AI対AIやAI対人間を“戦わせる”ことでイノベーションを喚起するNIPSカンファレンスのコンテスト

ちょっとした競争心が、イノベーションのきっかけになることがある。そこでNeural Information Processing Systems(NIPS)カンファレンスは、競争するAIシステムを今年のテーマにした。そして、人が歩くときの筋肉の動きを模倣するシステム、雑学クイズ・チャンピオン、画像の微妙な操作など、さまざまなテーマで競い合うことになった。

NIPSの今年のこの新しい企画には23種の‘競争するAI’がテーマとして提案され、最終的に5つに絞られた。カンファレンスが行われるのは12月の初めだが、どれも、片手間で簡単に作れるようなシステムではないので、戦いは今からすでに始まっている。どのテーマもすでに、応募作は相当多い。

コンテストは一つ々々が独立していて、スポンサーが付いたり、賞金が出るものもある。

走ることの学習: これはたぶん、視覚的にいちばんおもしろいコンテストだろう。このシステムは人間が歩く動作をするときの、脳による筋肉と骨のコントロールを模倣する。生理学と物理学のシミュレーションだが、滑る床や階段、弱い筋肉、といった障害も設定されている。目標は歩き方を知っているAIを作るだけでなく、脳性麻痺の人に手術をした場合、歩き方にどんな影響が現れるか、といった問題意識もある。コンテストの詳細はスタンフォード大学のニュースリリースにあり、リーダーボードのGIF画像がなかなかおもしろい。AmazonがAWSのクレジット3万ドルぶんを賞金として提供している。

NNの敵対的攻撃と防御(Adversarial Attacks and Defenses): 私たちはすでに、画像を認識するニューラルネットワークをあちこちで見ている。それらは人間の顔や、猫、風景などを認識する。それらは、あらゆる種類の低レベルデータに対する独特のロジックで動くから、その判断を騙して、まったく違うものに認識させてしまうことも可能だ。もちろん、画像そのものを別のものに変えたりはしない。このコンテストは、NNを騙す悪役と、それに対する防御を作品として募集する。〔訳注: この項については、Google検索やWikipediaなどで、Generative Adversarial Net, GANを勉強すると、理解できると思います。〕

人と会話できるAI: このコンテストの目標は、できるかぎり人間のように振る舞えるAIを作ることだ。ボットと人間が対面して、両者に、最新のニュースやWikipediaの記事などを読ませ、それについてなるべく長く会話をする。応募作品に制限はないが、最優秀のボットが12月のNIPSに出場する。優勝賞金は1万ドルだ。チャットボットの進化に前から関心のあるFacebookが、“プラチナスポンサー”になり、本誌TechCrunch DisruptのStartup Battlefieldに出たMaluubaが、“シルバーパートナー”になる。それらの意味は、よく分からないけど。

人間対コンピューターのQ&A: このコンテストの応募者は、小型のWatsonを作る。そのWatsonは、Jeopardyで人間を負かしたときのバージョンぐらいの実力が必要だ。システムは一回に一つずつ、クイズのような質問を与えられ(例: ローマ帝国の第四代の皇帝は誰か?)、人間よりも早く、少ない語数で…もちろん正解を…答えたらポイントをもらう。NIPSで、人間とコンピューターの決戦を見ることになるだろう。“エキシビションマッチで人間チームと対戦するときのシステムの組み合わせは、出場者(システムの作者)が決めてよい”そうだ。

遺伝子突然変異の臨床的応用性のある分類法: 癌の悪性腫瘍を生じさせている遺伝子と、それらの腫瘍を破壊する遺伝子が分かったら、癌の拡大を防げるかもしれない。でもそれは、専門家たちによる、難しくて時間のかかる研究開発過程だ。しかし、もしも、何千もの遺伝子突然変異に関するそれら専門家たちの注記注釈にアクセスできたら、ニューラルネットワークを使った機械学習に出番があるかもしれない。すくなくとも、今後の研究対象を絞り込むぐらいは、できるのではないか。優勝賞金1万ドルは、Memorial Sloan Kettering Cancer Centerが提供する。すでに、685の応募作が寄せられている!

コンテストの結果が分かるのは12月だが、作品の応募だけでなく、議論に加わることは今からでもできる。参加は、自由だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

投稿者:

TechCrunch Japan

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