SOMPOホールディングスが自動運転OS開発の「ティアフォー」に約98億円出資し関連会社化

SOMPOホールディングスが自動運転OS開発の「ティアフォー」に約98億円出資し関連会社化

SOMPOホールディングスは8月28日、自動運転システム開発事業など展開のティアフォーに対し、第三者割当増資の引受および損害保険ジャパンが保有する株式取得により約98億円を出資し、資本提携契約を締結したと発表した。ティアフォーは、SOMPOホールディングスの関連会社となる。なお、ティアフォーの累計資金調達額は175億円となった。

政府策定の官民ITS構想・ロードマップでは、2020年までに限定地域(過疎地域等)での無人自動運転移動サービスの実現や、2025年度を目途とした全国40ヵ所以上での実装可能性が示されているという。また、工場や商業施設など施設内での実装が全国各地で検討されている。

そこで、SOMPOホールディングスとティアフォーは、自動運転の頭脳にあたるソフトウェア技術と「Level IV Discovery」を一体として提供し、自動運転技術の社会実装を支援する「自動運転プラットフォーム」の開発を事業として両社で展開するため、資本提携を行うことで合意した。Level Ⅳ Discoveryは、損保ジャパン、アイサンテクノロジー、ティアフォーが共同開発するインシュアテックソリューション。走行前にリスク調査を行う「リスクアセスメント」、走行中の「遠隔見守り・トラブル対応」、自動運転車の多様なリスクをカバーする「保険」の3ソリューションにより、自動運転の走行前・走行中・トラブルまでを総合的にサポートすることで自動運転走行の安全を支えるとしている。

両社は「自動運転プラットフォーム」に参画する主要なプレイヤーを募り、一体となって社会実装に向け協創するとしている。また、得られたデータと、これまでに損保ジャパンが培ってきた事故の未然防止や事故対応のノウハウを融合することで、安心・安全な自動運転の実用化を支援するという。

今後は、「自動運転プラットフォーム」開発事業の展開により得られる車両・走行・乗客・位置のデータなどモビリティにかかわる各種データと、保険事業やSMPOホールディングスがすでに展開しているモビリティ事業(CtoCカーシェアリング、駐車場シェアリングなど)から得られるデータなどを組み合わせ、将来的にはMaaSやスマートシティの分野においてSOMPOグループ独自のサービスや新事業の創造を目指す。

SOMPOホールディングスの中核事業を担う損保ジャパンは、過疎地域での移動手段確保、人口減少による物流業界のドライバー不足の解消といった社会的課題の解決策として期待される自動運転技術が、「安心・安全」に社会実装されるために、損害保険会社として果たすべき役割について研究を推進。

これまでに、ティアフォーと自動運転システムの遠隔監視・操作を支援する「コネクテッドサポートセンター」を共同開設。また、それをリスクアセスメントや保険商品と組み合わせて提供し、自動運転技術の社会実装に必要な安全性と利用者の安心感を高めるインシュアテックソリューション「Level IV Discovery」の共同開発に取り組んできた。

また2019年6月には、損保ジャパンがティアフォーに48億円を出資するなど、両社の協業を推進してきた。

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英保険会社Direct Line Groupがロンドン拠点の保険アプリBrollyを買収

英国のデジタル保険アプリであるBrolly(ブローリー)はDirect Line Group(ダイレクトライングループ)に買収された。買収条件は未公表。買収は2020年第3四半期に正式に完了する予定だ。

もともとは、Aviva(アビバ)のアンダーライターでプロダクトマネージャーだったPhoebe Hugh(フィービー・ヒュー)氏と、Skype(スカイプ)とMicrosoft(マイクロソフト)でエンジニアリングマネージャーだったMykhailo Loginov(ミカイロ・ロギノフ)氏がアクセラレーターのEntrepreneur First(アントレプレナーファースト)で出会った後に、個人向け保険コンシェルジュ(未訳記事)としてBrollyを立ち上げた。このアプリでは、自分の保険契約の補償範囲の漏れや重複を見つけ、適切な保険を探すことができる。

そこまでは同社が単にインシュアテックになっただけに見えたが、2019年8月に「Brolly Contents」を立ち上げ、同社が空白になっているとみた家財保険の領域を埋めた(未訳理事)。

デジタル時代にふさわしく設計されたこのプロダクトは、個人の所有物のすべてまたは一部を「柔軟な」月額料金で補償し、Brollyのモバイルアプリを介して従来より便利な方法で提供されている。Brolly Contentsには最大4万ポンド(約540万円)相当の家財を補償する機能があり、賃貸人や不動産所有者に適している。また保険の更新に手数料はかからない。

