熟成期間が長いハードチーズを動物性原料を使わずに作るBetter Dairyが約25.3億円を調達

Better Dairyが同社のハードチーズ製品の溶け具合をテストする様子(画像クレジット:Better Dairy)

フードテック企業のBetter Dairy(ベターデイリー)は、シリーズAで2200万ドル(約25億3000万円)の資金を確保し、熟成期間の長いハードチーズのテスト段階に向け駒を進めた。

Jevan Nagarajah(ジェヴァン・ナガラジャ)氏が2019年に設立した英国を拠点とする同社は、精密発酵を用いた動物性の原料を使わないチーズを開発するR&D段階を続けている。我々がナガラジャ氏とBetter Dairyと最初に出会ったのは、同社がHappiness Capitalが主導するラウンドで160万ポンド(約2億4600万円)のシード資金を調達した2020年にさかのぼる。

当時、彼は動物を使った酪農が「非常に持続不可能」であり、わずか1リットルの牛乳を生産するために650リットルの水を必要とすることや、そのプロセスの結果、年間17億トン以上のCO2が大気中に放出されていることを説明してくれた。

代わりに、Better Dairyは精密発酵を利用して、従来の乳製品と分子的に同じ製品を製造している、とナガラジャ氏は語った。このプロセスはビールの醸造に似ているが、最終的に得られるのは乳製品だ。

他のフードテック企業がモッツァレラチーズや乳清タンパクのような柔らかいチーズに取り組んでいるのに対し、Better Dailyはより持続可能な方法で、より複雑なプロセスであるハードチーズをターゲットにしている。

画像クレジット:Better Dairy

「ハードチーズには、動物性原料を使わないステーキを作ろうとするのと同じような制限があると考えています」とナガラジャ氏。「製薬業界向けのタンパク質の製造に30年の専門知識を持つ最高科学責任者を含むチームを作ることで、私たちは複雑なことを意識的に行えると気づいたのです」。

Happiness Capitalは、今回はRedAlpineとVorwerkとの共同リードとして、シリーズAを再び主導した。Manta Ray、Acequia Capital、Stray Dog Capitalも今回のラウンドに参加した。

乳製品分野を狙っている企業は、Better Dairyではない。Clara Foods、NotCoClimax FoodsPerfect Dayといった企業が、動物性原料不使用のチーズや乳製品に取り組んでいる。しかしナガラジャ氏は、精密発酵技術の向上を目指した今回の資金調達によって、同社が競合他社に先んじ、この分野でハードチーズを発売する最初のプレーヤーとなることができると考えている。

同社はこの資金によって従業員を8人から35人に増やし、イーストロンドンにある6千平方フィート(約557 m²)の新しい研究所とオフィススペースに投資していくという。

Better Dairyは、食感とさらには熟成について科学的に解明し、すべての構成要素を1つの製品にまとめ、賞味期限を設定できるようにすることを目指している。ナガラジャ氏は、精密発酵プロセスにより、今後18カ月ほどで単位あたりの経済性、つまり同様のクオリティの手作りチーズと同等の価格を達成できると楽観視している。

「当社のサイエンスをアップグレードするには、適切なスペースと設備が必要です」と彼は付け加えた。「動物性原料を使用せず、持続可能であることだけでなく、おいしさも重要です。味が改善すれば、(非動物性の製品を選ぶのは)人々にとって簡単な決断になり、成功の指標となります。正しい方法で製品を作ることにはメリットがあります。でなければ、(植物性製品はまずいと思う観念など)すべてを巻き戻すのに長年かかってしまうかもしれませんから」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Den Nakano)

「動物なし」のモッツァレラチーズの商品化を進めるNew Cultureが約28億円を獲得

Allied Market Research(アライド・マーケット・リサーチ)によると、チェダーやモッツァレラの販売に牽引され、米国のチーズ市場だけでも2019年には343億ドル(約3兆9300万円)、2027年には455億ドル(約5兆2200万円)に達し、年平均成長率は5.25%になると予測されている。

それに比べて、ヴィーガンチーズの業界は小さく、同社の調査によると、2019年の市場規模は約12億ドル(約1370億円)、2027年には44億ドル(約5050億円)に達すると予測されている。

しかし、このような大きなギャップにもかかわらず、シンジケートの投資家たちの「牛がいない牛のチーズ」を販売するNew Culture(ニュー・カルチャー)への、シリーズAでの2500万ドル(約28億6900万円)の資金投入は止まらなかった。それどころか、投資家たちは、ベイエリアを拠点とする設立3年目のこのスタートアップ企業が、動物を使用しないモッツァレラを通じて、市場を大きく成長させることができると考えている。投資家のSteve Jurvetson(スティーブ・ジュルベッソン)氏によれば、味も香りも伸び方もミルクチーズのようであり、彼が「これまでのところ、非常に不愉快だ」と表現したほとんどのヴィーガンチーズとは一線を画す。

