グローバル・ブレインがヤマトHDやエプソンとCVCを設立、物流やインクジェット技術の革新に期待

独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは、3月31日にヤマト運輸を参加に持つヤマトホールディングス、4月1日にセイコーエプソンと、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)をそれぞれ設立することを発表した。

写真に向かって左から、グローバル・ブレインCEOの百合本 安彦氏、ヤマトホールディングス代表取締役社長の長尾 裕氏

ヤマトホールディングスとは、運用期間10年間、総額50億円規模のKURONEKO Innovation Fund(YMT-GB 投資事業有限責任組合)を設立。物流やサプライチェーンに変革を起こしうる技術・ビジネスモデルを有する、シード、アーリー、ミドルの各ステージのスタートアップを投資対象とし、ヤマトホールディングスとグループ各社が擁する経営資源のオープン化を通じて、物流・関連市場における成⻑モデルの創出を目指す。なお、日本国内のスタートアップ企業を中心に投資を進めていく予定だが、北米や欧州、アジアでの投資も視野に入れているとのこと。GP(無限責任組合員)はヤマトホールディングスが務める。

セイコーエプソンとは、セイコーエプソンが新たに設立したエプソンクロスインベストメントという子会社とEP-GB投資事業有限責任組合を設立。運用総額は50億円を予定しており、GP(無限責任組合員)はグローバル・ブレインが務める。同CVCは、インクジェット技術を中心としたコアデバイスなどの社内資源を擁するエプソングループがグローバル・ブレインと組んで、財務的なリターンの獲得のほか、グループとの協業やオープンイノベーションを加速させるのが狙い。既存事業の成⻑と新規事業の創出に取り組んでいくという。なお、エプソンクロスインベストメントの代表取締役には、4月1日にセイコーエプソン代表取締役社長兼CEOに就任した小川恭範氏が兼務する。

AIトラベルサービス「atta」運営元が約3億円を調達、国内と東南アジアでのマーケ/PR強化へ

ビッグデータとAIを使った旅行アプリ「atta」(あった)を運営するatta は総額約3億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引受先は以下のとおり。同社は2018年3月にWithTravelとして設立されたトラベル関連事業を開発・運営するスタートアップ。

写真に向かって左から、社外監査役の杉浦 元氏(エリオス)、CDOの鄭 信雨氏、取締役兼CTOの兼平嵩之氏、代表取締役兼CEOの春山佳久氏、CAO大沢 慎氏、社外取締役の深山和彦氏(グローバル・ブレイン)

  • サンエイト インベストメント(サンエイト・PS1号投資事業組合)
  • 御室工房(サンエイトOK組合)
  • 三生キャピタル(三生6号投資事業有限責任組合)
  • 名古屋テレビ・ベンチャーズ
  • マイナビ
  • 三菱UFJキャピタル(三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合)
  • 三井不動産/グローバル・ブレイン(31VENTURES Global Innovation Fund 1号)

今回調達した資金は、エンジニア採用のほか、日本と東南アジアでのマーケティングやPR活動に投下される。なお同社は2019年3月にシンガポール100%子会社の現地法人を設立済みだ。事業会社として引受先に加わっているマイナビでは、同社のトラベル情報事業部とattaの連携も視野に入れているという。

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VRプラットフォーム運営のクラスターがKDDIやテレ朝から総額8.3億円を調達

VRを活用したイベントプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターは1月6日、総額8.3億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引き受け先はKDDI(KDDI Open Innovation Fund 3号)、テレビ朝日ホールディングス、Wright Flyer Live Entertainment(WFLE)、三井不動産/グローバル・ブレイン(31VENTURES Global Innovation Fund 1号)、個人投資家となってる。また、テレビ朝日とWFLEの2社との業務提携も明らかにした。WFLEは、バーチャルアーティスト(バーチャルYouTuber)に特化したライブエンターテインメント事業を展開する2018年4月設立の企業。バーチャルアーティスト専用ライブ視聴・配信アプリ「REALITY」を開発・配布しているほか、バーチャルアーティスト専用スタジオ「REALITY Studio」を所有している。

