「動物なし」のモッツァレラチーズの商品化を進めるNew Cultureが約28億円を獲得

Allied Market Research(アライド・マーケット・リサーチ)によると、チェダーやモッツァレラの販売に牽引され、米国のチーズ市場だけでも2019年には343億ドル(約3兆9300万円)、2027年には455億ドル(約5兆2200万円)に達し、年平均成長率は5.25%になると予測されている。

それに比べて、ヴィーガンチーズの業界は小さく、同社の調査によると、2019年の市場規模は約12億ドル(約1370億円)、2027年には44億ドル(約5050億円)に達すると予測されている。

しかし、このような大きなギャップにもかかわらず、シンジケートの投資家たちの「牛がいない牛のチーズ」を販売するNew Culture(ニュー・カルチャー)への、シリーズAでの2500万ドル(約28億6900万円)の資金投入は止まらなかった。それどころか、投資家たちは、ベイエリアを拠点とする設立3年目のこのスタートアップ企業が、動物を使用しないモッツァレラを通じて、市場を大きく成長させることができると考えている。投資家のSteve Jurvetson(スティーブ・ジュルベッソン)氏によれば、味も香りも伸び方もミルクチーズのようであり、彼が「これまでのところ、非常に不愉快だ」と表現したほとんどのヴィーガンチーズとは一線を画す。

ジュルベッソン氏によると、不足している成分は牛乳のカゼインタンパク質で、これまでは牛乳からしか摂取できなかったという。一方、New Cultureでは、精密な発酵プロセスにより、カゼインタンパク質を大量に生産しているという。VegNewsの記事に説明されているように、New Cultureは、巨大な発酵タンクを使って、糖液を与えた後に目的のタンパク質(αカゼイン、κカゼイン、βカゼイン)を効果的に発生させるよう微生物にDNA配列を注入しているそうだ。

その後、カゼインを回収し、水、植物性油脂、ビタミン、ミネラルなどと混ぜ合わせてモッツァレラを作る。

コレステロールや乳糖が含まれていないため、より健康的な製品ができあがる。また、環境にも優しい。実際、乳製品を使ったチーズを1oz(28.35g)生産するのに必要な水の量は56gal(約211L)といわれている。(土地の使用量もはるかに少なくて済む)。

なお、New Cultureのモッツァレラは近所の食料品店では販売されていない。まだいまのところは。計画では、まず2022年から全国のピザ屋にこのチーズを卸すことになっている。

ニュージーランド出身で、遺伝学と微生物学を学び、以前は教育関連のレビューサイトを立ち上げて販売していたNew Cultureの共同設立者兼CEOのMatt Gibson(マット・ギブソン)氏は、最終的には、ヨーグルトやアイスクリーム、さらには牛乳も作ることができるだろうと述べている。しかし、当面はモッツァレラが中心であることを強調した。

New Cultureのラウンドは、Ahren Innovation Capital(アーレン・イノベーション・キャピタル)とCPT Capital(CPTキャピタル)がリードした。また、ADM Ventures(ADMベンチャーズ)、Be8 Ventures(ビーエイト・ベンチャーズ)、S2G Ventures(S2Gベンチャーズ)、Marinya Capital(マリンヤ・キャピタル)、そしてジュルベッソン氏とパートナーのMaryanna Saenko(マリアンナ・サエンコ)が運営するFuture Ventures(フューチャー・ベンチャーズ)が新たに参加した。

今回の資金調達には、SOSVのIndieBioプログラム、Bee Partners(ビー・パートナーズ)、Mayfield(メイフィールド)、Bluestein Ventures(ブルースタイン・ベンチャーズ)、Kraft Heinz(クラフト・ハインツ)のコーポレートベンチャー部門であるEvolv Ventures(エボルブ・ベンチャーズ)など、以前からの支援者も参加している。

画像クレジット:New Culture

原文へ

(文:Connie Loizos、翻訳:Akihito Mizukoshi)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。