【次世代SNS編】米国SNSの最新事情とZ世代が新しい場所を求める理由(その3)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

この記事では、Z世代が求める次世代SNSについて考察していく。TwitterとSnapchatの最新事情についてこちらの記事、InstagramとTikTokの最新事情についてはこちらの記事を参照してほしい。

Z世代にリーチするために知るべきこと

SNSを見るときに最も重要なのは、若者の行動を観察すること。特に今のSNSがダウントレンドなのか、アップトレンドなのかはZ世代を見るのが一番いい。それは次世代SNSは2つの要素で作られていて、その1つが若者、特に10代から20代が作り上げるカルチャーなのだ。Facebookも大学生の中で人気に、Snapchatは高校生、Musica.lyは中高生の中で人気になってから、それぞれ一般化した。

投資銀行のPiper Jaffray(パイパー・ジャフレー)が2019年に出したレポートによると、Z世代の間ではInstagramが一番使われているSNS、一番好かれているSNSはSnapchat。TikTokは三番手で、フィルターアプリのVSCOは横ばい。Facebookの利用頻度がかなり下がっている。ただし、圧倒的にInstagramとSnapchatに寄っている。

Z世代の「BSメーター」

Z世代はSNSを通して新しいビジネス、文化、政治を学んでいる。これは過去ない現象だ。よりクリエイティブであり、カメラの前にいるのが気にならない。短期間の集中力で、圧倒的な「BSメーター」(デタラメに対しての感度)が高い。SNS慣れしているZ世代はとてつもないコンテンツ量を毎日見ている。そのため、何が広告で何がリアルなコンテンツかを一瞬で判断できる能力を持っている。Instagramなどでは広告やインフルエンサーが多いので、変な商品のプロモーションやマーケティングを見るとそのブランドを信頼しなくなる。さまざまなブランドのオプションがある中、信頼性を切ってしまうと二度と戻ってこない可能性が高い。そのためZ世代ユーザーへリーチしたければブランディングをきちんとやらなければならない。それはブランドの裏の人間のストーリー、会社の立ち上げの話、会社のカルチャーも含めて「完全なる透明性+ストーリー+コメント・DMのエンゲージメント=強いコミュニティーとブランド」だ。

Z世代とミレニアル世代の違い

まず認識しなければならないのは、ミレニアル世代はインターネット世代だがZ世代はスマホ世代と言うこと。もちろんミレニアル世代はスマホと一緒に育っているが、Z世代はスマホの前の世界をほぼ知らない。それによってアプリの使い方、考え方、信頼するブランド、見ているコンテンツやセレブが違う。

ミレニアル世代はハリウッドのレッドカーペットで歩くスターを見ている中、Z世代はTikTokやYouTuberを見ている。そして買い物でも、ミレニアル世代は大手リテーラーと比べてD2Cブランドを多少好む程度なのが、Z世代は圧倒的にオンラインで生まれたD2Cブランドを好む傾向にある。

Instagramの使い方も違う。Z世代の多くは過去の写真をアーカイブする傾向にあり、6枚ぐらいの写真しか見せないことが多い。昨日ではなく、今日の自分を表現したいために直近の写真しか見せない傾向だ。

Z世代が求めているプラットフォームとは

自己表現をクリエイティブにできるプラットフォーム、そして自分の弱みや本性を見せられるプラットフォームがいま最も求められている。フィルターなし、ブレるカメラワーク、磨かれてないグラフィックを求めている。ミレニアル世代で統一された「インスタ映え」とは大きく違う方向性で、ユニークさが今のクールになっている。

そして写真ベースなのは明らか。TikTokは音楽メディアとして報道されていて、実際にTikTok上で新しい音楽が生まれているのは確かだが音楽メディアではない。

Z世代は完全に「今日の自分」にフォーカスを当てている。そして明日の自分は変わってもいい、アイデンティティーの入れ替えと変わった人格・表現力が受け入れられているのが現状だ。TikTokはまさにそう言うプラットフォームであり、その影響なのかYouTube上のインフルエンサーのコンテンツも進化し始めている。YouTuberのEmma Chamberlain(エマ・チェンバレン)さんのコンテンツを見ると編集していない風に見せたり、スッピンで家でダラダラしている姿を見せている。

TikTok上では過去なかったコンテンツが存在し、TikTokのフィードによりローカルの文化やMemeが世界展開するのが普通になった。今後のSNSはこのような世界観を入れ込まなければいけない。

なぜいま米国のVCはSNSへの投資を必死に探しているのか?

