ZoomのカスタマーサービスソフトメーカーFive9買収が白紙になったいくつかの理由

ローラーコースターの乗車について話そう。

パンデミックの間に多くの人にとって仕事をする際の主要コミュニケーション手段となったビデオ会議のZoom (ズーム)が、クラウドベースのカスタマーサービスソフトウェアメーカーFive9(ファイブ9)を買収することはもはやない。2021年7月に発表された全額株式交換による取引でZoomは儲かるコンタクトセンターマーケットに参入するはずだったが、いくつかの大きな妨げが9月30日の結論につながった。

まず最初に、ここ数年ほぼ右肩上がりだったZoomの株価はこのところプレッシャーを受けていた。そのため、7月に147億ドル(約1兆6320億円)とFive9を評価したこの取引は、同社にとって現在はかなり少ない額となっている(取引が発表された日のZoom株は約360ドル[約4万円]で取引された。現在は260ドル[約2万9000円]ほどだ)

Zoomが中国に結びついているため、国家安全保障上のリスクを生じさせるかもしれないと懸念して米司法省が主導するパネルが調査していることをZoomが9月20日の週に明らかにしたとき、もちろんそれでは問題は解決しなかった。

創業者のEric Yuan(エリック・ユアン)氏は中国で生まれ、27歳だった1997年に米国に移住し、帰化した米市民だ(数年前にユアン氏はそこに至るまでにおびただしい数のハードルを乗り越えたことをTechCrunchに語った)。

Zoomはまた2020年に、一部のミーティングを中国のサーバーに誤ってルーティングし、そして中国の天安門事件を追悼するために同社のプラットフォームを使っていた活動家のアカウントを停止したことを明らかにした。開発チームの大部分は中国にいる(多くの多国籍企業と同じだ)と以前言っていた同社はその後、中国本土外にいる人に影響を及ぼそうとする中国政府からの要求は認めない、と発表した。

それでも命取りになったのは、議決権行使助言会社Institutional Shareholder Serviceによる、Zoomの成長が減速している懸念があり、買収に反対した方がいいというFive9株主への勧告だった。

勧告は聞き入れられたようだ。Five9は9月30日、合併計画は2社の「相互合意によって中止になった」というニュースリリースを出した。

それとは別にZoomも経緯全体を軽く扱う発表を出した。「Zoom:What’s Next」というタイトルの発表の中で、ユアン氏はFive9について「当社の顧客に統合されたコンタクトセンターを提供する魅力的な手段でした」と語り「とはいえ、当社のプラットフォームの成功の基礎となるものではなく、顧客に魅力的なコンタクトセンターのソリューションを提供する唯一の方法でもありませんでした」と付け加えた。

いずれにせよ、買収取引は明らかに期待されていた。買収が破談になったというニュースが発表されたとき、ZoomとFive9の株価はかろうじて変動しなかった。

画像クレジット:OLIVIER DOULIERY/AFP / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

プライバシー重視のBraveブラウザで利用できる非トラッキングのビデオ会議ツールが一般公開

Braveは、社名と同じ「Brave」という名前のトラッキングをしないブラウザで知られるスタートアップだ。同社が提供するトラッキングをしないビデオ会議のアドオンがベータの段階を終了した。誰でもBraveブラウザからすぐにビデオ通話を開始することができる。

Brave Talkというこのツールは、2020年5月からベータテストが実施されていた。同社がTechCrunchに語ったところによると、ベータテスト期間中のDAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)、つまりBraveブラウザのテストバージョンから参加したアーリーアダプターと開発者は1万4000人ほどだったという。

このBrave Talkが一般に公開された。Braveは「プライバシーを重視した」ビデオ会議としてインターネットユーザーにアピールしている。

同社は一般公開を発表するブログ記事の中で「Zoomなど多くのビデオ会議プロバイダーは、通話やメタデータ、画像をモニターしており、こうしたデータの記録はユーザーの同意なしに販売されたり共有されたりすることがあります」と書いている。

