コンピュータービジョンで職場の安全性を監視するIntenseyeが約4億円を調達

米国のシンクタンク経済政策研究所によると、同国での業務上の傷害や病気のコストは毎年2500億ドル(約26兆円)を超える。ERA(起業家ラウンドテーブルアクセラレーター)が支援するスタートアップで機械学習プラットフォームのIntenseye(インテンスアイ)はこの数字を経済的かつ効果的な方法で抑制しようとシードラウンドで400万ドル(約4億円)を調達した。

Point NineとAir Streetが本ラウンドを共同でリードし、エンジェル投資家としてTwitter、Cortex、Fastly、Even Financialが参加した。

Intenseyeは施設内のネットワークに接続した既存のカメラを統合し、業務中の従業員の健康や安全をモニターするのにコンピュータービジョンを使う。これは、Intenseyeがヘルメット未着用から社会的距離プロトコルの無視、その他のさまざまな健康・安全に関する規則違反をリアルタイムに特定できることを意味する。

Intenseyeのダッシュボードはリアルタイムに労働者の安全をモニターするために連邦そしてローカルの職場安全法、ならびに各組織のルールを取り込んでいる。Intenseyeのプラットフォームは職場でありがちな全部で30の安全でない行動を特定できる。管理者はさらにドラッグ&ドロップのインターフェースを使ってこうしたルールをカスタマイズできる。

違反が見つかった時には、問題を解決するために雇用側の健康・安全の専門家はすぐさまテキストや電子メールでアラートを受け取る。

Intenseyeはまた、コンプライアンスのスコアを算出したり問題のエリアの診断をするために施設内の職場安全コンプライアンスの集計も取る。

同社は基本展開料金、そして施設がIntenseyeのモニタリングポイントとして使いたいカメラの台数に基づく年間料金を課す。

共同創業者のSercan Esen(セルカン・エセン)氏は事業の最大の課題の1つはテクニカル上のものだと話す。Intenseyeは、従業員の健康・安全の反則アラートを送るためにコンピュータービジョンを通して職場の安全性をモニターするが、個人の顔を分析したり個人を特定したりはしない。全てのビデオはすぐさま破棄され、Intenseyeに保存されることはない。

Intenseyeのチームは20人だ。

「現在Intenseyeのチームの20%が女性、80%が男性で、メンバーの国籍は4カ国になります」とエセン氏は話した。「当社のチームにはコンピューターサイエンスで理学修士を持っている人、高卒の人がいます」

チームの多様性とインクルージョンはどの企業でも重要だが、コンピュータービジョンのソフトウェアを構築する企業においては特にそうだ。

同社はパンデミックを受けてリモートワークに移行し、バーチャルオフィスの構築とZoomよりも投入型の方法で従業員を結びつけるためにVRを使っている。

Intenseyeは現在30都市で利用されていて、今回調達した資金はチームの増強、特にセールスとマーケティング部門での雇用、そして市場開拓戦略の実行に使う予定だ。

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画像クレジット: Intenseye

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(文:Jordan Crook、翻訳:Nariko Mizoguchi

コンピュータビジョンのSuperAnnotateがOpenCVと提携、ノーコードのAIスマートカメラ普及を支援

ノーコードのコンピュータビジョンプラットフォームであるSuperAnnotateが、オープンソースのコンピュータビジョンアルゴリズムの大規模なコレクションを構築している非営利団体OpenCVとパートナーシップを組むことになった。この動きは、スタートアップや起業家が独自のAIモデルを構築し、カメラが機械学習を使って物体を検出できるようにすることを意味する。SuperAnnotateはこれまでにPoint Nine Capital、Fathom Capital、Berkeley SkyDeck Fundなどの投資家から300万ドル(約3億1000万円)を調達している。

データサイエンティストやアノテーションチーム向けのAIを利用したコンピュータビジョンプラットフォームである同社は、OpenCV AI Kit(OAK)ユーザーにそのプラットフォームへのアクセスを提供するとともに、AIモデル構築のためのコンピュータビジョン講座を開始するという。また、SuperAnnotateは、機械学習を利用してオブジェクトを検出するAI Kitのカメラをセットアップし、OAKのユーザーは、そのプラットフォーム上にシステムをセットアップするための200ドル(約2万1000円)のクレジットを得ることができる。

OAKは、物体の識別、人数カウント、距離の測定など、コンピュータビジョンと3D知覚のタスクを実行できるマルチカメラデバイスだ。発売以来、約1万1000台のカメラが販売されている。