画像クレジット:Brolly

さらに最大25%のロイヤルティ割引が約束されており、Brollyとの契約を続け、保険金の請求を行わない限り割引率は毎月増加する。BrollyのCEOであるヒュー氏が当時TechCrunchに語ったように、これは新しい顧客に大幅な割引を提供している既存の保険会社に対するアンチテーゼだ。顧客らが契約後数年間、時間がなかったり怠慢のために切り替えをしなければ、保険会社が最初の割り引きの元を取ることになる。

共同発表によると、Brollyのチームは買収後Direct Line Groupに加わり、「Direct Line Groupが保険業界のリーディングデジタルプレーヤーになるための変革の加速に貢献する」ことを目的として、これまでの仕事を継続する見込みだ。

ヒュー氏は声明の中で次のようにコメントした。「私は個人向け保険を作り変えるためにBrollyを始めた。新しい世代の消費者の声に耳を傾け、それに対応することで我々はこれまで大きく前進してきた。この旅の中で、私とチームがテクノロジーとプロダクトをもっと多くのオーディエンスに拡げるためのステップを踏むことができ大変嬉しく思う。英国で最も革新的な大手保険会社の1つであるDirect Line Group内で保険を簡素化するために、美しくパーソナライズされた製品を引き続き開発できることを心から喜んでいる」。

ただしTechCrunchが知るところでは、既存のBrollyアプリのユーザーは「保険管理プラットフォーム」が7月30日にシャットダウンされるとの通知を受け取っている。現在有効および期限切れのいずれの保険に関しても主要なデータをエクスポートするオプションを用意された。Brolly Contentsも個々の顧客の保険契約が満了日を迎えるとそこで終了となる。

最後に、後世のためにヒュー氏がEntrepreneur Firstで最初に行った投資家向けプレゼンをご紹介しよう。

画像クレジット:Brolly

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(翻訳:Mizoguchi

ソフトバンクグループが出資するP2P保険のLemonadeがペット保険を開始

Lemonade(レモネード)は7月15日、ペット保険を開始した。2016年に住宅所有者と賃貸人向けの保険を始めて以来、初めて新保険に参入する。

LemonadeのCEOであるDaniel Schreiber(ダニエル・シュライバー)氏が2月にTechCrunchに語った(未訳記事)ところによると、同社の住宅・賃貸人保険を保有する顧客の約70%はペットの所有者でもある。米国のペット所有者の1〜2%はペット保険に加入している。これは比較的単純なベン図(複数の集合の関係や、集合の範囲を視覚的に図式化したもの)だ。

Lemonadeのペット保険ではユーザーは月額12ドル(約1280円)の費用を負担する。既存の保険契約者が新しいペット保険を住宅・賃貸人保険と一緒に契約すると10%の割引が受けられる。保険は犬と猫の飼い主のみが利用できる。ほかのペットは対象外だ。

Lemonadeのウェブサイトによるとこの保険は、血液検査、尿検査、X線、MRI、検査、CTスキャン、超音波検査、外来、専門医、救急医療、さらに入院と手術も対象とする。注射や処方薬を含む薬物治療もカバーする。ペットの飼い主は、偶発的な交通事故や中毒などさまざまな病気の初期適用範囲を超えたより広い範囲を対象とする「事故・病気パッケージ」に加入することもできる。

Lemonadeのペット保険にはオプションでウェルネスパッケージも付属しており、毎年の健康診断、糸状虫検査、便検査、毎年の寄生虫検査、血液検査、最大3つのワクチンなどの日常的な項目に適用できる。またウェルネスパッケージには医療アドバイスチャットへのアクセスも用意されており、飼い主はペットを健康に保つための留意事項やヒントが得られる。

「ペットの健康保険は100年以上前までさかのぼる」とシュライバー氏は2月にTechCrunchに語った。「それはオランダの馬から始まった。そのペット保険の現代の姿は自動車保険だ。馬は輸送手段だった。保険の目的は輸送手段に何かが起こった場合に持ち主を保護することだった。しかし、ペットは今や家族の一員だ」

Fortune(フォーチューン)によると、米国人は2019年にペットに750億ドル(約8兆円)以上を使った。一般的な保険契約もかなり時代遅れになりつつあるが、法律上、数十年前に書かれた表現や条項を使用する義務がある。Lemonadeは、Policy 2.0(オープンソースであり、誰でも変更や提案ができる保険証券)を米国で始めようとしている。現在、Policy 2.0は欧州でのみ利用可能だが、これは保険の取り扱い方法の大きな変化を象徴している。業界の最大の問題の1つは、何が保険契約の対象で何が対象外か、保険契約者が単に知らないか、場合によってはわからないということだ。