ブログ記事はさらに「Brave Talkの通話では複数レイヤーの暗号化を有効にできるので、盗み聞きしようする人がいても聞くことはできず、我々のサーバーにメタデータは保存されません。したがって、ユーザーの同意なく通話、画像、アクティビティが記録されたり共有されたりすることはまったくありません」と続く。

Brave Talkのプレミアム機能(グループ通話や通話の録画など)は月額7ドル(約770円)で利用できる。ただし1対1の通話は無料で無制限だ(AndroidとiOSのBraveアプリは今のところプレミアムにのみ対応しているが「数週間のうちに」無料版も利用できるようになる予定となっている)。

ビデオ通話はBraveブラウザから開始する必要があるが、招待される側は「モダンブラウザ」(Chrome、Firefox、Safari、Edge、Operaなど)ならどれでも参加できる。

Braveは非トラッキングの認証情報であることをZoomなどの主力ビデオ会議ソフトウェアとは異なる利点として売り込んでいるが、Brave Talkは(今のところはまだ)エンド・ツー・エンド暗号化に対応していないことには注意が必要だ。

Braveによれば、Brave Talkは8×8が手がけるオープンソースのビデオ会議プラットフォームであるJitsi as a Serviceを利用している。これはWebRTCオープンソーステクノロジーでブラウザに直接HDビデオを埋め込めるようにするものだ。

暗号化に関しては、設定で複数のレイヤーを有効にできるという。Braveは、Brave Talkの無料版でもプレミアム版でも「Videobridge暗号化」で現時点では最も強力なレベルで暗号化されると説明している。

同社の共同創業者でCEOのBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏は「この設定により、ビデオとオーディオのストリームが参加者によって生成されるキーを使って暗号化され、Videobridgeサーバーで盗み聞きが防止されます。Videobridge暗号化は『Security Options』から有効にできます」と述べている。

同氏はさらにTechCrunchに対し次のように述べた。「『エンド・ツー・エンド暗号化』という言葉がまぎらわしく大げさであると判断したため、Brave Talkではこの設定を『Videobridge暗号化』としました。ビデオ会議に参加する際に、エンド・ツー・エンド暗号化の通話はプライバシーとセキュリティの1つの側面でしかありません。暗号化を利用していても、『大手』のビデオツールの大半は、会話の参加者や開始時刻と継続時間など多くの情報に関して積極的にデータを集め保管しています」。

「Brave Talkが採用している匿名の資格情報システムにより、我々は利用者や会話の相手を知ることはできず、複数のセッションにわたって関連づけることもできません。Brave Talkはユーザーを追跡しない、プライバシー・バイ・デフォルトのツールです」とアイク氏はいう。

Videobridge暗号化とエンド・ツー・エンド暗号化の違いを明確にするために、同氏はTechCrunchに対しさらに次のように述べた。「Videobridge暗号化はオーディオとビデオをBrave、8×8、パッシブに盗み聞きしようとする人のいずれからも暗号化された状態にしていますが、我々が『Videobridge暗号化』と呼び『エンド・ツー・エンド暗号化』と呼ばない理由は、我々と8×8が協力し、会議の参加者を自動で認証してアクティブな攻撃者に対してさらに堅牢にしようとしているからです。この開発が完了すれば、自信を持って完全なエンド・ツー・エンド暗号化と言えるようになります。Zoomでは参加者がセキュリティコードを声に出して読み上げ、エンド・ツー・エンド暗号化されていることを確認しますが、こうしたプラットフォームに対して我々の圧倒的なアドバンテージになります」。

Brave Talk(以前はBrave Togetherと呼ばれていた)を試すには、通話を開始するためにまずBraveブラウザをダウンロードする必要がある。前述の通り、通話を受ける側はBraveでなくてかまわない。

アイク氏によれば、Braveの非トラッキング製品全体でMAUは3600万人を最近超えたという。これには検索エンジンとFirewall+VPNが含まれる。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Kaori Koyama)

マイクロソフトがTeamsのアップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成も

マイクロソフトがTeamsの大幅アップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成機能も

米マイクロソフトはビデオ会議ツール「Microsoft Teams(以下、Teams)」における、今後の機能追加のスケジュールを明かしています。

今年5月に企業向けだけでなく、個人向けにも提供が始まったTeams。また同月には大画面スクリーンや専用カメラ、空間オーディオなどを組み合わせた未来のビデオ会議のコンセプトも披露されています。