ジュルベッソン氏によると、不足している成分は牛乳のカゼインタンパク質で、これまでは牛乳からしか摂取できなかったという。一方、New Cultureでは、精密な発酵プロセスにより、カゼインタンパク質を大量に生産しているという。VegNewsの記事に説明されているように、New Cultureは、巨大な発酵タンクを使って、糖液を与えた後に目的のタンパク質(αカゼイン、κカゼイン、βカゼイン)を効果的に発生させるよう微生物にDNA配列を注入しているそうだ。

その後、カゼインを回収し、水、植物性油脂、ビタミン、ミネラルなどと混ぜ合わせてモッツァレラを作る。

コレステロールや乳糖が含まれていないため、より健康的な製品ができあがる。また、環境にも優しい。実際、乳製品を使ったチーズを1oz(28.35g)生産するのに必要な水の量は56gal(約211L)といわれている。(土地の使用量もはるかに少なくて済む)。

なお、New Cultureのモッツァレラは近所の食料品店では販売されていない。まだいまのところは。計画では、まず2022年から全国のピザ屋にこのチーズを卸すことになっている。

ニュージーランド出身で、遺伝学と微生物学を学び、以前は教育関連のレビューサイトを立ち上げて販売していたNew Cultureの共同設立者兼CEOのMatt Gibson(マット・ギブソン)氏は、最終的には、ヨーグルトやアイスクリーム、さらには牛乳も作ることができるだろうと述べている。しかし、当面はモッツァレラが中心であることを強調した。

New Cultureのラウンドは、Ahren Innovation Capital(アーレン・イノベーション・キャピタル)とCPT Capital(CPTキャピタル)がリードした。また、ADM Ventures(ADMベンチャーズ)、Be8 Ventures(ビーエイト・ベンチャーズ)、S2G Ventures(S2Gベンチャーズ)、Marinya Capital(マリンヤ・キャピタル)、そしてジュルベッソン氏とパートナーのMaryanna Saenko(マリアンナ・サエンコ)が運営するFuture Ventures(フューチャー・ベンチャーズ)が新たに参加した。

今回の資金調達には、SOSVのIndieBioプログラム、Bee Partners(ビー・パートナーズ)、Mayfield(メイフィールド)、Bluestein Ventures(ブルースタイン・ベンチャーズ)、Kraft Heinz(クラフト・ハインツ)のコーポレートベンチャー部門であるEvolv Ventures(エボルブ・ベンチャーズ)など、以前からの支援者も参加している。

画像クレジット:New Culture

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(文:Connie Loizos、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Gooder Foodsが約7.3億円を調達、大人のマカロニ&チーズ「Goodles」を発売開始

親会社であるGooder Foods(グッダー・フーズ)が44億ドル(約5000億円)規模の乾麺カテゴリーでニッチを開拓するために640万ドル(約7億3400万円)を調達した後の米国時間11月16日、マカロニ&チーズの新ブランド「Goodles(グードルズ)」が発売を開始した。

Gooder Foodsの共同創業者兼CEOであるJennifer Zeszut(ジェニファー・ゼスツット)氏は、TechCrunchの取材に対し、この食品はコンフォートフードの上位に位置しているが、大人の59%が毎週少なくとも1品の麺料理を食べているにもかかわらず、何十年もの間、子ども向けに特化した広告が出されてきたと語っている。

「ここには製品とブランドの革新もあります。重要なのは、既存の競合他社がマカロニ&チーズを子ども向けと考えているのに対し、我々の経験とデータでは誰もがマカロニ&チーズを好きだと示しているということです。製品の差別化や、大人をターゲットにした他のフレーバーも考えています。すべてを壊していく楽しい機会となっています」と彼女は付け加えた。

Annie’s(アニーズ)の共同創業者で元社長のDeb Churchill Luster(デブ・チャーチル・ラスター)氏、元Kraft(クラフト)ブランドの幹部でEarle & Co(アール・アンド・カンパニー)の創業者であり、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の教授でもあるPaul Earle(ポール・アール)氏、そして女優のGal Gadot(ガル・ガドット)など、豪華な創業チームを集め、ゼスツット氏が4度目の指揮を執ることとなった。ゼスツット氏とガドット氏は3年前に出会い、ガドット氏のマカロニ&チーズ好きを通して意気投合した。ゼスツット氏が会社を設立する際に、彼女が参加したいと連絡してきたという。

Goodlesは、KraftとAnnie’sというこの分野の2大老舗企業の後を受けて、味と栄養の両方に優れた健康的な代替品を提供する。Goodlesは高タンパク、高繊維で、21種類の有機野菜の栄養素を含んでいる。

「1つは83年前、もう1つは30年以上前のものです」とゼスツット氏。「あれから食品は飛躍的に良くなっています。マカロニ&チーズはとても普遍的なものですが、食べ物をパフォーマンスとして考え、体に入れるものを気にする人が増えました。これまでイノベーションがなかったので、私たちはこのカテゴリーを見直すことにしたのです」。

通常であれば、企業は何度も味見テストをするところだが、パンデミックの影響で、Gooder Foodsはオンラインコミュニティを作り、何千もの小袋の麺を発送して、人々に試してもらう方法をとった。実際、同社は最良のものに決めるのに1000種類以上もの麺を開発した。全員が1000種類すべてを試したわけではないが、マスブランドを構築するためには味が重要だったと、彼女は付け加えている。

画像クレジット:Gooder Foods

92%の人がGoodlesに乗り換えるという調査結果もあり、ゼスツット氏は「私たちは何か大きなものを手に入れたと考えており、このことを箱の裏に印刷しています」と語り、これはこれまでの食品の中では最高数値だと考えている。

同ブランドは、カチョエペペにインスパイアされたマカロニ「Mover & Shaker」、ゼスツット氏がマカロニ&チーズのオリジナルフレーバーに近いと考える「Cheddy Mac」、Annie’sに真っ向勝負を挑む「Shella Good」、そしてアシアゴとクリーミーなパルメザンをブレンドした「Twist My Parm」の4つの品目で本日発売される。

今回の640万ドル(約7億3400万円)の投資は、シードラウンドとコンバーチブルノートを組み合わせたもので、消費者への直接販売の開始、在庫、ブランディング、マーケティングに充てられる。DTC(D2C)モデルに重点を置いているが、ゼスツット氏は他の販路での全米販売も計画している。

今回の投資にはSpringdale Ventures(スプリングデール・ベンチャーズ)、Willow Growth Partners(ウィロー・グロース・パートナーズ)、Third Craft(サード・クラフト)、Gingerbread Capital(ジンジャーブレッド・キャピタル)、Purple Arch Ventures(パープル・アーチ・ベンチャーズ)、First Course Capital(ファースト・コース・キャピタル)などの投資家や、個人投資家のグループが参加している。

アーリーステージの消費者向け投資会社であるSpringdale Venturesの共同設立者兼ジェネラルパートナーのGenevieve Gilbreath(ジュヌビエーブ・ギルブレス)氏は、同社は通常、Gooder Foodsのような収益化前の企業には投資しないが、この会社は製品市場に適合しているという点で珍しいと感じ、パンデミックの際に同社が行った、何千人もの味覚テスト参加者を生んだコミュニティの構築に好感を持ったという。

フードテックの動向について、セルラーミートのような技術的な分野も興味深いが、ギルブレス氏がより大きなインパクトを与えると見ているのは、栄養価と味が向上した本物の食品を使ったブランドだと述べている。まさにそれが、Goodlesが今行っていることだと彼女はいう。

「リーダーとして、ジェンの粘り強さ、情熱、経験、そしてチームを率いる能力は、非常によく伝わってきました。本当に感銘を受けたのは、彼女が市場や消費者のニーズを調査し、データを追跡していることでした」とギルブレス氏は付け加えている。

画像クレジット:Gooder Foods

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

チーズを愛するStockeld Dreamery、豆類からチーズを作るために約22億円調達

チーズは一度ハマると虜になる食べ物の1つだ。また、ミルク以外のものから作るのが最も難しい食べ物の1つでもある。Stockeld Dreamery(ストッケルド・ドリーマリー)は、その難題に挑戦しただけでなく、その成果として製品を生み出した。

9月上旬、ストックホルムを拠点とする同社は、Astanor Ventures(アスタノール・ベンチャーズ)とNorthzone(ノースゾーン)が共同で実施したシリーズAラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達したことを発表した。創業者のSorosh Tavakoli(ソロシュ・トヴァコリ)氏がTechCrunchに語ったところによると、このラウンドは「植物由来の代替品を扱う欧州のスタートアップとしては過去最大のシリーズAラウンド」であるとのことで、Gullspång Re:food(グルスポング・リフード)、Eurazeo(ユーラゼオ)、Norrsken VC(ノルフェンVC)、Edastra(エダストラ)、Trellis Road(トレリスロード)、およびエンジェル投資家のDavid Frenkiel(デイヴィド・フレンキエル)氏とAlexander Ljung(アレキサンダー・リュング)氏が参加した。

トヴァコリ氏は以前、動画広告のスタートアップ「Videoplaza(ビデオプラザ)」を設立し、2014年にOoyala(ウーヤラ)に売却した。次のプロジェクトを探していた同氏は、自己分析を重ねた結果、次の会社では環境に好影響を与えるようなことをしたいと考えていたという。そして、行き着いたのが、食の世界、特に植物性食品の世界だ。

「動物に頼らないことは、工場式農場はもちろん、土地、水、温室効果ガスにおいて大きなメリットがある」と同氏はTechCrunchに語る。そして「チーズの影響が最も大きいことが分かった。しかし、人々は食生活を変えたいと思っていても、いざ代替品を試してみると、それが気に入らない」と続ける。

そこでトヴァコリ氏は、科学に精通する共同創業者を探し、バイオテクノロジーと食品科学をバックグラウンドに持つAnja Leissner(アンジャ・ライスナー)氏と出会った。そして2019年、両氏はストッケルドをスタートさせた。

ノースゾーンのジェネラルパートナーでありビデオプラザへの出資者でもあったPär-Jörgen Pärson(パー・ヨルゲン・パーソン)氏は、ストッケルド・ドリーマリーは「最高の技術と最高の科学がペアになった」結果であり、トヴァコリ氏とライスナー氏は「科学的な知識と未来のビジョンに基づく商業的なアプリケーションを提案しており、ユニークではないにしても、フードテックの分野では非常に珍しい存在だ」とメールで述べている。

同社の最初の製品であるStockeld Chunk(ストッケルド・チャンク)が5月に発売されたが、そこにはいくつもの挑戦や試練があった。トヴァコリ氏によると、製品といえる「チーズ」にたどり着くまでにチームは1000回以上のテストを繰り返し、納得できる配合を見つけ出したという。

植物由来のミルクのカテゴリーは、そのほとんどが成功しているが、それは必ずしも植物性だからという理由ではなく、美味しいからだと同氏は説明する。肉のカテゴリーでもイノベーションは進んでいるが、チーズはまだ難しいようだ。

「通常、植物由来のチーズは、でんぷんとココナッツオイルから作られており、その匂いやゴムのような口当たりでは食を楽しむことはできないだろう。それに、タンパク質も含まれていない」とトヴァコリ氏は付け加える。

ストッケルドは、タンパク質を主成分としたいと考えていたため、チャンクは発酵させた豆類(今回はエンドウ豆とそら豆)を使用している。その結果、フェタチーズのような見た目と食感を実現したことに加え、タンパク質を13%含んでいる。

チャンクは当初、スウェーデンのレストランやシェフを対象に発売された。その他にも、塗るチーズやとろけるチーズなどの製品を開発中であり、トヴァコリ氏は今後1年以内に市場に投入したいとしている。とろけるチーズは、作るのが最も難しいチーズの1つだが、成功すればピザの材料としての可能性が広がると同氏はいう。

今回のラウンドを含め、ストッケルドはこれまでに2400万ドル(約26億円)を超える資金を調達している。4人でスタートした同社は、現在23人にまで成長しており、トヴァコリ氏は来年末までにそれを50人にする意向だ。

今回の資金調達により、同社は研究開発に注力するとして、パイロットプラントを建設している。また、来年にはストックホルムの新本社ビルに移転する予定だ。さらに同社は、スウェーデン国外への展開や米国への進出も視野に入れている。

トヴァコリ氏は「当社には、当社がやろうとしていることを理解してくれる意欲的な投資家がいる。大きく考え、それに応じて計画を立てるチャンスがある。当社は、豆類をタンパク質に利用するという意味では、独自のカテゴリーに属していると思う。豆類を発酵させた第3のカテゴリーのようなもので、これをどこまで進化させることができるか、とても楽しみにしている」と述べる。

アスタノール・ベンチャーズの共同設立者兼パートナーのEric Archambeau(エリック・アーシャンボー)氏も、そのような投資家の1人だ。同氏もトヴァコリ氏とは前の会社で知り合い「植物由来の次世代のチーズ」を作るというアイデアを聞かされたとき、興味を持ったとメールで語っている。

「ストッケルドのチームは、設立当初から、本当に革命的でおいしい製品を作ろうとする勤勉さ、決断力、コミットメントを持ち、それに感銘を受けてきた。彼らは型にはまらない製品を作り、世界のチーズ業界の新しい未来に向けて道を切り開いたのだ」とアーシャンボー氏は語った。

画像クレジット:Stockeld Dreamery

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)