Data Transfer Project(データ移送プロジェクト, DTP)は、ユーザーが複数のアプリケーション間でコンテンツやコンタクトなどを容易に移動できるようにするための、大手テクノロジー企業たちによる共同プロジェクトだ。Facebook, Google, Twitter, そしてMicrosoftが始めたこのプロジェクトは今日(米国時間7/20)、あらゆるオンラインサービスが参加できるオープンソースの、データポータビリティプラットホームの計画を発表した。今、自分の情報のダウンロードならどのサイトでもできるが、それをアップロードしてどこかよそで使うことは容易にできない(Facebookのプロフィールをどっかでそのまま使える、など)。嫌いになったソーシャルネットワークから撤退する(よそへ移る)とか、データを別のところへバックアップする、自分のデジタルアイデンティティを新しいアプリでもすぐ使える、といったことは、簡単にはできない。そういうポータビリティのためのDTPのツールはまだないが、今日はその仕様のようなものが開示された。
データポータビリティの業界標準ができると、企業はデータをロックインしてユーザーを閉じ込めることができなくなり、むしろユーティリティで競争しなくてはならなくなる。今のソーシャルネットワークの最大の問題、すなわち複数のアプリにまたがって友だちを作る/見つけることができないことが、DTPで解消するだろう。これまでFacebookが長年退蔵していたユーザーのソーシャルデータや友だちのコンタクトなどが、公共財〜一般共有物になるのだ。今Facebookに、具体的にどうやってユーザー情報のDTP化をやるつもりか、問い合わせている。
音楽ストリーミングサービスのプレイリストや、フィットネスアプリのヘルスデータ、大量の写真やビデオ、などなどが、DTPの下(もと)では完全なポータビリティを持つから、スタートアップにとっては福音だ。既存大手が、標準性を欠くデータでユーザーを囲い込む、という現状がなくなる。生まれたてのスタートアップですら、それらDTP標準の(多量の!)データをいきなり利用できる。スクラッチからデータを構築していく苦労から、おさらばだ。ソーシャルネットワーキングのスタートアップも、位置情報や個人化アバター、決済システムなどを利用しやすくなる。DTP化で完全なポータビリティを持ったデータ(プロフィール、友だち、ライブの写真、等々)を、どこのソーシャルネットワークでもそのまま使えるようになる。というか、Facebookなどがソーシャルネットワークであるのではなくて、そこらのソーシャルなネットワークのすべてを合わせたものが、真の社会サイズの、ソーシャルネットワークになる。共通/標準データをもとに。
というわけでDTPが今後業界全体の支持を得て、そのけちけちとした最小限ではなく最大限が実現すれば、新しいアプリの実験などもすごくやりやすくなる。Facebookなどへの長年の縛られご縁ではなく、ユーザーの‘好き’によってアプリ/アプリケーションが選ばれるようになり、健全な競争が定着すれば、政府による規制の出番もなくなるだろう。