OAKはこれまで、ドローンやセキュリティアプリケーション、農業用ビジョンセンサー、あるいは新型コロナウィルス関連の検知装置(例えば、人がマスクを着用しているかどうかを識別するなど)の構築に使われてきた。

SuperAnnotateの共同創業者兼CEOであるTigran Petrosyan(ティグラン・ペトロシアン)氏は声明の中で次のように述べている。「コンピュータビジョンとスマートカメラのアプリケーションは勢いを増していますが、それらを実装するための、関連するAIの専門知識を持っている人は多くありません。OAK KitとSuperAnnotateを使えば、コーディングの経験がなくても、スマートカメラシステムを構築することができます」。

SuperAnnotateの競合企業には、Dataloop、Labelbox、Appen、Hiveなどが含まれる。

関連記事:サッカーなどのチームスポーツを記録し編集、配信できるAIカメラのVeoが約25.5億円を調達

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:コンピュータービジョン OpenCV ノーコード

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nakazato)

​AWSがあらゆるカメラに機械学習技術を搭載するデバイスPanoramaを発表

AWSはAWS Panorama Applianceという新しいハードウェアデバイスをローンチした。このデバイスはAWS Panorama SDKととも利用し、既存のオンプレミスカメラをコンピュータービジョンの能力のある超強力な監視デバイスに変える。

AWS Panorama Applianceの売り込み文句は、生産ラインで部品を点検する、安全な手順や工程が行われているか確認する、小売店で人の流れを分析するといったものだ。「AWS re:Invent」2020テーマは「新しいオートメーションサービス」。つまり「何でも自動化しよう」だ。

ユーザー企業はまず、Amazon SageMakerなどを使ってコンピュータービジョンのモデルを作る。Panorama Applianceは、そのモデルを、ネットワークまたはネットワークに接続されたフィードに対して走らせる。

近くAWSはPanorama SDKを提供するため、メーカーはPanorama対応のデバイスを開発することができる。

Amazon(アマゾン)は以前にも、デベロッパーやエンタープライズに対して監視技術を売り込んできた。2017年にはDeepLensを披露し1年後に発売した。それを使って開発者はプロトタイプの機械学習モデルを作り、アマゾンはコンピュータービジョンの能力を商用化するためのさまざまな方法を得る。

2018年の記事から引用する。

DeepLensは他のAWSサービスと深く統合されている。AWSのIoTサービスであるGreengrassはDeepLensにモデルを配信する際に利用し、アマゾンの機械学習モデル構築用最新ツールであるSageMakerとも連携する。あらかじめ用意されているモデルを使えば、10分足らずでDeepLensを設定しモデルを組み込んで利用できる。プロジェクトテンプレートの中には、20種類の物体を識別する物体検出モデルや、カメラ画像をヴァン・ゴッホ風に変換するスタイル変換モデルや顔認識モデル、猫と犬を区別するモデル、約30種類の動作(ギターを弾くなど)を認識できるモデルなどがある。DeepLensチームは、頭部の姿勢を追跡するモデルも開発中だ。そうそう、ホットドッグ検出モードもある。

ビデオのための機械学習の開発に関して、アマゾンには大量の経験と大量の議論がある。同社の顔認識ソフトウェアであるRekognitionは抗議と反発に火をつけ、その技術の使用は一時停止に追い込まれた

そして同社は機械学習をさらに、一般住宅のドアベルカメラであるRingにも搭載しようとした。

それでも企業は、セキュリティや安全、品質管理などのために、機械学習をベースとする動画認識技術を声高に要求している。むしろ新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが長引くにつれて、建物の使用や専有をめぐる新たなプロトコルが採用されるようになり、しかもそれは現在のパンデミックのためだけでなく、今後の深刻さを軽減するスペースやプロトコルのための、先行的計画にも採用されている。

関連記事:Amazonが開発者向けAIカメラ「DeepLens」を249ドルで販売開始

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AWS re:InventAWSAmazon機械学習コンピュータビジョン

画像クレジット:Amazon Web Services

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

新型コロナで人々は建物の人口密度を計測するDensityの技術を求め始めた

新型コロナウイルス(COVID-19)が大流行する前から、いくつもの企業がDensity(デンシティー)の技術を利用してきた。例えばTechCrunchの親会社であるVerizon(ベライゾン)も、Yahoo!(ヤフー)とAol(エイオーエル)の統合後のオフィス空間を効率的に利用するために、以前から導入している。そして今、新型コロナ禍の影響で建物や部屋の人口密度を測定しようと、誰もがDensityの技術を欲しがるようになった。

