Beyond Next Venturesの共同創業プログラム「APOLLO」から起業第1号、医療系スタートアップALY誕生

Beyond Next Venturesの共同創業プログラム「APOLLO」から起業第1号、医療系スタートアップALY誕生

ベンチャーキャピタル・アクセラレーターのBeyond Next Ventures(BNV)は3月29日、起業家候補人材とともに革新的な事業創造に挑む共同創業プログラム「APOLLO」において、医療系ディープテック企業ALY(アリー)が第1期参加者初の会社登記(2021年12月)を実現させたと発表した。同時に、第2期の募集を開始した。

ALYは、「データ技術で医療分野に化学反応を起こし、前へ進める」ことをミッションとする医療系スタートアップ。「データ分析で医療分野に良いインパクトを与えられる事業」を目指している。

共同創業プログラム「APOLLO」

APOLLOは、ディープテック領域に特化した起業家を対象に、構想段階からともに事業を練り上げ、スタートアップの起業を目指す創業プログラム。特定の事業テーマを選んで共創するという特徴がある。APOLLOが提供するのは、創業資金と成長資金、BNVの研究領域ネットワークを通じた事業に必要な研究シーズの探索や連携、事業構築と成長支援、目標領域に精通する投資家とともにビジネスモデルの策定や創業メンバーの採用などを行う事業構築と成長支援、起業家コミュニティーへの参加となっている。例えばALYでは、創業者・代表取締役の中澤公貴氏が、医療分野に精通するBNV執行役員の橋爪克弥氏と手を組み、創業に繋げている。

現在APOLLOは第2期の募集を行っている。対象となる事業テーマは、医療デジタルイノベーション、医療系IoT、バイオスティミュラント、カーボンオフセット、微生物/発酵、宇宙バイオテック、生殖医療/ファミリーヘルス、ベビーテック/チャイルドテック、インド市場となっている。これらの中で、少子高齢化、健康問題、環境問題などの社会課題の解決を目指す起業家を募集する。

対象者としては、強い挑戦心と起業家精神の持ち主、インパクトの大きな課題解決に取り組む強い意志の持ち主、スタートアップやスタートアップ的環境で新規事業に関わったことのある人を挙げているが、とりわけ、グローバル市場に挑戦する志向性がある人、特定の産業または事業モデルに強い興味と専門性がある人、起業経験がある人、医師、MBA、海外駐在経験者は歓迎するとしている。

説明会は下記のとおり領域ごとに開催される。

  • アグリ・フード領域(バイオスティミュラント、カーボンオフセット、微生物/発酵など)
    ・開催日:4月19日19時~20時
    ・詳細および申し込み: https://apollo20220419.peatix.com/view
  • 医療・ヘルスケア領域(IoMT、医療DXなど)
    ・開催日:4月27日19時~20時
    ・詳細および申し込み:http://ptix.at/Q4428G
  • バイオ領域(宇宙バイオテック、生殖医療/ファミリーヘルス、ベビーテック/チャイルドテックなど)
    ・問い合わせフォーム(https://talent.beyondnextventures.com/apollo)より連絡

近畿大学とインキュベントファンドが包括連携協定、起業やイノベーション創出・社会問題解決に挑戦できる人材養成を支援

近畿大学インキュベイトファンドは3月25日、起業やイノベーション創出、社会問題解決などに挑戦できる人材の養成や学術振興、世界ならびに地域社会の発展や産業振興への寄与を目的として、包括連携協定を締結したと発表した。

近畿大学は、起業家育成やアントレプレナーシップを持つ人材養成を目的として、大学院に新たな修士課程「実学社会起業イノベーション学位プログラム」の2023年4月設置を構想中という。今回の協定では、同プログラムを中心とするアントレプレナーシップの人材養成、大学発スタートアップ・エコシステムの形成と、それらの持続的発展に向けた組織的な連携強化を図る。これにより、大学院生を中心とするスタートアップを投資家目線の指導で直接的に支援するとともに、将来の有望企業の早期発掘を目指す。

具体的な取り組み内容は以下の通り。

  • 講師の紹介:起業家・若手実務家を招いたオムニバス講義など実施
  • 長期インターンシップ先の紹介:スタートアップ起業等での2カ月以上のインターンシップの実施
  • 大学院生のスポットメンターの紹介:文系・理系の教員および起業家の計3名による複数指導体制の構築
  • インキュベイトファンド主催プログラムへの参加:アクセラレータプログラム・ピッチコンテストへの学生の参加
  • 大学発ベンチャーの起業支援:ディープテックスタートアップのシード期支援

インキュベイトファンドは、創業前後のシードステージに特化したベンチャーキャピタル(VC)。2010年の創業以来、総額850億円以上の資金を運用し、関連ファンドを通じて、520社以上のスタートアップへの投資活動を行っている。投資分野は宇宙、医療、エンタメ、AI、ロボティクスなど多岐に渡り、「Zero to Impact」をモットーに、起業家とともに「Day Zero」から次世代産業の創造に取り組んでいる。より創業期に近い起業家との接点としてシードアクセラレーションプログラム「Incubate Camp」も運営。スタートアップの創業・飛躍の場として、またベンチャーキャピタリストのコアコミュニティの場として提供している。

社会課題解決ビジネス創出プログラム「SENDAI NEW PUBLIC」デモデーが3月25日に開催

宮城県仙台市とベンチャーキャピタル(VC)のサムライインキュベートは3月15日、社会課題解決ビジネス創出プログラム「SENDAI NEW PUBLIC」のデモデーをオンライン開催すると発表した。開催日時は3月25日午前10時から午後1時(予定)。参加費は無料。プログラム採択者7名が事業事案を発表した後、審査の上優秀者には賞が贈られる。

SENDAI NEW PUBLICは、仙台市が取り組む「起業家を生み育てるエコシステム構築」の一環として、SDGsの達成につながる行政課題や地域課題の解決を目標に、採択された起業家やスタートアップの事業案の具現化を支援するプログラムだ。技術シーズを持つ研究者やスタートアップ企業について、「事業計画のブラッシュアップ」や「事業コンセプトの創出」「ニーズ検証」を支援するという。

またデモデー開催に合わせ、科学技術振興機構(JST)が運営する社会還元加速プログラム(SCORE)の一環として、事業アイデアのレクチャー、ワークショップ、相談会を行う「事業化人材発掘キャラバン」も実施される(こちらはオフライン開催)。

「SENDAI NEW PUBLIC」デモデー概要

  • 開催日:2022年3月25日
  • 開催時間:10時から13時(予定)
  • 開催場所:オンライン
  • 参加対象者:採択者の事業アイデアや技術に関心のある大手企業、中小企業、VC、自治体、大学の研究者
  • 参加費:無料
  • 申し込みhttps://snp2022.peatix.com/

成果発表者7名と発表テーマ(登壇予定順)

  • 菅野恵美氏
    所属:東北大学大学院 医学系研究科看護アセスメント学分野准教授
    発表内容:ナノ型乳酸菌を用いた生理痛緩和製品の開発
  • 酒井正夫氏
    所属:ゼロワ取締役CTO / 東北大学データ科学・AI教育研究センター准教授
    発表内容:地域の「活性化」と「スマート化」のための市民アクティビティ「視える化」サービス
  • 関口雄介氏
    所属:東北大学病院 理学療法士
    発表内容:リハビリテーションの質向上を目指す歩行診断AI
  • 金子萌氏
    所属:想ひ人代表取締役
    発表内容:ケアラー負荷軽減サービス
  • 松尾歩氏
    所属:東北大学大学院 農学研究科助教
    発表内容:DNA解析を活用した食品のトレーサビリティシステムの構築
  • 伊藤暁彦氏
    所属:横浜国立大学大学院環境情報研究院准教授
    発表内容:レーザーCVD技術を活用した薄膜セラミックス単結晶成長
  • 萩原嘉廣氏
    所属:東北大学大学院医学系研究科スポーツ・運動機能再建医学寄附講座准教授
    発表内容:カスタム型骨折用プレート製造

「事業化人材発掘キャラバン」概要

  • 開催日:2022年3月25日
  • 開催時間:13時30分~17時30分
  • 開催場所:スマートイノベーションラボ仙台
    (仙台市青葉区一番町2-8-1 NTT青葉通ビル東棟1F)
  • 参加対象者:自身の技術や研究成果を社会に役立てたい方
  • 参加費:無料
  • 応募ページ:https://snp-0325-1330.peatix.com/