米国のVCは最近「次世代SNSを探している」とよく言い合っている。Facebook、Instagram、Snapchat、Twitter、TikTokがある中でなぜそう思うのか?それは全体のSNS市場の流れを見るとわかるのが、今のトップSNSプラットフォームはソーシャルからステータスメディアに変わっていて、このシフトにより新しいSNSが誕生するチャンスが出てきている。

ほとんどのSNSは10年~15年前にスタートして、小さくコントロールされたコミュニティからスタートした。Facebookはハーバードの学生、WhatsAppはプライベートグループメッセージ、Snapchatは友達との1対1メッセージ。今は成長率が減速しているため新しい会社を買収したり、ユーザー成長や売上、マージンにフォーカスしている。SNSのサービスが成熟すると、親密なネットワークから放送・配信ユースケースが一番になる。2019年初めにMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はFacebookはピークに到達して、これからは「街広場」ではなく「リビング」の立ち位置として戻らなければいけないと語った。SNSが成長する中で、ユースケースがエンタメ、コミュニティ、ユーティリティーから「ステータス」に移行していく。この進化は成熟されたどのSNSにも起こる。

本音が言えなくなるプラットフォームに

例えばTwitterで考えてみよう。2006年にローンチしたTwitterは、エンタメとコミュニティー、会話の要素が強かった。Twitterは面白いアップデートをSMS風にウェブ上で遅れるエンタメ感と、友達を集めてお互いの出来事や思いを共有できるコミュニティーだった。当時はステータスやユーティリティーは一切考えてなかった。

Twitter共同創業者のEvan Williams(エヴァン・ウィリアムズ)氏も「誰がこのアプリが役に立つ必要があると言った?」と発言したこともある。2020年版のTwitterは強調している特徴をかなり変えている。ユーザーはTwitterをかなり役に立つ方法を見つけた。まず、ニュースの場として役に立ち、さらにビジネスが顧客とコミュニケーションできる場にもなった。Twitterは あとあとフォロワー数やリツイート数にてステータスを作るようになった。多くのツイートは公開されているためユーザーはステータスを獲得するのが目標となる。そうすると本音を語れない、もともと友達とシェアしていたものがTwitterでは共有されなくなる。

FacebookからInstagramへ、そしてInstagramからSnapchatやTikTokへという流れは各SNSがソーシャルメディアからステータスメディアへ変わり始めたからでもある。Facebookはよりオープン化(そこまで親密ではない友達とつながった)したおかげで、本音の投稿を出さなくなった。Instagramも「親がInstagramに居るから本音が言えない」と語る大学生や高校生が多かったためSnapchatに移行。そしてInstagramの「インスタ映え」に疲れはじめたユーザーは本来の自分を表現できるプラットフォームを求め、TikTokにたどり着いた。

重要視されたステータスによってのプレッシャー

SNSだとユーザーに対してバリューを発揮する瞬間やKPI(重要業績評価指標)がある。Facebookだと友達の数、Instagramの初期だと5人フォローしたらその「マジックナンバー」にたどり着く。友達がいるから投稿したり、会話をしたくなるので、最低限の人たちとつながるように仕組まれるのは当たり前。面白いのはSNSが成熟したタイミングで逆の事が起こる。SNS内で一定のユーザー数を突破するとユーザーは不思議と投稿したくなくなる。これをソーシャルネットワークからステータネットワークへのティッピングポイントと呼べるだろう。

Facebook、Instagram、Snapchat、TikTokで同じ現象が起き続けている。最初に集まったFacebookだったが、10代の子からすると家族につながっているので、高校や大学でパーティーしている写真はなかなか出せない。これによって何を投稿するのかを考え、投稿のハードルが上がる。

Instagramも「インスタ映え」を目指してライフスタイルを変える人や、「いい写真しかあげられない」プラットフォームとして認識されてしまった結果、投稿回数が減ってInstagramに不満を抱える人も増えている。そもそもInstagramもFacebookから離れたい人たちが始めたプラットフォームだが、最近だとInstagramのフェイクアカウント「Finsta」が増えている。10代の子たちが親や家族に見られて良いアカウントを立ち上げ、別途自分用のアカウントを作っている。Instagramではステータスを求めて詐欺アカウントも出てきている。

