コワーキングとEdTechのTalent GardenがHyper Islandを買収してオンラインコースをグローバルに拡大

Talent Gardenはイタリア、オーストリア、ルーマニアなどにあるコワーキングスペースと、オンラインとオフラインのデジタル学習コースを組み合わせたビジネスモデルで「ヨーロッパにおけるWeWorkの総会」といえるような存在だ。シリーズBの企業で(直近のラウンドは7350万ドル、約83億5000万円)、500 StartupsやSocial Capitalなどから資金を調達した。このTalent Gardenが、ヨーロッパで「デジタルハーバード大学」として知られるHyper Islandの株式の過半数(54%)を取得して、さらに前進しようとしている。

Hyper Islandは90年代に成長し始めたUXとゲームデザインを学ぶ優れたスクールとして登場して以来、テック最大手に採用される人材を多数輩出し続けている。

Talent GardenとHyper Islandが手を組めば、両社のオンラインコース(そしてオフラインコースが開催される場合にはオフラインも)が今後成長していくであろうことは疑いない。

例えばTalent Gardenはデジタルに関するビジネストレーニングのコースを多数提供し、毎年2万人ほどの学生が参加している。同様にHyper Islandはこれまでオンライン教育で主に知られてきたが、Talent Gardenと組むことでさらに広がっていくはずだ。Talent Gardenにもヨーロッパ各地に20カ所のキャンパスがある。

Talent Gardenの共同創業者であるRasa Strumskyte(ラサ・ストラムスキット)氏は筆者に対し「当社のコースのうち60%以上はオンラインで、それ以外はキャンパスで実施しています。今後は特にオンラインに力を入れて、既存のコースを新たなマーケットに拡大し新しいコースも作っていきます」と語った。

今後数年間でデジタルに関わる仕事には9700万人ほどの新たな雇用が生まれると推計され、世界のデジタル教育市場は2020年の84億ドル(約9500億円)から2025年には332億ドル(約3兆7700億円)へとコロナ禍以降で最も急速に成長する分野の1つと見られる。

Hyper Islandは英国、シンガポール、米国、ブラジルに実拠点をもち、ヨーロッパ、アジア太平洋、南米、北米と世界的に事業を展開している。

Talent GardenとHyper Islandの両社は「就職率が98%、4500以上のスタートアップとデジタルイノベーターが教員やコミュニティのメンバーとして関わる」ことで、2022年の売上は5000万ユーロ(約64億円)、1年間で教育する社会人が2万人、社会に送り出す学生が5000人と予測している。

Talent Gardenの共同創業者で代表取締役社長のDavide Dattoli(ダビデ・ダットーリ)氏は次のように述べた。「Hyper Islandとの協力で我々のプロジェクトは飛躍します。重要性が高いのに細分化されているこの市場で、これまで以上にアグリゲーターとして、またゲームチェンジャーとしての役割を果たしていきます。デジタルトランジションの時代に生きる現在と未来の社会人に貢献できるように、トレーニングを提供します」。

Talent GardenのCEOであるIrene Boni(アイリーン・ボニー)氏は次のように述べた。「Talent Gardenにはヨーロッパのデジタル教育市場において成長の大きなチャンスがあります。デジタル化のメリットを活用したい個人や大企業にトレーニングを提供します。これはテクノロジーの問題ではありますが、何より人的資本の上でも重要です」。

ボニー氏はMcKinseyに勤務した後、ユニコーンのYOOX Net-a-Porter(現在はラグジュアリーブランドのRichemontグループ傘下)で副本部長を10年間務め、その後Talent Gardenに加わった。

Hyper Islandの社長であるFredrik Mansson(フレドリック・マンソン)氏は「Talent Gardenとの協力によってリソースが大幅に増え、企業としての成長と世界に及ぼす影響の両方を加速していきます」と述べた。

画像クレジット:Talent Gardenのチーム

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

「ゾーンに入る」のを助けるアプリ「Centered」、仕事が30%早く終わりストレスも軽減

Centered(センタード)は、ユーザーが1日の流れを確認する手助けをし、仕事が達成できるようにカレンダーを守り、軌道修正に役立つパーソナルアシスタントを追加することができるアプリだ。このアプリでは、仕事を成し遂げるために他の人たちとバーチャルな会合をしたり、仕事に集中するように脳を働かせるための心地よいビートを流したりすることもできる。この会社はまだプロダクトを発売したばかりだが、あなたが健全に仕事に打ち込めるようにするために、390万ドル(約4億5000万円)の資金を調達した。