アカデミアの技術・研究成果の事業化を目指しサムライインキュベートが東北限定「事業化人材発掘大学キャラバン」開催

サムライインキュベートは1月27日、アカデミア発の事業化人材発掘や支援を目的として、東北エリアにある4大学の5カ所を東北エリア限定「事業化人材発掘大学キャラバン」として訪問することを発表した。各大学にて事業アイデアのレクチャー、ワークショップ、相談会を開催する。

東北エリア限定「事業化人材発掘大学キャラバン」開催スケジュール日程

  • 2月28日:新潟県 長岡技術科学大学
  • 3月7日:宮城県 東北大学(青葉山キャンパス)
  • 3月8日:宮城県 東北大学(片平キャンパス)
  • 3月9日:岩手県 岩手大学
  • 3月11日:青森県 弘前大学

同プログラムは、東北大学を主管機関とする「東北地域 大学発ベンチャー共創プラットフォーム」が採択された「JST社会還元加速プログラム(SCORE)事業の一環。イノベーションやスタートアップの支援を行ってきたサムライインキュベートが、東北4大学5エリアを訪問。アカデミアで研究開発に取り組んできた人々を対象に、事業アイデアの考え方レクチャーやワークショップ、個別相談会を実施する。自身の技術や研究成果を「社会実装したいものの方法がわからない」といった悩みなども含め、各々に応じた壁打ち相談が可能という。

サムライインキュベートは、これまでのイノベーションがソフトウェアドリブンによる情報革新だったものに対し、高度化によりデジタルとアナログの融合が求められるようになり、研究開発のシーズを基にした「ディープテック」が今後のイノベーションには不可欠だと考えているという。

また、ディープテックは仕組みを抜本的に変えて課題解決を図るため、研究と試行を積み重ねる必要があると指摘。その際、地方が「事業開発の場」として価値を発揮し、地方でのイノベーションエコシステム拡大を図ることが必要としている。さらに、地方で起業するスタートアップが増えることでイノベーションエコシステムの構築に寄与するため、本質的な社会課題解決を目指すには、地方で研究開発型のスタートアップを起こすことが重要だと捉えているという。

ディープテックに特化した欧州のファンド「Outsized Ventures」が約77.7億円のファーストクローズを完了

いわゆる「ディープテック」ベンチャーキャピタルは、ここ数年急速に関心を集めており新たなファンドがいくつも立ち上げられている。その多くがヨーロッパ市場に焦点を当てている。そこは多くの著名大学があるおかげもあり、才能とイノベーションの宝庫だからだ。

その1つで、ヨーロッパの新しいディープテックに特化したファンドであるOutsized Ventures(アウトサイズド・ベンチャーズ)は、6000万ユーロ(約77億7000万円)の初ファンドのファーストクローズを完了した。

新ファンドは「シード+」、すなわちシードラウンド直後あるいはシリーズA直前のスタートアップに焦点を合わせている。約25社に投資するのが目標だ。

Outsizedは2021年3月、Rodrigo Mallo(ロドリゴ・マロ)氏、Isabel Fox(イザベル・フォックス)氏、Lomax Ward(ロマックス・ウォード)氏(元Luminous VenturesおよびSOSV)の3人が設立した。目標は「科学とテクノロジーの限界を広げて健康、地球、および社会の未来に関わる世界最大の課題を解決するファウンダーたちを支援する」ことだ。

「私たちは以前から、優れた企業の次の波は、複数の科学的専門分野が交わるところに生まれ、ヨーロッパはその先端にいると信じてきました」とOutsized Venturesのゼネラルパートナー、イザベル・フォックス氏はコメントした。

同ファンドのリミテッド・パートナー(LP)には、富裕家族、エンジェル投資家、ヨーロッパのファウンダー、国際投資家、および経験豊富のテック・スタートアップ支援者などがいる。

