今日(米国時間3/16)飛び交っている噂によると、Appleは同社のクラウド事業の一部をAWSからGoogleのCloud Platformに移しつつある。本誌も独自に調べてみたが、確かにAppleはiCloudのストレージの多様化に努めているようで、その事業用としてGoogleも利用するようだ。
これは、いちばん控えめに言っても、Googleにとってはまた一つの大勝利で、AWSにとっては敗北だ。これまでも、Dropboxは合衆国におけるストレージ事業の相当量をAWSから自社内へ移したし、Spotifyはそのビジネスの少なくとも一部をAWSからGoogleへ移した。
これまでの試合経過を見ると、今月はGoogleにとってとくに良い月だった…とりわけ、同社のクラウドビジネスの新しいトップDiane Greeneにとっては。SpotifyやAppleのような有名企業が顧客なら、そのほかのエンタープライズ顧客もますますGoogleに魅(ひ)かれるだろう。GoogleのCloud PlatformはGoogle自身のデータセンターの技術がベースだが、しかしそのことはこれまで、AWSやMicrosoftのAzureに対する有利な競合要因になっていない。AWSには古顔の有利性があり、Azureの背後にはMicrosoftの強力な営業力とハイブリッドクラウド技術への特化がある。ただしAzureは、バックにいくら強力なMicrosoftがいても、クラウドビジネスではずーっと後方の二位だ。
まだ、プラットホームの移行に関するApple自身の意思決定の内容は不明だ。AWSやGoogleも、この件に関しては口をつぐんでいる。
某匿名情報筋によると、Appleは今確かに、複数のパブリッククラウドベンダ、中でもとくにMicrosoft AzureとGoogleを、自社のオプションとして検討している。しかしまだ、最終的な意思決定は行われていない。、なおAppleはすでにiCloudサービスやメディアのサービングにおいて、AzureとAWSを使っている。
要するに事態が本当に(今日の噂どおりに)‘AWSからの離脱’なのか、その辺も明確でない。ただしAppleが、クラウドのサプライヤーのポートフォリオの中身を多様化しようとしていることは、確かなようだ。
状況のもうひとつの側面として、今Appleはオレゴン州プラインビルのデータセンターを拡張中であり、合衆国とヨーロッパで新しいデータセンターも作るらしい。そして、これに今回の話が絡むのなら、AWSからGoogleへ、Googleからさらにプラインビルへ、という線はないだろう。新しいデータセンターの竣工を、単純に待つだろうから。
もしもAppleが、単純にインフラストラクチャの多様化を目指して、これまでのAzure、AWS、および自社データセンターに加えてGoogleも使う、ということなら、無理のない線だ。また、AppleがGoogleのクラウド上の特定のサービスを使うつもりなら、データ分析プラットホームBigQueryあたりが、ねらい目だろう。
われわれにとって既知の事項のひとつは、Akamaiの最近の決算報告だ。Akamaiはその中で、同社の最大のクライアントのうちの2社が、多様化しつつある、と言っている。“過去数年間にわたり、中でもとくに弊社の最大の二つの顧客 が、Akamaiの全体的な売上の約13%を占めてきた”、とAkamaiのCEO Tom Leightonが述べている。“2016年を展望するならば、これら二つのアカウントが依然として弊社の最大のメディア顧客であり続け、弊社の総売上の約6%に貢献するだろう。貢献率のこの7ポイントの変化は、彼らのDIY努力の増加がその原因であり、それは、今後の2四半期における、低い前年比売上増加率が予想される主な理由でもある”。
Akamaiの最大のクライアントがAppleであることは衆智だから、上の言葉は、AppleがCDN(Content Delivery Network)事業の一部も自社化しようとしていることを、意味している。
Googleは来週サンフランシスコで、大規模なクラウドイベントGoogle Nextを開催する。もしも(←これは確かにビッグな“もしも”だが)同社が、同社の新しい顧客について何かを発表するつもりなら、それはたぶん、このイベントにおいてだろう。