ケータリングのノンピが約2.1億円調達、法人オンライン飲み会専用の食事配送「オン飲みBOX」開始

ケータリング ノンピ オンライン飲み会 オン飲みBOX

ケータリングサービスのノンピは8月3日、第三者割当増資として約2.1億円の資金調達を発表した。今回の資金調達により、さらなる経営基盤の強化を図るとともに、オンライン飲み会専用の食事配送サービス「オン飲みBOX」を開始した。

オン飲みBOXは、法人のオンラインコミュニケーションを促進するための新サービスとして、オンライン飲み会に最適化された食事の開発や、幹事向け受付サービス、配送オペレーションの仕組化を進めるとしている。

同社はこれまで、社員食堂の遊休資産を活用し調理した食事を提供する法人向けケータリングサービスを展開。官公庁、スタートアップ、外資系企業のキックオフや歓送迎会、新人歓迎会など年間約8000件のサービス提供実績があるという。

新型コロナウイルス感染拡大の影響などによりテレワーク・リモートワークが急速に普及した一方、同社顧客から、「オンラインキックオフ向けの食事を提供してほしい」「オンライン送別会を実施するから参加者の自宅にケータリングを届けてほしい」という要望があった。それらニーズに応える形で開発したのが「オン飲みBOX」としている。

オン飲みBOXは、調理・梱包した食事を1人分1箱としてパッケージングし、クール便で参加者の自宅に送付(全国配送可)。オンライン飲み会開催当日または前日に到着するように送り、参加者全員で同じ食事をとれるという。最大400名まで対応でき、全社員のオンラインキックオフやオンライン送別会などで利用できる。

ケータリング ノンピ オンライン飲み会 オン飲みBOX

 

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またオン飲みBOX利用の際は、オンライン飲み会の開催日1週間前までに、申し込む必要がある。幹事から参加者のメールアドレスをノンピに送付すると、同社にて配送先住所や配送時間を収集する。幹事のオペレーションを最小限に抑えると同時に、参加者のプライバシーを守れるとしている。また、費用清算は一括での対応となる。

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なおノンピは、100社限定で1社10名分までの半額トライアルを開始した。締め切りは8月31日まで。詳細は、「オン飲みBOX」ページを参照。

ノンピは、Google japan food teamの元総料理長や、外資系ホテルの元シェフなどを中心に構成された、食のプロフェッショナルチーム。ケータリングサービスにおいては、官公庁や外資系企業を中心に、年間約1万0000件の提供実績があるという。また、川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム内「ミュージアムカフェ」や、埼玉スタジアム2OO2「VIEW BOX」、三菱地所本社内カフェテリア「SPARKLE」、食事と空間にこだわる8ヵ所のフードプロデュースも実施した。

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突然だが「社食」と聞いてどんな空間、シーンを想像するだろうか?

もしかしたら社食に対しては「社員のお腹を満たすため、健康をサポートするための食事を提供してくれる場所」というイメージが強いかしれない。もちろんそれは今でも変わらない重要な機能ではあるが、現代の社食は必ずしもそれだけに止まらないようだ。

「特に近年はGoogleを始め社食のクオリティが上がってきていることに加え、そういった事例が共有されていることもあり、企業が社食に期待することも変わり始めている。具体的には単純な福利厚生としてだけではなく、社員のコミュニケーションを活発にし、そこから新しいアイデアや関係性が生まれる空間として捉えられている」

そう話すのは社食領域を軸に事業を展開するフードテック企業「ノンピ」の取締役副社長・上形秀一郎氏だ。

同社ではまさにこれから「社員食堂の遊休資産」を用いたランチケータリングサービスを本格展開する計画。自社では社員食堂を有していない企業でも会議室などのスペースを活用し、質の高い社食環境を導入できる仕組みを広げていこうとしている。

そのための資金としてノンピでは本日11月27日、池森ベンチャーサポート(ファンケル創業者の池森賢二氏が立ち上げたベンチャー支援企業)などを引受先とする第三者割当増資により総額で2億円を調達したことを明らかにした。