Outsized Venturesのゼネラルパートナー、ロドリゴ・マロ氏が次のように付け加えた。「当社は私たちと同じくらい熱意をもつLPと、私たちが支援するファウンダーからなるすばらしいコミュニティを作りました。そこでは突飛なアイデアを巨大な企業へと発展させて、私たち全員にとって安全で清潔で健康で公平な世界を作ることができます」。

LocalGlobe(ローカルグローブ)の共同ファウンダーでOutsizedの新ファンドのリミテッド・パートナーの1人、Saul Klein(ソール・クライン)氏は次のように語った。「もっと多くの女性が科学とイノベーションのファウンダーや出資者になるよう奨励するためには、まだやるべきことがたくさんあります。この旅でIzzy(フォックス氏)を手助けして、ディープテックと先端技術の多様化をすすめる重要な取り組みで一緒に働けることを大変喜んでいます。私たちが力を合わせることで、イノベーションと科学をもっと多様でインクルーシブにすることに役立ちながら、大きなリターンを生み出すことができます」。

クライン氏は、父のRobin(ロビン)クライン氏とともに、Basecamp(ベースキャンプ)と呼ばれるシードステージファンドとマイクロファンドを支援するLPファンドを通じて投資した。ちなみに同じ名前の有名なスタートアップとは無関係だ。

Lux Capital(ラックス・キャピタル)の共同ファウンダーベンチャーパートナー、ヘルスケア起業家でOutsizedのシニアアドバイザーでLPのRobert Paull(ロバート・ポール)氏は次のように語った。「Outsized Venturesには、ヨーロッパで次の偉大なベンチャーキャピタルになる素養があります。私は彼らが会社を立ち上げ、投資先企業を支援する手助けができることを大変喜んでいます、米国市場への拡大は特にそうです」。

ファウンダーは、アーリーステージでは特に、誰をキャップテーブルに載せるか(株主にするか)の選択を迫られることがよくある。VCは往々にして、この大切なキャップテーブルに入ろうとして無茶な約束をする。そこでOutsizedは、「Equity Back Guarantee」と呼ばれるものを導入した。これは、もしOutsized Ventersが約束していたのと違う何かになったとき、ファウンダーは3カ月以内に現金を返して株式を取り戻せるというものだ。

Outsized Venturesのゼネラルパートナー、ロマックス・ウォード氏はこう話す。「何かを売り間違えたら返金できます。これは商品でも食事でも休暇でもそうです。ベンチャー・キャピタリストもそうあるべきです。要するに、ファウンダーが持っている一番大切なものは株式であり、もし私たちができない約束をして株を買ったのなら、ファウンダーは買い戻すことができます。それがフェアというものです」。

興味深いイノベーションであることは間違いない。Outsizedがこのメッセージを十分大きな声で届けられれば、何人かのファウンダーを振り向かせられるかもしれない。

画像クレジット:outsized.vc

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Walden Catalystがディープテック系スタートアップに投資する約628億円のファンドを設立

Walden Catalystの創業者(左)リップ・ブー・タン氏と(右)ヨン・ソーン氏。

過去20年間、ディープテック(世界を変えるようなビジネスを構築するための科学技術関連のブレークスルー)からの資本の逃避が続いていると、Walden Catalyst(ウォールデン・カタリスト)は述べている。このベンチャーキャピタル(VC)は、データを「燃料」、AIを「エンジン」として、それらが人々の生活、仕事、遊び方を変革する能力を信じている。

Lip-Bu Tan(リップ・ブー・タン)氏とYoung Sohn(ヨン・ソーン)氏は、アーリーステージのディープテック企業、具体的にはビッグデータ、AI、半導体、クラウド、デジタルバイオロジーなどに投資するためにこのファンドを設立したと、Walden Catalystのマネージングパートナーであるソーン氏はTechCrunchに語っている。

サンフランシスコを拠点とするこのVCは、米国時間11月1日、申し込み過多となった5億5000万ドル(約628億円)のファンドのクロージングを発表した。同VCは、リミテッドパートナーの名前を公表していない。

半導体、クラウド、エレクトロニクス業界全体で実績のあるソーン氏とタン氏は、Zoom(ズーム)、Inphi(インフィ)、Berkeley Lights(バークレーライト)、Habana(ハバナ)、Nuvia(ヌビア)など、多くのテック企業に初期投資を行ってきた。