SNSのティッピングポイントは本音コンテンツの投稿を戸惑う瞬間。親がいるからFacebookからInstagramへ、そしてSnapchatへ、そして今はTikTokへ。Facebookだと「いいね」、InstagramとTwitterだと「フォロワー」が増えるだけ「ステータス」が上がり、それでビジネスやインフルエンサーとして活動できるため「ステータス」を求めるメディアとなった。

総合的に見ると、少なくともFacebookとInstagramはソーシャルの領域を超えて、今はステータスメディアになっていると思う。

アーリーステージのVCであるCanaan PartnersのLaura Chau(ローラ・チャウ)氏が語るには、ソーシャルとステータスのサイクルには以下の5つのステップがある。

  1. 5つの特徴の中からSNSサービスが生まれる
  2. SNSが成長するに応じてユーザーのステータスを求める需要に応えるように機能設計などを行う
  3. プラットフォームのユーザー数が多すぎるとステータスメディアへシフトする
  4. ステータスメディアになると本音コンテンツや繋がりを求めて新しいSNSが立ち上がる
  5. そのSNSはギャップを埋めながら、新しい世代へステータスを引き寄せる新プラットフォームとなる

ステータスが王となり、会話が犠牲者となる。Twitterだけではなく、ほとんどのプラットフォームはこの流れに入ってしまっている。逆に言えば、SNSがこのようにステータスメディアとしてシフトしていく中で新たなSNSプラットフォームが出てくるチャンスでもあると思っている。

注目されている次世代SNSサービス

米国VCが次世代SNSを探している中で、いくつか候補が出ている。中にはFortnite(フォートナイト)、Minecraft(マインクラフト)、Roblox(ロブロックス)などのゲーム内のSNSや、DiscordやClubhouse、TTYLなどの音声からのSNSが候補として挙がっている。もちろんそれ以外に多く次世代SNSを狙っているアプリはあるが、以下は特に気になっているものを紹介しておく。

シリコンバレーのVCが必死に追いかけているClubhouse

米国のVCは最近「Clubhouse」というアプリで大盛り上がりだ。

Twitterのオーディオ版に似ていて、いろいろな人の会話に入り込み、聞いたり、参加することができる。まだベータ版だが、シリコンバレーの著名VCやテック業愛のトップの人たちが必死にアクセス権を獲得しようとしている。このようなVC業界でSNS系にハマったのは、Meerkat、Secret、Foursqure、Twitter以来な気がする。

このアプリの凄いところは、今のところPMF(プロダクトマーケットフィット)を達成しているように見えること、行動変化を及ぼしていること。何名かのVCにヒアリングしたところ、ちょっとした空き時間でアプリをチェックするようになったり、寝る前、起きた時にまず見るアプリになってきているそうだ。ライブで音声会話を聞ける、特に業界トップの人たちの会話をフィルターなしで聞けるのはなかなかない。そして仕事やタスクをやりながらできる手軽さのおかげで評判が高い。

Twitterやポッドキャストとのポジショニングをかぶらないようにする必要があるが、うまくいくとポッドキャスト市場とイベント市場を潰しに行ける気もする。ライブであることがポッドキャスト市場との大きな違い。いまは録画機能がないので、その場にいない限り会話が聞けない。それが人をこのアプリに引き戻せる力でもある。著名ベンチャーキャピタリストであるMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏でさえもClubhouseのユーザーのひとりだ。

そしてClubhouseの一部の魅力は半端ないスピードでプロダクト改善、プロダクトリリースをしていること。2人しかいないのに1日に数回新規リリースしている。Y Combinator共同創業者のPaul Graham(ポール・グラハム)氏も言っているが、新しい機能を出せるスピードは意外にスタートアップの成功率と相関する。

