米国通学システムスタートアップZūmが1万台のEVをプラットフォームに追加

通学する子どもたち向けに最適な移動サービスを提供するスタートアップのZūm(ズーム)は、1億3000万ドル(約146億円)のシリーズD調達を行ったことを発表した。これによって同社の総資金額は2億ドル(約224億円)を超えた。同社は、この資金を使って、1万台の電気バスやバン、車両を新たにプラットフォームに追加し、2025年までに電気自動車(EV)率を100%にすることを最終目標としている。現在、同社は1000台の車両を保有しており、それらは主に内燃機関で動いている。

オフピーク時には大量のバッテリーが使われない状態になることを想定した Zūmは、同社の車両をグリッドにエネルギーを還元する巨大な仮想発電所に変身させるために、エネルギー管理・分配ソフトウェアを提供するAutoGrid(オートグリッド)と提携した。

Softbank Vision Fund 2が主導し、Sequoia、BMW i Ventures、AngelPadなどの既存の投資家が参加した今回のシリーズD資金調達が行われたのは、Zūmがサンフランシスコ統一学校区(SFUSD)の輸送サービスを近代化するための1億5000万ドル(約168億円)の契約を獲得してから数カ月後のことだ。また、Zūmは、この資本を新しい市場や地域へのさらなる拡大のために使用したいと考えているという。

通学用の交通システムは、米国最大の大量輸送機関だと言われているにもかかわらず、前世紀からあまり変化していない。米国では毎日2600万人以上の子どもたちがバスに乗っているが、そのバスはいまだに時代遅れの黄色いバスで、ディーゼル燃料を吐き出しながら、効率が悪く位置追跡もされないルートを走行しているようだ。Zūmは、乗り換え時間を短縮したり特別なニーズを持つ生徒に対応したりできるように、バス、バン、車両を学区内に配置し、高度な車両管理プログラムを使って移動を最適化できるシステムを、2021年以降に導入することを目指している。

CEOで共同創業者のRitu Narayan(リトゥ・ナラヤン)氏は声明の中で「当社は、子どものために親が直接乗り物を予約する会社としてスタートしましたが、この成功を基にシステム全体にサービスを拡大できる可能性があると考えました」という。「本日私たちは、通学システムを悩ませてきた構造的な問題を解決するために、大きな一歩を踏み出しました。学校、保護者、子ども、ドライバーのすべてがより良いものを手に入れるべきだと考え、システム全体を刷新していきます」。

通学システムは学校区内における最大のコストの1つだ。Zūmは、遠回りのルートや硬直したスケジュールなどの非効率性を是正することで、SFUSDのような学区では、平均して年間300万ドル(約3億4000万円)の経費削減に成功しているという。すでにカリフォルニア、シアトル、シカゴ、ダラスの4000校と提携しており、今後数年間でアリゾナ、フロリダ、バージニア、オレゴン、ニューヨークなど12の州にサービスを拡大する予定で、次のターゲットとしてワシントンD.C.も視野に入れている。

Softbank Investment Advisersの投資ディレクターであるAndrew Straub(アンドリュー・ストラウブ)氏は「Zūmは、データとテクノロジーを駆使することで、子どもたちの安全性を高めながら、より良いサービス、効率性、持続可能性を提供し、通学システム刷新できていると確信しています」と述べている。「私たちは、過去1年間に、学校のネットワーク全体にZūmのサービスを導入した学区で、大幅なコスト削減などの即効性があったことに感心しているのです」。

画像クレジット:Zūm

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

電動スクールバス群を世界最大級のバーチャル発電所にするZūm、目標は最大1ギガワットを送電網に戻す

Zūmは学区と家族のために生徒輸送サービスを提供しているスタートアップだ。同社は、自社が運行してする電動スクールバスを使って、一番必要とされているとき、電力を送電網に戻す仕組みを考えている。

同社はエネルギー管理・配給ソフトウェアを提供しているAutoGrid(オートグリッド)と提携して、Zūmの電動スクールバス群団を世界最大級のバーチャル発電所に変えようとしている、と同社の声明に書かれている。Zūmの最終目標は、1ギガワットのエネルギーを送電網に戻す能力を備えることだと会社はいう。LED電球1億1000万個あるいは30万世帯に必要な電力量だ。しかしZūmはそれに必要なバス1万台のゴールにはまだ程遠い。現在同社の保有するバスのうち電動車はわずか10%で、これは供給不足のためだとCEO兼共同ファウンダーのRitu Narayan(リツ・ナラヤン)氏がTechCrunchに話した。

「スクールバスは最も最大の車輪つきバッテリーです」とナラヤン氏は言った。「興味深いのは、夜間や夏季といった電力需要のピーク時にはバスがあまり利用されていないことです。だから私たちの大きな目標は、昼間にバスを運行することだけではないのです」。

この提携の適用範囲は、スクールバス群の創造的な他目的利用にとどまらず、電気自動車産業全体に広がりつつある。EV(電気自動車)保有者が増える中、Zūmなどの会社はますます困窮してる送電網におけるギブ・アンド・テイクの必要性を認識している。今週、電動モペッドのスタートアップ、Revel(レベル)がGridRewards(グリッドリワーズ)との提携を発表した。GridRewardsはAutoGridと同様のサービスを提供するアプリで、電動モペッドの充電スケジュールを調整することで必要な時に送電網に電力を戻すことができる。

関連記事:ニューヨークの電力網に負担をかけずに電動モペッドの電力を供給するためにRevelはゲーム化したアプリを利用

電動スクールバスはこの種のエネルギー・シェアリングにかつてなく大きな機会を提供する。バイデン政権は電動スクールバスに250億ドル(約2兆7500億円)投資する計画を提案した。現在50万台以上の黄色いスクールバスが毎日2700万人以上の生徒たちを運んでいる。

両社は、Zūmが206台のスクールバスを運行するサンフランシスコと70台運行しているオークランド統一学区で提携事業を開始する、とナラヤン氏は言った。Zūmは全国に事業を展開する野望も持っている。すでにカリフォルニア州の複数の学区とシアトル、シカゴ、ダラスと交渉中で、次はワシントンDCを狙っている。

「通学輸送のEV化は、地域が大気の質や生徒と地域住民のための環境衛生を改善する上で極めて重要な役割を果たします」と同氏は声明で語った。

関連記事
スマートリモコンのNatureが7.5億円調達し電気小売事業強化、クックパッド宇野雄氏がデザインアドバイザー就任
電力小売「Natureスマート電気」が「テクノロジーでラクラク節電キャンペーン」で夏の電力不足解消を支援
【コラム】エネルギーエコシステムは不安定な未来に適応する「エネルギーインターネット」の実現に向かうべきだ

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Zūm電気自動車バス電力

画像クレジット:Zūm

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook