会計事務所の仕事をクラウドサービスで現代化するSilverfinがシリーズBを調達

Silverfinは会計のソフトウェアだが、中小企業の会計経理事務を助けるというものではない。同社は大小の会計事務所のためのクラウドサービスで、いわば会計経理のSalesforceだ。

同社はこのほど、HgがリードするシリーズBの資金調達ラウンドを完了した。なおシリーズAはIndex Venturesがリードした。今回のラウンドの詳細は公表されていないが、情報筋によると調達額はおよそ3000万ドル(約32億円)のようだ。

Silverfinは、会計業務において最も時間がかかる部分、すなわちデータの収集を自動化して会計処理の生産性を上げる。同社はXero、QuickBooks、Sage、SAPなどクライアントが使っている会計ソフトにダイレクトに接続してそのデータをインポートする。

その後、Silverfinはデータセットを標準化し、ユーザーがデータを手作業で追加できるようにする。それによりSilverfinはユーザー企業のためのメインのデータリポジトリになる。

このようにデータがシステムに入ったら、次はその処理だ。Silverfinはユーザーが提供する構成とテンプレートに基づいて自動的に処理を行い、その間のデータの追加やコンプライアンスのチェックは会計事務所の誰でもできる。SalesforceなどのSaaSプロダクトと同じく、複数の人がこのサービス上でコミュニケーションでき、過去の編集や変更の履歴を見られる。

最後は財務データを視覚化し、報告書などを作成する。これにより会計事務所の仕事が、以前と大きく異なってくる。分析ツールやアラートシステムもあるので、会計事務所は顧客企業へのアドバイスサービスに注力することができる。

同社はベルギーのゲントで創業されたが、今ではロンドンとアムステルダム、コペンハーゲンに拠点がある。現在の顧客数は650社で、そこにはヨーロッパと北米の大手会計事務所が含まれている。

難しい要求を抱える顧客を最優先するSilverfinは、それらの企業が利用しているXeroやQuickBooksなどには手を付けない。まず最初に、それら既存のソフトウェアとの統合を行う。今後は、会計経理部門が非力な中小企業にも市場を広げたい、と同社は述べている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

新型コロナによる非接触需要でスキャン技術のScanditが約86億円調達

企業向けバーコードスキャナーのScandit(スキャンディット)が8000万ドル(約86億円)のシリーズCラウンドをクローズした。本ラウンドはシリコンバレーのVCファームG2VPがリードし、Atomico、GV、Kreos、NGP Capital、Salesforce Ventures、Swisscom Venturesも参加。Scanditの累計調達額は1億2300万ドル(約132億円)となった。

チューリッヒに拠点を置くScanditはバーコードスキャン、OCR(光学文字認識)、オブジェクト検出、拡張現実(AR)にコンピュータービジョンと機械学習技術を組み合わせたプラットフォームを提供している。ARはスマホからドローン、ウェアラブル(倉庫労働者向けのARメガネなど)、ロボットに至るまでカメラ搭載のあらゆるスマートデバイス向けにデザインされている。

Scanditのプラットフォームのユースケースには、モバイルショッピング、セルフチェックアウト、在庫管理、配達証明、アセット管理・メンテナンスのためのモバイルアプリやウェブサイトがある。医療分野でも患者のIDや検体、薬、用品のスキャンに同社の技術が活用されている。

スピードや精度において、また明るさが十分でないところやあらゆる角度、破損したラベルのスキャン能力においても、自社ソフトウェアは「並ぶものがない」と同社はうたう。売り込みをかけている産業は小売、ヘルスケア、産業・製造、旅行、運輸・ロジスティックなどだ。

今回の資金調達の前には、2018年にシリーズBで3000万ドル(約32億円)を調達した。それ以来、経常収益は3倍超、優良顧客の数は倍以上となり、グローバルチームの規模も倍に増強した。

