高級ヘアサロン向けサイネージでインスタのSpark ARを活用した新サービスが登場

THE TOKYO SALON VISION COVER Spark AR

動画マーケティングのニューステクノロジー(ベクトルグループ)は7月2日、ARコンテンツ企画・開発など行うport W.LLCと共同で、Facebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)提供のAR開発プラットフォーム「SparkAR」を活用した新サービス2種類の提供開始を発表した。

AR新サービスのひとつは、ニューステクノロジー運営の高級ヘアサロン専門サイネージ・メディア「THE TOKYO SALON VISION COVER」と連携したメニューとして採用。美容院に設置されたタブレットに2次元バーコードコードを表示、読み込むと自身のスマートフォンと連動してARが立ち上がり、フィルターを通したAR体験が可能になる。そのまま商品購入ページまで誘導できる。

THE TOKYO SALON VISION COVER Spark AR

もう1点は、インスタグラムのストーリーズでARフィルターを活用した投稿ができるメニュー。インフルエンサーのキャスティングも可能で、オーガニック投稿による拡散も同時に狙えるという。広告配信の場合はフェイスブックのみ配信可能。

ニューステクノロジーによると、ARなど新しいテクノロジーにより、化粧品・スキンケア製品・ファッションアイテムをオンラインで試用・購入できる体験が消費者に急速に浸透しているという。Spark ARの場合では、企業が自社製品関連のオリジナルARフィルターをインスタグラム上でユーザーに提供。プロモーションやトライアルなど、様々なアプローチを開始しているとした。

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10年間パブリッシャーをいじめてきたFacebook Newsを信頼してはいけない理由

本当にまた繰り返すのか?動画への方向転換があり、インスタント記事があり、ニュースフィードからニュースが消されることがあり、それでもなおFacebook(フェイスブック)は、新しい媒体をちらつかせ、ジャーナリズムをおびき寄せて檻に閉じ込めようとしている。

米国時間10月26日、FacebookはNews(ニュース)タブ公開した

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すでに、The Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル)やBuzzFeed News(バズフィード・ニュース)などを含む約200社のパブリッシャーが参加しており、一部には資金援助が行われている。このプラットフォームの危険性を誰も学んでいないのだろうか。

他人の土地に勝手に家を建てれば、ブルドーザーで潰されても文句は言えない。Facebookがパブリッシャーへの資金援助を突然打ち切った数の輝かしい記録を思えば覚悟すべきだ。

2015年に私が書いた「Facebookはパブリッシャーをゴーストライターに変えて、スマートパイプにくだらないコンテンツを流すのか」という記事をもう一度掲載すれば済む話かもしれない。または、ユーザーにパブリッシャーのサイトを捨てさせてFacebookに取り込み、アルゴリズムで管理されたフィードに依存させることで、Facebookが報道事業を奪ったことに関する2018年の記事でもいい。

Facebookによるパブリッシャーいじめの記録

ちょっと時間を遡って、同社が報道界を翻弄して多くの人たちを傷つけてきた歴史を振り返ってみよう。

2007年、Facebookがニュースを扱うようになる前にもすでに起きている。同社は、無料のバイラル機能を大量に備えた開発者向けプラットフォームを立ち上げ、そこからZynga(ジンガ)などの企業も生まれた。しかしスパムがニュースフィードを蝕むようになるとFacebookはそれを打ち切り、Zyngaも見放した。Facebookがモバイルに移行する5年間で、大量のゲームが破棄されてしまった。Zyngaは完全に立ち直ることはできなかった。

2011年、Facebookは、読んだニュースを自動的に友人にシェアするソーシャルリーダーという種類のアプリで、オープングラフプラットフォームを立ち上げた。ガーディアンやワシントンポストといった新聞社は、競ってこのアプリを作り、バイラルなトラフィックを記録した。しかし2012年、同社はフィード投稿のデザインを変更し、ソーシャルリーダーアプリの存在感が薄れた。そのため読者数が大幅に減少し、多くのパブリッシャーはアプリの運用を取り止めた。Facebookは、そのプラットフォームを大幅に切り捨てた。

丸印は話題の記事の新デザイン移行期

2015年、FacebookはInstant Article(インスタント記事)を立ち上げた。アプリの中で新しいコンテンツをいち早く読み込めるというものだ。しかし、広告・購読のサインアップボックス、再循環モジュールを制限する高圧的なルールのために、パブリッシャーはインスタント記事による恩恵をほとんど受けられなかった。2017年後半、多くのパブリッシャーはこの機能を放棄した。

インスタント記事の使用量の低下(Columbia Journalism Reviewより)