何かを成し遂げたり、その作業を楽しんだ人であれば、おそらく「フロー状態」(人によっては「ゾーン」と呼ぶこともある)を経験したことがあるだろう。しかし、多くのオフィス環境は、そんな状態になることができないように設定されている。仕事を終わらせるために、早朝出勤や残業、休日出勤といった馬鹿げたことをする人もいる。「朝7時に出社して、電話が鳴り始める前にオフィスで時間を過ごすのが好きだ」なんてセリフを言っている、あなたのことだ。

Centeredのアプリは、チームのメンバーがビデオフィードを介して小さなサムネイルとして表示されるバーチャルなコワーキングセッションを提供する。つまりこれは、同僚があなたの姿を見ることができれば(ただし、音や会話は聞こえない)、あなたはコードをレビューしなければならないときに、スマホをいじったり、6杯目のコーヒーを飲みに行ったりする可能性が低くなるだろうという考えに基づくものだ。また、このアプリには「フローミュージック」と呼ばれる、ゆっくりとしたテンポの環境音楽も鳴らすことができ、脳に仕事をする時間だと納得させるために役立つ。さらにパーソナルアシスタントも用意されており、同社の創業者はこれを「生産性を向上させるSiri」と表現している。

「飛行機の中でヘッドフォンをしていると、突然、気を散らすものが一切ないような感覚になることがあるでしょう? 周囲に邪魔する人がいないため、短時間に今まで書いたことがないほどたくさんの文章を書くことができたりします。これがCenteredで再現しようとしている体験です。フローセッションを開始すると、Noah(ノア)が出迎えてくれます。このボットは、あなたの作業をガイドしてくれます」と、Centeredの創業者兼CEOであるUlf Schwekendiek(ウルフ・シュエッケンディック)氏は説明する。「このアシスタントは、割り当てられた時間の半分を過ぎると知らせてくれます。あなたが気が散っていることに気づいたら、仕事に集中するよう促してくれます。親が宿題をするはずのあなたがゲームボーイに夢中になっていることに気づいて、他のことをするべきだと注意するようなものです」。

Centeredの創業者兼CEO、ウルフ・シュエッケンディック氏(画像クレジット:Centered)

Centeredは米国時間11月17日、Uncork Capital(アンコーク・キャピタル)とYes VC(イエスVC)が主導する投資ラウンドで390万ドルを調達し、JLL Spark(JLLスパーク)、Shrug Capital(シュラッグ・キャピタル)、Basement Fund(ベースメント・ファンド)、AVG Basement(AVGベースメント)、Remote First(リモート・ファースト)の他、多くのエンジェル投資家からも支援を受けたことを発表した。

「この資金調達によって、いくつかのことが可能になりました。もう、私1人ではありません。コーディングやデザインなど、すべてを業者に依頼することはなくなります」と、シュエッケンディック氏は語る。「私たちは、エンジニアリング、デザイン、コンテンツの各チームに人員を配置し始めました。より大きなコンテンツ契約を結び、より良い音楽やボイスオーバーを利用できるようになりました。しかし、本当におもしろいのは我々が持つデータです。私たちはこのデータの活用を始めたばかりです。人々がどのように働いているかを私たちは知っています。他の誰にも真似できません」。

実行中のCenteredアプリ(画像クレジット:Centered)

シュエッケンディック氏は、同社がデータを匿名で集計し、安全に取り扱っていると断言している。今回のラウンドでは、評価額は公表されていない。

「何千人もの人々が当社の製品を利用しています。初期のユーザーは、見積もっていた時間よりも平均30%早く仕事を終えられ、その結果、より幸せになり、ストレスが減ったと報告してくれました」と、シュエッケンディック氏は述べている。「トップユーザーは、Centeredを生産性向上のためのオペレーティングシステムとして1日に3〜5時間ほど使用しています。第1週目以降のユーザー維持率はほぼ100%であることもわかっています」。

画像クレジット:Centered

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

シンガポールを拠点とするコワーキングスペースのデスク予約アプリ「Deskimo」がジャカルタに進出

コワーキングスペースを見つけて分単位で支払うオンデマンドアプリで、シンガポールを拠点とするDeskimoが現地時間11月17日、シードラウンドで300万ドル(約3億4200万円)を調達したと発表した。また、インドネシアのジャカルタでソフトローンチし、これまでのシンガポールと香港に加えて3つのマーケットでサービスを提供する。今回のラウンドにはY Combinator、Global Founders Capital、Pioneer Fund、Seed X、Starling Ventures、TSVCが参加した。DeskimoはY Combinatorの2021年夏学期に参加していた。