同社が新しい投資ラウンドで5100万ドル(約54億円)を調達できたのも、ひとつにはそのお陰がある。このラウンドはKleiner Perkins(クレイナー・パーキンス)が主導し、Dick Costolo(ディック・コストロ)氏の01 Advisors(ゼロワン・アドバイザー)や、ロサンゼルスを拠点とする投資会社Upfront Ventures(アップフロント・ベンチャーズ)など、以前からの投資会社が参加している。

この需要の「第1の牽引力は、プライバシーを侵害することなく建物の利用を安全に再開できる点です」と、Densityの最高責任者Andrew Farah(アンドリュ−・ファラー)氏はいう。

同社はデータを愛するテック企業、小売店、コーヒーチェーンのためのサービスを提供する企業としてスタートしたものの、今では共有スペースを持つあらゆる事業所、つまり出荷センター、食料品店、倉庫、食肉加工場そしてTechCrunchの本社のような場所で必要とされる普遍的なテクノロジーの提供者になったとファラー氏は話す。

今回調達した資金は何に使われるのか?ファラー氏によればセールス、マーケティング、さらにはその技術を顧客の建物に導入する目的に使うという。

「私たちが計画している投資の大半はカスタマーサクセス、基幹インフラ、製品とセールスの拡大です」とファラー氏。「お客様が私たちの企業名を初めて知るのは、営業で訪問してデモをお見せしたときです」。

同社のハードウェアとソフトウェアサービスへの注文が殺到していると、彼はいう。注文は2万〜5万ドル(約200万〜520万円)程度の試験導入から、100万ドル(約1億円)単位の1000ユニット初期導入まで幅がある。「すべての顧客は初期導入後、その3倍の規模に拡大しています」と彼は話す。Densityでは、最初のセンサーの設置に1回かぎりの料金として895ドル(約9万4000円)かかる。その他に必要な年間のデータアクセス料金は、センサー1台あたり800ドル(約8万4000円)となっている。

Densityはチャンネルパートナーと直接販売の両方で成り立っており、潜在顧客が急増したことで、投資が大幅に膨らんだのだとファラー氏は話している。

「多くの顧客が、1週間前に遭遇した問題を解決しようと奮闘しています。不動産部門と保安部門からは、これまでにない緊迫度が伝わってきています」とファラー氏。

この背景には、いまだに米国で暴れ回る新型コロナウイルスとの戦いが続く中、公共スペースで安全なソーシャルディスタンスを確保したいと願う会社従業員の要請がある。

新型コロナは現在の最大のセールスポイントになっているが、Upfront VenturesのMark Suster(マーク・サスター)氏などの投資家は、Densityの技術の価値をもっと早い時期から見抜いていた。「私の投資方針は、次世代のI/Oとしてのコンピュータービジョンを信じる気持ちと、投資家のジレンマつまりインターネットでの大成功はすべてデフレ経済に動かされているという信念を掛け合わせたものだ。現在、人をトラッキングする技術は極めて高価であり、ほとんどが小売り環境で使われている」とサスター氏は、2016年にDensityへの初めての投資を発表した際のブログ記事に書いている(Medium投稿)。「コストが普及を大きく妨げている。そこを大胆に変革しなければならない」。

 

Densityのトラッキング能力を示した2016年のアニメーション(GIPHYより)

最近になってDensityのコンピュータービジョン技術に資金提供を行った投資会社Kleiner Perkinsは、この投資に1年間を費やした。

「彼らが投資家と話を始めるという噂を聞きました」と話すKleiner Perkinsのパートナーの1人で同社の新ディレクターであるIlya Fushman(イリヤ・フッシュマン)氏がファラー氏と会うようになったのは、およそ1年前だ。

フッシュマン氏によれば、Kleinerは不動産市場に興味があり、カードや認証装置もいらない建物の入退館管理のスタートアップであるProxy(プロクシー)に最近行った投資の路線に、Densityが重なったのだという。

私たちのように市場規模で見るならば、不動産と同程度の市場はそうありません」とフッシュマン氏。「また、歴史的にテクノロジーが浸透しにくい市場もあります。ビル管理は、空間利用となるとほとんどが紙と鉛筆で行われる世界です」。

入退館管理も空間利用も、新型コロナ禍以来、多くの企業がもっと効率的にコントロールしたいと考えている分野だ。Densityのような企業への支援は、まさに自然の成り行きだったと彼は話していた。

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(翻訳:金井哲夫)