「Walden Catalystは、2021年初頭に設立された新しいファンドですが、Walden International(ウォールデン・インターナショナル)やSamsung Catalyst Fund(サムスン・カタリスト・ファンド)からの強力な遺伝子があります」。と語るのは、以前、Samsung Electronicsでコーポレート・プレジデント兼チーフ・ストラテジー・オフィサーの役職に就いていたソーン氏だ。タン氏は、Walden Internationalの創業者兼会長でもある。

Walden Catalystは、米国、欧州、イスラエルに焦点を当てている。これは、これらの3つの地域から、関心のあるディープテック分野で一貫したブレークスルーが見られるからだとヨン氏はいう。また、Walden Catalystのパートナーは、過去数十年にわたってディープテック産業に投資してきたことで、これらの国に深いネットワークを持っており、Waldenがトップの起業家を惹きつける画期的なアイデアを見つけるのに役立っているとヨン氏は付け加えた。

現在までに、Walden Catalystは、米国で3社、イスラエルで2社、EUで1社の計6社のディープテック関連のスタートアップ企業に投資している、とヨン氏は続けた。Walden Catalystのポートフォリオ企業には、Speedata(スピーダータ)、MindsDB(マインズDB)、AI21 Labs(AI21ラボ)の他、現在ステルスモードの他3社が含まれていると述べている。同社の最初のチケットサイズは、1ラウンドで数百万ドル(数億円)から2500万ドル(約28億5000万円)までとなっているとヨン氏は語った。

「データは絵を描きます。それは、情報を提供し、啓発するストーリーを語るものです。世界のデータ量は2年ごとに倍増し続けていますが、分析されているのは全データの約2%に過ぎず、意味のある洞察を集めるためにできることはたくさんあります。データの爆発的な増加を捉え、最終的に世界を変えるであろう、米国、欧州、イスラエルの次世代のディープテック起業家たちと協力できることに、私たちは興奮し、光栄に思います」。とソーン氏は述べている。

Shankar Chandran(シャンカール・チャンドラン)氏、Roni Hefetz(ロニ・ヘフェッツ)氏、Francis Ho(フランシス・ホー)氏、Andrew Kau(アンドリュー・カウ)氏の4人の追加パートナーによるチームは、ディープテック分野での投資やエグジットに関して数十年の経験を有している。

Walden Catalystは、事業運営と投資の経験を活かして、初期段階の起業家が次世代のビジネスを構築する際に、迅速なスケールアップとイノベーションを支援することを目指している。同社は、起業家こそが経済成長とイノベーションの中心であると考えている。

「私たちは、業界の次の波を担う夢想家たちと協力して、彼ら(起業家)がイノベーションを起こし、成長を加速するのを支援できることを楽しみにしています。起業家は我々の未来のエンジンであり、Walden Catalystはその旅を共有し、まだ到来していない多くの驚くべきブレイクスルーを支援するために設立されました」とタン氏は述べている。

Walden Catalyst は、国連の持続可能な開発目標に沿ったグローバルな課題に取り組む起業家を対象としたスタートアップコンテストであるエクストリーム・テック・チャレンジ(XTC)と密接な関係にある。Walden Catalystは、地球に意味のある影響を与えながら大規模なスケールに到達できる、次のすばらしい破壊的スタートアップ企業を見つけるというXTCのミッションを共有している。

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

D-IDが写真を独自のフォトリアルな動画に変換する「Speaking Portrait」の提供を開始

古い家族写真を生き生きとした動きのある肖像画に変えた、 センセーショナルなMyHeritage(マイヘリテージ)アプリへの技術提供を行った会社が、新しい応用を引っさげて再登場した。静止画を超リアルな動画に変換し、好きなことをしゃべらせることができるようにする技術だ。

D-ID(ディーアイディー)のSpeaking Portraits(スピーキング・ポートレイト)は、ここ数年話題になっていた悪名高い「ディープフェイク」に似ているようにみえるかもしれないが、基盤技術はまったく異なっており、基本的な機能の提供のためのトレーニングは不要だ。