clusterは、インターネット経由で音楽ライブ、カンファレンスなどのイベントを開催できるVRアプリ。VRデバイスのOculus Rift、HTC VIVE、HTC VIVE Proのほか、MacやWindowsマシンで利用・視聴できる。数千人と同時接続可能なのが特徴で、これまで開催した多数の有料イベントに大勢の観客が集まるなど人気のプラットフォームとなっている。今後テレビ朝日とは、バーチャルイベント事業や映像配信事業などで協力し、コンテンツの企画・開発を検討していくという。WFLEとは、REALITYのサービス上で作成したアバターをclusterで簡単に利用できる機能を共同開発する予定だ。

今回の注目はやはりテレビ朝日との業務提供だろう。すでにテレビ局では、関東、関西のキー局を中心に放送の一部でバーチャルなキャラクターを使った情報番組やバラエティ番組が放映されている。しかし、今回テレビ朝日がバーチャルアーティストのプロモーションや演出に長けたクラスターを組むことで、同局はもちろん、資本参加しているAbemaTVで、アナウンサーやキャスターのキャラクターに左右されない、天気予報やストレートニュースなどでもバーチャルアーティストが活躍するかもしれない。

グローバル・ブレインの新戦略、海外進出を加速しスタートアップ支援体制を強化

ベンチャーキャピタル(VC)グローバル・ブレイン代表取締役社長の百合本安彦氏は12月6日、同社が運営するイベント「グローバル・ブレイン アライアンスフォーラム 2019」にて、2020年における新戦略を発表した。

グローバル・ブレインの新ミッションは「Going Beyond、未踏社会の創造」

「グローバル・ブレインのミッションを再定義した。Going Beyond、未踏社会の創造。ミッションの基となる考え方としては、起業家による事業創造への支援、大企業によるオープンイノベーションの支援、それから我々自身による新規事業の創出といったところがある。ビジョンとしては、グローバルカンパニーおよびスタートアップのイノベーションハブとなって、我々自身もイノベーションの主体として、事業創出の核であり続けるというところ」(百合本氏)

ミッションやビジョンを達成するために、行動指針も再明瞭化した。そのうちの1つが、「王道主義(Play it straight)」だ。百合本氏は、「20年やってこられたのは、王道主義だから」と話した。

2020からは活動領域を更に拡大

グローバル・ブレインは日本の本社以外にも、韓国、シンガポール、アメリカ、イギリスにもオフィスを構えている。そして2020年1月にはインドネシアにオフィスを開設する。

「成長市場で、ユニコーンも増えている。まだ投資家のマーケットはまだ未熟、また、今年は7月にはスタートアップ用の、東証マザーズのような市場が出来上がっており、少しずつイグジット市場も成熟化してきているということで、参入を決定した」(百合本氏)

中国に関しては、ダウンサイジングのトレンドにあり、VCの数も減ってきている、そしてグローバル・ブレインのようにディープ・テックにフォーカスしているVCがあまり多くなく、日本企業が中国企業との事業協創を強く希望していることから、進出を検討。百合本氏は「インドの市場調査も開始している」と加えた。

2020年からは人材採用支援に加え、知財管理支援とデザイン支援も提供

百合本氏は「アンドリーセン・ホロウィッツやグーグル・ベンチャーズを、我々はベンチマークとしている。アンドリーセン・ホロウィッツでは100名以上の支援プロフェッショナルが投資先企業の事業創造を支援する体制をとっている」と説明し、2020年以降、グローバル・ブレインでは更なる事業創造支援の拡充を図ると述べた。

「投資先の支援チームとキャピタリストチームが密に連携して、投資先を支援していくという体制を作っていく。投資先のフェーズに合わせた最適な支援を提供していく」(百合本氏)