Lemonadeは上場したばかりで、取引初日に株価は大きく上昇した。同社は株式公開に加え、Sequoia(セコイア)やAllianz(アリアンツ)などの機関投資家からも4億8000万ドル(約510億円)を調達し、世界中に382人の従業員を擁している。

米国では、同社のフルタイムの従業員の35%が有色人種、61%は女性だ。世界でも49%が女性だ。R&Dチームの4分の1、経営陣の33%が女性だ。8人で構成される取締役会では有色人種と女性が1人ずつを占める。

画像クレジット:Kimberly White / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

保険料を“わりかん”するP2P保険が日本で開始、中国ではアリババの相互宝が加入者1億人超え

インターネットを通じて保険の契約者同士がリスクをシェアし、誰かにもしものことが起こった際にはみんなでわりかんで支える——。グローバルではすでにいくつもサービス化されている「P2P保険」が、日本でもついに実現するようだ。

インシュアテック(保険テック)スタートアップのjustInCaseは1月28日、P2P型の「わりかん保険」の販売を始めることを明らかにした。同社では以下の8社と協業が決定したことを発表。自社およびパートナー企業にて順次取り扱いを開始するという。

なお数社はjustInCaseが昨年12月に発表した約10億円のシリーズAラウンドにも投資家として参加している。

  • アドバンスクリエイト
  • SBI日本少額短期保険
  • クラウドワークス
  • 新生銀行
  • チューリッヒ少額短期保険
  • ディー・エヌ・エー
  • 日本生命保険
  • LINE Financial

justInCaseが今回提供するわりかん保険は、20〜74歳が加入できる(被保険者)がん保険だ。過去5年以内にがん(悪性新生物、上皮内がん)と診察されたり、がんで入院したり、がんで手術を受けたりしたことがない人が対象。オンライン上で保険に申し込める。

各ユーザーは20〜39歳、40〜54歳、55〜74歳といったように年齢に応じてグループを形成し、誰かががんになった場合には他のメンバーで保険料をわりかんして支払う。

がん診断時の一時金は一律80万円。たとえば契約者数が1万人でがんと診断された人が2人いた場合、保険金の合計金額160万円にjustInCaseが受け取る管理費を加えた金額が保険料となり、残りの9998人でわりかんする。

justInCase代表の畑氏によると保険料に占める管理費の割合は加入者数によって変動するそう。1万人未満が35%、1万人以上2万人未満が30%、2万人以上が25%と多くの人が加入するほど管理費の割合が減る仕組み。先ほどの例の場合は保険金合計額の30%が管理費となり、保険料として1人あたり229円を負担することになる。

「160万円 ÷ 1.3 ÷(1万人 – 2人)= 229円」が保険料として事後請求される

justInCaseのわりかん保険は“あと払い”を採用しているため保険料は毎月変動する。みんなが健康で誰もがんにならなければ保険料はゼロだ。1ヶ月の保険料には上限金額が設定されているため、たまたま同じ時期に複数人ががんと診断されてしまった場合にも、上限額以上の負担を強いられることはない。

これらの仕組みによって既存のがん保険よりも低価格を実現できるのも利点の1つではあるが、畑氏は大きな特徴として「透明性」と「知らない人とも助け合いができる構造」を挙げる。

透明性に関しては収益の源泉(管理費)を毎月クリアにしている点が従来の保険と異なる部分。「保険会社だけがすごく儲かっているのでは?」と不信感を持っている人にとっては、その裏側が透明化されていることで少しは不安が和らぐだろう。

またわりかん保険では、先月がんになった人が何人いて、どういう人に自分たちのお金が使われたかも開示される。原則的に年齢や性別、病気の種類などごく一部の情報のみになる予定だが「保険料が誰かを助けることに使われたことが実感できる」体験が重要だという。この点はクラウドファンディングにも似た側面があるかもしれない。

冒頭でも触れた通り、P2P保険は海外ではすでにいくつもプレイヤーが出てきている状況。特に近年は中国が盛り上がってきていて、アリババ(アント・ファイナンシャル)の「相互宝」はリリース約1年で加入者数が1億人を突破している。

日本においては前例がなかったものの、justInCaseでは昨年7月に「規制のサンドボックス制度」の認定を取得。P2P保険をがん保険の領域から国内展開できるチャンスを得て、今回のリリースにこぎ着けた。

