ベンチャーキャピタル(VC)グローバル・ブレイン代表取締役社長の百合本安彦氏は12月6日、同社が運営するイベント「グローバル・ブレイン アライアンスフォーラム 2019」にて、2020年における新戦略を発表した。
グローバル・ブレインの新ミッションは「Going Beyond、未踏社会の創造」
「グローバル・ブレインのミッションを再定義した。Going Beyond、未踏社会の創造。ミッションの基となる考え方としては、起業家による事業創造への支援、大企業によるオープンイノベーションの支援、それから我々自身による新規事業の創出といったところがある。ビジョンとしては、グローバルカンパニーおよびスタートアップのイノベーションハブとなって、我々自身もイノベーションの主体として、事業創出の核であり続けるというところ」(百合本氏)
ミッションやビジョンを達成するために、行動指針も再明瞭化した。そのうちの1つが、「王道主義(Play it straight)」だ。百合本氏は、「20年やってこられたのは、王道主義だから」と話した。
2020からは活動領域を更に拡大
グローバル・ブレインは日本の本社以外にも、韓国、シンガポール、アメリカ、イギリスにもオフィスを構えている。そして2020年1月にはインドネシアにオフィスを開設する。
「成長市場で、ユニコーンも増えている。まだ投資家のマーケットはまだ未熟、また、今年は7月にはスタートアップ用の、東証マザーズのような市場が出来上がっており、少しずつイグジット市場も成熟化してきているということで、参入を決定した」(百合本氏)
中国に関しては、ダウンサイジングのトレンドにあり、VCの数も減ってきている、そしてグローバル・ブレインのようにディープ・テックにフォーカスしているVCがあまり多くなく、日本企業が中国企業との事業協創を強く希望していることから、進出を検討。百合本氏は「インドの市場調査も開始している」と加えた。
2020年からは人材採用支援に加え、知財管理支援とデザイン支援も提供
百合本氏は「アンドリーセン・ホロウィッツやグーグル・ベンチャーズを、我々はベンチマークとしている。アンドリーセン・ホロウィッツでは100名以上の支援プロフェッショナルが投資先企業の事業創造を支援する体制をとっている」と説明し、2020年以降、グローバル・ブレインでは更なる事業創造支援の拡充を図ると述べた。
「投資先の支援チームとキャピタリストチームが密に連携して、投資先を支援していくという体制を作っていく。投資先のフェーズに合わせた最適な支援を提供していく」(百合本氏)
グローバル・ブレインは8月、スタートアップ向けの人材採用支援の子会社、GBHRを設立したが、今後は、知財管理支援とデザイン支援も提供していく。
まずは知財管理支援について。百合本氏いわく「我々はおそらく日本で一番ディープ・テックに強いVCになったと思っているが、やはりスタートアップの知財戦略は非常に重要だと我々は考えている。知財の専門家による、攻守のバランスのとれたサポートをもとに、事業の早期から作っていく必要がある」。
そのため、グローバル・ブレインでは、IT領域の知財を専門とする、iCraft法律事務所の内田誠弁護士と専属契約。知財DDの実施から、支援先の法務部メンバーの知財戦略教育まで提供していく予定だ。
デザイン支援について、百合本氏は「スタートアップはUIやUXを含む、広義の意味でのデザインの重要性が非常に増してきている」と話し、「ソニーと密に連携し、デザインに関する支援を徹底的にやっていきたい」と加えた。
2019年はグローバル・ブレインがより外向的になった年だった
グローバル・ブレインは2019年、情報メディア「GB Universe」をローンチしたり、国内の独立系VCと個人投資家らで組織される「Startup Investor Track(SIT)」をキックオフするなどしたことから、今年は同社がより外向的になった1年だったと言えるだろう。百合本氏自身も5月にTwitterアカウントを開設している。
キャピタルゲインに関しては、メルカリやラクスルが上場した2018年の348億円に対し、2019年は112億円。今年は63社に123億円の出資を実施した。今年のイグジットは、BASE、giftee、MEDLEY(予定)の3社がIPO、そしてREALGLOBE、SMARTCAMP、ASPECTIVAを含む5社がM&A。
百合本氏は「昨今、スタートアップの時価総額が高くなってきているため、時価総額の高いスタートアップへの投資はできるだけ控えるようにしている。BASEとgiftee(のIPO)はトラックレコードとして非常に素晴らしいIPOだった」と説明した。