東南アジアのスタートアップや資金調達の話を取材している私にとって、2021年を表す言葉としては、「whoa!(うわぁ!)」がぴったりだ。2021年は、世界の投資家がこの地域の技術エコシステムに注目し始めただけでなく、実際に資金を投入し始めた年でもあった。
国際的なパートナーに支えられて、Alpha JWC、AC Ventures、Jungle Venturesなどの東南アジアに特化したVCが、過去最大の資金を調達した。
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The Kenの報道によると、Grab(グラブ)やSea(シー)のIPOのようなエグジットが東南アジアのスタートアップエコシステムへの関心を高める中で、米国のVCであるA16z、Valar Ventures、Hedosophia、Goodwater Capitalなども、地域事務所を設立している(あるいは設立を計画している)。Golden Gate Venturesの包括的なレポートでは、BとCラウンドの増加もあって、記録的な数のエグジットを予測している。
「東南アジア」という言葉を使うのは、いつも少し気が引けているのだが、それはこの地域があまりにも大きく複雑だからだ。もちろん簡潔に表現したい場合には一番簡単な選択肢なのだが。東南アジアは11カ国で構成されていて、たとえばシンガポール、ミャンマー、ラオス、ベトナム、フィリピン、インドネシアの間には当然ながら大きな違いがある。
グローバルな金融センターとして知られるシンガポールのスタートアップエコシステムは、近隣諸国と比べると独自のカテゴリーに属していると言えるだろう。特にインドネシアは、世界第4位の経済大国であり、人口2億7350万人に達する東南アジアで最も人口の多い国であるため、特別な注意が必要だ。両国とも2021年にはかなりの数のユニコーンを輩出している。たとえばシンガポールでは、Ninja Van(ニンジャバン)、Carousell(カルーセル)、Carro(キャロ)、Nium(ニウム)などがユニコーンのステータスを獲得したスタートアップだ。
シンガポールのスタートアップは他の東南アジア諸国(Niumの場合は米国とラテンアメリカ)に焦点を当てる傾向があるが、一方インドネシアを拠点とする創業者たちは、中長期的な国際展開計画を持っていたのかもしれないが、私が話をした創業者の多くは、少なくとも来年は国内展開に焦点を当てる計画のようだ。インドネシアは広大なだけでなく、地理的にも複雑で、1万7000以上の島があり、そのうち約6000の島に人が住んでいる。通常スタートアップ企業は、グレーター・ジャカルタ地域で事業を開始した後、バンドンやスラバヤなどの主要都市に進出する傾向があったが、特にフィンテックやeコマースのスタートアップ企業を中心に、いまや多くの企業が小規模な都市に注目している。
以下にご紹介するのは、2021年に飛躍し2022年に注目すべきいくつかの分野だ。
投資用アプリ
ミレニアル世代や初めての個人投資家を対象とした多くの投資アプリが、2021年初めに小規模なアーリーステージのラウンドで調達を行ったが、数カ月後にはそれよりはるかに大きな追加調達が行われた。例えばインドネシアを拠点とする暗号資産に特化したPintu(ピントゥ)、ロボアドバイザーのBibit(ビビット)、Ajaib(アジャイブ)、Pluang(プルアン)、シンガポールを拠点とするSyfe(セイフ)などがある。
インドネシアでは、個人投資の割合はまだ比較的低いが、その数はパンデミック期間中のファイナンシャル・プランニングへの関心の高まりと、株式インフルエンサーの人気によって、一部の人たちからの懸念にもかかわらず、増加している。
インドネシアの中小企業に特化したスタートアップがフィンテックを深化させる
政府の発表によると、インドネシアには6200万社の中小企業(SME)があるとされているが、複数の創業者から聞いたところによると、特に家族経営の企業や個人事業主は計上されていない可能性があるため、この数字は実際よりも低くなっている可能性があるという。その正確な数はともかく、中小企業の多くはエクセルや紙の台帳で会計処理をしているため、技術系のスタートアップにとっては絶好の機会が広がっている。
最も注目すべきは、競合する2つの簿記アプリのBukuWarung(ブクワルン)とBukuKas(ブクカス)が、2021年多額の資金を調達したことだ。両社とも、当初は中小企業のデジタル化を支援することに注力していたが、最終的には、ユーザーがソフトウェアに入力したデータを利用して信用力を判断し、運転資金の融資などの金融サービスに製品を拡大する予定であるという点で互いに似通っている。
中小企業を対象とした他のスタートアップには、賃金前払いや給与管理のプラットフォームのGajiGesa(ガジゲサ)やWagely(ウェイジリー)などがある。
ソーシャルコマース
インドネシアの大都市に住んでいる人には、eコマースのプラットフォームの選択肢が多いのだが、地方では選択肢が少なくなる。これは、物流インフラが細分化されていることが一因で、商品の受け取りにコストと時間がかかることが問題なのだ(ただし、SiCepat[サイセパット]、Advoctics[アドボクティクス]、Kargo[カーゴ]、Waresix[ウェアシックス]などのスタートアップ企業もこの問題に取り組んでいる)。
そこで、中国のPinduoduo(拼多多、ピンドゥオドゥオ)やインドのMeesho(ミーショ)の成功をこの地で再現しようと、Super(スーパー)、Evermos(エバーモス)、KitaBeli(キタベリ)といったソーシャルコマースのスタートアップが登場している。いずれも、日用雑貨や食品などの生活必需品を対象としていて、同じ地域に住む人たちがまとめて注文を行うことで、サプライチェーンをより効率的かつ安価にするソーシャルコマースモデルを利用している。その意味では、少なくとも部分的には物流のスタートアップと呼ぶことも可能だ。
eコマースアグリゲーター
Thrasio(スラシオ)のように、小規模なeコマースブランドを買収するスタートアップ企業は、数年前から欧米で多くの資金を集めてきた。しかし、このようなeコマースアグリゲーターが東南アジアに進出するには、ある程度の時間が必要だった。
2021年、2つのeコマースアグリゲーターがベンチャーキャピタルからの資金提供を受けて正式に発足し、数ヵ月後にはどちらも追加の資金調達ラウンドを実施した。多くのeコマースアグリゲーターがAmazon(アマゾン)の販売者を中心に活動しているのに対して、Una Brands(ウナ・ブランズ)は「セクターは問わない」としている。アジアパシフィックを横断する有力なマーケットプレイスが存在しないため、同社はTokopedia(トコペディア)、Lazada(ラザダ)、Shopee(ショッピー)、Rakuten(楽天)、eBay(イーベイ)などのプラットフォームからブランドを探すシステムを開発した。一方、Rainforest(レインフォレスト)は、アジアのAmazon販売者に焦点を当てているが、消費財のコングロマリットであるNewell Brands(ニューウェル・ブランド)のオンライン版を目指すことで、他のアグリゲーターとの差別化を図っている。アジアを拠点とするeコマースの販売者が多いことから、Una BrandsとRainforestの両方が成長し、他のアグリゲーターが登場することも期待される。
画像クレジット:Abdul Azis/ Getty Images
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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)