まずはパートナー企業ともタッグを組みながらがん保険の普及を目指すが、ゆくゆくはこのモデルを別の領域へ広げていくことも視野に入れている。

今回協業を発表した企業は金融系の大手企業からネット系ベンチャーまで幅広い。たとえばLINEと「LINE Score」を連携させた保険の仕組みを作ったり、クラウドワークスとフリーランス向けの保険商品を企画したりといったように、各社のサービス特性・事業アセットを踏まえた取り組みや新たな保険商品が生まれる可能性もありそうだ。

リスクをシェアする「P2P保険」本格展開へ、ITで保険業を変えるjustInCaseが約10億円調達

テクノロジーを活用した保険サービスを開発するjustInCase及びjustInCaseTechnologiesは12月9日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額で約10億円を調達したことを明らかにした。

今回はjustInCaseにとってシリーズAラウンドという位置付け。調達した資金を用いて、2020年に開始予定であるP2P型の「わりかん保険」を含む新商品の開発、保険APIなどを活用した他社との取り組み強化などに向けた人材採用やインフラ構築を進めていく計画だ。

なお本ラウンドに参加した投資家は以下の通り。グロービス・キャピタル・パートナーズら3社は2018年6月に発表された前回ラウンドからのフォローオン投資となる。

  • 伊藤忠商事
  • グローバル・ブレイン
  • ディー・エヌ・エー
  • 新生企業投資
  • SBIインベストメント
  • グロービス・キャピタル・パートナーズ(既存投資家)
  • Coral Capital(旧500 Startups Japan / 既存投資家)
  • LINE Ventures(既存投資家)

保険APIで事業拡張、P2P保険のサンドボックス認定も取得

TechCrunch Tokyo 2017卒業生でもあるjustInCaseは、保険数理コンサルティング会社Milliman出身の畑加寿也氏(現CEO)らが2016年に設立したインシュアテック(保険テック)スタートアップ。業界の知見とテクノロジーを組み合わせることで、これまでになかった新たな保険体験を提供しようというのが同社の取り組みだ。

昨年6月に関東財務局から少額短期保険業者として登録を受けた後、7月に開業。それまでテスト的に展開していたスマホ保険をアップデートする形で「ジャストインケース」をローンチしている。

このサービスではスマホの画面割れや故障、水濡れ、盗難紛失を月々356円からの保険料で補償する。アプリから約90秒で保険に加入できる手軽さに加え、独自の「安全スコア」によってスマホを丁寧に扱うほど保険料が安くなる仕組みが特徴。ジャイロセンサーなどから得られたデータを基にユーザーがどれほど丁寧にスマホを扱っているかをスコアとして算出し、スコアが高ければ更新後の保険料を割り引く。

このスマホ保険の展開に加え、今年7月に設立したjustInCaseTechnologiesを通じた事業もスタート。8月からは第一生命の開発したWebアプリ「Snap Insurance」に保険APIを提供し、アプリから1日単位で加入できるケガ保険の販売を始めている(第一生命が保険代理店としてjustInCaseの保険商品を提供)。

また7月にはjustInCaseが以前から構想として掲げていたP2P保険に関しても大きな進展があった。このモデルを取り入れた「わりかん保険」について「規制のサンドボックス制度」の認定を取得し、がん保険の領域にて正式展開できることになったのだ。

P2P保険は友人や同じ保険に関心のあるユーザーがグループを形成し、みんなで保険料を拠出しあうタイプの保険のこと。保険金の請求が行われた場合にはグループ内でプールされた保険料から保険金を支払う。ユーザー同士がリスクをシェアし、もしものことが起きた際には支え合う「シェアリングエコノミーの概念を取り入れた保険」という捉え方もできるだろう。

justInCaseが準備中のわりかん保険は“あと払い”型であることが1つの特徴。毎月、契約者全体の保険金の合計金額を算出し、契約者数で割った金額に管理費を加えたものが各ユーザーのあと払い保険料となる。

たとえば「2019年11月の保険金の合計金額が100万円、契約者数が1万人、管理費が30%」の場合、1人あたりの保険料は100万円÷1万人x1.3 =130円となり、この金額が12月分として事後請求される。ユーザーにとっては既存のがん保険よりも価格が安いことがメリットだ。

なお年齢によってもがんになるリスクは異なるため、ユーザーグループは年齢などの条件を基にサービス上で自動的に作られる仕様を考えているそう。わりかん保険料には上限金額が設定されているため、各ユーザーは一定金額以上を負担する心配はない。