グローバル・ブレインは8月、スタートアップ向けの人材採用支援の子会社、GBHRを設立したが、今後は、知財管理支援とデザイン支援も提供していく。

まずは知財管理支援について。百合本氏いわく「我々はおそらく日本で一番ディープ・テックに強いVCになったと思っているが、やはりスタートアップの知財戦略は非常に重要だと我々は考えている。知財の専門家による、攻守のバランスのとれたサポートをもとに、事業の早期から作っていく必要がある」。

そのため、グローバル・ブレインでは、IT領域の知財を専門とする、iCraft法律事務所の内田誠弁護士と専属契約。知財DDの実施から、支援先の法務部メンバーの知財戦略教育まで提供していく予定だ。

デザイン支援について、百合本氏は「スタートアップはUIやUXを含む、広義の意味でのデザインの重要性が非常に増してきている」と話し、「ソニーと密に連携し、デザインに関する支援を徹底的にやっていきたい」と加えた。

2019年はグローバル・ブレインがより外向的になった年だった

グローバル・ブレインは2019年、情報メディア「GB Universe」をローンチしたり、国内の独立系VCと個人投資家らで組織される「Startup Investor Track(SIT)」をキックオフするなどしたことから、今年は同社がより外向的になった1年だったと言えるだろう。百合本氏自身も5月にTwitterアカウントを開設している。

キャピタルゲインに関しては、メルカリやラクスルが上場した2018年の348億円に対し、2019年は112億円。今年は63社に123億円の出資を実施した。今年のイグジットは、BASE、giftee、MEDLEY(予定)の3社がIPO、そしてREALGLOBE、SMARTCAMP、ASPECTIVAを含む5社がM&A。

百合本氏は「昨今、スタートアップの時価総額が高くなってきているため、時価総額の高いスタートアップへの投資はできるだけ控えるようにしている。BASEとgiftee(のIPO)はトラックレコードとして非常に素晴らしいIPOだった」と説明した。

トヨタ自動車本体がリードしたラウンドで10億円超を調達したオプティマインドとは?

名古屋を拠点とするオプティマインドは10月24日、トヨタ自動車をリードインベスターとして、MTG Ventures、KDDIが設立しグローバル・ブレインが運営するKDDI Open Innovation Fund 3号、ほか1社を引き受け先とする第三者割当増資により、総額約10億1300万円の資金を調達した。

オプティマインドは、ラストワンマイルの物流ルート最適化を目指す古屋大学発のスタートアップ。昨年、オープンソースの自動運転OS「Autoware」を開発した加藤真平氏が取締役会長兼CTOを務めるティアフォーや、倉庫事業を中心にアートのサブスクリプションや物流網のオープン化などの事業を手がける寺田倉庫から数億円規模を資金調達していた。

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オプティマインドが開発する配送ルート最適化サービスの「Loogia」(ルージア)は、ラストワンマイルの配送ルートをAIを活用して短時間で計算するクラウドサービス。「どの車両が、どの訪問先を、どの順に回るか」という配送計画を、複雑な条件や現場の制約を考慮しながらAIが数分で作成し、ドライバーに効率的なルートを提供する。

具体的には、ベテランドライバーが走行したデータを取り込んで教師データとし、より精度の高いルートの算出やベテランドライバーのノウハウを共有。配送ルートの作成については、マンションなどの入り口の位置や道路幅などを考慮して最適な道順を算出するという。

同社が昨年、郵便局と共同で実施した実証実験では、ベテランドライバーと新人ドライバーでは、ルート作成に要する時間がそれぞれ平均14分、44分と30分の差が生まれたほか、移動時間についても平均34分、57分と20分以上の開きがあった。これをAIによって最適化することで、新人であってもAIによるルート作成が6分、移動時間が45分に軽減できたという。平均65分の配達先滞在時間を含めた総配達時間は、ベテランドライバーが113分、新人ドライバー+AIの組み合わせでは116分と、差が3分に縮まったという結果が得られた。