同じく2015年、Facebookは1日の動画再生回数が10億回に達したとして「動画への移行」を論議し始めた。ニュースフィードのアルゴリズムを動画優先に変更したところ、同年内に1日の動画再生回数は80億回に伸び、パブリッシャーの編集部では動画担当者を増やし、記事も文章から動画へと移行させていった。しかし後の訴訟により、Facebookは150〜900%に及ぶ視聴回数の水増しを認識していたことが判明した。2017年末までに、Facebookはバイラルな動画のランクを下げ、1日あたり5000万時間分の視聴(一人あたり2分以上)を削除し、後にパブリッシャーへのライブ動画のための支払いを削減。友だち関連のコンテンツに重点を移したことで、パブリッシャーが提供した大量の動画が破棄された。

2018年、Facebookは、家族や友だちのコンテンツを優先させるために、ニュースフィードでのニュースの表示率を5%から4%に減らすと発表した。Facebookが参照元となる数が急激に低下し、そのぶんをGoogle(グーグル)が獲得してトップのリファラーになった。だが、Facebookからのトラフィックが87%減少したSlate(スレイト)などのニュースサイトは大打撃を受けた。パブリッシャーの中には、見捨てられたと感じるところが少なくなかったのは想像がつく。

Facebookを参照元とするとらスレイトへのトラフィックは、ニュースよりも友だちと家族のコンテンツを優先させるという戦略の変更により87%落ち込んだ

傾向がおわかりだろうか?彼らが守りたいもの、守ろうとしたものに関するデータに従い180度の戦略転換を行い、それが周囲に与える大打撃を、ユーザーを思ってのことだと正当化するのがFacebookの常だ。それによりその他の利害関係者が優先されることになる。

死の情報収集サイト

私はよく、Facebookは、ユーザー、開発者、広告主との奇妙な四角関係にあると思っていた。しかしこのごろは、Facebookがユーザーとの虐待的な愛憎関係にあるように見えてきた。ユーザーの気を引きつつ、プライバシーを抜き取っているからだ。一方で、グーグルとの複占状態のおかげで、数値上の誤りを放置でき、開発者はユーザーが欲しいときや、データ上の大失敗の後に撤退したいときにアクセスやリーチを変更できることから、Facebookは広告業界を独占している。

いくつものしっぺ返しを喰らった挙句、ようやく最近になって、Facebookはいくばくかの愛情を社会に注ぐようになったようだ。だが、ニュースのパブリッシャーはそのいちばん下の階層にある。ニュースは、Facebookの中では大きなコンテンツではないため収益も少なく、ソーシャルネットワークの基礎にある友だちや家族のグラフには属さない。アップルやグーグルと違い、報道機関がFacebookにどんなに強く当たろうとも、すでに悪化している関係がこれ以上悪くなりようもない。

だからと言って、Facebookがニュースを意図的に軽視しているわけではない。FacebookはJournalism Project(ジャーナリズム・プロジェクト)の広報、ニュースリテラシー、ローカルニュースを専門に扱うToday In(トゥデイ・イン)に出資している。また、インスタント記事の失敗が及ぼした被害を埋め合わせしようと、パブリッシャーが有料サイトを立ち上げるのを親身になって手伝ってもいる。Facebookがそれを中心的な存在と考えるなら、スタッフはニュースをよく読むようになるだろう。この部門を支えていけば、醜聞に埋もれる中でもいくらかでも称賛が得られるようにもなる。

だが、Facebookの生き残りの中心になかったものが、その戦略の中心になることは決してない。ニュースでは勘定が合わない。鈍化する成長率を押し上げる主要な力にもなり得ない。Twitterの場合を思い出してほしい。Facebookよりもニュースに力を入れているTwitterだが、時価総額はFacebookの23分の1でしかない。そのため、少なくとも今の時点では、Facebookは報道系パブリッシャーの味方ではないことが明らかだ。

よくても気まぐれで、肝心なときに当てにならない友だちだ。何百万ドルを出資しようとも、確かにジャーナリズムの世界では大金だが、2018年のFacebookの純利益220億ドル(約2兆4000億円)に比べたらいくらでもない。

Facebookがパブリッシャーに提示するものには、すべてに条件が付く。ニュースタブが持続可能にならない限り、永遠に補助金は出ない。ニュースの編集部にとれば、計画や資源の分配が変更されるときは、まったく信用できないFacebookを信用せざるを得なくなる。

関連記事:TwitterとFacebookはパブリッシャーをゴーストラーターに変える(未訳)

パブリッシャーはどうすればいいのか?オウンドオーディエンスという考え方を、常に倍賭けで疑うことだ。

自分たちのサイトへ直接ユーザーを呼び込む。自前のサイトなら、ユーザーに購読を勧めたり、ニュースレターやポッドキャストを配信したり、ニュースフィードの中で見るほど魅力的ではないにせよ、充実したオリジナルの記事を送れる柔軟性がある。