Amazonが購入品を自ら識別するスマートなショッピングカート「Dash Cart」をテスト

Amazon(アマゾン)は米国時間7月14日、最新のスマートストア技術であるAmazon Dach Cart(ダッシュカート)を披露した。これは食料品スーパー用のショッピングカートで、中に入れた商品を識別し代金を請求するというものだ。このカートはまず、2020年中にカリフォルニア州ウッドランドヒルズに開店予定のAmazonの食料品スーパーに導入される。

今のところこのカートは、カート一杯に商品を積み上げるようないつもの買い物には向かず、ショッピングバッグ1つか2つの少量から中量の買い物に対応するとAmazonは説明している。

これは、カートに入れられた商品の識別に関する技術的な制約によるものだ。

Amazon Dash Cartは、コンピュータービジョンアルゴリズムとセンサーフュージョンの組み合わせでカートの中の商品を識別すると、Amazonは話している。そして店内のDash Cart専用レーンを抜けるとセンサーがカートを識別し、Amazonアカウントに登録したクレジットカードで精算が行われる。

カートを使用するには、まずAmazonアプリで示されるQRコードをカートのリーダーに読み取らせる。そしてカートにショッピングバッグを1つまたは2つセットすれば、買い物を始められる。カートに商品を入れたら、ピーという確認音を待つ。確認に失敗するとカートがオレンジ色に光るので、そのときはやり直す。

センサー技術に加えてこのカートの上面には、自分のAlexa(アレクサ)買い物リストにアクセスできる画面もあり、そこでリストに印を付けたり、現在の合計金額の確認ができる。クーポンのスキャナーも備えているので、買い物をしながらクーポンを使うことも可能だ。

Amazonが提供している動画(非常にざっくりした内容だが)によると、商品のバーコードをカートに見せる必要があるようだ。例えばこの動画には、買い物客が商品をカートに入れる前に、指でバーコードが見えるようにしている場面がある。また、買い物客はバーコードを自分とカートの画面に向けてからカートに入れている。

別の場面では、野菜など「バーコードのない商品の入れ方」も示されている。この場合は買い物客が画面でPLUコードを入力して、重さを確認している。

Amazonのウェブサイトではバーコードの読み取りに関する詳細は説明されていないが、カートが「コンピュータービジョン」と「センサーフュージョン」を利用していることが書かれている。それは、このカートがAmazonの既存の技術を一歩先に進めたものであることを示唆している。「Just Walk Out(そのまま店を出られる)」というのがAmazzon Goストアの売り文句だ。だがJust Walk Outの店舗には、商品の陳列棚に組み込まれたセンサー技術とカメラを搭載したシステムからのデータをコンピュータービジョンで処理し、商品を取ったり戻したりを認識している。それに対してDash Cartは、Amazon Goストアではなく一般の食料品スーパーでのテストが予定されている。

このカートが単なる車輪付きのバーコードリーダーではないことは明らかだが、Amazonはそのバーコードの読み取り技術を完全には明らかにしていない。

この新技術の仕組みついてAmazonに問い合わせたところ、実際にカートは「素早く商品を特定するために、最初にバーコードを探す」のだと教えてくれた。

買い物客の手でバーコードが隠れて読み取れない場合などは、コンピュータービジョンのアルゴリズムが商品の特定を試みるという。

コンビニ程度の広さのAmazon Goストアと違い、Just Walk Out技術を一般の食料品スーパーに持ち込むのは大変な困難がともなう。食料品スーパーの商品点数は多く、すべてを識別できなければならない上に、新しい商品がどんどん入ってくるからだ。

2020年3月にAmazonは、「レジなし」ストアの技術を他の小売店に販売すると発表した。スマートカートの技術がテストを重ね改良されたなら、この技術にも同様の計画が進められるかも知れない。そこを聞いてみたが、Amazonは将来の計画については何も話さなかった。

画像クレジット:Amazon

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(翻訳:金井哲夫)

ZOZO研究所のファッションコーデ関連論文がコンピュータービジョンの国際会議ECCVで採択

ZOZOテクノロジーズ ZOZO研究所 ECCV 深層集合マッチング

ZOZOテクノロジーズの研究開発組織「ZOZO研究所」は7月13日、同研究員らが執筆した論文「Exchangeable Deep Neural Networks for Set-to-Set Matching and Learning」(置換不変ニューラルネットワークによる深層集合マッチング)が、コンピュータービジョン分野における世界3大国際会議のひとつ「European Conference on Computer Vision(ECCV)2020」に採択されたと発表した。ZOZO研究所は、8月24日~27日にオンライン開催のECCV 2020本会議でポスター発表(プレゼン・ディスカッション)を行う。