ケータリングを通じて良質な社食環境をサービスとして提供

ノンピは普段TechCrunchで紹介するテック系のスタートアップとは若干毛色が異なるタイプの企業だ。2003年の創業当時の主力事業は外食。西麻布に飲食店を開いたのが始まりだった。

そこからは店舗を広げつつも徐々にケータリングや社食/社内カフェの運営受託、キャラクターフードなど事業の幅を拡大。これまで川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムカフェにおけるメニューの企画販売や三菱地所の大手町新社屋内キャフェテリアの運営のほか、LINEの「LINE FRIENDS cafe&store」内サラダバーランチの運営なども担ってきた。

ノンピの役員陣。左から取締役副社長の上形秀一郎氏、創業者で代表取締役社長の柿沼寛之氏、取締役の中矢誠一氏

当初はエクイティファイナンスをするような企業形態ではなかったが、トーマツ出身でフードスタートアップのfavyで副社長を勤めていた経験もある上形氏や複数社の経営に携わってきた中矢誠一氏らが経営に参画。

以前Google JAPANのフードチームで総料理長を担当していた飯野直樹氏が総料理長として、同チームのリーダーでGoogleの社食作りに関わってきた荒井茂太氏が取締役として加わるなど、事業の変遷とともにチームのアップデートも行ってきた。

そういった背景もあり2018年5月には飲食店事業から完全に撤退。現在は社食の企画運営とケータリングECを軸に事業を展開している。

このケータリングEC「munchies」はユーザーから見れば比較的シンプルなプロダクトで、シーンに合わせて様々な料理をオンライン上で気軽に注文できるというもの。既存の飲食店を束ねたケータリングプラットフォームやデリバリーサービスとは異なり、ノンピ自ら開発したこだわりのメニューのみを提供しているのが特徴だ。

季節ごとに変わるオリジナルピンチョスに加え、寒いシーズンには嬉しいおでんセットなども扱うほかオプションとして有名シェフとコラボしたオリジナル商品も手がける(たとえば人気焼肉店とタッグを組んで特製のハンバーガーを作ったり)。

上形氏によると商品開発力が1つの強み。これまでは社内パーティーを中心に夜の時間帯に単発の注文をベースにしていたが、中には年間20〜30回注文するような会社も複数あり、一度購入に至ると何度もリピートに繋がるケースが多く手応えをつかめていたそう。そこで今後は要望も多かったランチケータリングにも本格的に参入していくという。

ランチについては定期契約(1食あたりの料金+社員数に応じた月額利用料)のモデルを基本としつつ単発の注文にも応じる。⾷事の配送から配膳、⽚付けまでを全てノンピ専属スタッフが担当するので社内の負担なく「会議室などのスペースをレストランのような空間に変える」ことができるのがウリだ。保湿器なども用意して「温かい⾷事は温かく、野菜などは⽔々しいまま」提供することにもこだわる。

今風の言い方だと良質な社食環境をサービス化した「社食 as a Service」型のプロダクトと捉えられるかもしれない。

遊休資産となっている社員食堂をシェアエコ的に有効活用

先ほどノンピのケータリングサービスは「ユーザーから見れば比較的シンプルなプロダクト」と紹介したが、実は表には見えない裏側の部分でユニークな仕組みを取り入れている。

その仕組みとは同社が受託運営している社員食堂の空き時間を活用し、その設備を用いてケータリング用のメニューを調理していること。大量の食事を作るには充実した設備を持つキッチンが不可欠だが、遊休スペースとなっている社員食堂をシェアリングエコノミー的な形で活用しているのだ。

上形氏の話では、既存の社員食堂はランチだけでは採算が取れず企業側が社食運営事業者に「運営補填金」を支払うことが多い状況なのだそう。その運営補填金がネックとなって運営事業者が見つからず、閉鎖状態のままになっている社員食堂も少なくない。

そこでノンピでは遊休資産となっている社員食堂を運営補填金なしで運営受託。ランチタイムには通常通りその場所で社食を提供し、それ以外の時間を使ってケータリング用のメニューを作って周辺企業に届ける。