世界に広がる同社の顧客には7-Elevenアラスカ航空、Carrefour、DPD、FedEx、Instacart、ジョンズ・ホプキンズ病院、La Poste、Levi Strauss & Co、マウントサイナイ病院、トヨタなどが含まれる。現状では1億台超のデバイスで年間「数百億ものスキャン」が行われているとのことだ。

新たに調達した資金はアジア太平洋地域や中南米を含む新たなマーケットでのさらなる成長の加速、北米と欧州での足掛かり構築に使われる、とScanditは話す。また、企業がコンピュータービジョンとARを使って主力事業のプロセスを変える新しい方法を考案するためのR&Dにもこれまで以上に資金を注入する。

Scanditによると、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックによるソーシャルディスタンシングの必要性から、個人のスマート端末向けのモバイルコンピュータービジョンの需要も増えている。非接触型のやり取りができるようにする方法を顧客が探している、と同社は話す。

また、パンデミック絡みでは他にも急増している需要がある。「クリック&コレクト」小売と、新たに発生している何百万もの宅配だ。専用のハードウェアではなく、ScanditのスキャンアプリはBYOD(bring your own device、個人のデバイスの持ち込み)をサポートするので、同社の技術はこうした需要にうまく対応できる。

「COVID-19は、この不確実な時代における急速なデジタルトランスフォーメーションの必要性、フィジカルとデジタルをブレンドさせて重要な役割を果たすことの必要性に光を当てた」とCEOのSamuel Mueller (サミュエル・モラー)氏は声明文で述べている。「新たな状態(ニューノーマル)がどのようなものであれ、さらに多くの企業が『コンタクトレス事業』の新たな需要にすばやく対応し、成功できるよう、新たな資金でサポートすることができる」。

資金調達に関する発表文の中で、ラウンドをリードしたG2VPのゼネラルパートナーであるBen Kortlang(ベン・コルトラン)氏は以下のように述べている。「Scanditのプラットフォームは、企業グレードのスキャンソリューションを従業員や顧客が古いハードウェアを必要とすることなくいつでも使えるようにしている。物理的世界とデジタルの世界を結ぶものであり、世界がオンライン購入や配達、分散サプライチェーン、キャッシュレス小売へのシフトを加速させる中で重要性が増すだろう」。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

中国メーカーのOPPOはボーダフォンと組んでヨーロッパに注力

Huawei(ファーウェイ)は、海外市場での難しい課題に直面している。今後発売するデバイスには、Google(グーグル)のアプリとサービスをフルセットで搭載できないからだ。一方で、それにより海外市場で漁夫の利を得る同じ中国のライバルメーカーもある。

OPPOもそのようなメーカーの1つだ。Vivoの姉妹ブランドで、東莞(とうかん)に本拠を置く電子機器持株会社であるBBKの傘下にある。Vodafone(ボーダフォン)と提携し、同社の持つヨーロッパ市場にOPPOブランドのスマホを導入することを、米国時間5月17日に発表した。この協定は5月中にも開始され、先進的な5Gの端末やコスパの高いモデルからなるOPPOの製品ラインナップを英国、ドイツ、オランダ、スペイン、ポルトガル、ルーマニア、トルコに供給する。

ボーダフォンは2019年に、ファーウェイの端末を同社の英国における5Gネットワークから排除した。これは米国の輸出禁止令により、ファーウェイのモデルで一部のAndroidサービスが利用できなくなったことを受けての措置だった。英国ではボーダフォンも、ユーザーと5G契約を結ぶための激しい競争にさらされており、そこでOPPOの幅広いモバイル製品が利用できるようになったのは大きい。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、ヨーロッパ中の物理的な販売店が閉鎖されている中、OPPOとボーダフォンは共同でオンラインの販売チャンネルを開拓している。

OPPOは現在、母国中国ではファーウェイに次いで2番目に大きいスマートフォンベンダーとなっている。2018年の半ばにヨーロッパ市場に参入して以来、全域で売り上げを急上昇させている。2019年にヨーロッパで一般向けとしては最初の製品となる5Gスマートフォンを初めて発売した企業の1つにも数えられている。調査会社Canalysの調査によると、現在ヨーロッパ大陸で2%のシェアを獲得し、5位に付けている。