アリババグループの「相互宝」は約1年で加入者1億人超え

日本ではまだ馴染みの薄いP2P保険だが、グローバルではインシュアテックの中でもホットな領域の1つとなっていてプレイヤーも増えてきている。

4月にソフトバンクグループらから3億ドルを調達した「Lemonade」やドイツの「Friendsurance」などが世界的にもよく知られているほか、近年は特に中国でP2P保険のサービスが盛り上がっている状況。アリババグループのアント・フィナンシャルが手がける「相互宝」は2018年10月のローンチ以降急ピッチでユーザーを獲得し、上海証券報の報道によると加入者が先月1億人を超えた。また畑氏の話ではテンセントが出資する「水滴互助」も8000万人以上のユーザー基盤を持つという。

この中には事前にグループ内で保険料をプールしておき、余ったお金をユーザーへキャッシュバックしたり最初に選択した団体へ寄付するタイプのものもあれば、相互宝やわりかん保険のように必要な金額だけを後で徴収するタイプのものもある。その他にも各サービスごとに細かな違いはあれど、畑氏いわくP2P保険に共通するもっとも重要なポイントは「透明性」だ。

「余ったお金を保険会社が全て手にするのではなく、透明性を持った上でユーザーに返還したり寄付をする、もしくは事後的に必要な分だけを徴収する。これまでは透明性の少なさが保険の課題でもあった。ユーザーにとっては何となく難しくて(保険会社が)どれだけ儲かってるのかも見えづらかった部分をクリアにしていくのがP2P保険のポイントだ」(畑氏)

P2P保険サービスはビジネスモデルの構造上、ユーザーと保険会社の利害が一致する点も大きい。従来の保険会社は保険金の支払を抑えるほど自社の利益が増えるため、ユーザーと敵対的な関係性になりがちだった。一方P2P保険の場合は保険料の一部を管理費として受け取る形が基本。特にあと払いタイプの場合は保険金が支払われる際に初めて事業者が収益を得られるため、両者が同じ方向を向きやすい。

以前も紹介した通り、P2P保険の仕組みは開業前から畑氏が熱望していた仕組みだった。当初はスマホ保険にこのモデルを導入することを目指していたが、同様の保険スキームは国内で実例がなくすぐに実装することが難しかったために断念。「保険業法の適用除外規定」に該当する範囲内でユーザー数や期間を限定してテスト的に提供するに止まっていた。

「何とかして絶対に実現したいと思っていた時に相互宝がでてきて、見た瞬間ヤバイなと。毎月1000万人ぐらいずつ加入者が増えるというすごいスピード感と、革新的なスキームに衝撃を受けた。これを日本でやるとしたら自分たちしかいないし、誰よりも先がけてやらなければとの思いでサンドボックスを申請した」(畑氏)

がん保険から国内におけるP2P保険モデルの確立目指す

justInCaseとしては2020年の前半を目処にわりかん保険のリリースを計画している。がん保険でしっかりとP2P保険のモデルを実証できれば、ゆくゆくはこの仕組みを他の保険にも広げていく方針。将来的には「わりかん保険」を1つのカテゴリーとして確立させることも目指す。

「(ユーザーとリスクをシェアする構造上)P2P保険はある程度の人数の母集団が見込めれば、カスタマイズした保険商品を作れる。従来はリスクが高すぎて企画段階で頓挫してものや、高いリスクを正当化するために保険料が非常に高額になり販売が難しかったようなものなども含め、新しいマーケットを開拓するような挑戦をしていきたい」(畑氏)

そういった数年先の展開を見据えた上でも今回のラウンドはとても大きな意味をもつという。同社の事業の広げ方は自分たちでどんどんユニークな保険商品を開発し、それをパートナーとなる各事業会社の協力も得ながらエンドユーザーに届けていくというもの。現時点で公開できる事業連携の話などはないとのことだが、ファミリーマートや保険の窓口など強力なオフラインチャネルを保有する伊藤忠商事を筆頭に各社との連携も視野には入っているだろう。

また資本関係はないものの、第一生命とは保険APIを活用した事業上の取り組みを始めているほか、先日にはライフネット生命保険と業務提携を締結するなど保険会社との連携も進めている。中には少額短期保険という枠組みでは実現できないサービスもあるため、その領域はjustInCaseTechnologiesを通じたAPIの提供や保険料計算アルゴリズムの提供という形で、既存の事業者と一緒にアップデートを図っていくという。

ギグエコノミーの隆盛を受けロンドン発のインシュアテックZegoが45億円を調達

ロンドンを拠点とするスタートアップのZegoが、ギグエコノミー労働者たちのための保険の必要性に気付いたのは数年前のことだ。そして同社は、当時Balderton Capitalが主導するシリーズAで600万ポンド(約8億1000万円)を調達した。その最初の保険商品は、食料配達人たち向けの従量制のスクーターならびに自動車保険だった。

