月4万円〜の定額で全国のワーケーション拠点に住み放題、「ADDress」がシリーズBの資金調達

広島県尾道市にオープンした、ADDressの広島県内第1号拠点。室内からは対岸の向島(むかいしま)が一望できる。

月額住み放題の多拠点居住プラットフォーム「ADDress(アドレス)」を運営するアドレスは8月6日、Bonds Investment Group(旧社名:オプトベンチャーズ)をリード投資家とし、山口フィナンシャルグループ傘下の山口キャピタルが運営するUNICORNファンドおよび個人投資家らから第三者割当増資による資金調達を実施したことを明らかにした。

ADDressは月額4万円からの定額で、全国の拠点に自由に住める多拠点コリビング(Co-living)サービスだ。個室を確保しながら、シェアハウスのようにリビングやキッチンなどを共有。空き家や空き別荘のオーナーと契約することで、遊休不動産の活用とコスト抑制を図っている。

5月20日には、ホテル・旅館・ゲストハウスなどの宿泊施設との連携強化を発表。リモートワークやワーケーションといった、コロナ禍を機に拡大する新しい働き方を支援し、職住融合型の滞在個室の提供を図る。

今回の第三者割当増資の引受先は以下の通り。

  • BIG2号投資事業有限責任組合(Bonds Investment Group
  • UNICORNファンド投資事業有限責任組合(山口キャピタル
  • 藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス代表取締役社長)
  • 児玉 昇司氏(ラクサス・テクノロジーズ代表取締役社長)
  • 重松 大輔氏(スペースマーケット代表取締役社長)
  • 月岡 隆氏(個人)

ADDressは、広島県の尾道と山口県の岩国にそれぞれ県内第1弾となる拠点を展開。北九州市の門戸港にも進出するという。

本調達は、アドレスにとってシリーズBラウンドに当たる。同ラウンドは継続中で、複数の事業会社やVCなどから追加調達を実施して2020年9月中に完了する予定とのこと。調達金額は非公開だ。

熊本発「シタテル」はアパレルの低価格・小ロット生産を実現する、全国の縫製工場と提携で

消費者の趣味が細分化する中、アパレル業に求められるのは多品種・少量生産。そんな時流に乗って、アパレルからじわりと熱視線を集めるサービスがある。オリジナル商品を作りたいアパレルブランドやデザイナーと、中小・零細の縫製工場とマッチングする「SITATERU(シタテル)」だ。

利用しているのは、個人デザイナーだけでなく、ビームスやユナイテッドアローズといった有名セレクトショップに商品を卸すブランド、パリコレに参加するハイブランドまで。会員登録数は前年比300%の約1800事業者と急増し、流通総額は5億円に上る。

中小・零細の繊維工場をネットワーク化

シタテルは全国120以上の縫製工場と提携し、これまで難しかった15〜100枚単位の発注を可能にした。アパレル事業者にとって小ロットの発注は単価が高くつくため、数百枚単位で発注するのが通例だった。

アパレル事業者は、電話かチャットで作りたい服を伝えると、目安の料金がわかる。生地が決まるとシタテル側でパターン(型紙)を作成。その後、サンプルを送ってもらい、問題がなければ本生産に移る流れだ。

アトリエは「マイ・アトリエ」という会員サイトを通じてシタテルとやりとりをする

アパレル事業者は「マイ・アトリエ」という会員サイトを通じてシタテルとやりとりをする

工場とのマッチングは独自アルゴリズムを使う。

データベース上には縫製レベル、対応可能アイテム、料金、リードタイム(発注から納品までの期間)、稼働状況といった情報があり、アパレル事業者の要望に応じて最適な工場をマッチングする。

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ここで気になるのが、縫製品質。メイドインジャパンの縫製技術は海外に比べると高いと言われるが、実際のところはどうなのだろう。この疑問についてシタテルの河野秀和社長はこう答える。

「総じて品質は高いが、工場ごとに差があるのも事実。そのため、工場に提出してもらうサンプルを元に、シタテルが5段階で評価している。これによって、縫製技術の難易度に応じた工場をマッチングできるようにした」

シタテル社内には、アパレル事業者の要望を聞くコンシュルジュや、デザインをCADでデータ化するパタンナーも在籍。すぐに稼働できる工場も把握していることから、通常3カ月かかるリードタイムを最短6日に短縮しているという。

シタテルのメンバー(右から2番目が河野社長)。お揃いのコートはもちろん、シタテルで作ったものだ。おしゃれ感が漂う

シタテルのメンバー(右から2番目が河野社長)。お揃いのコートはもちろん、シタテルで作ったものだ

工場の代わりに新規開拓

大手アパレルが海外に生産拠点を移したことで、国内の縫製工場は仕事が激減。特に営業力がない零細・中小の工場は新たな仕事の受注ができず、苦境にあえいでる。「国内の縫製工場は15年前の1万5000から、5000ほどに減ってしまった」と河野氏は言う。

「最近の円安傾向と中国の人件費高騰で、国内工場への回帰も進んだ。とはいえ、工場には繁忙期と閑散期があり、すべての工場が1年中稼働しているわけではない」

稼働していないなら小ロットでも受注すればいいと思うかもしれないが、工場側からすると効率が悪く、旨味のある仕事ではない。そこでシタテルは、工場が受注時に経由する卸売や企画会社を迂回することで、小ロット生産でも利益を確保できるようにした。

提携工場の中には、ふだんはレディース専門の縫製しかやっていなかったが、その技術をメンズ商品で生かすようなケースが少なくない。営業力のない工場にとってシタテルは、非稼働の時間を埋めるだけでなく、新規顧客を開拓してくれる存在ともいえる。

ディオールやコム・デ・ギャルソンといったハイブランド、有名セレクトショップに卸すブランドが発注する縫製工場とも提携する

ディオールやコム・デ・ギャルソンといったハイブランド、有名セレクトショップに卸すブランドが発注する縫製工場とも提携する

震災復興を後押しする熊本発スタートアップ

シタテルは2014年3月に創業した熊本県のスタートアップだ。

河野氏は熊本出身。前職は地元企業の相談に乗る経営コンサルタントだった。そこで気づいたのが、小ロットで商品を作りたいアパレル事業者が多いにもかかわらず、需要に応える工場がなかったこと。

この構造を変えようと、アパレルと縫製工場をつなぐ、現在のビジネスモデルにたどり着く。創業当初は地元の工場と提携し、全国から注文を受けては縫製を依頼。現在も熊本県内34の縫製工場と提携している。

4月の熊本地震直後は、県内で多くの提携工場が操業を停止したが、徐々に生産を再開。パリコレに参加する世界的な国産ブランド「アンリアレイジ」が県内の縫製工場に依頼するなど、復興を後押ししている。

アンリアレイジがシタテルで作ったコート。生地にはコード(!)が埋め込まれていて、ドットや市松模様、花柄やらが浮かび上がるそうだ。すごい

アンリアレイジがシタテルで作ったコート。生地にはコード(!)が埋め込まれていて、ドットや市松模様、花柄やらが浮かび上がるそうだ。すごい

シリーズA調達でアパレル・工場向けアプリ開発へ

6月17日にはオプトベンチャーズと三菱UFJキャピタルを引受先として、シリーズAとなる第三者割当増資を実施。金額は非公表だが、数億円程度と見られる。

調達した資金では、アパレルと工場が必要事項を入力する専用アプリの開発、双方がやりとりするクラウドプラットフォームの強化などにあてる。

シタテルは2014年10月にも、三菱UFJキャピタル、日本ベンチャーキャピタル、リブセンスから資金調達を実施。リブセンスとクックパッドがスタートアップを支援するプログラム「STARTUP50」の第一号のファンディング先でもある。