苦闘するIBM―もはやクラウドのキングではない

先週発表された第3四半期の決算報告によれば、IBMはレガシー・ハードウェア事業の不振とクラウド・サービス戦略の迷走に苦しめられているようだ。

ハードウェア事業の売上は17%ダウンし、売上は10億ドル減少した。2013年に入ってから9ヶ月の売上は721億ドルと2012年同期の752億ドルから4%のダウンだ。ソフトウェア事業も絶好調とはいえない。今期、ソフトウェア事業の売上高は1%アップしただけだった。株価も2年ぶりの安値を付けた。

ハードウェアを売りながら同時にクラウド・コンピューティング事業を続けようとするところにIBMの抱える問題がある。この戦略を取る限り、IBMはオンデマンドでセルフサービスのソリューションを提供することはできない。Amazon Web Servces (AWS)はハードウェアを売らないことによって成功を収めている。もちろんオンプレミスのインフラにはまだ莫大な需要があり、IBM、Cisco、Dell、HPその他の企業を潤している。

IBMはこの5年ほど、大企業向けに「プライベート・クラウド」を提唱してきた。このシステムにはオンプレミスで垂直統合タイプのソフトウェアが搭載される。こうしたプライベート・クラウドはマルチテナントで経済性、柔軟性が高く、クラウドサービスのあらゆる利点を享受できるというのがセールストークだ。しかし実態はというと、ユーザーはこのシステムを購入し、データセンターにインストールし、IT部門がメンテナンスしなければならない。要するに今までの社内データセンターを模様替えするに過ぎない。

Charles FitzgeraldのIBM評が的確な描写だ。

IBMの根本的な問題は、ディスラプト〔現状を破壊〕するテクノロジーではなく、ディスラプトされたテクノロジーばかり提供しているところにある。IBMへの依存は致命的な危険を招きかねない。

分散インフラストラクチャーの場合、ユーザーは自前で、多くの場合IT部門の助けなしでクラウド・コンピューティング上でビジネス・システムを稼働させることができる。しかしIBMのテクノロジーでそういうことができそうには思えない。ユーザーは自分でマシンを購入するか、どこかのホスティング・サービスと契約する必要がある。それからIBMからソフトウェアを購入しなければならない。そして運用のためにIT部門が必要だ。

一部の超巨大企業を除いて、クラウドサービスの方が安くつくのは明白だ。ユーザーは毎月従量制の料金を支払うだけでよい。インフラへの投資はクラウドサービスのプロバイダが負担する。この方式は以前から存在するが、価格の低下は破壊的なペースだ。スタートアップやデベロッパーはAWSのようなサービスをベースに次々に新たなサービスを生み出している。それに反してIBMが惹きつけているのはデベロッパーではなく企業内IT部門だ。

ただしIBMはある分野では依然としてリーダーだ。 調査会社のIDCによれば、IBMはクラウド・ソリューションの専門的インテグレーション・サービスとしてはナンバーワンだという(下図)。

IBMのある広報担当者は「この分野ではAWSはIDCのランキングに入ってさえいません!」と勢いこんでメールしてきた。それはそのとおりだが、AWSはインテグレーション・サービスのリストに入らないように全力を尽くしてきたからだ。そもそもオンデマンドのセルフサービスをモットーとするのだから当然のことだ。AWSはシステム・インテグレーションはユーザー自身、あるいはユーザーのコンサルタントに任せている。

IDCの図とは対照的に、Gartnerの図ではAWSが突出した市場リーダーであり、IBMはその対極にいる。

もっとも来年はIBMの位置は上の図より改善されているだろう。この夏、SoftLayerを20億ドルで買収したからだ。SoftLayerはIBM Smart Cloudに統合されるはずだ。第3四半期にIBMはクラウドサービスで4億6000万ドルの売上を記録している。このうちSoftLayeの分がどれほどになるかは分からないが、.現在すでに相当の寄与をしていると思われる。

IBMは来年もSoftLayerに独自に事業を実施させる方針だというが、451 Researchの調査ディレクター、 Michael Cotéは「これは賢明だ」としている。SoftLayerはHadoopやVMwareのみを作動させるサーバーなどを提供しており、人気がある。しかし問題はIBM自身が新しい、長期的に有効なクラウドサービス戦略を立てられるかどうかだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+