暗号資産の寄付、ウクライナはどう活用するか

ウクライナ政府の公式Twitterアカウントは現地時間2月26日、2つの暗号資産ウォレットアドレス(ビットコインウォレットアドレスとイーサリアムウォレットアドレス)を共有した。「ウクライナの人々とともに立ち上がろう。現在、暗号資産による寄付を受付中。ビットコイン、イーサリアム、USDT」と@Ukraineは書いている。

しかし、これらのウォレットを誰が所有し、運用しているのかを確かめることは難しい。公開アドレスは、文字と数字の羅列にすぎないからだ。ウォレットの所有権を譲渡することは可能なので、厳密には誰のものでもない。

このようなツイートに対する最初の論理的な反応は、細心の注意を払って行動すべき、だ。これらのウォレットが政府のメンバー、政府機関、政府に代わって非公式に暗号資産の寄付を促進している政府外部の人物、または政府のメンバーのふりをしている人物によって運営されているかどうかは不明だ。

しかし、ウクライナ政府がこれらのウォレットアドレスで受け取った資金を管理している可能性は、低いというよりも高いと思われる理由がいくつかある。まず、このツイートは削除されておらず、つまり@Ukraineが悪用されている可能性はおそらく排除される。もし誰かがアカウントを乗っ取ったのであれば、政府の公式アカウントを運営している人たちは比較的早くこのツイートを削除しているはずだ。

次に、ウクライナの副首相兼デジタル変革大臣であるMykhailo Fedorov(ムィハーイロ・フョードロフ)氏をはじめとして、他の人々がこれらのウォレットアドレスを共有した。「ウクライナの人々とともに立ちあがろう。暗号資産の寄付を受付中」とフョードロフ氏は書いている

3つ目は、ウクライナのデジタル変革省の広報担当者が、@Ukraineのツイートが本物であることを確認したことだ。「これらのアカウントは国のもので、特別な暗号資産基金を作りました」と電子メールで筆者に述べた。

そして、多くの人がすでにこれらのアドレスに暗号資産を送っている。この点では、ブロックチェーンエクスプローラーに公開アドレスを入力するだけで、入出金取引のリストを見ることができるので、把握するのは簡単だ。

本稿執筆時点では、Etherscanでイーサリアムウォレットに約6800件の入金があったことが確認できる。同様に、ビットコインのウォレットアドレスに関連する取引は7000件超ある。

人々は153BTCと2230ETHを送り、現在それぞれ629万ドル(約7億2200万円)と627万ドル(約7億2000万円)の価値がある。また、一部の寄付者はUSDTやUSDCといったイーサリアムベースの暗号資産を送った。

暗号資産コミュニティの一部のメンバーも、独自の資金調達活動を開始したことは注目に値する。Michael Silberling(マイケル・シルバーリング)氏はDune Analyticsにダッシュボードをつくり、@Ukraineが支援するイーサリアムウォレットアドレスだけでなく、他のコミュニティ主導のプロジェクトに対する暗号資産寄付も追跡している。

取引に関しては、キエフに拠点を置く暗号資産取引所であるKunaに、すでに多額のETHが送金されている。

「Kuna.ioはウクライナの資金調達に技術的なサポートを提供しています」と、Kunaの広報担当者は電子メールで筆者に語った。「すべての資金は安全で、要請に応じて政府に送られています」。

Kunaの創業者Michael Chobanian(マイケル・チョバニアン)氏は主にTelegramで発信してきたが、最近自分のTwitterアカウントを作り、寄付の詳細を共有した(Kunaのチームは、このアカウントが正規のものであることをメールで確認した)。

チョバニアン氏は、資金調達活動の進捗状況の共有を始めた。

まだ未解決の懸念がいくつかある。暗号資産はどの通貨と交換されるのか? そして、これらの資金はどのように使われるのか?

TechCrunchはウクライナ政府に資金に関するより詳細な情報を求めている。また、Kunaのチョバニアン氏にも連絡を取ったが、執筆時点では返答がない。

つまり、この話題については、もっとフォローする余地がある。しかし、暗号資産ウォレットのアドレスが書かれた1つのツイートが、いかに数時間のうちに世界中から寄付者が集まる大規模な資金調達キャンペーンになったかは、すでに興味深いものだ。

画像クレジット:Ismail Ferdous / Bloomberg / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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