ユーザーがいる場所でユーザーに会う。だが、彼らを自分たちの世界に連れ戻すことが大切だ。アプリを開発してダウンロードしてもらうか、ユーザーのすべてのデバイスにパブリッシャーのブックマークを付けてもらう。購読、イベント、商品、データ、調査などトラフィック中心の広告を代替収入源にする。多様な意見を持つ優れた才能が離職しないように報酬を増やすか新しく雇う。

盗用されたりリブログに書かれないスクープ、評論、分析、メディアとは何か?それを作る。どのサイトでもトップを飾る記事をいかにして目立たさせるか?そこに未来がある。他人のスマートパイプから拝借したつまらない記事を垂れ流す陳腐なパブリッシャーになってはいけない。

Stratechery(ストラテチェリー)のBen Thompson(ベン・トンプソン)が説いているように、Facebookは、かき集めたコンテンツ提供者から搾取を行うごとに、関心と広告主からの戦利品が増加する情報収集サイトだ。情報収集サイトにとって情報提供者は交換が利く使い捨ての存在だ。パブリッシャーは基本的に、Facebookニュースのゴーストライターとなる。情報収集サイトに依存するということは、自分の運命を奪われるということだ。

たしかに、ニュースタブをブレイクさせるための実験では分配金が発生するだろう。パブリッシャーは、Facebookの提示するものを受け取ることができる。ただし「彼らの事業の根っこを脅かさない限りは」だ。しかし、Facebookの態度を急変させる性質を考慮するに、パブリッシャーは地震の中でボーリングをするようなものかもしれない。

[イラスト:Russell Werges]

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Facebookの最新のフェイク、監督委員会を民主的な独立機関と思うなかれ

35歳の億万長者にして、各国の議会からの彼と彼の事業が世界中の民主主義と人権に悪影響を及ぼしているかという質問の回答を拒み続けているFacebook(フェイスブック)のCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、さらにあなたを利用して金儲けをする説明責任劇場を立ち上げた。監督委員会だ。

Facebookの事業の話ではないのか。Facebookのブログ記事が高らかに主張する「Establishing Structure and Governance for an Independent Oversight Board」(独立した監督委員会の構成とガバナンスの設立、日本語版のタイトルは「監督委員会の構成とガバナンス」)からそう考えるのも無理はない。

昨年、まだ種まきの段階だったころザッカーバーグ氏は、自身のコンセプトを真剣な顔で広めてくれそうなポッドキャストやテレビ番組のお気に入りの司会者を厳選して直に会って伝えた。それが、いわゆるFacebookの最高裁判所だ。この追加的な意志決定機関は、それ以降(困難な問題に対して使う)同社のお決まりの無味乾燥なFacebook語をまとうようになった。Facebook語では、同プラットフォームでのフェイク活動を婉曲に「非認証の行動」と表現する。

この監督委員会は、Facebookが日々行っているコンテンツの適正化管理(モデレーション)の苦労の上に位置する。モデレーションは、密室の中で守秘義務契約を交わした人間によって行われ、アウトソーシングされた契約部隊が、一般ユーザーに代わって下水のように流れ続けるヘイトや嫌がらせや暴力に目を光らせている。これは問題解消のためのよく目に見えるメカニズムであり、口論を収めることができる(とFacebookでは期待している)。

Facebookの、ひとつですべてに適応しようとするモデレーションのポリシーには実効性がない。22億人を超えるコミュニティーには、同社が言うような地球全体を覆うユーザーベースなどというものは存在しない。非常に多様性に富むFacebookユーザーを、内容監視の最後の手段としてわずか11名の委員会が納得のいく代表者になれるのかどうかも、いまだ明らかにされていない。

「委員会のスタッフを最大まで増員すれば40名になります。委員会の人数は必要に応じて増減します」と、先週Facebookはあいまいなことを書いていた。

1人の委員がFacebookの事業のひとつの市場を担当することを意図していたのなら(そうはなっていないが)、国全体の多様な観点の代表者として1人ずつを充てる必要がある。だが、それは現実的ではない。それどころか顕在する政治的分断が誠実な業務を妨げてしまう。

どうやらFacebookは、最初の委員会の構成を、同社の企業理念を反映する形にしたいと考えているようだ。米国の企業としてFacebookも表現の自由の擁護を信条としている(同監督委員会の憲章の最初の言葉が「表現の自由」であるのは偶然ではないはずだ)。

米国的でないものは、憲章で明言されているもうひとつの基本姿勢を危険にさらすだろう。つまり「自由な表現が最重要」というものだ。

だが、ヘイトスピーチ危険な偽情報政治的暴力などなど、Facebookにどこまでも付きまとう無数のコンテンツ関連の不祥事のモデレーションにFacebookが失敗したなら、個人や社会に重大な危害がおよぶ恐れのある国際市場はどうなるのだろうか。

Facebookの事業が利益を生むためには国際市場が必要だ。しかし、同社が分配する資源からは、決してそれを知ることはできない。Facebookのデジタル植民地政策が、非難されていないわけではない。

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おそらくこれは、政治(地政学)の(短期の)レベルでは辻褄が合う。一部の委員からは、いつかFacebookの商慣習の変更が求められるかも知れない。
いずれにせよ、実用規模のプラットフォームとしてのFBは、あまりにも力を持ちすぎた毒性の無責任な企業であり続けるだろう。
私はとくに、FBの見た目に素晴らしいグローバルな監督委員会のためのグローバルな入力処理の構築にどれほど投資したかに興味があった。
– 純利益3カ月ぶんか?
– 純利益1カ月ぶんか?
– 純利益1週間ぶんか?