ポイントは「通常のランチ営業は赤字でもいい」(上形氏)こと。実際に現在ノンピでは2箇所の社員食堂をこのモデルで運営しているが、ケータリングと合わせることで通常のランチ売上の約5倍〜10倍の売上を作り黒字化に成功しているという。

社食コミュニケーションには「美味しい」が不可欠

上述した仕組みによってノンピでは完全内製のケータリングメニューをスピーディーに調理しているわけだけれど、当然ユーザーからは他のサービスと比較されることもある。特にノンピの場合は1食あたりの価格を見ると比較的高価な部類に入り、もっと手軽に頼めるサービスも存在する。

ランチの本格展開はこれからだが、すでに外資スタートアップや国内メガベンチャーなど直近スタート予定の企業も含めて十数社で導入。様々な選択肢の中からユーザーはなぜノンピを選ぶのか。上形氏いわく「最終的には料理の味」が決め手になることが多いそうだ。

「比較検討されるパターンで多いのは2つ。1つは自社で社員食堂を作るか悩んでいる企業。社員に豪華な食事を提供したいが、社内に作るには数億円単位の投資が必要になるため別の手段を考えた結果ノンピに問い合わせ頂く。もう1つが既存のケータリングサービスに飽きてしまったケースだ。廉価なものを導入したものの(味や種類などがネックで)社員にあまり活用されず、もっと良いものを求めてノンピを選んで頂くこともある」(上形氏)

ある会社のランチケータリングの実例。各社ごとで異なるが、ケータリングと言えどかなり本格的な食事が楽しめるのがノンピの特徴だ

背景には、冒頭でも触れた通り「社食の位置付けやそれに対する期待感」が変化していることもありそうだ。

ノンピのサービスを検討するような企業は社食を「社員同士がコミュニケーションをとり関係性を深める場」としても考えている場合が多いようで、そもそも社員がその場所に集まってこなければ十分に機能しているとは言えない。そのためには「味が良いことは大前提」なのだ。

特に直近ではフリーデスクの会社などからのオーダーが多いそう。フリーデスクに加え、働き方改革の文脈でテレワークや在宅勤務などを取り入れた結果、メンバーが一同に集まってコミュニケーションを取る機会が限られるような会社では、社食コミュニケーションを重要視する傾向があるという。

「ケータリングで質の高い料理を常に提供するというのは意外とハードルが高い。作ってから数時間たっても美味しい状態を保つにはどういった工夫が必要かなど、調理には独特のノウハウが必要だ」(上形氏)

飲食店をネットワーク化したマーケットプレイス型の場合、どうしても料理の質の部分は飲食店ごとにバラツキがでる。そこは内製型のノンピの強みが活かされる部分ではあるが、一方で事業の立ち上がりスピードはマーケットプレイスの方が加速させやすく、内製だとスケールさせるのに時間がかかるという課題もある。

上形氏もその辺りが今後事業を拡大させていく上でのポイントになるというが「中長期的にグローバルにも出ていくことを考えていて、それを見据えると自分たちのブランドをしっかりと確立させていった方が最終的には結果が出る」ため、これからも軸はブラさずに事業を作っていく方針だ。

Googleの社員食堂で7年間総料理⻑を勤めていた飯野直樹氏。現在はノンピ総料理⻑としてメニュー、商品開発を統括している

Googleレベルの社食をもっと多くの企業へ

必ずしも社食に限定した話ではないけれど「ケータリング」は国内外でポテンシャルがあると考えられている領域。実際にアメリカなどでもDropbox・Adobeなどを顧客に抱える「Cater 2.me」、これまで二桁億円規模の調達を実施している「ZeroCater」や「EAT Club」など注目を集めるスタートアップがいくつも登場している。

「海外ではケータリング市場がマーケットとしてしっかりと認知されていて市場調査データなどを見ても1ジャンルとして確立されている状況」(上形氏)であり、ノンピでも日本からこの市場にアプローチしていく計画だ。

今後は調達した資金を用いて組織体制を強化していくほか、テクノロジーに対する投資も行っていく予定。たとえばスマホからメニューを簡単にオーダーできるシステムや料理の質に影響を与える温度管理システムなどを考えているほか、将来的には調理をサポートするロボットアームなどの導入も検討していきたいという。