今回同社は、欧州のインシュアテック(保険テック)スタートアップとしては最大規模である4200万ドル(約45億円)のシリーズB調達を、欧州全域をカバーするフィンテック並びにモビリティに特化した専門ファームであるTarget Globalの主導によって行った。同シリーズの支援者の中にはTransferWiseの創業者であるターベ・ヒンリクス(Taavet Hinrikus)氏も入っている。調達された資金は、Zegoのヨーロッパ全域での拡大と、従業員数を75人から150人へと増やすために使われる。

この調達によって同社の調達総額は5100万ドル(約55億2千万円)となり、既存の支援者であるBalderton CapitalならびにDST Globalのトム・スタッフォード(Tom Stafford)氏に、Latitudeが新たに投資家として加わった。この投資は、同社が過去12カ月間で10倍になるという、途方もない成長を遂げたことによって行われたものだ。

Zegoは、配車サービス、相乗りサービス、カーレンタル、そしてスクーターシェアリングといった新しいモビリティサービスの要求に応えるかたちで、従来の保険よりも柔軟な分刻み契約から年間契約に至る、さまざまな種類の保険ポリシーを提供している。保険料は車両から得られる利用実績データに基いて計算される。

これが意味することは、スクーターや車を使う配達人たちや、乗り合いやタクシーサービスの間で人気が高まっているということだ。同社は現在英国の食品配達市場の、3分の1の保険を担っている。その大きな部分はDeliveroo、Just Eat、およびUber Eatsとの提携を通したものだ。

ZegoのCEOで共同創業者であるステン・ザール(Sten Saar)氏は、次のように述べている。「私たちが3年前にZegoをゼロから立ち上げたときには、私たちのミッションは、急速に変化しつつある輸送業界の状況を真に反映した商品を生み出して、保険業界を変革することでした。世界はますます都市化が進み、そのことによって、従来の車両の『所有権』は、共有される『使用権』へと変化しています。これは、何百年もの間存在してきた、硬直した保険モデルが、もはや目的に適さないということを意味しています」。

Target Globalのリード投資家であるベン・カミンスキー(Ben Kaminski)氏は、次のように述べている。「新しいモビリティサービスの成長を受けて、Zegoは保険市場に大きな隙間を見出し、それを埋めるために独自のビジネスモデルを編み出しました。この会社の可能性はほぼ無限です。そして英国内での成功は、今後数年のうちにヨーロッパ全域はもちろん、その先へと反映されていくことでしょう」。

[原文へ]

(翻訳:sako)

旅をしながらIT業界で働く「世界中の」デジタルノマドに医療保険を提供するSafetyWing

Safety Wingのco-founder、Sondre Rasch氏

急増するデジタルノマド、足りていなかった「医療保険」

旅をしながら遠隔勤務で仕事をする主にフリーランスのデジタルノマドはこの世界に「2500万人ほど」存在する。そう語るのはデジタルノマドに医療保険を提供するスタートアップSafetyWingの共同創業者、Sondre Rasch氏。数字は同社が算出したものだ。

32歳の彼自身も、もともとはデジタルノマドで、ノルウェー国会ストーティングで政策顧問として務めた後、サンフランシスコを拠点とするまでは様々な国の都市で働いていた。

彼自身、「2ヵ月に一回、国に戻って行わなければならなかった」ノルウェーの旅行保険の更新が面倒で、「自分たち自身が欲しかった」からこそ、SafetyWingの1つ目のプロダクトである、デジタルノマド向け医療保険「SafetyWing」を開発するに至った。

ちなみに、Rasch氏が以前に立ち上げたKonsusは2016年冬季、SafetyWingは2018年冬季のY Combinator出のスタートアップだ。

デジタルノマド向け医療保険「SafetyWing」とは

SafetyWingは月額(4週間、28日)37ドル(米国では68ドル)の保険料で、北朝鮮などの一部の国を除いた約180ヵ国で使える医療保険を提供する。これは年齢が18歳から39歳の場合であり、他の年齢層は値段が変わってくる。

SafetyWingは巨大保険会社である東京海上と提携し、プランを運営している。Deductibleは250ドル、上限額は25万ドル。外来や処方箋はカバーするが、予防治療や特病などは対象外となっている。旅行保険も兼ねているので、旅行中断や、荷物紛失、政治的理由による避難などもカバーする。

「すでに旅の途中」でもSafetyWingに登録することができ、サブスクのように、終了日を設定しない限りは28日ごとに更新されていく。また、90日ごとに、母国でも30日間(米国では15日間)は保険が適応される。生後14日から10歳までの子供も、追加料金なしで、大人1人につき子供1人、家族単位だと子供2人まで、追加コストなしでSafetyWingがカバーする。