ある特定の記事を削除するか放置するかのFacebookの決断が及ぼす被害は、うんざりするほど大きくなる恐れがある。Facebookのプラットフォームが、民族抗争を焚きつけるロヒンギャなどの少数民族へのヘイトスピーチの運び役となったミャンマーのようにだ。

昨年、国連にけだもの”¥と言わしめたFacebookプラットフォームのミャンマーでの不名誉な失敗が、今回の自主規制の動機になった。将来の意志決定においては、さらに適正な努力を行うとするお決まりの主張とともに、Facebookは外部の人間に助けを求めるショーを開始した。

さらに大きな問題は、事業を広げすぎたFacebookが困難で異論が多く、ときには命の危険すらあるコンテンツが確実に大量に流れ込むようになり、そのモデレーションの判断を迫られていることだ。同社は私企業にとっては難しい判断だと主張している。だがFacebookは、これらすべての問題を収益化することに後ろめたさを表明したことはない(実際、ナチスのターゲット広告に使われたことすらあったにも関わらずだ)。

Facebookの規模は人道上の問題だが、Facebookはそうとは考えていない。その代わりに同社は、2020年中にモデレーションの強化を図り、監督委員会に委託した事例を通じて宝くじ並みの確率で上告する予定だ。

今回の追加的な監督がおよぶ程度は、当然のことながら非常に限定的なものとなる。これは最後の手段だ。Facebookのモデレーターが毎日毎秒拾い出しているものから比べると、信じられないほどわずかなコンテンツを扱うに過ぎず、サクランボ狩り的なアピールの場だ。だがそこから現実世界に影響が波及し、雨が降る。

「委員会は、当初はわずかな案件のみを扱うことになりますが、時が経つに連れてその範囲を広げ、業界内の多く企業も含まれるようになる可能性があります」と、先週、予定されたキックオフの時期はまだ数カ月も先であるにも関わらず、出力期待値を維持しようとザッカーバーグ氏は述べた。その後は、彼が大好きな“将来の期待”の話に移行した。

同社はまた、緊急の案件を通常の手続きを一足飛びにして直接委員会に送り、素早い意見が求められる権限を自身に与えている。会社側のコンテンツに関する質問が優先されるようにだ。

驚くべきことにFacebookは、この自らの都合に合わせた監督機関を独立機関だと喧伝している。

監督委員会という大げさで官僚的なこの名称は、独立した監督委員会という偏向した大見出しでFacebookに花を添えている。しかし、Facebookがこれまでに広めてきた監視委員会に関するその他の文書では、独立したという形容詞はなぜだか見あたらない。先日公表されたばかりの、委員会の権限、範囲、手続きなどを定めた憲章にも登場しない。

「Facebookの監督委員会への関与」と題したザッカーバーグ氏の意見をまとめた書簡を伴う9ページの文書でも、独立したという文言は外され、いつもの心地よい世界に引き戻されている。なんかおかしい。

ザッカーバーグ氏の書簡には、委員会が独立していることを示す言葉がいくつか見受けられる。「独立した組織」であるとか「独立した判断」を行うなどだ。しかし、これはあくまでマークの個人的な意見に過ぎない。

「部屋の中に象がいる」的な誰も口にしたくない大きな問題は(象の比喩を使うとすれば、例えば委員会の会議室の机に見せかけるためにFacebookによってきれいなコスチュームを着せられている象か)、最高指導者が命令に従わず有効な監督の判断に失敗し続けていることだろう。

最高指導者は、FacebookのCEOであるザッカーバーグ氏を適格に言い表している。株式構造と彼が持つ議決権により、ザッカーバーグ氏以外の何者もザッカーバーグ氏をクビにできないことになっているからだ。昨年、Recodeのカーラ・スイッシャー氏がポッドキャストのインタビューで、Facebookのプラットフォームで問題となった無数の言論関連の不祥事の責任をとって辞任しないのかと尋ねたところ、ザッカーバーグ氏は一笑に付した。

