葬儀ITベンチャーの「よりそう」は1月12日、第三者割当増資および金融機関4社からの融資により、シリーズEラウンドとして、総額約35億1000万円の資金調達を実施したと発表した。内訳は、第三者割当増資が約30億9000万円、融資が4億3000万円。引受先は、フィデリティ・インターナショナル、農林中金キャピタル、Sumisei Innovation Fund、博報堂DYベンチャーズ、Sony Innovation Fund by IGV、HT Asia Technology Fund、ヤマシタ。第三者割当増資での累計調達額は約63億円となった。
調達した資金により、終活・葬式・供養・相続まで包括的に提供する「ライフエンディング・プラットフォーム」(LEPF)構想を強化するとともに、新規事業創出および認知拡大に努める。
日本は、少子・高齢・多死が進む「課題先進国」として年間死亡者数が増加傾向にあり、2040年には約168万人(内閣府「令和3年版高齢社会白書(全体版)」)に達する見込み。また1人の方が亡くなる前後において、その家族は介護や葬式、供養、相続といった様々なライフイベントを経験することになり、そのたびにサービスの比較検討や申し込みを繰り返すことが大きな負担となっている。そこで「よりそう」は、各家族が各ライフイベントで感じる負担や不安を「一元化」「テクノロジー」「安心感」によって解消するため、葬式を起点として前後のタイミングまで一元的にサポートするLEPF構想を強化する。
また同社によると、その実現には、起点となる葬式の施行を担うパートナー葬儀社のDX支援も重要という。葬儀業界は業界構造的な背景から、数年前までIT化やDXの重要性が認識されていなかったことから、業務効率化まで手が回らず、本来遺族のケアに割くべき時間をアナログな事務作業や業務管理にあてざるをえない葬儀社も少なくないとしている。
「よりそう」は、パートナー葬儀社のDX支援によって葬儀社スタッフが遺族に向き合える時間を増やし、遺族がお別れに集中できる時間を提供したいと考えているという。今回の調達を通じ、遺族の不安に寄り添い、事業者課題も解決することで葬儀業界の負を解消するサービスを構築し、両面から業界構造の変革を促すプラットフォーマーとなることを目指すとしている。
重点投資領域
- LEPF構想の推進:LEPF拡張にともなう事業シナジーを見越し、保険や介護といった葬儀周辺領域に強みを持つCVCによる出資を実現。また、さらなる領域拡大および強化のため、他業種との業務提携を本格的に検討する予定
- 葬儀社向け事業の立ち上げ:今後はDXによる経営向上支援を目的とした葬儀社向け新規事業を本格化する予定。2022年度中に事業部を立ち上げ、2023年度中に主要事業とすることを目指す
- 採用強化:LEPF構想の推進および新規事業立ち上げに際し、よりそうの事業成長を支える人材の採用強化を決定
- マスプロモーションへの投資:主力サービス「よりそうお葬式」は、一般には比較的新しく、認知が低いカテゴリーに含まれるサービスであることから、認知を広めていく必要があると考えているという。葬式運営経験が少なくても絶対に失敗したくない方が、事前に「よりそうお葬式」を知ることで安心して利用いただけるよう、マスプロモーションを強化する
「よりそう」は、2009年3月に設立後、2013年に「よりそうお葬式」(旧「シンプルなお葬式」)、「よりそうお坊さん便」(旧「お坊さん便」)の提供を開始。高齢化や核家族化による葬儀・供養の価値観の変化などを取り入れたサービスを展開している。2018年3月には葬儀・法要・供養などの「ライフエンディング」サービスをワンストップで提供するブランド「よりそう」を発表している。