Googleが今日(米国時間11/16)、チャットボットやそのほかの会話的アプリケーションを作るツールDialogflowの、エンタープライズエディションの、ベータローンチを発表した。
そして無料版も含めてDialogflowには、今や音声認識機能が内蔵されている。これまでデベロッパーは、その機能が欲しければGoogle CloudのSpeech APIや同様のサービスを使わざるをえなかった。当然ながら、内蔵化によって、一つのAPIを呼び出すだけになったので、スピードも(Google説では30%)向上した。
今のDialogflowにはさらに、GoogleのChatbaseサービスを呼び出すことによる、ベーシックなアナリティクスとモニタリングの能力もある。
Dialogflowは、Googleが昨年買収したときAPI.AIという名前だったけど、その後名前を変えた。でも変わったのは名前だけで、その基本的な考え方はなにしろ、会話的なエージェント(自律プログラム)やそのほかの、テキストや音声による対話を、使いやすい形で作りたい、と思ったときに使えるビルディングブロックを提供することだ。
このサービスはこれまでずっと、ユーザー獲得のために無料(ただし量制限あり)だったが、企業ユーザーは有料でもいいから24/7のサポートやSLA、企業向けのサービス規約、データ保護の約束、などがほしい。
そこで今度のDialogflow Enterprise Editionでは、これらすべてが得られる。Google Cloud AIのプロダクトマネージャーDan Aharonによると、このバージョンのDialogflowはGoogle Cloudの一員なので、前からGoogle Cloudを使っているユーザー企業なら、契約も使用開始も簡単だ。“もしもあなたがSpotifyなら、Google Cloudのプロダクトであるための要件をすべて、すでに満たしているから、Dialogflowをかなり容易に使える”、とAharonは語る。たとえばDialogflow Enterprise Editionのサインアップは、Google Cloud Platform Consoleのコンソールからできる。
有料とはいえ、テキストの対話一回につきわずか0.2セント、音声の対話リクエストは一回につき0.65セントだ。1セントにも満たない(量制限なし)。
これまでの無料バージョンのDialogflowは、どこにも行かない。エンタープライズエディションと同様、新たに音声認識も統合されており、14の言語をサポート、MicrosoftやAmazonなど、主なチャットや音声アシスタントのほとんどを統合している。その量制限は、1日に最大1000対話、1か月累計では15000対話までだ。
GoogleがAPI.AIを買収したとき、それはすでに、チャットボット作成ツールとして相当人気が高かった。そしてGoogleによると、その勢いは今だに衰えていない。GoogleのPRはAharonに、人気第一位のツールとは言うな、と釘をさしたらしいが、実際に人気一位であっても意外ではない。彼によると、無料バージョンだけの現状で登録ユーザー数(デベロッパー数)は“数十万”、今年のCloud Nextイベントを共有したデベロッパー数が15万だから、それよりずっと多いのは確実だ。
“顧客から何度も何度も聞く言葉によると、自然言語理解のクォリティーが高いので、Dialogflowはそのほかのチャットボットツールに大きく差をつけているそうだ”、とAharonは言う。“最良のツールでなければ、本番用(プロダクション用)には使えないからね”。(そうでない企業もあるみたいだが…。)
自然言語の理解以外にも、Cloud Functionsを利用してサーバーレスのスクリプトを簡単に書けるなど、Dialogflowはデベロッパーの自由度が大きい。ほかのアプリケーションへの接続も容易だ…それらがどこでホストされていても。だからたとえば、既存の受発注システムや発送システムと、これから作る会話的アプリケーションを統合することも可能だ。
Aharonによると、API.AIの機能をGoogle Cloudにポートするのに約1年かかった。そしてそれが完了した今では、このサービスはGoogleのAIや機械学習の機能をフルに利用できる。一方、今のGoogleはエンタープライズの顧客獲得が最重要の課題だから、Dialogflowをそのためのメニューの一員にするのも、当然なのだ。