トヨタの投資ファンドWoven Capitalが自動配送ロボティクスNuroに出資

イノベーションにフォーカスしたトヨタ自動車の子会社Woven Planet(ウーブン・プラネット)の投資部門Woven Capital(ウーブン・キャピタル)は、シリコンバレー拠点の自動運転デリバリー車両のNuro(ニューロ)への投資を発表した。新たに設立された8億ドル(約878億円)の戦略的ファンドの第1号案件だ。Woven Capitalの投資と買収の責任者George Kellerman(ジョージ・ケラーマン)氏によると、同ファンドは安全なモビリティの未来を構築するというミッションの推進に向けていつの日かパートナーになったり買収対象となったりするかもしれないグロースステージのテック企業に投資する。

Woven Capitalの出資は2020年11月に発表されたNuroの5億ドル(約549億円)のシリーズCラウンドの一環だ。同ラウンドにはChipotle、そしてT. Rowe Price Associates, Incが運営するファンド、新規投資家としてFidelity Management & Research CompanyとBaillie Giffordも参加した。各ステークホルダーの具体的な投資額は明らかにされなかった。

トヨタは2020年9月に、自動運転モビリティや機械学習、人工知能、オートメーション、コネクティビティ、データ・分析などのテクノロジー分野に投資することを目的とする8億ドルの投資プールを発表した。

「Nuroは良い出発点でした。というのも、当社が行っている業務の多くは自動運転の乗用車の開発にフォーカスしているからです。ですので、これは当社にとってローカルの商品配達にピンポイントでフォーカスしているパートナーを通じて学習して発展させる方法です」とケラーマン氏はTechCrunchに語った。「Nuroから学ぶ多くの機会があり、潜在的には今後コラボしたりNuroがグローバル展開するのをサポートしたりする機会もあるかもしれません」。

Nuroの貨物専用自動運転の車両は、すでにカリフォルニアの車両管理局から公道でのテスト実施の許可を得てKrogers、Domino’s、Walmart、 CVSといったパートナー企業の商品を配達しており、この分野でリーダーとなるチャンスをNuroは手にしている。Woven CapitalはNuroのリーダー的な立場の加速・強化をサポートする機会を見出し、一方でNuroとの間で戦略的知識共有の取り決めを結んだ。

「(Woven Capitalは)未来に向けて野心的な目標を掲げるすばらしいチームを招集しました。そして我々は人々の暮らしをより良いものにするために暮らし方や移動の仕方を変革するという共通目的を共有しています」とNuroの共同創業者で会長のDave Ferguson(デイブ・ファーガソン)氏は声明で述べた。「当社は引き続きチームを拡大し、すばらしい自動走行配達プロダクトを構築するのに、新たな資金と世界最大の自動車会社からのサポートを使います」。

トヨタ・ウーブンシティのコンセプトレンダー(画像クレジット:Toyota)

オートメーションはWoven Capitalのポートフォリオの大きな部分を占めることになる。これはWoven Cityなど親会社Woven Planetの活動をサポートするためだ。Woven Cityは相互接続するスマートシティプロトタイプでセットされる新しいテクノロジーの試験場で、トヨタは2021年2月に富士山の麓、静岡県裾野市東富士で着工した。

「Woven Cityについて考えるとき、自動走行モビリティとオートメーションをより広範にとらえます」とケラーマン氏は話した。「それを促進するため、人工知能や機械学習、データ・分析、コネクティビティが必要になります。ですので我々はそうした分野に投資するポートフォリオを形成するつもりです」。

モビリティ産業では、モビリティを単に人々や商品の動きとしてではなく、情報やデータの動きとしてとらえる傾向が強まっている。Woven Planetはこれを認識し、特に自動車についてはソフトウェアファーストのアプローチを取っている。従来の自動車産業のデザインとハードウェアファーストのアプローチに取って変わっていて、車両を動かすのにソフトウェアに組み込み、まずソフトウェアで開始してソフトウェア中心にハードウェアを構築することを意味する。

ソフトウェアファーストのアーキテクチャを構築することは、将来のイノベーションに多くのフレキシビリティをもたらす。ハードウェアが変わってもコードを書き直す必要はなく、別の応用を加えるだけでいい。Woven Planetが開発しているすべてのソフトウェアは可能な限り多くの応用で使えるはずだとケラーマン氏は述べた。

真に強固で統合されたソフトウェアを持っていることは、コネクテッドモビリティにとって論理的な次のステップでもあり、車両の輸送のポテンシャルを再考する道を開く。Nuro車両は配達しているあらゆるグローサリーのための車両というだけでなく、交通の流れや気候パターンなど走行中に収集してクラウドに送るすべての情報のための車両でもある。それゆえにその価値は、AからBへのユーティリティというより情報のインターチェンジとなる。

Woven Cityですぐさま活用できるかもしれないNuro車両によって集められた情報の一部は通りの安全に関するものだ。Nuro車両は人を運ばないのでデザインは車両の外にいる人の安全性、人中心の都市計画において有用となるかもしれない集計データにフォーカスしている。

結局、Woven Capitalの長期的な視点は常に将来のM&Aに向けた潜在的なプロセスだとケラーマン氏は話した。

「トヨタは歴史的に買収欲の強い会社ではありませんが、Woven Planetの中でいかに戦略的買収を通じて当社のビジョンとミッションを加速させることができるかをにらみながら経営企画チームを作っています」と述べた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Woven PlanetNuro投資トヨタ自動車自動運転

画像クレジット:Toyota

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。