「もともと日本企業からイノベーションがどんどん生まれるために何ができるかを考えた結果、自分たちが直接やるというよりは、食事を届けた企業からイノベーションが生まれれば良いよねという考えが根本にある。それこそGoogleの社食のように、今までは一部の企業でしか実現が難しかったような質の高い社食をもっと多くの企業に届けていくようなチャレンジをしていきたい」(上形氏)

オフィス向けケータリングサービスのZeroCaterが410万ドルを調達

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アメリカでは毎期のように、フードデリバリー企業が誕生ないし資金調達を行っている一方、Sprigのように事業を縮小したり、Spoonrocketのように事業を全面的に停止してしまった企業も存在する。

そんな中生き残ったプライヤーを見ると、フードデリバリー業界でもオフィス向けケータリングの分野に特化したサイトやアプリを運営する企業の存在が目立っている。Technomicの調査によれば、この分野の市場規模はアメリカだけでも200億ドルに達するのだ。

2009年に設立されたZeroCaterは、オフィス向けケータリングに早くから目をつけていた企業のひとつで、この度Romulus Capitalが主導し、Struck Capitalも参加したシリーズAラウンドで410万ドルを調達した。

ZeroCaterのCEO兼設立者であるArram Sabetiは、起業について学ぶために以前スタートアップのJustin.tvで働いていた。そしてオフィスマネージャーとしてチームのためにケータリングを頼む際のめんどくささに嫌気がさしてZeroCarterをはじめたと彼は語った。

また、システム面への投資を行うまでの長い間、Sabetiは簡単なスプレッドシートを使ってZeroCaterを運営していた。その後、ウェブサイトやアプリ、バックエンドシステムへの投資を行い、美味しい食事を求めながらもそれぞれの好みやニーズを持ったオフィスで働く人々とレストランを結びつけることに成功したのだ。

ZeroCaterを使えば、オフィスマネージャーやケータリングの注文を行う人は、各チームメンバーの好み(味の好みやアレルギー、ライフスタイルなど)をサイトに登録することで、2回目以降はワンクリックで注文ができるようになる。

Sabetiによれば、シリーズAで新たに調達した資金は、現在ZeroCaterがいるオフィス向けケータリング市場での事業拡大と、さらなる製品設計・開発にあてられる予定だ。

サンフランシスコを拠点とする同社は、現在オースティン、シカゴ、ニューヨーク市、ニュージャージーの一部地域、サンフランシスコ・ベイエリア、サンノゼ、そしてワシントンDCでサービスを展開している。ZeroCaterは、オフィスワーカーの人口密度が高く、中規模から大規模の企業が多いエリアに焦点をあてているため、郊外への進出は考えづらい。

個人の注文よりもオフィスにいる何人かのグループでの注文の方が、配達1回あたりの金額が高いため、Grubhubのようなテイクアウトサービスに比べ、値段が高めのレストランもZeroCater経由での注文には応じやすいとSabetiは説明した。

さらに企業向けケータリングというアイディアは、素晴らしいチームやトラクション、テクノロジーのほか、健全な「ユニットエコノミクス」を重視するベンチャー投資家にとっても魅力的なものだとRomulus Capitalの設立者兼ジェネラル・パートナーのKrishna K. Guptaは語る。

「20倍の資金を調達した企業でも、ZeroCaterほど上手く事業を運営できていません」と彼は付け加えた。

Romulus Capitalは、ほかにもeLaCarteのようなフードテック企業や、建築業者向けツールや機械のC2Cレンタルサービスを運営するEquipmentShare、フィットネスコースのClasspassなど、マーケットプレイスを運営する企業にも投資を行ってきた。

ZeroCaterは、ベンチャーキャピタルの支援を受けてオフィス向けフードデリバリーサービスを運営するBento、Cater2Me、EatClub、eZCater、Farm Hill、Zestyといったスタートアップと競合しており、このようなスタートアップの数は増え続けている。