関連記事:MyHeritageが古い家族写真をディープフェイク技術でアニメーション化

かつて2018年のTechCrunch Battlefieldではまったく異なる技術(顔認識技術への対抗技術)でデビューしたD-IDが、今回のTechCrunch Disrupt 2021では新しいSpeaking Portraits製品をライブで披露した。同社はこの技術を使って、さまざまな感情を表現できる多言語テレビキャスターの作成、カスタマーサポート用のバーチャルチャットボットのペルソナ作成、プロフェッショナル育成用のトレーニングコースの開発、インタラクティブな会話型ビデオ広告キオスクの作成など、さまざまなユースケースを紹介した。

この新製品やMyHeritageとの提携は、明らかにD-IDの当初の方向性からは大きく異なっている(MyHeritageのアプリは一時的にAppleのApp Storeのチャートでトップになった)。2020年の5月頃までは、D-IDは従来のやりかたで資金調達を行っていたが、2021年の2月にはMyHeritageとの提携を開始し、その後GoodTrust(グッドトラスト)との提携を経て、Hugh Jackman(ヒュー・ジャックマン)監督の映画「Reminiscence(レミニセンス)」では、ワーナー・ブラザースとの提携により、ファンが予告編に自分の姿を入れることができるようになるといった派手な展開を見せた。

こうしたD-IDの方向転換はこれ以上なく劇的なものに見えるかもしれない、しかし技術的な観点から見ると、写真に命を吹き込むことに焦点を当てた新しい方向性は、同社がもともと開発してきた画像匿名化(de-identification)ソフトウェアとそれほど大きな違いはない。D-IDのCEOで共同創業者であるGil Perry(ギル・ペリー)氏は、この種のアプリケーションに関して、アプローチ可能な非常に大きな市場があることが明らかになったので、新しい方向性を選択したと話している。

関連記事:動画中の顔をぼかして本人同定を不可能にするプライバシー技術のD-IDが14.5億円を調達

ワーナー・ブラザースのようなビッグネームのクライアントや、比較的無名のブランドからApp Storeを席巻するアプリが出たことは、この評価を裏づけるものと言えそうだ。だがSpeaking Portraitsが狙うのは、さまざまな規模のクライアントだ。誰もがソース画像からフルHDビデオを作成し、録音された音声や、字幕を加えることができる。D-IDは英語、スペイン語、日本語に対応した製品をローンチするが、将来的には顧客の要望に応じて他の言語も追加していく予定だ。

Speaking Portraitsでは2種類の基本カテゴリーが提供される。そのうちの1つである「Single Portrait」(シングルポートレート)オプションは、頭は動くが他の部分は動かない映像を1枚の写真だけで作ることができる。こちらは、既存の背景を使っても動作する。

さらなるリアリティを追求したい場合には「Trained Character(トレインド・キャラクター)」というオプションがある。このオプションでは、希望するキャラクターの10分間のトレーニングビデオを、同社のガイドラインに沿って提出する必要がある。これには、独自の交換可能な背景を使うことができるという利点があり、キャラクターの体や手にいくつかのプリセットされた動作を加えるオプションもある。

Trained Characterを用いて作成されたSpeaking Portraitニュースキャスターの例を以下に示すので、そのリアルさがどのようなものかを見て欲しい。

今回のDisruptでペリー氏がライブで見せてくれたデモは、子どもの頃の自分の静止画から作られたものだった。この写真は、人形遣い役の人物が演じる顔の表情にマッピングされている。またこの人形遣い役は、ギル氏が現在の自分と若い自分が交わす対話の中で、Speaking Portrait版が話すスクリプトの声も担当していた。話し手の表情がどのようにアニメーションとして反映されるかは以下の動画でみることができる。

もちろん、たった1枚の写真から、どんなセリフも説得力を持って伝えることができるフォトリアリスティックな動画を作ることができるということは、ちょっと身の毛もよだつような話であることはいうまでもない。すでに、ディープフェイクの倫理性についてさまざまな議論が交わされているなかで、AIが現実的ではあるが人工的な結果を生み出した場合に、それを特定できるようにしようとする業界の取り組みも見られる。