さて今回の発表によれば、Teamsにはプレゼンテーションツール「PowerPoint」の画面共有ツール「PowerPoint Live」におけるカメオ機能が追加されます。これはピクチャー・イン・ピクチャーのように、PowerPoint資料映像に自分の顔や上半身映像(動画)を合成する機能で、来年初頭にリリースされる予定です。マイクロソフトがTeamsの大幅アップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成機能もマイクロソフトがTeamsの大幅アップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成機能も

さらに2022年初頭には、AI(人工知能)を利用したスピーチの改善機能「スピーカーコーチ」も導入されます。同機能ではスピーチのペースや出席者に確認するタイミングをアドバイスしてくれたり、あるいは聴衆にチェックインするようにリマインダーを表示したりします。

今月末には、米アップルのCarPlayによる音声での会議参加が可能に。自動車の中からでも、Siriを利用してミーティングに加わることができます。マイクロソフトがTeamsの大幅アップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成機能もマイクロソフトがTeamsの大幅アップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成機能も

照明の自動調整ツールも、数ヶ月以内に導入されます。Teams Mobileのコンパニオンモードも改善され、チャットやライブリアクションなどの機能への簡単なアクセス、さらにカメラなどの接続デバイスのコントロールが可能になります。

Jabra、Neat、Poly、Yealinkなどが提供する、インテリジェントカメラへの対応も予定。AIによる会話者の判断機能では音声だけでなく視覚的な合図も利用し、画面を切り替えられます。また同じ場所にいる会話者をそれぞれのビデオペインに配置する複数ビデオストリームや、会話者のプロフィールを下部に表示する人物認識ツールなども、数ヶ月以内に導入される予定です。2022年に導入されるOutlookのRSVP(簡易返答)機能では、自分が会議に直接参加するのか、あるいは遠隔地から参加するのか、勤務時間にいつ、どこで仕事をできるのかを記入できるようになります。

このように、新機能が次々と導入される予定のTeams。ビデオ会議ツールとしてはTeamsだけでなく、Zoomや米GoogleのGoogle Meetが激しいシェア争いを繰り広げており、今後もさらなる機能改善が業界全体で実施されることになりそうです。

(Source:MicrosoftEngadget日本版より転載)

Epic Gamesが10月にHousepartyを閉鎖、ビデオチャット機能「Fortniteモード」も終了へ

Houseparty(ハウスパーティー)は、Fortnite(フォートナイト)のメーカーであるEpic Games(エピックゲームズ)が2019年に推定3500万ドル(約38億4000万円)で買収したチャットアプリだ。しかし、このほど閉鎖が決まった。同社によると、Housepartyは2021年10月に既存ユーザーがアプリを利用できなくなる時点で終了する。ただし、アプリストアからは本日削除される。この動きに合わせて、Housepartyを使ってFortniteのゲーマーにビデオチャットを提供しているEpic Gamesの「Fortnite モード」も終了する。

2015年創業のHousepartyは、ユーザーが友だちとグループ・ビデオ・チャットに参加したり、Uno(ウノ)、トリビア、Heads Up(ヘッズアップ)などのゲームもできる機能を提供した。2020年、Epic GamesはHousepartyをFortniteに統合し、まずゲーマーがプレイしながら友だちのライブフィードを見られるようにし、後にゲームプレイを直接Housepartyにライブストリーミングする機能を追加した。当時、これらの統合はEpic GamesがHousepartyを買収した理由を説明する最終ゴールと思われた。

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そして買収発表からわずか2年後、ライブストリーミングのサポートが追加されてから半年も経たないうちに、Housepartyは閉鎖する。

一見、買収のフル活用に失敗したことを認めたともいえるこの動きについて、会社は明快な見識を示さなかった。しかし現実はといえば、Epic Gamesはビデオチャットよりも大きい何かを用意しているのかもしれない。とはいえ、この日、Epic Gamesがいうことができたのは、Housepartyチームはアプリに必要な注意を払えなくなったということだけだった。チームの焦点を別の何かシフトする経営判断を表す声明だ。