これは企業ガバナンスの独裁だ。Facebookの少年王は、一切の内部チェックなしに世界中で強大な力を行使できる。言うなれば倫理的責任を伴わない権力だ。

ザッカーバーグ氏のFacebookのCEOとしてのお詫びの旅は今年で15年目になるが、次は同じ過ちを犯さないとも、冷淡な拡張主義者の野望が消えたとも話してはいない。もちろん、彼は今もそれに専念している。国際デジタル通貨(リブラ)計画や、出会い系サービスの強気の植民地化(Facebookデーティング)だ。個人情報や広告による金の流れを確保するものならなんでもありだ。

先日、Facebookは米連邦取引委員会に50億ドル(約5400億円)の制裁金を支払った。これは、個人情報の管理態勢や規約の施行での失態に関して、上級幹部が質問を受けるのを避けるための手段だ。そしてザッカーバーグ氏とその仲間は、普段どおりのプライバシー無視の儲かる仕事に戻ることができた。ちなみに、Facebookの2018年の年間収益は558億ドル(約6兆円)を記録した。

これらすべてが、独立したFacebookお手製の監督委員会がザッカーバーグ帝国の内外を問わず、実際の規制を欠いた空洞に貼り付ける光輝く絆創膏に過ぎないことを示している。

これはまた、Facebookが民主的な説明責任から逃避し続けていることを覆い隠すものでもある。同社の広告プラットフォームが素早く、しかも杜撰に人々の人権や生活をもてあそんでいる事実から人々の目をそらすために、Facebookの創設者は国会議員からの質問には答えず、不祥事にまみれた業務上の意志決定の責任もとらず、民主主義やコミュニティーを歪めている。ザッカーバーグ氏のためにプライバシーが死ぬことなどあってはならない

責任回避などという言葉では生ぬるい。Facebookのやり方は、もっとずっと積極的で攻撃的だ。Facebookのプラットフォームは説明責任も監督もなく、私たちを変えようとしている。さらに、私たちが民主的に選出した代表者にそれを変えさることを阻止するために、偏向した情報を流したり、事業の姿をあれこれ変形させることに利益をつぎ込んでいる。

書簡の中でザッカーバーグ氏は、民間の監督や法体系といった言葉を彼が呼ぶところのプロジェクトにふさわしい形に言い換えているが(すべてを自分でお膳立てしたコンテンツ関連の意志決定を行う審査機関の条件から外れないように。Facebookが作成したその憲章では「Facebookのコンテンツポリシーと価値に沿って審査と決定を行う」と規定されている)、まったくニュース価値はない。Facebookのトップがどんなに偏向報道に精を出してもだ。

米国外で彼の製品を利用している数億人のユーザーの中から民主的に選ばれた代表者の質問に答えることにFacebookのCEOが同意したなら、それはニュース性の高い衝撃的な話となるだろう。

定期的に質問や不安に答えるべく、ザッカーバーグ氏が世界の国会議員に面会することに同意したなら、それも本当に驚きのニュースとなる。

しかしそれは絵空事だ。彼の帝国はそのようにはできていない。

その代わりにFacebookのCEOは、歴史的に前代未聞の偽情報マシンの能力に匹敵する勢いで、民主的な監視をかわしてきた。昨年の米国議会に出席して非協力的な質問のはぐらかしに終始していたし、当初非公開で行われた欧州連合の会派長会議の定型会議(欧州議員の反発で公開化された)では、質問に答えずにヤジを浴びた。

つい最近では、彼はドナルド・トランプ米大統領と握手を交わしている。その意見の一致がどこへ向かうのかは、憶測するしかない。権力が無責任と出会った。またはその逆か?

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今日、オーバルオフィスでFacebookのマーク・ザッカーバーグといい会談ができた。

世界の議員たちは、世界のFacebookユーザーの大多数を代表して、ザッカーバーグ氏を綿密に調査し、彼の広告事業を民主化しようと試みているがこれまで露骨に無視されてきた。

今月も、ザッカーバーグ氏は今年の12月にダブリンで招集される偽情報に関する国際拡大会議での説明を求める招待を3回連続で断ったばかりだ。

今年の初めにカナダで開かれた2回目の会議でも、ザッカーバーグ氏とCOOのSheryl Sandberg(シェリル・サンドバーグ)氏は出席を拒否した。そのためカナダ議会は、両氏を倫理委員会に召喚するよう議決した。

一方で昨年英国議会は、インターネット上の偽情報に関する時宜にかなった質問に対して、偏向報道やはぐらかしに長けたザッカーバーグの一連の代理人たちによって誤魔化されてしまうというFacebookの非協力的な態度に業を煮やした。それが政府をまたぐ化学反応を招き、偽情報に関する国際拡大会議が一瞬で結成された。Facebookに民主的圧力をかけようと複数の国の議会が集結する。

不誠実なFacebookの態度にフラストレーションを募らせた英国のデジタル、文化、メディアおよびスポーツ委員会も、魔法の議会権限を行使して米国での訴訟に提出されたFacebookの内部書類を入手し、ザッカーバーグ氏の疑惑の装置の中に組み込まれた世界観を暴こうとクリエイティブな試みを行っている。