まだ初期段階の会社であり、2名体制なので実際にヒットするかはわからない。そして今は親密な感じでアプリを利用できるが、今後はその親密度を保ちながらスケールできる方法を考えなければいけない。そして最近だと調子が悪いと噂されているTTYLなどを見ると、Clubhouseはなぜうまく行っているかが少し不思議。もしかしたらTTYLはコアユーザーが間違っていたのかも?友達間がメインだったTTYLだと、自分で何十人も集めて会話をスタートしなければいけないのと比べて、Clubhouseは知らない人の会話、特に著名人の会話が聞けるのがポイントかもしれない。

もちろんClubhouseは新型コロナウイルスのパンデミックのタイミングだから伸びていると言える点もある。ほかの人の声を聞きたい需要が増えているからだ。ただそれ以外にも、フェイクニュースの広がりの影響もある気がする。Twitter上で知らない人の声を聞くのが面倒、悪いコメントが多すぎる、そして信頼している人と会話ができない環境がある中から生まれたのもある気がする。

参加型SNS

Facebook、MySpace、Friendsterなど初期世代のSNSは、99%の人が見るだけで、1%の人が書くというプラットフォームだった。誰かのプロフィールに行ってコンテンツを見ることが多かった。コメントや返信など多少はしたかもしれないが、大半は見るだけで終わる。Facebookは進化して行った中でmコメントやニュースフィード、「いいね」ボタン、絵文字でのリアクションができるようにして、書くことによりエンゲージさせようとしている。ただ、一個人が情報・コンテンツを共有することをベースにすると圧倒的にコンテンツを書く人が少なくなる。そこで新しいモデルにFacebookは向かっている。それがFacebook Groupだ。

タウンホールからリビングに移行したいFacebookが、Facebook Groupにかけている理由は明らか。それはGroupだと個人が中心として成り立たないから。そのグループの構成、テーマ、コンテンツに重点が置かれる。今後のSNSはパッシブにコンテンツを受け入れるだけではなく、アクティブにコンテンツを作成できるものとなる。

その中では、Discord、Fortnite、Minecraft、Robloxなどが含まれている。アクティブにプラットフォーム上で参加するのが前提・必須となると、よりそのプラットフォームにいる意味合いが生まれる。MinecraftやRobloxは完全にクリエイター側が中心となっているのはその理由だ。この「参加型」と言うのが今後キーワードになってくる気がする。

結論

Twitter、Snapchat、Instagram、TikTokは争っているものの、各自ポジショニングをしっかりしているため、ユーザーが両立できているように見える。ただ、5年~10年スパンでどんどん新しいSNSが生まれてきて、古いSNSが進化しない限りユーザーが違うプラットフォームに写ってしまう。その中、米国VCはすでに次のSNSを探している。

新しいSNSを作るのは2つのドライバーがある。

  1. 10代~20代前半から生まれる新しい文化
  2. ステータスメディアが生む苦しさ

本音が出せない、そしてステータスを求めるプレッシャーでSNSは成熟するほどコンテンツエンゲージメントが悪化してしまう。広告が収益ベースとなるプラットフォームはそうなる運命である。マーケターはすべてのものを台なしにするという話は事実。Facebook、Twitter、Instagram、そして徐々にTikTokもインフルエンサーマーケティングや企業プロモーションであふれ始めている。そうなると、本来作られたユースケースと離れ、金儲けコンテンツへ走ってしまう。プラットフォームもユーザーが増えるとそのマネタイズを支える人たち、インフルエンサーと企業を喜ばせるプロダクト開発を行うので、ユーザーの不満が大きくなる。

いま米国ではTikTokの次のSNSが見つかってない。その候補としてClubhouseなど盛り上がっているが、まだどこも勝ち抜いてない。逆に今がSNSを作る最大のチャンスであると信じているし、どんなユースケースがハマって急成長するアプリを楽しみにしている。

引用記事
Snapchat will launch Bitmoji TV, a personalized cartoon show(TechCrunch)
What’s trending: Experts decode Gen Z(DIGDAY)
NO. 330: GEN Z ARBITRAGE(2PM)
The Era of Participatory Social(Medium)
The Sound of Silence(Posthaven)
Snapchat launches privacy-safe Snap Kit, the un-Facebook platform(TechCrunch)
Snapchat preempts clones, syndicates Stories to other apps(TechCrunch)
To stop copycats, Snapchat shares itself(TechCrunch)
Clubhouse voice chat leads a wave of spontaneous social apps(TechCrunch)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。