この決定によって解雇されるHousepartyチームのメンバーはいないとTechCrunchは聞いており、彼らは別のチームに移り、Epic Gamesファミリー製品を横断する「ソーシャルインタラクション」を可能にする新しい方法の仕事をすることになる。会社の発表は、そのソーシャル機能が「メタバーススケール」で設計、開発されることを示唆している。

「メタバース」は最近よく使われるようになったバズワードで、共有されたバーチャル環境、たとえばFortniteやRoblox(ロブロックス)などの大型オンラインゲーミングプラットフォームで提供されているものを指す。Facebook(フェイスブック)も、メタバースはソーシャルネットワーキングの次なる大きな一手であると宣言していて、CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はこれを「見ているだけではなく、その中にいるような感覚になれるインターネットのようなものです」と説明した。

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ある意味で、Fortniteはメタバースを取り込み始めており、アバターとして参加できるオンラインコンサートやその他のライブイベントなどゲーム以外の体験を提供している。終了に先立ち、Housepartyもライブイベントに手を染めて、ユーザーが友だちと一緒に見たり一緒に参加できるようにした。

Epic Games広報担当者はTechCrunchに、Housepartyチームはソーシャルに焦点を当てたいくつかのプロジェクトに取り組んでいて今後も続けると語った。しかし、Epic Gamesが取りかかっている「複数の大型プロジェクト」のいくつかは、まだ発表できないという。

ソーシャル製品に関していうと、現在HousepartyのテクノロジーはFortniteのボイスチャットすべてを支えており、彼らが作った機能はEpic Games Services(エピック・ゲームズ・サービス)を通じてデベロッパーに無料で開放されている。新しいソーシャル体験の構築も行っており、、Fortniteのグローバルイベント、たとえば最近のアリアナ・グランデのコンサートのソーシャルRSVP(出欠の返事)機能や、クエストなどのゲーム要素のコラボレーションのための「Operation:Sky Fire(オペレーション:スカイ・ファイアー)」イベントなどを開発している。Fortniteのユーザー生成コンテンツプラットフォームであるCreate Mode(クリエイト・モード)にも新たなソーシャル機能や体験を追加されている。

パンデミックのために2020年利用が急増したばかりのアプリを閉鎖するのは奇異に感じるかもしれないが、この新型コロナ需要に持続力はなかったようだ。

ロックダウンのピーク時、Housepartyは月間5000万人の新規登録者を記録した。世界が閉鎖されている中でユーザーが家族や友達とつながるためのビデオチャットアプリを探していたためだ。しかしパンデミックが進むにつれ、他のビデオチャット体験がいっそう勢いづいた。Zoom(ズーム)はリモートワークの必須ツールとしての地位を確立したばかりか、仕事終わりに友だちと過ごすツールにもなった。Facebookも2020年ビデオチャット機能の「Rooms(ルームズ)」を投入して同じようなグループビデオ体験を提供し、Housepartyを苦しめた。そして飽きがきたユーザーはClubhouse(クラブハウス)やTwitter Spaces(ツイッター・スペース)などのオーディオベースのソーシャルネットワーキングに移行した。

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画像クレジット:Apptopia

Apptopia(アップトピア)のデータによると、Housepartyはパンデミック太りの後、下降を続けている。これまでにiOSとAndroid合わせて1億1100万回ダウンロードされていて、大部分(6300万回)がiOSだ。米国はHousepartyの最大市場で、ダウンロードの43.4%を占め、英国(9.8%)とドイツ(5.6%)が続いている。
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ちなみにEpic Gamesは同アプリが全世界で「数千万」ユーザーに利用されたという。閉鎖は簡単な決断ではなく、「Fortniteモード」終了の決定も利用が低調だったからではないと強調した。

Housepartyは10月の完全終了に先立ち、アプリ内通知を経由してユーザーに閉鎖を警告する。同サービスの終了時点でFortnite Modeも利用できなくなる。

画像クレジット:Epic

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook