Ford(フォード)は米国時間3月16日、7500万ドル(約81億7000万円)を投じてミシガン大学アナーバー校に新設した施設に、約100人の研究者やエンジニアを配置すると発表した。この件に関して、まだどこにも掲載していないインタビューをお届けしたいと思う。
フォードはTechCrunchに対し、この施設はインキュベーターではなく「当社のグローバルな研究と高度なエンジニアリングネットワークの延長線上にある」と述べた。同社はここで、自動運転の研究のみならず、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のSpot(スポット)や、Agility Robotics(アジリティ・ロボティクス)のDigit(ディジット)のようなサードパーティ製ロボットをどのように利用するかについても、多くの研究を行う予定だ。フォードは数年前からAgilityと提携し、共同で研究やテストを行っていることが、2020年のCESで発表されている。
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現在、フォードは2台のDigitロボットを所有している。Agilityが最初に市販した2台だ。両社の提携がどのように展開するかによって、Agilityはおそらく、より積極的にロボット工学の業界に関わろうとする企業にとって、有力な買収対象となる可能性がある。
発表イベント終了後、フォードのテクニカルエキスパートであるMario Santillo(マリオ・サンティロ)氏から電話で話を聞いた。同氏はこの新たなロボット開発事業の責任者だ。その要点は以下の通り。
フォードは自動運転以外に、ロボット分野でどのような取り組みをしているのですか?
フォードは実際にロボット工学のすべての分野を見据えています。私のチームでは、製造現場から消費者寄りの用途まで、あらゆる分野に注力しています。後者は例えば、Digitが配達車両から降りて、あなたの家の玄関先まで荷物を届けるというようなものですね。ミシガン大学は我々と協力することで、より良いユースケースの提供を目指しています。私たちは、必ずしもロボットを開発する必要はありませんが、DigitやSpotのようなロボットを使い、それらの精度を高め、フォードが本当に大切にしているものを届けられるようにして、最終的には人類のために役立てたいと考えています。
Agilityのチームとは、実際にどのくらい緊密に連携しているのですか?
非常に緊密に仕事をしています。ほぼ毎日のように起ち上げ、すべてを稼動させています。ほんの数カ月前に、ディアボーン(フォードの本拠)にDigitを導入したばかりですが、パロアルト(フォードの研究開発拠点)にもDigitがありますので、実際の使用例を得るという意味では、彼らの方が少し先を行っています。Agility Roboticsとは非常によく連携しています。どちらにも隠し事はありません。ミシガン大学と同じように、パートナーシップを組んで、より良いもの、便利なもの、そして安全なものを作るために協力したいと思っています。
実際の研究において、ミシガン大学はどのような役割を果たすのでしょうか?
大学は次世代のロボット工学者に教えることから始めているので、大きな役割を担っています。大学が行っている研究は、空、陸、海、宇宙など、実にロボット工学のあらゆる分野におよび、それらが相互に関連していることに驚かされます。ウォーキングラボでは、特にリハビリテーションロボットの研究に力を入れており、それはDigitの不整地を歩く能力を高めることに直接つながります。
今のところ、Digitが中心となっているのですね。
Digitは確かに、直接関わっています。しかし、フォードには多くの車輪付きロボットがあり、ミシガン大学で行われている研究に基づき、これらのロボットをどのように活用するかについて、多くの研究が行われています。
フォードは、ロボット分野のスタートアップ企業や技術の買収を積極的に検討していますか?
フォードは常に新しいニーズや企業を評価することに興味を持っていると思います。必ずしも「ノー」とは言いません。
大学によるロボット工学のすばらしい研究の一例を挙げると、カナダのウォータールー大学では、ウェアラブルカメラと機械学習を利用して、ロボットの外骨格や義足がユーザーとより自然に相互作用できるようにする研究が行われている。研究者の1人は「私たちの開発している制御方法は、必ずしも人間の思考を必要としません。自律的に運転を行う自動走行車のように、私たちはそれ自体が自動的に歩行する自律型外骨格を設計しています」と語る。
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現在、多くの企業がモビリティやリハビリテーションを目的とした外骨格を製造している。ウォータールー大学の取り組みは、スマートフォンのアプリや外部からの制御が不要になるという点で、重要なステップとなるだろう。
ロボット関連の資金調達のニュースとしては、Hai Robotics(ハイ・ロボッティクス)が、2020年末に発表したシリーズBに加え、1500万ドル(約16億3000万円)「近い」額のシリーズB+を完了した。「HAIPICK」自動倉庫システムを開発したこの深圳を拠点とする会社は、中国の物流ロボット製造会社の中でも、注目すべきメーカーの1つだ。同社のシステムは、細い支柱で組まれた背の高いロボットが、一度に最大8個のコンテナを動かすことができる。
Hai Roboticsによれば、同社のシステムは倉庫の作業効率を最大で4倍に向上させることができるという。このカテゴリーに参入した多くの企業と同様、新型コロナウイルスの感染流行が大きな好機となることが証明された。より多くの人々がeコマースを利用するようになり、企業は不要な操業停止を避けるために自動化に目を向けているからだ。
私が野球のシーズン開幕に興奮しているからというわけでもないが、Red Sox(ボストン・レッドソックス)は2021年、Fenway Park(フェンウェイ・パーク)に紫外線消毒ロボットを配備すると発表した。現時点では、球団はSurfacide(サーフェサイド)から3台のロボットを購入しただけのようだが、このロボットは「チームのクラブハウスやトレーニングルームなどの密になる場所、スイートルームやトイレなどのファンの出入りが多い場所を消毒する」ことに注力する、より大規模な取り組みのごく一部であると思われる。
ちなみにロボット審判員のMLBデビューは、もう少し先になりそうだ。
カテゴリー:ロボティクス
タグ:Ford、ロボット、ミシガン大学
画像クレジット:Courtesy of Ford/Photo Tim LaBarge 2019
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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)