オプティマインドは今回の資金調達により、引受先と個別に取引強化を進める。具体的には、トヨタがが構築するモビリティサービス向けのさまざまな機能の提供を目指したオープンプラットフォームであるMSPF(モビリティサービス・プラットフォーム)に、オプティマインドのルート最適化技術を導入して共同開発を進めていく。MTG Venturesからは経営や事業推進に関する知見、人的ネットワークを用いた支援を受け、オプティマインドの企業価値向上と経営体制の強化を図る。KDDIとは、IoT/AIを活用した「需要予測×ルート最適化」による配送ソリューションの共同開発を進めるという。そのほか、プロダクト開発体制の強化、人材の獲得・育成、マーケティング施策の拡充などにも当てられる。

 

Startup Investor Track、外為法改正のスタートアップへの影響を議論し、有志が声明を発表

国内独立系ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から構成される Startup Investor Track (SIT)の有志は8月29日、「外為法に関する規制強化に対する表明」を公表。SITはGlobal Brain(グローバル・ブレイン)代表取締役社長の百合本安彦氏が発起人の1人となり今月発足したばかりの団体だ。「世界で戦えるスタートアップを生み出すために、VC業界全体の底上げをするためのノウハウ共有やリレーション構築」を目的としている。

8月27日に東京ミッドタウンで開催されたSITのキックオフイベントでは、米VCのAndreessen Horowitzの動向などについても意見が交わされていたが、特に深く議論されたのが、外為法(外国為替及び外国貿易法)上の事前届出業種の拡大がスタートアップのファイナンスに与える影響についてだ。声明にも書かれているが、SITによると8月31日以降、外国投資家が対内直接投資を行う場合、これまで以上に広い範囲で当局に対して事前の届出を行う必要があるという。

議論の末、スタートアップは「本件で最も影響を受ける主体の1つ」であるため、SITは幅広く内容を把握してほしいと考え、声明を発表するに至ったそうだ。外為法改正に関しては、Coral Capitalも「外為法改正が海外投資家の日本のスタートアップへの投資意欲を削ぐ懸念」という記事を8月22日に投稿している。

以下がSITによる声明の全文だ。

外為法に関する規制強化に対する表明

令和元年5月27日に、外為法に基づく対内直接投資(外国投資家による非上場株式の取得)に関する告示が発表されました。令和元年8月1日から適用されている改正告示には、経過措置が設けられていますが、令和元年8月31日以降に外国投資家が対内直接投資を行う場合、外国投資家は、これまでよりも広い範囲で当局に対して事前の届出を行う必要があります。

事前届出が必要となる特定の業種については、我が国の安全保障の観点から、これまでにも何度か規制対象が拡大されてきましたが、今般の改正告示により、国内の大半のベンチャー企業が関わっている、ソフトウェア開発やインターネットを用いた事業が、事前届出の対象業種に含まれることになりました。

なお、外国投資家の定義には、日本の上場企業が日本法に基づいて組成したファンドだが、当該上場企業の外国人株主比率が50%を超えるものが含まれ、日本のベンチャーキャピタルの多くが、外国投資家に何等か関係する状況になっています。

従来から、外為法は、外国投資家が対内直接投資を行うに際し、当該投資が特定の業種に係る場合に、当局に対する事前の届出を要求しており、我が国の安全保障はじめ重要な国益の維持発展に寄与してきていたと承知しております。

今般の外為法に関する改正告示につきましては、その趣旨として、以下の内容が掲げられています。

「近年、サイバーセキュリティーの確保の重要性が高まっていることなどを踏まえ、安全保障上重要な技術の流出や、我が国の防衛生産・技術基盤の棄損など、我が国の安全保障に重大な影響を及ぼす事態を生じることを適切に防止する観点」

我々は、ベンチャー企業への投資や育成に関わる立場として、我が国の安全保障等への重大な影響を防止するとの法令改正の趣旨に、大いに賛同しております。

他方、我々が支援しているベンチャー企業の大半は、我が国にイノベーションを起こし、我が国経済の将来を活性化し、国益を最大化させるとの大志を抱きながら、運転資金が途切れ、事業を閉鎖せざるを得ないリスクを常に抱えています。そのため、ベンチャー企業に対する資金提供者から迅速な投資意思決定を引き出し、運転資金を確保することが死活的に重要となっています。