Rocket Internetのアジア責任者だったRaphael Cohen(ラファエル・コーエン)氏と、FoodpandaやHotelQuickly、GuestReadyの共同創業者であるChristian Mischler(クリスチャン・ミシュラー)氏が、2021年前半にDeskimoを創業した。Deskimoはアプリを消費者に直接提供するのではなく、ハイブリッド勤務を採用する企業と連携している。通常は在宅勤務をしているが集中するため、あるいは電話をするために家を離れたい従業員に対して、福利厚生としてアプリが提供される(ミシュラー氏によれば、Deskimoのユーザーはデスクを平均3時間利用するが、終日滞在するケースもあるという)。DeskimoはWeWork、The Hive、Executive Centre、Garage Societyなどのコワーキングスペースと提携し、コワーキングスペースの新たな収入源となっている。

ミシュラー氏はTechCrunch宛のメールで、交通渋滞が激しく、香港やシンガポールの都市と比べて不動産インフラがあまり充実していない都市をターゲットにするという方針から、ジャカルタに進出すると述べた。「インドネシアは東南アジア最大の市場で、ジャカルタはシンガポールの企業が最初に進出する都市の1つです。そのため当社の多くの顧客からDeskimoをジャカルタで利用できるようにして欲しいと要望がありました。そこで、東南アジアの他の大都市に先駆けてジャカルタを優先したのです」(ミシュラー氏)。

Deskimoはソフトローンチにあたり、ジャカルタで40カ所以上のワークスペースとすでに契約し、2021年末までにさらに10〜20カ所を追加する予定だ。サービスを展開するいずれの都市でも、同社はユーザーが自宅に近いデスクを見つけられるようにビジネス街の中心以外でもワークスペースを探している。例えば香港とシンガポールでは、Deskimoのスペースのおよそ3分の1は住宅地にある。ミシュラー氏によればジャカルタではスペースは市内全域に広がり、パートナーのワークスペースの約60%はビジネス街の中心以外にあるという。

同氏は「コロナ禍にともなう制限が続けばスペースはさらに混雑すると予測しています。そのため我々はDeskimoユーザー全員が近隣でスペースを利用できるようにオプションを増やしていきます」と補足した。

Deskimoはサービス開始からの3カ月間で、中心地にある会議室の予約などの新しいサービスもユーザーの需要に応えて追加してきた。現在の従量制料金モデルに加えて、固定料金のサブスクリプションも試行している。他に、アカウント所有者がゲストを同行できる機能、月末締めの請求だけでなくプリペイドのクレジットの利用、スペースに終日滞在したいユーザー向けの最大料金設定なども準備中だ。

画像クレジット:Deskimo

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

Tinderも導入したバーチャルコワーキングのSoWorkが17億円を調達

SoWork(ソーワーク)の共同創業者でCEOのVishal Punwani(ビシャール・プンワニ)氏は、偶然思いついた予感をもとにビジネスを構築している。

バーチャルコワーキングのスタートアップであるSoWorkは、プンワニ氏とその共同創業者が機械学習のEdTech企業を立ち上げると決めた後に始まった。その創業中のちょうど17年前、皮肉にも「World of Warcraft」をプレイしているときに出会った同氏のチームは、より良いコミュニケーションの方法を必要としていた。何かを作ることとゲームをすることが好きだった彼らは、バーチャルな世界にヒントを得て社内コミュニケーション製品を作り上げた。

彼らのチームの内部コミュニケーションツールは、外部向けのEdTechツールよりも急速に成長し始めた。このスタートアップは、最終的にSophya(ソフィア)という社名に変更し、転換した。同社は、すべての雇用主がいずれ、バーチャルな仕事体験に投資しなければならないというプレッシャーを感じるだろうという予感から始まった。従業員はそうした環境で、文化を修復したり、気候変動と戦うわけだ。

その予感は、このアーリーステージのスタートアップに投資すべきだと投資家を確信させるのに十分だった。SoWorkは現地時間10月12日、シードラウンドで1500万ドル(約17億円)を調達したと発表した。ラウンドは、英国を拠点とし、日常的にアーリーステージのスタートアップに小切手を切っているTalis Capitalがリードした。資金は採用や研究開発に使用する。SoWorkは、100社が参加するプライベートベータ版に1社の大きな顧客を迎えた。Tinder(ティンダー)だ。

Tinderは、バーチャルスペースを導入し、新旧の分散した社員に、コラボレーションルームからハッカソンなどの全社的なバーチャルイベントに至る同社のワークカルチャーを見せようとしている。オフィスのリニューアル計画が遅れたことが、同社がバーチャルスペースに興味を持つきっかけだったのかもしれないが、同社はこのテクノロジーが今後の鍵になると考えているようだ。

画像クレジット:SoWork

「従業員の働き方の未来を考える上で、Tinderのカルチャーを物理的な空間とバーチャルな空間のハイブリッドに拡張する、より永続的な方法を見つけることが非常に重要でした」とTinderのカルチャー&DE&I担当副社長であるNicole Senior(ニコル・シニア)氏は声明で述べた。

どんなバーチャルオフィスであっても、永続性は部屋の中の象のようなものだ。SoWorkは、TeamflowWithGatherといったバーチャルオフィスプラットフォームの列に加わる。バーチャルオフィスビジネスの最大の課題の1つは、雇用主、特に成長段階にある雇用主が、対面式のオフィスで十分なのに、成長中のチームをメタバースに移すことが現実的かということだ。また、Slack(スラック)が、すでに定着している同社のサービスにさらなる投資を行い、より自然な感じやハドルミーティングなどを持ち込もうとしているように、バーチャルオフィスサービスのスタートアップは、顧客が、特にゲームとともに育ったような人たちではない場合、オンラインの世界で生活や仕事をしたいと思っているのか検証する必要がある。

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「問題を認識していないのであれば構いません。しかしいずれ、SoWorkにせよ他のプラットフォームにせよ、そこに拠点を置く企業が増え、プラットフォームでのメリットが積み重なっていくでしょう。そのうち、ある日突然、雇用主にとって他では得られないメリットが現れるのです」とプンワニ氏は話す。「Twitter(ツイッター)のようなものです。最初は、『Twitterは欠かせない』という企業はありませんでした。しかし、Twitterがランダムなノイズを生む場所になると、企業は『関わりを持っておきたいから、Twitterを利用したい』というようになりました」。

Sophyaには、近接ベースのオーディオ(近くにいる人の声だけが聞こえる)や高品質のビデオ、アバターの自己表現、カスタマイズ可能なオフィス、自分の周りにいる人の視覚化など、体験を深めるための機能が数多く搭載されている。また、従業員がオフィスを飛び出してSoWorkのエコシステムに参加し、他社の従業員とネットワークを築いたり、コミュニティイベントに参加したりする方法も開発した。プンワニ氏によると、チームは週に25〜40時間、非同期のキャッチアップやリアルタイムのミーティングのために、バーチャルオフィスで仕事をしている。

画像クレジット:SoWork

それでも、このスタートアップの最大の差別化ポイントは、気候変動に対するチームの考え方かもしれない。市場に出回る多くのバーチャルオフィスとは異なり、SoWorkは、雇用主にオフィスではなくバーチャルで会社を成長させる方法を提供することで、気候変動に対処するという使命を声高に主張している。同社は、オフィスではなくSoWorkに入居した企業が、どれだけ二酸化炭素の排出量や通勤時間を削減できたかを試算して発表する予定だ。また、同社のカナダ法人では、化石燃料から100%脱却した銀行を選び、米国法人でも同じようにしようとしていると、同社の共同創業者は述べた。

「気候問題は、私たちが最も力を入れている問題です。だからこそ、私たちのキャッチフレーズは、『職場を地球からクラウドへ』です」とプンワニ氏は話す。「気候変動への影響を想像してみてください。二酸化炭素排出量、通勤、小規模な出張、そして無意味なビルや駐車場の建設が減るのです」。

また、競合他社と比較しても、チームの多様性は際立っている。プンワニ氏の他に、Emma Giles(エマ・ジャイルス氏)とMark Liu(マーク・リュー)氏という2人の共同創業者がおり、SoWorkのオペレーション、マーケティング、グロース、プロダクト、リサーチなど主要6チームのうち、5チームを女性が率いる。