SafetyWingの利用者の国籍を多い順にランキングにすると、1) アメリカ、2) カナダ、3) UK、4) オーストラリア、5) ドイツ、6) ノルウェー、7) ブラジル、8) スペイン、9) フランス、10) イタリア。

旅先に選ばれる国のランキングは、1) タイ、2) インドネシア、3) ベトナム、4) マレーシア、5) スペイン、6) アメリカ、7) UK、8) メキシコ、9) カンボジア、10) 日本。

デジタルノマドに適した国や都市に関してより詳しく知りたい方は、短期で不動産をレンタルするスペインのスタートアップSpotahomeがリリースしているランキングや、デジタルノマドが次の目的地を見つける際に利用する代表的なサイトNomad Listを覗いてみてほしい。

今後も増加が見込まれるデジタルノマド、SafetyWingの今後の展開は

Rasch氏の実感では、5年から7年ほど前からデジタルノマドの数は急速に増えてきたという。

「テクノロジーの発展によりオンラインで働くことが容易になった」(Rasch氏)。

ビデオチャット、Slack、Dropbox、Google Docsなどのツールの台頭が、デジタルノマドたちのフレキシブルなワークスタイルを可能にした、と同氏は話す。

これまでに5000人以上のデジタルノマドがSafetyWingに登録してきた。だが、「まだまだ序章にすぎない」(Rasch氏)

2035年には10億人ものデジタルノマドが存在するというアナリシスもあり、「どこからでも働けるのであれば、住み心地がよく生活費の安い都市に引っ越すのは当然だ」と語るRasch氏は、今後SafetyWingの更なる需要拡大を見込んでいる。

そして、SafetyNestは今後、SafetyWingにアドオンを追加していく一方で、「グローバルセーフティネットをオンラインで実現する」ため、新しいプロダクトを開発している最中だ。

Rasch氏いわく「世界中で使える健康保険」。SafetyWingはフルタイムのリモートワーカーを世界中に抱えており、同社オフィスが存在しない国で働く社員にも福利厚生を充分に与えたいが、「あまり良いオプションがない」とRasch氏は話す。

同様な悩みを抱えるスタートアップに向け、この新プロダクトを2019年中にリリースする予定だ。

「このプロダクトであらゆる国のユーザーを獲得していく。インターネットに国境がないからこそ、プロダクトもボーダーレスでなければならない」(Rasch氏)

米国の保険スタートアップの2018年の資金調達は過去最高の2780億円

保険は地獄のようなややこしさだが、基本のビジネス部分は至ってシンプルだ。契約者にとっては、何か悪いことが起こった時に支払いを受ける手段であり、保険会社は災いを免れた人への課金で儲けを得る。

多くの大手保険会社が1世紀以上もビジネスを続けていることを考えれば、契約書を作成する側にとっては明らかに成功してきたビジネス手法だ。他の産業は変革の波にのまれてきたが、大手保険会社は大手として生き残り、収益をあげてきた。

しかし過去数年間、資金力のある新興スタートアップが保険にフォーカスした商品を拡大している。Crunchbaseデータによると、保険やインシュアテックの企業の2018年のベンチャー資金調達は空前の額となり、グローバルそして米国のトータル額は過去最高水準となった。かつて数億ドル規模だったベンチャー投資はいまでは数十億ドル規模となっている。

インシュアテックでもまた巨額の投資がある。既存のベンチャー企業がこの業界では活発だが、驚くことに投資の大半は、まさにスタートアップがディスラプトしようとしている保険大企業のコーポレートベンチャー部門からきている。

「私が思うに、結局、保険はグランドスラムの機会と見られている」とInsureTech Connectの会長で、ベンチャー企業QED Partnersの前設立パートナーCaribou Honig氏は語った。「ベンチャーコミュニティは、値段は安いものではないと言う。しかしチャンスを見つけられれば、そこには大きな可能性がある」。

下に、最近の投資データを参考までに示す。投資額や、どの企業が積極的に資金調達を行っているかが示されていて、そしてなぜエグジットがさほど多くみられないのかも推測できる。まず初めに保険ディールのコスト上昇について話そう。

人々は、保険額が数ドル上がると文句を言う。それは、保険スタートアップ投資家が対処せざるを得ないものに比べると何ほどのことでもない。引っ張りだこのスタートアップの評価額は右肩上がりで、ラウンドの規模も膨張する一方だ。結局、米国の保険・インシュアテックのスタートアップは2018年に25億ドル超を調達し、これは2017年の倍以上だ。一方、グローバルの投資は40億ドルに満たない。