我々ベンチャー投資に携わる者どもとしても、こうした適時的確な投資を行うことが、日本の国益の増進に適うものと確信し、活動を進めてきております。

しかしながら、今般の外為法に関する改正告示に基づいて事前届を要する業種が拡大したことにより、これまで事前届を要さず適時迅速な投資ができていたベンチャー企業に対しても、事前届が必要となり、期間短縮への配慮があるとは承知しつつも事前届の受理日から原則30日間は投資実行が禁止されることとなりました。

これにより、未来のイノベーションをけん引し、日本の国益を増進する主体の一つとなりうる有望なベンチャー企業が、適時迅速な資金調達ができなくなり、倒産の憂き目にあうケースが出てくる可能性が懸念されています。

実際に、我々ベンチャーキャピタルや個人投資家として、法令諸規則にしたがい8月以前から準備を進めてきたものの、実際の投資の機会が間近に迫った中で対応を行おうとすると、どうしても申請後から承諾受領までの期間が迅速性を損うことが、現実に起こりうるとの認識を強くしつつあります。

我々ベンチャー投資に関わる者どもとしては、今般の外為法に関する改正告示の趣旨に完全に立脚しながらも、同時にイノベーション促進による社会課題解決や経済の活性化といった国益の増進が図られるよう、改正告示の運用上の工夫等がなされることにより、適時かつ迅速な国内ベンチャー企業への投資が引き続き実現されるよう、強く期待しております。

先日開催したSITにおいても、本件議論がなされ、その際に、上記懸念と期待が示されたことを踏まえて、今回有志により本件表明をするに至ったものでございます。

国内独立系ベンチャーキャピタル・エンジェル投資家から構成される
Startup Investor Track (SIT) 有志

テレビ番組の視聴者提供映像を支える、JX通信社が約5億円を調達

JX通信社は7月11日、約5億円の資金調達を発表した。グローバル・ブレイン(グローバル・ブレイン7号投資事業有限責任組合)、SBIインベストメント(SBI AI & Blockchain投資事業有限責任組合)を引き受け先とする第三者割当増資で、累計調達額は計約14億円。

今回調達した資金は、リスク情報SaaS「FASTALERT」を軸としたサービスの強化、「記者のいない通信社」としての新しい報道プラットフォームの確立に使うとのこと。また今回の第三者割当増資に伴い、グローバル・ブレインで代表取締役社長を務める百合本安彦氏が社外取締役に就任する。株主にはグローバル・ブレインのほか、共同通信グループ、QUICK、サイバーエージェント・キャピタル、SBIインベストメント、ベクトル、テレビ朝日ホールディングス、三菱UFJキャピタル、フジ・スタートアップ・ベンチャーズなどが名を連ねる。

FASTALERTは、SNSから災害、事故、事件などのリスク情報を収集して配信するシステム。最近では事故や災害の際に視聴者から提供される写真や映像が増えたが、実はこれらを数あるネットコンテンツの中から抽出できるのがFASTALERTの特徴だ。テレビ局は同システムを使うことで短時間で著作権者に使用許諾について連絡できるようになる。現在、NHKとすべての民放キー局に導入されているほか、地方テレビ局、新聞社、警察、消防、自治体などでの採用実績もある。

そのほか同社では、報道価値をAIが判定するニュース速報アプリ「NewsDigest」、自動電話世論調査サービス「JX通信社 情勢調査」などのサービスも提供している。

たこ焼きロボ開発のコネクテッドロボティクスが8.5億円調達、イトーヨーカドー内へロボ設置も

写真に向かって前列の左から3人目がコネクテッドロボティクス代表取締役社長の沢登哲也氏

たこ焼きやソフトクリームなどの調理ロボットを開発しているコネクテッドロボティクスは7月3日、約8.5億円の資金調達を発表した。グローバル・ブレインをリードインベスターとしたシリーズA投資ラウンド1で、以下の企業を引受先とした第三者割当増資となる。