それらの書類からは、Facebookの事業の実態が垣間見られたが気持ちのいいものではなかった

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Facebookの事業の実態。
(マーカー部分)「人間が切れかかっている(広告主の観点で価値のある人間を使い切ってしまった)」

米国の法的な発見は、国家規模の獣の腹からデータを引き出すことができる唯一の信頼できる外圧になりそうだ。その巨大さが民主主義の障害になっている。

そこでFacebookは自分で作った監督委員会に、すでに知れ渡っている道のこぶを平らに均す以外のことなら何でもするよう、そして普段どおりFacebookが事業を進められるように舗装するように指示を出した。これはあたかもコーク兄弟に化石燃料権益から独立したシンクタンクを作らせるようなものだ。監督委員会はFacebookの最新の危機管理ツールだ。民主主義を無効化する契約書に軽率にも署名してしまった人たちを、さらに騙すものだ。

憲章をよく調べてみると独立のボロがすぐに現れる。

監督委員会がFacebookのためだけに存在しているという最も重要で明白な事実のほかに、Facebookはそれを子どもを生み続ける親システムの運用を継続させるための従属機能にすることを目指している。さらに、その資金を提供する者も憲章に書かれた目的の責任を負う者も、まったく同一の神だ。同時にその神が監督も行うことになっている(利害が衝突する)。そして憲章にはFacebook自身が最初の委員を選出すると明記されている。その委員が、最初のメンバーとなる残りの委員を選出する。

「委員会の最初の構成を支援するためにFacebookは共同議長を選出する。その共同議長とFacebookは、一緒に委員会の残りの席を埋める人間の候補を選択する」と穏やかな安心感を与える口調で薄灰色のFacebook語で書かれている。何が言いたいのか。その実質的な内容がわかれば「おい、独立性なんて欠片もないじゃないか!」となる。

初代のFacebook公認メンバーは、発達段階の判例に責任を負うことになる。つまり、彼らは基礎となる判例を積み重ね、今後はそれに(Facebookの憲章に沿いつつ)従うようになるのだ。

「すべての決定において、それ以前の委員会の決定は、事実、適用可能なポリシー、その他の要素が実質的に類似している場合、先例としての価値を持ち、高い説得力のあるものと見なされる」と「意志決定の基本」という解説部分に記されている。

この問題点を特筆する必要もないだろう。これではFacebookは変わらない。これまでコンテンツのモデレーションの決定の基準になってきたFacebook第一の精神とまったく同じだ。今回はただ、監督というピカピカに磨かれた豪華な衣装をまとっただけだ。

説明責任も果たしていない。Facebookは、透明性恐怖症の役員たちを民主主義(と倫理)の監視から隔絶するための批判対策ファイアーウォールで囲んで実際の規制から事業を守ろうとしている。そして、ザッカーバーグ氏とその仲間たちを、ケンブリッジ・アナリティカのときのような玉座を揺るがしかねない未来のコンテンツ関連の不祥事から保護しようとしている(先週起きた別の事件から判断するに、その使命はあまりうまくいっていないようだが)。

Facebookが、今後どれだけ民主主義の厳しい監視の目を避け続けるかによってインチキな監視構造をでっち上げてまで自身の代わりにネガティブな宣伝を行おうとするなら(そう、さらなるフェイクだ!)、Facebookが何を隠したがっているのかを真剣に疑わなければならない。

それはブラックホールサイズの倫理の真空地帯なのか?それとも、民主的な世界の秩序を完全に支配できるようになるまでの単なる時間稼ぎなのか。

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つまり、FBは通貨を欲しがり、今は最高裁場所で、次は何だ。軍隊か。

当然のことながら、監督委員会は実際のFacebookのポリシーを作れるわけではない。馬鹿を言っちゃいけない。委員会にできるのはポリシーの提案だけだ。そしてFacebookは、それをあっさり無視する。

監督委員会がこれから何年間も存続すると想像すれば、委員たちがFacebookの都合に合わせて設定したサポートゾーンから飛び出すことも理論的にはあり得る。しかし、憲章は別のファイアーウォールに焼き付けられているため、ザッカーバーグ氏は自分が気に入らないポリシー上の圧力はすべて無視できてしまう。監督委員会がそこまで独立心を持つチャンスは極めて低い。まさに、そこに見るべきものは何もない。

企業の利益の上に構築された機関が中立的な助言や透明な監督の役割を果たすなどというのは、つまり、はっきり言って知的な専門性の衣装を身にまとった利己的なプロパガンダを広めることだが、たいていがイカサマだ。

だからこそ、民主主義の中で生きるのが好ましいのだ。そして、透明性に関する法的執行基準に規制された民主的に信頼できる機関による管理が好ましい。ところがFacebookは、そうではなく企業の都合によって操作されることに一票を投じるよう、あなたを説得したいと考えている。

