えばVolvo(ボルボ)やトヨタなどの大手OEMと取引を行っているLuminar(ルミナー)は、最近チップサプライヤーの1つを買収した、これはVelodyneを含む業界の他の企業のように半導体の不足に悩まされることがないようにするためだ。Hesai(ヘサイ)もまた、Lyft(リフト)、Nuro(ニューロ)、Bosch(ボッシュ)、Navya(ナビヤ)、中国のロボタクシー運営企業のBaidu(バイドゥ)、WeRide(ウィーライド)、AutoX(オートエックス)といった顧客などからの注目を集めている。

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長い間業界の主要サプライヤーであったVelodyneは、最近一部の顧客を失っている。

例えばもともとVelodyneを支援していたFord(フォード)は、同社の株式を売却し、自動運転車技術を自動車メーカーたちに供給しているArgo AI(アルゴエーアイ)に乗り換えた。Argoは、自社製のLiDARセンサーを大幅に改善することで競争力を強化した。つまりVelodyneに依存する必要がなくなったのだ。それは波及効果をもたらし、Ford向けのLiDARを製造するためにVelodyneと提携していたVeoneerに影響を与えたのだ。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Velodyne LidarLiDAR

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)