SoWorkは、11月の第1週にプライベートベータ版を一般公開する。すでに1000社以上、人数にして30万人以上がウェイティングリストに登録している。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポストコロナに向けて、分散型ワークの実現に向けPatchはコワーキングスペースを英国の小さな町や郊外に広める

パンデミックは働く環境に多大な影響を与えたといえるが、他の変化がすでに進行している中での出来事でもあった。電子商取引の拡大による街頭での買い物の減少は、さらに拍車がかかっているし、リモートワークへの移行も急速に進んでいる。人々はもはや8時から6時までの通勤を望んでいない。しかし、私たちは、在宅勤務が評判ほどいいものではないことに気づきもした。その上、もし地域に似たサービスがあれば簡単にいけるのに、WeWorkのようなところで共同作業をするためだけに大都市に通勤することに意味を見いだすこともできない。問題は、特に郊外や小さな町に、地域のコワーキングスペースがほとんどないということだ。

自宅で仕事をするのではなく、家の近くで仕事をすることができれば、よりバランスのとれたライフスタイルを手に入れることができるだけでなく、多くの人(特に家族)が望んでいる仕事と家庭の分離も実現することができるのではないだろうか。

今回、英国のスタートアップが「Decentralized workspace(分散型ワークスペース)」のアイデアを発表し、英国全土での展開を計画している。

Patchは、従来の通勤者を対象とした「Work Near Home(家の近くで働く)」という提案とともに、地元の大通りの空き店舗を「共同文化スペース」に変える。英国には600万人の知識労働者がいると推定されており、Patchはこの会員からの月額利用料で運営される。

現在、Patchは110万ドル(約1億2000万円)の創業資金を複数のエンジェル投資家から調達している。例えば、LocalGlobeの共同創業者Robin Klein(ロビン・クライン)氏、Entrepreneur Firstの共同創業者Matt Clifford(マット・クリフォード)氏、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンハースト)氏、Episode 1のSimon Murdoch(サイモン・マードック)氏、元Jack WillsのCEOでGreat Portland EstatesのNEDであるWendy Becker(ウェンディ・ベッカー)氏、サステナブル投資家Eka Venturesの創業パートナーのCamilla Dolan(カミラ・ドラン)氏、米国投資会社SequoiaのタレントディレクターであるZoe Jervier(ゾーイ・ジャービア)氏、Grabyoの創業者でアーリーステージの投資家Will Neale(ウィル・ニール)氏などだ。

「家の近くで働く」というアイデアは、ポストコロナの「ハイブリッドワーキング」の動きに対応したもので、Patchは「起業家精神、テクノロジー、文化的なプログラムに焦点を当てた」公共の場を作ることを計画している。

Patchの各拠点では、プライベートオフィス、コワーキングスタジオ「利用しやすい低コストのオプション」、無料の学問のための場所などを提供する。

Patchの最初の拠点は、11月初旬にエセックス州チェルムスフォードにオープンする予定で、2022年にはさらに複数の拠点が計画されている。また、チェスター、セント・オールバンズ、ウィカム、シュルーズベリー、ヨービル、ベリー、キングストン・アポン・テムズの人々からも要望が寄せられているという。

Patchの創始者であるFreddie Fforde(フレディ・ファード)氏は次のように語った。「働く場所と住む場所は、伝統的に異なる環境と見なされてきた。そのため、平日の大通りは空洞化し、オフィス街も同様に廃れてしまった。私たちは、人々が家の近くで仕事をすることを可能にし、仕事、市民、文化の交流が混在する新しい環境を作り出せるテクノロジーがこの状況を根本的に変えると考えている」。

ファード氏は、Entrepreneur Firstの元創設者であり、ロンドンやサンフランシスコのアーリーステージのテック企業でさまざまな役割を担ってきた社員でもある。プロダクト部門の責任者には、2015年にターナー賞を受賞したデザインスタジオAssembleの元共同設立者であるPaloma Strelitz(パロマ・ストレリッツ)氏が就任する。

Entrepreneur FirstおよびCode First Girlsのクリフォード氏は、次のようにコメントしている。「テクノロジーは、私たちが組織化し、ともに働く方法を常に変えてきた。Patchは、住んでいる場所に制約されることなく、才能のある人たちが自分自身の能力に基づいて働く機会を解放するだろう。私たちは、高スキルの仕事がどこでもできる国にいたいと思っており、Patchはその環境の実現ための重要な部分を担っている」。

Patchは、主要都市の中心部ではなく、町や小都市の住宅地をターゲットにしており、町の中心部にある利用されていないランドマーク的な建物を探すとしている。例えば、チェルムスフォードでは、ビクトリア朝の醸造所を最初のスペースとして利用する予定だ。

Grays Yard

経済開発・中小企業担当の副内閣メンバーであり、BID委員会の代表でもあるチェルムスフォード市のSimon Goldman(サイモン・ゴールドマン)評議員は、次のように述べている。「グレイズヤードに新しいコワーキングスペースが導入されることは、この街にとって本当にポジティブな計画だ。住民に地元で働く選択肢を提供することで、通勤時間が短縮され、ワーク・ライフ・バランスの向上につながることが期待される。家の近くで働くことは、個人やその家族だけでなく、環境や地域経済にも多くのメリットをもたらす」。

また、Patchはイベントスペースのピーク時の20%を、地元や全国の「公益に役立っている」コミュニティサービスの提供者に寄付する「ギビングバック」モデルも実施するとしている。初期の国内パートナーには、技術サービスを提供するCode First Girlsや、Raspberry Pi Foundationが運営するCoder Dojoなどがある。

画像クレジット:Patch workspace

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)

Knotelの共同創業者が会社を去り投資家のNewmarkを「ストーカーだ」と批判

2021年の初め、TechCrunchはフレキシブルワークスペースを運営するKnotel終焉を取り上げた。

一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだったこのスタートアップは破産申請を行い、その資産が投資家と商業不動産仲介のNewmark7000万ドル(約77億円)買収されると発表したばかりだった。

わずか1年前には16億ドル(約1800億円)と評価されていたKnotelにとって、それは厳しいものだった。

5億6000万ドル(約620億円)の資金を調達したKnotelにとって、終わりの始まりを正確に特定するのは困難だった。新型コロナウイルスのパンデミックが同社の命取りになったという人もいれば、パンデミックが発生する前からこのプロップテックはすでに訴訟や立ち退きといった問題に直面していると指摘する人もいる。

先週末、Knotelの共同創業者であるAmol Sarva(アモル・サルバ)氏は状況をさらに明らかにした。そして、2018年のシリーズBで7000万ドル(約77億円)を調達したNewmarkを公に批判した。

サルバ氏は不特定の人々に送ったメールの中で、Knotelが「2020年初めには4億ドル(約440億円)近いランレートを達成し、粗利益を計上し、顧客の継続性をサポートし、家主のパートナーと友好的に協力するためにできる限りのことを行いながら、収益の3分の2以上をそのまま維持していました」と指摘している。

さらにサルバ氏はNewmarkを、破産法を利用して約1億ドル(約110億円)の新資本でKnotelを支配下に置いた 「ストーカー」 と表現した。その過程で重要な関係を損ない「多くの顧客やパートナーに損害を与えた」 と述べている。

「私はこのような方向に進んでしまったことにとても失望しています。その過程で、私は新しいオーナーが進める方法の一部になることを選ばないことを明確にしました」とサルバ氏は続けた。

サルバ氏はさらに、Newmarkが 「会社を前進させるためにAdam Neuman(アダム・ノイマン)時代のWeWorkの兄弟グループを雇った」 と批判した。

TechCrunchはNewmarkにコメントを求めたが、記事執筆時点では回答は得られていない。サルバ氏は事態がどうなったかについて苦々しく思っているだろうが、この結論に至った正確な時期を知ることは興味深い。

なおサルバ氏はKnotelが最初に開発されたラボに戻り、Knoteの共同創業者兼CEOとして働くと述べている。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Knotel不動産シェアオフィス

画像クレジット:Knotel / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:塚本直樹 / Twitter

【コラム】WeWorkはサービスをバラ売りすることで立て直しを図っているがその戦略はうまくいくのか

長年にわたり、WeWork(ウィーワーク)はテック企業と不動産企業のどちらに分類されるかという議論があった。WeWorkについて大部分の人々は当初、テック系スタートアップを装った不動産系スタートアップだと考えていた。

WeWorkが多くの不動産を手に入れることで、その分類は曖昧になっていった。そしてご存じのとおり会社の評価額が急落したため、IPO計画が白紙となった。現在、SPAC株式を公開することがうわさされているWeWorkの評価額は100億ドル(約1兆894億円)だが、2019年1月にSoftBank(ソフトバンク)によるシリーズHラウンドで10億ドル(約1089億円)を調達後の470億ドル(約5兆1204億円)という評価額と比べると、評価が大幅に下がっている。

Adam Neumann(アダム・ニューマン)氏は、傲慢でお粗末な経営について批判を受けた共同創業者で当時のCEOだったが、その年の後半に辞任したことで有名だ。それ以来、WeWorkは名誉を挽回し、投資家や一般の人々の印象を良くしようと努力してきたことはよく知られている。

Marcelo Claure(マルセロ・クラウレ)会長は、5年にわたる戦略的再建計画を2020年2月に作成した。窮地に立つ同社は同じ月に、新しいCEOにテック系ではなく不動産を担当する幹部を指名したことで話題になっている。

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WeWorkはその後、評価額の引き上げと投資家の信頼回復を目指した計画の一環として、2022年までにフリーキャッシュフローの黒字化という目標を再設定した。

ライバルのKnotel(ノテル)が経営が悪化したため破産申請し、投資家に資産を売却するのを目の当たりにし、ノテルの失敗から教訓を得るべきだとWeWorkは気づいたようだ。

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ここでふと、WeWorkは本当に危機を脱したのかという疑問がよぎる。

オープンしていないロケーションや採算がとれないロケーションからWeWorkが撤退した件数は、再建計画の策定以降で100件を超えるという(同社のウェブサイトによると、世界中に800件以上のロケーションが残っている)。さらに、WeWorkの純損失は、2019年第3四半期の12億ドル(約1308億円)から2020年第3四半期には5億1700万ドル(約563億円)に減少した。

一方で収益が悪化した原因は、新型コロナウイルス感染症の影響と思われる。2019年第3四半期に9億3400万ドル(約1018億円)だった収益が、2020年第3四半期には8億1100万ドル(約884億円)に減少した。

WeWorkはパンデミックで苦戦を強いられているが、これはチャンスであるという意見もある。

テレワークでの業務により、人との距離を保たなければならないため、ほとんどのオフィススペースは苦戦している。WeWorkもこの状況を乗り切らなければ、評価額や収益に大きな打撃を受ける可能性が高い。

世界中の不動産会社と同じように、WeWorkも頭を抱えている。テレワークが一時的なものではなく、多くの企業が今後も継続していく方向性を検討している状況であるため、物件の所有者も対応しなければならない。

たとえばMcKinsey(マッキンゼー)が最近指摘したように、物件の所有者には柔軟性がさらに求められ、テナントのリース契約を考え直すことを余儀なくされている。つまり、商業不動産スペースの経営者には、WeWorkのような柔軟性が必要であるということだ。

状況に適応しようとすでに動き出しているWeWorkは、同社の会員専用プランがうまくいっていなかったことに気づいた。会員数が減少していることからそれは明らかだ。そのため同社は、On Demand(オンデマンド)オプションとAll Access(オールアクセス)オプションを新設することで、多くのユーザーに建物を開放することにした。例えばテレワークにうんざりしている人に対して週に1回、仕事をする場所を提供することが目的だ。さらにWeWorkは企業や大学と協力し、オールアクセスの特典としてオフィススペースを提供するチャンスや、学生に学習場所を提供するチャンスを見いだした。

たとえばジョージタウン大学は、WeWorkとかなりユニークなパートナーシップを結んだ。WeWorkのロケーションの1つを「ジョージタウン大学の代替図書館および共用スペース」として提供している。Brandwatch(ブランドウォッチ)などの企業も最近、これまで使用してきたWeWorkのスペースの代わりにオールアクセスのパスを従業員に渡して、世界中にあるWeWorkのロケーションを利用するようにしている。

WeWorkは2021年初めに、週末と営業時間外にスペースを使用する予約サービスも新たに始めた。

スペースのバラ売り

筆者はWeWorkの新戦略について、Prabhdeep Singh(プラッブディープ・シン)氏から話を聞いた。同氏はWeWorkのマーケットプレイスグローバル責任者で、新しいサービスを統括し、WeWorkのオンライン化に向けて指揮をとっている。

「私たちが取り組んでいるのは、スペースをバラ売りにすることです。これまで当社のスペースを利用するには、サービスがまとめられたサブスクリプションと、月額制の会員サービスしかありませんでした。新型コロナウイルス感染症によって世界が変わりつつあるため、当社のプラットフォームをより多くの人々に開放し、できる限り柔軟に利用できるようにしました。例えば、部屋を30分だけ予約したり、1日利用券を購入したりできます。いろんなユースケースが可能です」と彼は述べた。

