Limeがニューヨーク市に電動モペッド100台導入、デブラシオ市長による7月1日の完全解禁宣言を受けて

ニューヨーク市の電動スクーターシェアリング事業の入札を、最初の企業として勝ち取ってから数週間後、マイクロモビリティー大手のLime(ライム)は、ニューヨークの街に電動モペッドを導入する。ニューヨーク市で複数の形態のマイクロモビリティーシェアリングを展開するのは、Limeが初となる。

米国時間4月30日、Limeはブルックリン区の路上に100台の電動モペッドを展開する。今後数週間で、対象地域はクイーンズ区とマンハッタン区の南区域に広げる予定だ。ニューヨーク市は、自動車の排気ガスによる大気汚染と温暖化に悩まされてきた。2050年までにカーボンニュートラルを実現したいならば、同市は電動マイクロモビリティーをもっと快く受け入れる必要がある。

Limeの直接の競合相手は、ニューヨーク市でLimeの他に唯一電動モペッドのシェアリング事業を展開しているRevel(レベル)だ。Revelは先日、全電気自動車による配車サービスの開始を発表したばかりだ。Limeが最初に運用を開始する地域は、ウィリアムズバーグからグリーンポイント、さらにブルックリンハイツにかけてのブルックリン区北部のほぼ全域というRevelの対象地域と、だいたい重なっている。だが、Limeの広報担当者によれば、Limeは南西部のフラットランズまで対象地区を広げるという。

2021年4月初め、LimeはワシントンD.C.とパリでも電動モペッド事業を開始している。どちらの地区でも、Limeが力を入れているのがライダーと他の道路利用者の安全だ。そのための機能として同社は、AIによるヘルメット検知、免許証確認、活性テストを導入している。活性テストとは、指示に従っていくつかの表情を見せ、ライダーが本物の生きた人間であることを証明するためのもので、他人の顔写真で誤魔化すことを防ぐ。Limeの広報担当者は、この活性テストは免許証の人物とライダーの照合にも使われると話している。

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さらにLimeは、米モーターサイクル安全財団の監修で構築したライダー教育カリキュラムの受講をライダーに義務づけている。サービスは自賠責保険でカバーされ、ライダーが運転中に人や器物に損害を与えた場合の金銭的な補償がなされる。ただし、ライダー自身の怪我や器物の損害は対象外となる。

ライバルのRevelは、こうした安全対策の導入を苦い教訓から学んでいる。2020年夏、ヘルメットを装着しないライダーの死亡事故や通報が相次いだことを受け、同社は電動モペッドのシェアリングを数週間停止し、市当局の不安を払拭するための安全対策を練った。現在Revelでは、利用者にヘルメットを着用した自撮り画像を要求している。また初めて利用する人はみな、乗車前に、安全訓練クイズ21問に答え、教則動画を見ることが義務づけられている。Revelのアプリには、コミュニティ通報ツールも組み込まれていて、悪質なライダーを見かけた人は、誰もが通報できるようにもなっている。

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ライダーの安全を守るためのLimeとReveの取り組みは、ニューヨーク市交通局(DOT)に指示されたものではない。DOTによる電動スクーターの承認には長い時間を要したが、電動モペッドには市の規制がない。

「私たちはDOTと協力して作業を進め、私たちの取り組みを逐一報告し、質問に答え、あらゆる問題点に対処しています」とLimeの広報担当者はTechCrunchに話した。

Limeは今後、Pell Grant(大学生向けの米連邦政府による給付型奨学金)の受給者、休職中の人、各種助成を受けている人の料金を割り引き、さらにパンデミックの影響を強く受けた最前線で働く人、教師、非営利団体の職員、アーティスト、接待業の人たちは無料にするLime Aid(ライムエイド)プログラムを実施する予定だ。

より多くのニューヨーク市民がワクチン接種を受けて、街の活動が元どおりに解禁されたとき(7月1日に完全解禁という計画が発表されたばかりだ)、Limeはマイクロモビリティ提供者の主導的地位を確立したいと考えている。彼らにとって、パンデミック後の夏は、この上ない好機だ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Limeニューヨーク電動モペッドマイクロモビリティ

画像クレジット:Lime

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

マイクロモビリティのBolt Mobilityが同業Last Mileの資産を引き継ぎ48の新市場に展開

金メダリストのUsain Bolt(ウサイン・ボルト)氏が共同創設した、マイアミを拠点とするマイクロモビリティのスタートアップBolt Mobility(ボルト・モビリティ)は、Last Mile Holdings(ラスト・マイル・ホールディングス)の資産を獲得し、48の新しい市場に規模を拡張する。