競合他社の中には、ZeroCaterのことを露骨にからかう企業も存在する。ZeroCaterとGoogleで検索すると、上位の検索結果の中にEatClubのサイトへのリンクがあり、そこには彼らの「ZeroCaterに似てるけど、もっと良い(Like ZeroCater but better)」という宣伝文句が記載されている。

EatClubは今日までに1650万ドルの資金を調達しており、それに比べるとZeroCaterの600万ドル弱という調達資金総額は(悪気がなくても)余裕がないように映る。

しかしSabetiによれば、ZeroCaterの強みは料理のバリエーションと配達時間にある。

「どれだけカッコいい機能がウェブサイト上にあろうが、ブランドが知られていようが、食べ物を時間通りに顧客に届けられなければ意味がありません。私たちは、スムーズなオペレーションを含め、顧客が素晴らしい食事体験が出来るよう、基本的な項目に徹底して取り組んできました。ZeroCaterの業績がそれを物語っています」とSabetiは話す。

ZeroCaterの売上は2015年8月時点で1億ドルを超えているものの、Sabetiはそれ以上の売上に関する詳細や、ポスト・マネー・バリュエーションを含むシリーズAの諸条件については明かさなかった。

現在ZeroCaterは約120名のフルタイム従業員を抱えており、サンフランシスコに本社を置いている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

アルコールの新時代、デリバリーアプリがアルコール市場をどう変えるか

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【編集部注】執筆者のMegan Hanney氏は、テック業界を中心に活動する国際法律事務所にてそのキャリアをスタートさせた。その後、WeWorkのロンドン初となるコーワーキングスペースを立ち上げ、さらに起業家向けメディアプラットフォームのRebelhead Entrepreneursの共同設立者となった。

ロンドンの新興テックスタートアップのひとつであるBevyの登場まで、ヨーロッパには深夜のアルコール飲料の配達に特化したアプリは存在しなかった。今後は年中無休を視野にいれつつ、現在朝5時までサービスを提供し、急速な拡大化も可能なビジネスモデルを備えたBevyは、お酒の購入手段を増やすことを通じて、オンデマンドサービスを再定義しようとしている。

Bevyは究極の便利さを目指し、GPS技術を使った配達状況のトラッキングや、最低購入額の撤廃、30分以内の待ち時間を実現させた。ナイトライフを楽しむ人のため、Bevyはアルコール飲料の他に、割り物やタバコ、vape(電子タバコ)関連製品やコンドームの配達も行う。

Bevyのアルコールに特化したマーケット支配力は、「バトラー」に仕立てあげられたドライバーによって強化されている。同社のドライバーは、「バトラー」にふさわしい格好をしているだけでなく、到着時には購入者の年齢確認も行うよう指導されている。さらにBevyは、利用客に対して、お酒が届いたら「バトラー」へのチップも大歓迎だとちゃっかり伝えている。

アメリカ・ヨーロッパ全体をめぐる戦い

JustEatのような既存のプレイヤーや、その後に続いたDeliverooの人気に見られる通り、ヨーロッパ中でオンデマンドフードデリバリーサービスの競争が、長期にわたって激化している。その後、Henchmanなど特にカテゴリーを定めない、生活用品や必需品の宅配サービスの登場をうけて、オンデマンド市場はロンドンでも広まっていった。

SauceyDrizlyMinibarThirstieなど、アメリカはオンデマンドのアルコールデリバリーアプリにおいてヨーロッパに先んじている一方、2015年12月のBevyのローンチまで、ヨーロッパに同様のサービスは存在せず、現在でも直接の競合となるような企業は見当たらない。

Bevyの共同設立者であるMarco Saio氏は、「アメリカでのBevyに似たアプリの成功から、私たちがやっていることは間違ってないと感じています」と言う。「アメリカでは通常、深夜1時以降になると、アルコール飲料をお店で買うのは難しくなります。そこで、Bevyが24時間サービスと共に市場に参入すれば、時間に関係なくお酒が買えるようになり、いつでもお客さんの欲求を即座に満たすことができます」

