エンタープライズ向けチャットのSlackが4月30日を終期とする第1四半期を発表した。これは2021会計年度の最初の四半期決算だ。
今期の収入は2億170万ドル(220億円)と昨年同期比で50%のアップだった。調整済み1株あたり損益は0.02ドルの損失、すべてのコストを考慮すると0.13ドルの損失となっている。Yahoo Financeによればアナリストの予測は平均して1億8812万ドルの収入と1株あたり損失0.06ドルだった。
決算発表の直後に同社の株価は13%ダウンした。これは同社がSasSという新しいビジネスモデルを発表したときの4.4%のダウンに続くものだ。我々の見立てでは、アナリスト予測を上回りながら株価は下落した原因は、投資家はSlackがもっと大きく予測を上回ることを期待して買いにまわり、株価を押し上げていたのだろうというものだ。
残念ながら四半期決算決算ではそうした数字は報告されなかった。Slackは新型コロナウイルスのパンデミックによって多くの企業がリモートワークの実施のために新たにチャットサービスを導入しており「急成長している」と説明していた。
Slackの決算報告はビデオチャットのZoom、サイバーセキュリティのCrowdStrikeの発表に続くものだ。両社ともデジタル化の加速とリモートワークの必要性の増大により大幅な成長を遂げている。
Slack自身もこのブームにより「今期は無料、有料のサブスクリプションを合計して9万社以上の新規契約を記録している」と述べている。このうち有料契約は 1万2000社だったという。こうした堅調な結果であったにも関わらず、株価が即座に下落したことは投資家が有料プラン契約の割合がもっと高いことを期待したためだろう。結局のところ売上は有料契約者の数にかかっているわけだ。
Slackは、ガイドラインで現在の四半期の収入を「2億600万ドルから2億900万ドル(225億円から228億円)」と予想しており、これは前年比で42%から44%の成長となる。同社はまた調整済み1株あたり損益を0.03ドルから0.04ドルの損失と予測している。
株式市場の失望は別として、この四半期のSlackの資金調達は順調だった。優先転換社債(シニア・コンバーティブル・ノート)で7億5000万ドル(820億円)を調達し、0.50%という低い金利で資本を増強することに成功している。株価の下落はさして痛手ではないだろう。
またSlackの四半期決算のすべてが投資家を苛立たせるニュースだったわけでもない。明るい部分としてはまず前四半期の49%と比べて収入の伸びはわずかだが増えている。またリテンションレート(顧客維持率)は132%と依然としてこの分野の最高水準だ。さらに、GAAP粗利益率は87.3%にアップした。これも十分に優秀な数字だ。
しかし市場の投資家はこれよりもさらに高い成長を期待していたに違いない。
最後に付け加えておくなら、Slackが犯したある種の誤算は「SaaSビジネスへの転換が収入の拡大を加速させる」と主張しながらそれが実現しなかったことにあるだろう。期待はずれのSaaSの決算という点で、SlackはSalesforceとSmartsheetの例にならってしまったようだ。
画像:Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)