Disruptでペリー氏は、D-IDは「この技術が悪いことではなく、良いことに使われるようにしたいと熱望しています」と述べ、その実現に向けて10月末にはパートナー企業とともに、Speaking Portraitsのような技術を使用する際の「透明性と同意」へのコミットメントをまとめた誓約書を発行する予定だと述べた。このコミットメントの目的は「ユーザーが自分の見ているものについて混乱することなく、同意を行う機会が与えられること」を保証することだ。

D-IDは、この種の技術の悪用について、利用規約や公式見解で保証したいと考えているが、ペリー氏はそれを「単独ではできない」という。同じエコシステムの他の企業にも、悪用を避けるための努力に参加するよう呼びかけているのはそれが理由だ。

画像クレジット:D-ID

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(文:Darrell Etherington、翻訳:sako)

UTECがディープテック創業者の仕事の商業化を支援する新たなイニシアチブをローンチ

2021年7月、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)は、ディープテック創業者の多くが直面していると同社が指摘する問題に取り組むため、新たなプログラムをローンチしている。創業者たちは、インキュベーターやアクセラレータープログラムからプレシード資金を調達できても、アーリーステージのラウンドに進む前に資金ギャップに達してしまうことがある。資金がなければ、どんなに有望なテクノロジーであっても、商用化には時間がかかる。

東京大学をはじめとするアカデミアと連携している独立系ベンチャーファンドであるUTECは、このギャップに対処するために「UTEC Founders Program(UFP)」を開設した。フレキシブルな条件で最大100万ドル(1億円)を投資する「Equity Track(エクイティ トラック)」と、半年ごとに受領者に授与される約5万ドル(500万円、必要に応じ最大10万ドル[1000万円])の非希薄化型(ノン・ダイリューティブ)の助成金である「Grant Track(グラント トラック)」の2つのトラックから成る。

UFPのアプリケーションは、世界中のディープテック研究者や創業者に開かれている。

UTECは5月に約2億7500万ドル(約300億円)規模のファンドを立ち上げ、通常約100万ドルから500万ドル(約1億円~5億円)の小切手を発行している。同社が運用している資産総額は約7億8000万ドル(約850億円)に上る。UTECはサイエンスおよびテクノロジー企業向けの日本最大のベンチャーキャピタルファンドであり、アジア最大のディープテックファンドの1つであると同社は語っている。

ディープテック研究者や起業家からのフィードバックを受けて、同ファンドのパートナーらは、研究者や起業家が潜在的にインパクトのあるテクノロジーを開発したとしても、すぐにシード資金を調達できる状態にない可能性があることを認識した。今回のイニチアチブを通じて、多くのチームが、長いデューデリジェンスのプロセスを待つのではなく、テクノロジーの商用化の準備を続けるための迅速な資金調達からも恩恵を受けることになるだろう。

UTECのプリンシパルで、UFPのリーダーを務める小林宏彰氏とKiran Mysore(キラン・マイソール)氏は、TechCrunchに宛てたeメールの中で次のように述べている。「満たされない市場ニーズに応えるために新製品を生み出す起業家のように、UTECでは、サイエンスおよびテクノロジーの研究者や起業家のために、より機敏な形で新しい投資商品を提供するよう努めています。UFPは、UTECが15年以上にわたって培ってきたディープテック投資の経験と学習を、アーリーステージのテクノロジー商品化イニシアチブにつなげていこうとする試みです」。

Equity Track(エクイティ トラック)は主にシードおよびプレシリーズAのスタートアップを対象としており、SAFE、KISSやJ-KISS(日本版Keep It Simple Security)、転換社債、普通株といったフレキシブルな投資条件を提供している。年間を通して応募を受け付け、合格者には3日以内に一次面接が行われる。マイソール氏によると、デューデリジェンスと投資委員会のプロセスは、最初のインタビューから4週間以内に完了するという。

Grant Track(グラント トラック)は起業前またはアーリーステージのスタートアップを対象としており、資金はプロトタイピング、市場テスト、リクルートメントなどに利用できる。第1期募集は6カ月ごとに行われ、毎回約5チームが選ばれる。第1期の応募締め切りは7月31日で、決定は9月に行われる。

UFPに参加するディープテックチームは、115を超える日本および世界のスタートアップ、学術機関、政府機関、企業からなるUTECのネットワークへのアクセスも獲得することになる。

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画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Dragonfly)