さらにSaio氏は、「アメリカの消費者は、深夜にお酒を配達してくれる様々なアプリに馴染みがありますが、Bevyは、ドライバーネットワークの徹底管理を行い、販売責任を小売店が担っているという点から、これまでにないビジネスモデルの上に成り立っています。私たちはドライバーに多大なリソースを投入しており、各ドライバーは仕入元となるひとつの小売店に配置されるまで、何ヶ月にも及ぶトレーニングを受けなければいけません」と語る。「つまり、Bevyはそのオペレーション力を活かして、配達時間を他の宅配アプリの半分にまで縮めることができるのです。同時に、各小売店の在庫情報をオンラインで管理することで、酒類販売のライセンスの問題や、配達リスクを回避しています」

ビジネスモデルの成功

今日のデジタル時代において、Bevyのビジネスモデルは、完璧な破壊的イノベーションの例だと言える。Uberが自社の車を保有せずWeWorkが不動産を所有していないように、他の業界のリーダーと同じく、Bevyは自社で在庫を持っていない。その代わりに、Bevyは24時間営業の大手小売店と協働し、注文を受けたドライバーが小売店から商品を購入後、そのまま直接購入者に届けるというモデルを確立した。

ヨーロッパのナイトライフは衰退の道をたどっており、ミレニアル世代は家の中で夜を過ごすようになっている。

通常、HungryHouseなどのフードデリバリーアプリでは、アルコール飲料には料金が上乗せされている一方、高級そうな見た目とは裏腹に、Bevyの料金には通常の小売価格が適用されている。

そのため、Bevyは、メインとなる小売店からの手数料に加え、一律5ポンドの配達料金の一部をその収入源としている。さらなる収益獲得に向けて、Bevyはアプリ上の広告サービスについても検討している。

また、Bevyの配達とテクノロジーを掛けあわせたシステムは、自社開発されたものだ。Siao氏は自社のシステムのことを、会話を交わすふたつのアプリのようだと言う。「一方のアプリが購入者に焦点をあて、一番近くで開いている小売店の在庫情報を引き出してくる間に、もう一方のアプリが、アルゴリズムを使って、入ってきた注文を一番近くにいる『バトラー』へと送信します。Bevyのリリースまで丸一年を開発に費やし、6週間毎の新バージョンのリリースを経て、今のアプリは75個目のバージョンにあたります。私たちは、Benvyのビジネスモデルとテクノロジーを使って、競争の激しい30分デリバリーの業界を制覇することに注力しています」

ビジネスの成長と資金調達

イギリス国内でBevyが最初に力を入れたエリアには、ロンドン自治区内のケンジントンやチェルシーが含まれていた。ローンチ以降、Bevyは、24時間営業の酒屋がなかったウエストミンスターを含む、近くの富裕層があつまる地域へと進出していった。裕福な地域における、夜間のアルコール飲料の供給率が極端に低いことから、Bevyは狙いを定め、周辺の小売店とパートナーを組むことで、その高い需要に応えることができている。

Saio氏は、「私たちは、最初のマーケットとなるロンドンに一極集中し、拡大路線をとる前にロンドンでの地位を確立することを目指しています」と言う。「アルコール飲料の供給状況や、24時間営業を行っている小売店の数から、マンチェスターが次の進出先の候補として考えられるでしょう。主な課題は、店舗でのオペレーションと在庫管理システムの電子化で、照明のスイッチのように、押せば一瞬で店舗の在庫情報を一手に集められるようなシステムの構築にあたっています」

Saio氏によると、Bevyは現在シードラウンドからシリーズAの資金調達段階にあり、目的額のほぼ半分は、既に民間の投資会社を通じて調達済みだ。残りの必要資金については、エンジェル投資家やアクセラレーターから調達予定とのこと。現状のアプリはiOS用に作られているが、イギリスではアンドロイド用の方がマーケットが大きく、より速い成長を遂げる可能性を秘めている。そのため、シリーズAで調達される資金は、Android用アプリとeコマースウェブアプリの開発にあてられる予定だ。