「OPPOは、ファーウェイと同じセグメントの大部分で勝負できる製品ラインナップを持っています。そのためファーウェイをあきらめても、市場シェアを獲りにいくことができます」と、Counterpoint Researchの調査ディレクター、Peter Richardson(ピーター・リチャードソン)氏はTechCrunchに説明した。「OPPOは一貫してヨーロッパテイストの製品デザインを採用しています。製品の色のバリエーション、パッケージング、それに広告などを見ても明らかです。それで、ヨーロッパの消費者に受け入れられやすいのです」。

リチャードソン氏によれば、OPPOという名前は、同じ中国のライバルであるXiaomi(シャオミ)やファーウェイと比べて「中国的な響き」が少ないとも指摘している。それによって「ファーウェイのセキュリティ上の問題に端を発する苦境や、新型コロナのパンデミックといった中国をめぐる現状の否定的な報道」の影響を和らげることができるという。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

英国、新型コロナ危機で広告業界に対するプライバシー侵害調査を一時見合わせ

新型コロナウイルスは、アドテック業界に思いがけない幸運をもたらしている。

英国のデータ保護規制当局はアドテック業界によるインターネットユーザーの個人情報の処理に対する調査を一時的に停止した。COVID-19の大流行によって事業に混乱がもたらされているため、対象となるプライバシー監視の一時停止は有益であるとしている。

情報コミッショナー事務局 (Information Commissioner’s Office:ICO)によるアドテック業界の慣行に対する調査は、2018年に当局に寄せられた、プログラマティック広告のリアルタイム入札に伴う体系的で大規模な個人データの高速取引に対する苦情に関連するものである。

それ以来この問題についてはEU全域で多くの苦情が申し立てられており、「現在までに記録された中で最大の個人データの漏洩である」と言われている。

これらの苦情が最初に申し立てられたのは英国のICOに対してであったが、この苦情は未だに解決されていない。

そして、今後もさらに待ち続けなければならない…

苦情申立人の1人、 BraveのJohnny Ryan(ジョニー・ライアン)博士は、彼が監視機関に継承を鳴らして以降、2年に渡り監視機関がなんらの規制も行わなかった事を「大変な驚き」と表現した。

「規制当局は、調査も含め、同局の持つ法的強制力を行使できていません」とライアン氏はTechCrunchに語った。「これは執行どころの話ではないのです。彼らの無策には驚くほかありません」

「これは驚愕に値します。私は英国における最大のデータ侵害であると申し立てていますが、これに対し誰かが異議を唱えるのを聞いたことはありません。この巨大な違反は日々継続しているのです。RTBによる膨大なデータ侵害はすでに終息した単独の出来事ではなく、繰り返されることで害は絶えず蓄積されています」

TechCrunchからもICOに対し、アドテックに対する調査見合わせの決定について問い合わせを行った。問い合わせには、高度な業界プラットフォームによる侵害に対し、英国市民は自らのデータに関する権利が守られていることをどう確信したらよいか、という質問を含めた。

規制当局は我々の質問には答えず、かわりに次のような一般的な声明を送ってきた。

ICOは先日、COVID-19の感染拡大を受け、その間の規制手法に関する提示を行い、その中で当局の優先事項とリソースの再評価についてお伝えしました。

これを念頭に、当局ではリアルタイム入札およびアドテック業界への調査を一時的に見合わせる決定を行ったものです。

現状においては、どの業界に対しても過度の圧力をかけることは避けたく思っております。ただしアドテックに対する懸念が解消されたわけではありませんので、当局では、適切なタイミングで数か月以内に調査を再開することを目指しております。

規制当局がこの苦情に関し、アドテック業界に対し「一時的休息」を与えるのは今回が初めてのことではない。

実際、今までに数々の「警告」が発せられ、穏やかな文言が並ぶブログ(これや、これ、それにこれのような)が投稿される期間がそれに続いた。規制の執行は、というと、皆無なのである。