Bolt Mobilityの台頭とLast Mileの終焉は、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによって、すでに部分的に足下がぐらついていたビジネスモデルがひっくり返されたマイクロモビリティ企業に、1年間取り憑いていた不確実性のなせるわざだ。

Bolt MobilityもLast Mileも、どちらも新型コロナウイルスのパンデミックに打撃を受けていた。たとえばBolt Mobilityは、その影響で2020年にいくつかの市場から撤退している。同社はその後、ビジネスモデルを変更し、地元の事業者と手を組むことにした。元GMのグローバルデザイン部門副社長のEd Welburn(エド・ウェルバーン)氏を顧問として迎え入れ、二重ブレーキ、10インチタイヤ、LEDライト、走行距離40kmの交換式バッテリー、NanoSeptic(ナノセプティック)で抗菌処理を施した、手で触れることが多い部分に細菌やバクテリアをつきにくくするデザインのハンドルとブレーキレバーを装備した新型スクーターを導入した。

Last Mile Holdingsも災難だった。

Last Mile Holdingsという名前に聞き覚えがない人も、同社が所有していたブランドなら知っているかも知れない。Last Mileは、OjO Electric(オジョ・エレクトリック)スクーターと電動トライク、スクーター、バイクによるライドシェアのGotcha Mobilityを所有していた。Last MileはGotchaを1200万ドル(約12億4500万円)の現金と2020年3月に成立した株式交換で買収している。

2020年、Bolt Mobilityが躍進し顧客ベースが30万人に達する一方で、Last Mileは逆風に晒された。そしてトロント証券取引所にMILEというティッカーシンボルで上場されていたLast Mileは、米国での資産をオークションで売却する結果となった。Bolt Mobilityは実質的にそのすべてを、300万ドル(約31億円)のクレジッド・ビッドで入手したことが、2020年のSECファイリングに記されている。

資産には電動スクーター、電動自転車、ペダル式自転車、着座式スクーターなど8500台の新しい機材と、48の新市場で事業展開できる許可証が含まれていた。BoltのCEOであるIgnacio Tzoumas(イグナシオ・ツォマス)氏によると、新市場のうちの大半(30以上)が独占契約だという。48の新市場には18の大学のキャンパスも入っている。

「この資産買収によって、Boltは全方面に大きく拡張できるようになります」とツォマス氏はいう。さらに同社は、Gotchaの最高執行責任者Matt Tolan(マット・トーラン)氏を迎え入れたと話していた。同氏はBoltの最高商務責任者の役職に就くことになる。また、Gotchaの技術と運用の各部門で働いていたメンバー20人も雇い入れた。

Boltの新市場では、利用者はこれまでどおり、GothcaとOjO ElectricのiOSとAndroidのアプリを使って電動スクーター、電動自転車、ペダル式の自転車に乗ることができる。Boltは行政や大学と共同して、それらの市場をBoltのプラットフォームに移行する作業を進めている。この資産買収で、Boltのプラットフォームに初めて電動自転車が加わった。だが同社は、すでに独自の電動自転車の開発も行っている。2021年末に登場する予定だ。

写真クレジット:Bolt Mobility

Boltは、同社が2020年を生き抜いたばかりか発展できたのは、新しいビジネスモデルのおかげだと考えている。車両の管理と運営という複雑で多岐にわたる仕事を続ける代わりに、Boltは地元企業と提携する道を選んだ。これらのパートナーが、それぞれの市場の現場でBoltの車両を運用してくれる。このアプローチはカスタマイズができるため、市場によっては配送業者、レストラン、その他のスモールビジネスにスクーターを貸し出すという事業提携モデルも可能になったと、同社は話している。

7月までには、Boltとそのパートナー企業は、5つの新しい市場と、再開した市場での事業を展開できた。またBoltには、さらに20の市場での買収準備を整えたパートナーとの契約手続きが残っていると同社は話す。

ツォマス氏によれば、Boltはもうこれ以上借金をせずに取引を完了できるという。しかも「私たちが事業を行っているすべての市場のサービスの拡大と向上に、私たちの資産を今後も投入できるという条件付き」だ。この資産買収には、以前からのBoltの投資者であるFuel Venture Capitalからの資金も役立っている。また、Sofreh CapitalとThe Yucaipa Companiesの支援も受けている。

「私たちは、マイクロモビリティがコミュニティの中での人々の生活や移動の方法を変革するものと信じてBoltを創設しました」と、ウサイン・ボルト氏は声明の中で述べている。「今回の拡張は、才能ある人々、革新的なテクノロジー、Boltチームの賞賛すべき道労働倫理の力を支えにすれば、マイクロモビリティに不可能はないことを証明しています」

カテゴリー:モビリティ
タグ:Bolt Mobility電動キックボードマイクロモビリティ

画像クレジット:Bolt Mobility

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(翻訳:金井哲夫)