シリーズBはクラウドファンディングを利用して行われる予定で、Bevyのソーシャルな性質を考慮するとぴったりな調達モデルだといえる。さらにBevyは、SeedrsCrowdCubeといったエクイティクラウドファンディングのサービスを利用することにも前向きだ。ヨーロッパ全体への拡大にBevyは意欲的であるものの、もっと先の話だと考えており、将来的にはパリのような主要都市における、厳しくて対応が困難な法律と向き合うことになるだろう。

Bevyのユーザー数は、ひと月あたり平均55%増加しており、売上も毎月平均40%伸びている。

ミレニアル世代とナイトクラブの衰退

ヨーロッパのナイトライフは、アメリカに比べるとゆるやかに衰退の道をたどっており、ミレニアル世代は、家の中で夜を過ごすようになっている。これは、ヨーロッパにおけるオンデマンドのアルコールデリバリーサービスの登場が、比較的遅かったことと関連があるかもしれない。過去10年間にイギリスのナイトクラブの数は45%減っており、オランダでも38%の減少を記録している。

この傾向は、イギリス中へサービスを展開した後に控える、Bevyによるヨーロッパ全体への進出の追い風でしかない。イギリスのアルコール・タバコ市場の規模は約300億ポンドに及ぶ一方、今後Bevyが、大酒飲みで有名な大陸で、どううまくビジネスを展開していくのか見るのが楽しみだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

B2Bの食配サービス、その理想像のひとつをEAT Clubに学ぶ

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1か月前にEAT Clubという企業からPR素材が送られてきたのだけど、正直、それまでの私はこの会社の存在すら知らなかった。そして同社は、資料を送ってくれたPRの人たちにありがとうと言いたいぐらい、学ぶところの多い企業だ。

2010年に創業したEAT Clubは3年ほど前に、消費者企業から企業対象の食配ケータリングに方向転換した。というかEAT Clubのお客は最初から、オフィスで働く会社員なのだが、最初同社は、彼ら個人に直接売っていた。だから一応、“消費者企業”だ。そして3年前に、売る対象を個人からその社員のいる企業に切り替えたのだ。CEO Frank Hanの言葉を借りれば、2013年の秋にEAT Clubは、B2Cのフードビジネスは難しい、と悟った。

今のEAT Clubは、NetflixやTesla、DogVacay(ドッグシッター)、Atlassian、Samsungなどの企業が顧客だ。今EAT Clubが食配している顧客企業は常時700社あまり、今でも売上は急速に増えていて、利益率も良く、個人レベルのリピート率も86%と高い。

EAT Clubの、一人の配送員の一回のデリバリサイズは平均300ドルで、これはB2CのSprigやPostmates、DoorDashなどのおよそ10倍だ。2013年から利益が出ていて、今、一食の貢献利益率は25%だ。貢献利益とはこの場合、売上額から製造コストとデリバリコストを引いた額で、そこからさらに社員の給与などが出て行く。

社員といえば、EAT Clubでは配送員も契約社員などでなく正社員だ。EAT Clubは創業時から、配送のスケジュール厳守と、社員への教育訓練の徹底をモットーにしていた。

“それは、契約社員ではできないからね”、とHanは言う。“誰でもいいから仕事をしたい人が来てくれればいい、とは思わないよ”。

これまで1650万ドルの資金を調達しているEAT Clubは、売上の96%がリピート顧客からだが、売上高は公表していない。しかしHanによると、年商は2500万ドル+αで、今でも急速に成長している。4年前に創業したコンペティタのZeroCaterは、この夏の雑誌記事で年商は1億ドルあまりと言っている〔事業形態がEAT Clubとは相当違う〕。おなじくコンペティタのCater2MeとZestyは、年商額が数千万ドルのオーダーだそうだ。

EAT Clubの今のテリトリはサンフランシスコとパロアルトとサンホセとロサンゼルス。企業は社員福祉の一環として、EAT Clubのお弁当を社員に提供する。企業はEAT Clubに、社員一人あたり100ドルを前払いしてもよいし、あるいは代金を毎週払ってもよい。次の12か月の同社の目標は、企業顧客をもっと増やすことと、市場の拡大だ。

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。