一方、EU一般データ保護規則 (GDPR)は今月末で2歳になる。つまり、更新されたフレームワークが適用されることになってから、丸2年が経過する。

多くのプライバシー専門家や運動家は、市民のデータへの法的保護措置に対して行われた最も重要なアップデートに伴って実施された規制執行(1995年にまで遡る)の量と質に疑問を投げかけている。

ライアン氏は、ICOによる規制放棄はEUデータ保護体制全般の成功を反映していないと述べ、英国の規制当局はEUに加盟する(ブレグジット後の)27カ国の中で最も豊富なリソースを持った機関であると指摘した(ブレグジットの移行期間が終了するまでは英国は加盟国と見なされるので、現時点で英国は実質上は加盟国である)。

「EUのデータ保護において最大かつ最も資金に富んだ規制機関が、自国が今まで経験した中で最も大規模なデータ侵害を取り締まることができないとしたら、GDPRは一種の集団妄想なのでしょうか?それともこれは英国に限定された出来事なのでしょうか?」とライアン氏は述べた。

ライアン氏が指摘するより大きな問題とは、ブレグジット後に英国がEUの企業との間で今までのような自由なデータ交換を望む場合、欧州委員会にデータ保護の「妥当性合意」を要請する必要があることである。

英国が欧州委員会に対し、EUからの個人情報が自由に流れてもよい安全で適切な第三国と見なすように要請した場合、EU側で検討すべき事項の1つは、そうした個人データを保護する規制機関があるかどうか、ということです。現時点での答えは『ノー』でしょう。英国には欧州市民の個人データを保護することのできる規制機関はないのです」とライアン氏。

「ICOの無策はブレグジット後に影響をもたらします。 これにより英国経済の非常に多くの分野に影響が出るでしょう」と彼は警告した。

ライアン氏を雇用するブレイブは、プライバシーの保護を重視するウェブブラウザを製作しているが、最近欧州委員会に対しEU加盟国を相手取り、自国のデータ保護機関に対し十分なリソースを与えていない政府を非難する報告書を提出し、委員会に対し侵害訴訟を開始するよう要請した。

「ICOでデジタル分野を専門に扱う人員がわずか3%に過ぎないのは一体なぜなのでしょう?」とライアン氏は続ける。「侵害の3%以上がデジタルであり、生活の3%以上がデジタルで占められているのは明白です。ICOは、我が国がデジタル移行の初期段階にあるという誤った認識の元に人員を配置しているのです。ICOはこの十年に対応できる規制機関ではなく、その人員配置は前世紀向けのものです。ICOに大きな管理上の問題があることは明確です。彼らはデジタルの問題を規制することを望まない、あるいはできないように見受けられます。ICOは目的に合わせて体制を整える必要があります」。

「彼らは依然として印刷物ベースの世界に生きているのです。私たちは印刷物ベースではない、私たちの生活のあらゆる側面に影響する問題を彼らに切実に突きつけています。もちろん、これには前回の選挙が含まれます。そしておそらく次の選挙でも…ですから、ICOがデータ保護を適切に行えていないという事実は、あらゆるレベルでの大きな問題なのです」。

ブレグジットの結果、他のEU規制当局が、例えば現在EU外の法的管轄下にあることが多い大手テックプラットフォームから英国市民を守ってくれているように権利の保護に関与してくれることはなくなる。英国市民にとって個人情報に対する権利を保護してくれる唯一のデータ保護規制機関はICOのみとなるのだ。

例を挙げるならば、Googleはブレグジットへの対応として、英国のユーザーを米国の管轄下に移すと述べている

関連記事:EUデータ保護当局が指針を発表、Cookieウォールの同意はNG、スクロールで同意もNG

Category:セキュリティ

Tag:ヨーロッパ / EU 広告業界 GDPR

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)