そのため、Facebookの監督委員会は透明に運用されるという主張が正しいように聞こえても、まったく意味のないことだ。それは法的な基準による透明性ではない。Facebookは商売だ。民主的な組織ではない。そこに法的拘束力は及ばない。自己規制だ。ゆえにパントマイムだ。

Facebookが、監督委員会をFacebookの最高裁判所と呼ぶことを避けている理由がわかる。それでは骨に近づきすぎるからだ。

法的な透明性の基準(または民主的な説明責任)が適用されなければ、Facebookの自己の利益が監督委員会、監督の信頼性、その他のFacebookの事業との分離が主張されているその隙間に浸透する機会を永遠に得ることになる。それは、案件の選択、決定、ポリシーの提言を形作り影響を与え、感情的になりやすい話題の周囲に物語を作り上げるための議論の種を蒔いて操作し怒りの言動を煽る。すべては独立した外部の監督に入念にかけられたカバーの下で行われる。

Facebookが作り上げ、資金を提供した機関が、Facebookにあらゆる物事に対して責任を取らせるだけの有効な力を持つなどと思い込まされてはいけない。または今回の場合は、折り合いの付かない論争での強い批判を吸収するために作られた機関なのだから、Facebookは何もしないでよいなどと思わされてもいけない。

たとえ、ザッカーバーグ氏の宣伝手段に組み込まれるのが本当に独立した委員だったとしても、Facebookのビジネスモデルが、巨大な規模で人の気を引き、プライバシーを踏みにじり個人情報を集めることから離れない限りは、同社のポリシーに人間的な方向での有意義な影響を与えられるとは、とうてい思えない。委員会のポリシー提言は、新しいビジネスモデルを要求できなければいけない。とはいえ、Facebookがこう言うのは目に見えている。「笑えるね!断る」。

監督委員会は、ひとつの国家に匹敵するほどのユーザーベースを有し、その膨大な資産をイメージ作り(とFacebookは見ている)に投入する企業の、批判を避けるための最新の宣伝活動に過ぎない。つまり、民主的な監視や政府の規制をすり抜けるためにあらゆる手段を尽くしつつ、善良な企業市民と見てもらための方策だ。蛇足ながら、まず根底に問題があると疑わない限り、何事も改善はできない。

選りすぐった独立した少数の専門家の意見が特定の企業の課題を前進させる方法の実例を探すならば、Google(グーグル)の外部委員会を見ればいい。2014年、欧州司法裁判所の“忘れられる権利”の規定に対応して、グーグルがヨーロッパに設立したものだ。この規定はグーグルの業務上の利益を損なう、上訴もできない司法判断だった。

Googleは、外部の人間による諮問委員会と名付けた機関を、おもに宣伝手段として使った。数多くの公開ヒアリングを行い、規定に反対する大きな議論を巻き起こし、ロビー活動も行った。こうした流れの中でGoogleは、EUのプライバシー規制に対するそのあからさまで利己的な批判に、学識のある、地域の事情に精通した、学術的な懸念を抱いたような雰囲気をまとわせていった。これは、外部の人間がそのプラットフォームで任期を務めてくれたお陰だ。

Googleはまた、諮問委員会には、規制の履行に関する意思決定プロセスを左右する権限があると主張していた。その最終報告書では、Googleの意向を汲んでヨーロッパのドメインでの検索インデックス除外を実施することにした(グローバルなcomは含まない)。報告書には反対意見も盛り込まれていた。しかし、Googleが望むポリシー上の立場が勝利した(Googleがお膳立てした委員会には善人も入っていたわけだ)。

Facebookの監督委員会は、また別の利己的な巨大ハイテク企業の曲芸だ。そこでは外向きに大きな出し物を見せつつ、ひと握りの難しいコンテンツに関する意志決定を外部委託するかどうかを自分で選べるようにしている。しかも、民主的な説明責任から逃げ回るために一般のそして政府の注意をそらす役割も果たしている。

今回のFacebookの見せかけの芝居において最も悪質なことは、Facebookのコンテンツ事業の末端の現場で毎日根を詰めて働いている何千ものモデレーターたちに、世間の人々の目を向けさせないようにしていることだろう。彼らは外部委託された声なき労働者だ。Facebookにアップされた中で、最も悪質と思われるコンテンツを短時間で処理しなければならない。いくつものメディアが伝えているが、彼らは精神的ストレスや感情的なトラウマ、さらにはもっと深刻な病に悩まされている

なぜFacebookは、現在抱えているコンテンツ専門家集団の適正な地位について公表するように委員会に言わないのか。また、ポリシー提言の権限を与えると委員会に言わないのか。

