モバイルアプリが成長を続けた2020年、ダウンロード数は記録的な2180億件に、消費者支出は約1兆4900億円

新型コロナウイルスの影響もあり、2020年はモバイル市場が成長を続けた。App Annie(アップアニー)が毎年発表している業界リポート「State of Mobile(モバイル年鑑)」によると、モバイルアプリのダウンロード数は前年比7%増の2180億件となり、2020年に過去最高を記録。消費者支出も20%増加し中国、米国、日本、韓国、英国などの市場が牽引したことで、1430億ドル(約1兆4900億円)という新記録を達成した。

消費者は、Android(アンドロイド)端末だけでも、3兆5000億時間もアプリを使って時間を過ごしたことが、この報告書で明らかになった。

画像クレジット:App Annie

米国では、アプリの利用時間がテレビの視聴時間よりも増えているという変化も起こっている。現在、平均的な米国人は1日に3.7時間のTV放送を観ているが、モバイルデバイスを使って4時間も過ごしている。

アプリ利用時間の増加は米国のみに限った傾向ではなく、インドネシア、ブラジル、インドなどモバイル市場が発展途上の国々や中国、日本、韓国、英国、ドイツ、フランスなどの国々でも見られる。

また、この傾向は特定の人口層に限られるわけでもなく、年齢層を超えて見られるものだ。たとえば米国ではZ世代、ミレニアル世代、X世代 / ベビーブーマー世代は、最も使用しているアプリに費やす時間がそれぞれ前年比で16%、18%、30%増加している。しかし、世代によってそのお気に入りのアプリというのは大きく異なる。

米国のZ世代に人気が高いAndroid向けアプリは、Snapchat(スナップチャット)、Twitch(ツイッチ)、TikTok(ティックトック)、Roblox(ロブロックス)、Spotify(スポティファイ)など。

ミレニアル世代はDiscord(ディスコード)、LinkedIn(リンクトイン)、PayPal(ペイパル)、Pandora(パンドラ)、Amazon Music(アマゾン・ミュージック)を好む。

X世代 / ベビーブーマー世代はRing(リング)、Nextdoor(ネクストドア)、The Weather Channel(ウェザー・チャンネル)、Kindle(キンドル)、ColorNote(カラーノート)などをよく使っているようだ。

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この報告書によると、必ずしも新型コロナウイルスが2020年に人々のアプリの使い方を変えたわけではなく、モバイルの普及はここ2〜3年で加速したという。

その結果、投資家はモバイルビジネスへの投資にも意欲的になり、2020年はモバイル企業に730億ドル(約7兆6千億円)の資金を投入し、前年比27%増となった。Crunchbaseのデータによると、2020年に世界で調達された資金総額の26%が、モバイルソリューションを提供している企業に投資されたという。

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2016年から2020年にかけて、モバイルテクノロジー企業への世界的な資金提供は、過去5年間と比較して2倍以上に増加している。金融サービス、交通機関、商取引、ショッピングがそれを牽引した。

また、モバイルゲームの普及率も2020年には成長を続けた。ダウンロード数ではカジュアルゲームが圧倒的に多い(78%)ものの、ゲームの消費者支出の66%、消費時間の55%をコアゲームが占めている。

新型コロナウイルスによるロックダウンや感染防止のため、多くの人が自宅に籠もる中、ソーシャルな交流を提供するモバイルゲームがブームになった。たとえば「Among Us(アマング・アス)」は、2020年に米国を含むいくつかの市場で急激に人気を博した。

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他のアプリのカテゴリーでも、過去1年間に大幅な利用増加が見られた。

2020年に人々が金融アプリに費やした時間は、中国以外の世界で45%増加し、米国のRobinhood(ロビンフッド)のようなアプリが世界中で投資や取引を民主化したため、モバイルでの株式市場へ参加は55%増加した。

TikTok(ティックトック)にとっても大きな年だった。

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このアプリは、インドでの利用が禁止されたにもかかわらず、前年比325%の驚異的な成長を記録し、消費時間ではトップ5アプリにランクインした。また、ユーザー1人あたりの月間平均消費時間も、分析された他のほとんどのアプリよりも急速に伸び、米国では65%、英国では80%と、Facebook(フェイスブック)を上回っている。TikTokは2021年に12億人のアクティブユーザーを突破する軌道に乗っていると、App Annieは予測している。

それ以外の動画サービスも、新規参入した市場や自宅で過ごす時間の多さが重なったことで、2020年にブームとなった。人々がモバイルデバイスで動画ストリーミングに費やす時間は40%増加した。ストリーミングアプリの消費時間は、新型コロナウイルスの影響で人々が家の中に閉じこもることを余儀なくされた第2四半期に西側(南北アメリカおよびヨーロッパ)ではピークを記録した(全世界では第3四半期がピーク)。

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YouTubeはこの流れの恩恵を受け、中国を除く分析したすべての市場で、消費時間が動画ストリーミングアプリの第1位になった。YouTubeの平均月間消費時間は最大で38時間以上と、2位のアプリの6倍以上になる国もあった。

もちろん、2020年のもう1つの大きな動向は、新型コロナウイルス感染拡大の中でのeコマースの利用増加だ。これにより、中国以外の地域におけるAndroidユーザーを見てみると、ショッピングアプリに費やす時間は30%以上増加し、2020年はモバイルショッピングにとって過去最大の年となった。

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しかし、2020年のモバイルコマースは、従来とは違う様相も見られた。

ソーシャルショッピングが大きなトレンドとなり、Pinterest(ピンタレスト)とInstagram(インスタグラム)の全世界におけるダウンロード数はそれぞれ前年比50%、20%の伸びを示した。

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ライブショッピングも中国を筆頭に成長した。中国のTaoBao Live(タオバオライブ)、韓国のGrip(グリップ)、米国のNTWRKは、それぞれ100%、245%、85%の成長を遂げた。NTWRKは前年の2倍の規模に成長し、現在ではTikTokなど他の企業もこの分野に参入しており、ある程度の市場が形成されつつある。

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新型コロナウイルスの影響は、フードやドリンクの宅配アプリの利用も増加させた。米国、アルゼンチン、英国、インドネシア、ロシアでは、第4四半期にセッション数がそれぞれ前年比60%、65%、70%、80%、105%の成長を記録した。

ビジネスアプリでは、たとえばZoom(ズーム)やGoogle Meet(グーグル・ミート)などが第4四半期に前年比275%の成長を記録したが、これはリモートワークや時にはリモート学習が続いたためである。

App Annieの分析には、ダウンロード数、支出、月間アクティブユーザー数(MAU)で上位となったアプリのリストも含まれている。

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年末のグラフではTikTokが上位を占めていたが、MAU数では引き続きFacebookが上回った。MAU数ではFacebookが所有するアプリがチャートの上位を独占しており、Facebookが1位、以下WhatsApp(ワッツアップ)、Messenger(メッセンジャー)、Instagramが続く。

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しかし、TikTokはFacebookよりもダウンロード数が多く、消費支出ではTinder(ティンダー)に次ぐ2位となった。

リポートの全文は、今年はダウンロードではなく、オンラインでのインタラクティブ体験でのみ提供されている。このリポートでは特に明記されている場合を除き、主としてiOS App Store(アップストア)とGoogle Play(グーグル・プレイ)の両方から収集したデータを使用している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:アプリiOSAndroid

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(翻訳:TechCrunch Japan)