  • グローバル・ブレイン(グローバル・ブレイン7号投資事業有限責任組合)
  • ソニー(Sony Innovation Fund)
  • 東京大学協創プラットフォーム開発(協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合)
  • 500 Startups Japan(現・Coral Capital)
  • 三井不動産

なお同社はシードラウンド2ですでに約1億円を調達しており、調達総額は約9.5億円となる。同社は2014年2月設立のスタートアップ。代表取締役社長の沢登哲也氏は、東京大学でロボット工学を学んだあと、京都大学大学院に進学。卒業後に飲食店を立ち上げ、飲食業界のさまざまな問題点に直面したことがきっかけで、コネクテッドロボティクスを設立したという異色の経歴の持ち主だ。

関連記事:器用にたこ焼きを返す調理ロボットを開発、コネクテッドロボティクスが6300万円調達

今回調達した資金により同社は、マーケティング強化による販路拡大と新ロボットおよび新ロボットサービスの開発を進める。具体的には、人材の採用と技術力の強化を計画しており、事業推進を大きく加速させさたいとしている。

同社のロボットといえば、テレビにもたびたび登場する長崎・ハウステンボス内にあるたこ焼きロボ「OctoChef」(オクトシェフ)とソフトクリームロボの「レイタ」があまりにも有名だ。

OctoChefは、ディープラーニングを活用して焼き具合を画像解析することで、適切な時間でたこ焼きをひっくり返すことができるアームロボ。生地の作成などの準備、タコや天かすなどの具材の生地への投入、ソースやマヨネーズなどをかけるといったトッピングには人の手が必要だが、鉄板への生地の流し込みから焼き上げ、焼き上がったたこ焼きの取り分けまでをOctoChefが担う。OctoChef1台で、1回あたりの生産量96個、約12人ぶんのたこ焼きを製造できる。

ソフトクリームロボのレイタは、注文から商品提供までに対応。タブレット端末などでメニューを選んだあと、ソフトクリームのコーンをロボットのアーム部分に差し込むと、あとは器用にアームを動かしてソフトクリームを作り上げていく。ソフトクリーム1個あたりの提供時間は30~40秒。

これらのロボットの特徴は、産業用のアームロボットを使っている点。同社がソフトウェアでチューニングを施すことで専用ロボ化しているのだ。特定用途向けに特注するロボットは導入コストが1000万円を超えるケースも多いが、大量生産される汎用ロボであれば導入コストを大幅に抑えられる。同社によると、これらのロボットシステムをサブスクリプション契約した場合の年間コストは、スタッフ1人の人件費よりも安価になるという。もちろん、休憩を取らせる必要もなく、8時間以上労働させてもまったく問題がないし、不平不満も言わない。ちなみに、OctoChefはユニバーサルロボット社のURS、レイタはDobot社のDobot Magicianがベースだ。

同社はこのほかにも、自動食洗機ロボットサービス「Dish Washing System」やコンビニ向け「Hot Snack Robot」、自動朝食調理ロボットサービス「Loraine」の開発も手がけている。今回の資金調達によりこれらの開発スピードがアップすることに期待したい。

  1. CR06

    自動食洗機ロボットサービス「Dish Washing System」
  2. CR04

    コンビニ向け「Hot Snack Robot」
  3. CR05

    自動朝食調理ロボットサービス「Loraine」

さらにコネクテッドロボティクスは本日、セブン&アイ・フードシステムズと提携し、関東近郊のイトーヨーカドー内に出店しているファストフード店「ポッポ」に、Octo Chefとレイタを展開することを発表した。

10月をメドに関東近郊の1店舗にまず導入し、その後他店舗に広げていく方針だ。具体的な店舗名にについては現時点では非公開となっている。