シン氏によると、2020年8月にニューヨーク市でオンデマンドサービスが試験的に開始されて以来、サービスの需要が着実に伸びており、2020年第4四半期と比べて予約数は65%、売上は70%増加している。ただし、これはまだ初期段階で、サービスは小規模に開始されたにすぎない。オンデマンドサービスの予約のほぼ3分の2はリピーターによるものだと、シン氏は付け加えた。

「私たちは1年半をかけて、注力するべきものとそうでないものを真剣に考えてきました。スペースを柔軟に提供する企業として、今後の状況を注視しています。商業オフィススペース業界で当社は小さな存在にすぎませんが、テクノロジーを駆使しつつアプリを改善しながらスペースのデジタル化を進め、柔軟にワークスペースを提供できるように取り組んでいます」とシン氏はいう。

今のところ、わずかながら状況はよくなっているようだ。WeWorkによると、2月のアクティブユーザー数は1月の約2倍になった。勤務時間外に利用することを希望するユーザーが多いようで、週末の予約数が予約全体のおよそ14.5%を占める。

WeWorkによると、既存メンバーがパンデミック期間中に、すでに利用しているプライベートオフィススペースに加えて、2020年2月にオールアクセスパスを購入した件数は1月の2倍になった。

新型コロナウイルス感染症の流行が始まった頃、WeWorkの利用を中止する数が多かったのは大企業の会員よりも、中小企業(SMB)会員だった。SMBはその事業の性質上、キャッシュフローを迅速に管理することが必要であるというのが一因だが、2020年第3四半期には、SMB向けの売上高が第2四半期に比べ50%増加した。

WeWorkを使用する大企業の割合は、パンデミックの期間中にSMBの2倍近くになり、現在ではWeWorkの会員数の半分以上を大企業の会員が占めているのは興味深い。

WeWorkは特定の市場で不動産に新たに投資する速度を緩めるのと同時に、物件を売却することで規模の「適正化」に取り組んでいる。

WeWorkの財務状況に関して言えば、3月2日時点で、同社の債権は株式公開に失敗した2019年夏以来の高値で取引されているという。これは、下落率が約28%の52週安値から大幅に上昇している。

「利回り約10%に対して約92%となっており、債権者は明らかに肯定的に反応しています。ワークスペースを提供するWeWorkの柔軟なサービスが、不動産の将来において有望な役割を果たすという市場全体の信念を、債権者の反応が証明しています」とスポークスマンはTechCrunchに語った。

2020年の3月、WeWorkの債権1ドル(約110円)に対して43セント(約50円)で取引されており、S&P Global(S&Pグローバル)はWeWorkの信用格付けを「投資不適格」に引き下げ、さらなる格下げを警戒して同社に目を光らせている、とForbes(フォーブス)誌は報じた。

この状況にWeWorkは適応しきれていない。シン氏がTechCrunchに語ったところによると、WeWorkの価値提案をさらに拡充するために「Business in a Box(ビジネス・イン・ア・ボックス)」の提供に取り組んでいるという。2020年末、WeWorkは複数の企業と提携し、SMBやスタートアップに給与計算、ヘルスケア、ビジネス保険などのサービス提供を開始した。

「WeWorkを利用するユーザーの多くがビジネスを拡大させています。当社はビジネス面での主要サービスを提供し続けています。その一方で、中小企業で管理が煩雑になりやすく、コストがかかる人事などの重要な分野でも、サービスをさらに提供できるように取り組んでいます」とシン氏はいう。

さらにWeWorkは、オンデマンドのサービスをグローバルに提供することで、世界中のWeWorkのスペースでユーザーが仕事を進められるように尽力している。

「現在、テレワークの実験が最大規模で進められています。今後、職場に復帰する実験が最大規模で始まるでしょう。当社は非常に有利な位置にいると言えます」とシン氏は述べた。

WeWorkは、一歩先を行く不動産会社になろうとしているようだ。アダム・ニューマン氏が同社を率いていた頃ほどの派手さはないかもしれないが、需要がある安定した会社になりつつある。ただ、多くのことをあまりにも短い期間で進めようとしているのではないか?

今後の展開が楽しみだ。

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画像クレジット:KAZUHIRO NOGI/AFP / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)