下のチャートでは、米国におけるラウンドの回数と投資額の急増ぶりがわかる。

そして次は米国を含むグローバルマーケットの5年間のデータだ。

3、4年前にシード期の保険スタートアップの大きな波が起こったとHonig氏は指摘する。それが、平均的なラウンドの規模がかなり大きくなっている理由だ。そうした分野でホットな企業は急速に成熟していて、これまでになく大規模のレイターステージラウンドを模索している。

米国では、50社近くの保険・インシュアテックの企業が、巨額のものも含め1000億ドル超の資金を調達していた。最も大きなグローバル調達を行った企業のいくつかを下に挙げる。

コーポレート資金

立ち上げや部門拡大を図ろうとする保険会社のトレンドは数年前に始まり、加速を続けてきた。Crunchbaseのデータでは、スタートアップへの投資を行っているのは13の保険会社で、それらのほとんどは企業ベンチャー部隊を通じたものだ。全体的に、リストにある投資家はよりアクティブになっている。2018年にはわかっているだけで42の投資ラウンドに参加し、額にして計4億ドル出資した。

そうした動きを促進する要素もある。例えば先月、ドイツ大手保険会社Allianzはコーポレート・ベンチャー・キャピタル部門AllianzXの規模を当初の倍の11億ドルに拡大した。だからといって、検討の対象となる保険スタートアップが十分にあるだろうか?「必ずしもそうではない」と言うのはNew York Life Venturesを率いるJoel Albarella氏だ。というのも、New York Life Venturesや他のコーポレートVCが支援するディールの多くが保険に特化したスタートアップではないからだ。

たとえば、New York Life Venturesが最近手がけたディールのいくつかには禁煙プラットフォームのデベロッパーのCarrot、データ解析ソフトウェアスタートアップのTrifactaが含まれる。このコーポレートベンチャーファンドではまた、2年前にモバイルセキュリティのSkycureをSymantecに売却するという益の多いエグジットがあった。「こうした例はすべて、他の部門と同様にインターネットテクノロジーを保険に応用している」とAlbarella氏は語った。

Albarella氏はまた、インシュアテックが特にコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)投資家にとってホットな分野になっていて、それに伴う評価額の上昇を懸念している。それは明らかにCVCが関わっているディールでプレミアムな価格となっている、とAlbarella氏は話した。そして資金は潤沢にある。

エグジット

保険スタートアップにいく資金について、そうした金はすべて表に出てくると考える人もいるかもしれない。しかし、少なくとも米国スタートアップに限ってはそうではない。

保険業界でテクノロジーを活用している数社は手堅いエグジットを確保した。しかしこれまでのところ、かなりの資金を調達しているピュアプレイ(Oscar HealthMetromileなど)のいずれもM&AやIPOのルートを取っていない。

現実世界に勧善懲悪を適用するなら、保険スタートアップの投資家たちは本当に悪いことが起こった後に儲けを手にすることになる。それですら、膨大な書類を提出し、何時間も待たされてからだ。

少なくともHonig氏は、より現実的なシナリオとしていくつかの本当に巨大なエグジットがあるだろう、とみている。しかし、おそらくそれらはこれから数四半期のうちにはない。当面、急成長中の保険にフォーカスしたスタートアップはプライベートマーケットで簡単に資金を確保できる。多くのケースでは、企業は自社のブランド構築に時間をかけて売上を上げ、IPOをする前に態勢を整えることを好む。M&Aはどうかといえば、大手保険スタートアップの買収はこれまでさほどなかった。Honig氏は「保険会社はまだ静観モードだ」とみている。

従って、私たちは明らかに保険ディールとはみられないスタートアップが関わっている大きなディールを目にしてきた。そうしたものの一つとして、Honig氏は昨年Amazonに10億ドルで買収されたドアベルメーカーのRingを挙げた。RingのIoTテクノロジーは家所有者向けの保険に応用がきく、とHonig氏は語った。そしてRingは投資家に保険会社のAmerican Familyを抱えている。

控除額を超える

さしあたり、インシュアテックのベンチャーへの投資家はほとんどそのまま残っていて、価値がこのまま大きくなることを願っている。もちろん、そうなるかはわからない。しかし、往々にして的を射ている保険に関するマーフィーの法則を記しておく。それは、損失が控除額を超えることはめったにない、ということだ。保険会社のエグジットの自然な結果は、投資した資金をほとんど超えないリターンということになるのかもしれない。

もちろん悲観論者は通常、ベンチャーキャピタルのディールとは距離を置いている。

イメージクレジット: Brian A Jackson / Shutterstock

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(翻訳:Mizoguchi)