この研究成果は、同研究員の斎藤侑輝氏、中村拓磨氏、共同研究者・和歌山大学講師の八谷大岳氏、統計数理研究所・総合研究大学院大学教授 福水健次氏(斎藤の博士課程指導教員)によるもの。

ECCVは、CVPR(Computer Vision and Pattern Recognition)・ICCV(International Conference of Computer Vision)と並ぶ国際会議(トップカンファレンス)。隔年ごとに開催されており、第16回目となる今回は、5025本の投稿から1361本の論文が採択された。

今回採択の論文では、ファッションアイテムの推薦から1歩先んじて、ファッションコーディネートの推薦について研究。例えば、ユーザーが持つアイテム群(下図左)と推薦候補のアイテム群(下図右)が複数あるとき、どのアイテム群がユーザーのアイテム群に一番マッチし、2つの群を合わせたときにコーディネートとして適切かを考えるものとしている。

ZOZOテクノロジーズ ZOZO研究所 ECCV 深層集合マッチング

それぞれのアイテム群は集合として表現でき、アイテム群のマッチングは集合マッチングの問題設定として定式化できる。さらに、このように異なるアイテムカテゴリーを持つ集合同士のマッチングには、強力な特徴学習の仕組みとなる深層学習が必要になるという。しかし、集合マッチングと深層学習を組み合わせた研究は、ほとんど行われてこなかった。

そこで同論文では、独自のニューラルネットワークアーキテクチャ、効率的な学習法、学習データ作成手段を提案。特に集合マッチングには「集合内のアイテムや集合同士を入れ替えても出力が不変であること」と「集合間インタラクションに基づく特徴変換」とを備えた手法が重要であると提起。それらを満たすアーキテクチャを考案した。

実験では、各アイテムの画像特徴量を抽出する畳み込みニューラルネットワークと、特徴量の集合を扱う提案手法をEnd-to-endに学習し、マッチする集合の候補を正しく選べるかを調査。その結果、提案手法は比較手法(Set TransformerとBERT)よりも精度が高いことが明らかになり、上述の特性が同論文の提唱する集合マッチングにおいて重要であると確認した。提案手法や実験の詳細については、同社技術ブログ「ZOZO Technologies TECH BLOG」でも、一部紹介している。

論文では、集合マッチングのベースとなる特性を数理的に捉え、集合データに適したアーキテクチャを考案。提案手法は様々な分野での集合マッチングのベースラインとなる可能性を秘めているため、今後さらなる発展を目指すという。

また、現在は研究段階であるものの、具体的にどのようなユースケースに導入し、ユーザーエクスペリエンス向上につなげられるかも検証しており、今後も研究開発に努めるとしている。

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AIがカメラ映像から密集度と群衆人数をリアルタイム解析、Elixが新型コロナ対策として開発

Elix(エリックス)は6月4日、群衆人数や人物同士の密集度合いの計測を可能とするAIソリューションを発表した。本日より、法人や自治体などを対象に試験提供を開始する。

同ソリューションは、新型コロナウイルス(COVID-19)感染防止対策の一環として開発されたもので、カメラが捉えた映像内の人物の数や位置情報を把握することで、群衆の検知、人物同士の密集度をリアルタイムで推定する。必要に応じてマスクの有無の検知など、導入企業に併せたカスタマイズも可能とのこと。同社は、ショッピングモールなどの商業施設やイベント会場、公共施設、オフィスビル、工場などでの利用を想定している。

同社代表の結城伸哉氏はニュースリリース内で「有効なワクチンが開発され、世界中の人々に行き渡るまでには 年単位での時間がかかると考えられます。この間、感染者数を抑える上でおそらく最も有効な手段はソーシャルディスタンシングです」と語る。「これ以上経済的損失を拡大させないためにも、ソーシャルディスタンシングを行いつつ経済活動を続けていくことが重要であり、少しでもその役に立てればという想いでこのプロダクトを開発いたしました」と続ける。

Elixは、AIやディープラーニングの技術を擁する2016年11月設立のスタートアップ。これまで、AIによる創薬や材料開発、コンピュータービジョン(画像認識)に注力した事業を展開。そのほか、自動運転やADAS(先進運転支援システム)向けのモデル開発、大企業の研究開発部門などの向けたコンサルティング、モデル開発・改良、モデルのライセンス提供なども行っている。

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