監督委員会のメンバーを、コンテンツ適正化のために雇われた人たちの中から選ぶことをFacebookが積極的に支持するとは考えにくい。Facebookはすでに、パイプから何が湧き出てくるかを心底恐れる人間的な感情が事業をストップさせてしまわないように彼らに金を払っている。

監督委員会のメンバーになるための資格について憲章には「メンバーは、思慮深く、偏見を持たずチームに貢献できる経験が実証された者でなければならない。一連のポリシーまたは基準にもとづく意志決定とその説明ができる能力を有し、デジタルコンテンツ、ガバナンス、表現の自由、民間の議論、安全、プライバシー、そしてテクノロジーに関連する問題に精通していること」と書かれている。

世界広しと言えども、この技能をすべて揃えたFacebookのモデレーターなど存在しない。そんなわけで、Facebookの監督委員会は彼らからの志願書は受け付けないだろう。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

フェイスブックが隠しておきたかった電子メールをひっそり公開

みなさん、今日は金曜日(訳者注:米国時間8月24日金曜日の記事)! しかも8月! フェイスブック(Facebook)が誰にも読んで欲しくないニュースを発表するには最良の日だ。ホームページの「ニュースルーム」へのリンクがないようなニュースだ。ちなみにニュースルームのニュースは、みんなに読んでもらいたくて、カラフルなイラストが満ち溢れている(たとえば「アプリやウェブサイトがフェイスブックに送信しているデータの管理・確認が可能に」みたいな自慢げなやつだ)。

フェイスブックがみんなに気付いて欲しくないあるブログ記事が、フェイスブックのニュースルームの下の階層の「お知らせ」(News)にそっと置かれていた。「Document Holds the Potential for Confusion」(混乱を招く可能性を含む書類)というタイトルもまた紛らわしい。万一、たまたまこの記事が発見されてしまったときのために、画像もグレーの書類アイコンで、さらに人の興味を失わせるようにしている。まるでフェイスブックが「とにかくこれはクリックしないで」と言っているようだ。

では、フェイスブックがこの夏枯れの時期にに隠しておきたいこととは、なんだろう?

2015年から始まった内部の電子メールのやりとりから、2015年12月にガーディアンがスクープする以前から、フェイスブックの従業員がケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)の活動を知っていた事実が垣間見ることができるのだ。同紙は、この疑惑のデータ分析企業(現在は廃業)が、当時テッド・クルーズ氏の大統領選挙戦に協力し、大量のフェイスブック・ユーザーの個人情報を、本人の知らない間に同意もなく収集し、そこから得られた見識をもとにターゲットの有権者に心理戦を仕掛けていたと報じた。

この事件に関するフェイスブックの創設者マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏は、公式アカウントのイベントのタイムラインで、以前から一貫して、ケンブリッジ・アナリティカの一件を知ったのは2015年12月、ガーディアンが報道した日だったとの主張を繰り返している。

しかし、今回フェイスブックが内容を公開した電子メールのスレッドでは、そのほぼ2カ月前から内部で問題視されていたことがわかる。

これは、ケンブリッジ・アナリティカに関する以前の内部文書(もっと断片的だが)と一致する。さらにそれは訴訟の結果としても表れている(私たちも、この記事この記事でお伝えした)。

最新の記事をクリックしてダウンロードすると、フェイスブックがワシントンD.C.の司法長官と「合意」のうえで「共同で公表」したと主張するその編集が加えられた電子メールのスレッドから、フェイスブックの社員たちが数多くのプラットフォームのポリシー違反の問題を提起しているのがわかる。2015年9月29日のメールでは、「政治的パートナーとの距離」に関する懸念が示され、「多くの企業が境界線にいるか、それを越えているようだ」と書かれている。

それまで、フェイスブックの従業員の間で「我々の市場に深く入り込んでいる(控えめに見ても)怪しげなデータモデリング企業」とされていたケンブリッジ・アナリティカの名前は、2015年9月22日、この電子メールスレッドから判明した。それは、ユーザーのデータを抽出していた数多くの企業のなかのひとつだった。しかしケンブリッジ・アナリティカは、「保守側で最大でもっとも貪欲」と説明されている。

2015年9月30日、あるフェイスブックの従業員がこれに返信し、ユーザーデータの抽出に関わっているアプリのApp IDとアプリ名を尋ねている。そしてこう書き加えている。「これらのアプリのデータ抽出はコンプライアンスに違反している気がする」。

「あなたが言うように、FPP(フェイスブック・プラットフォーム・ポリシー)に準拠しつつ、データ抽出行為に携わることは“非常に”難しいはずだ」とも、その人は書いている。

同じ日、ケンブリッジ・アナリティカは別のところでも名前が登場していた(the Cambridge app)。別のフェイスブック従業員は、「これらの企業は我々の規約に違反していない可能性が高い」との意見を述べている。この人は「具体的な例」を求め、「黒」と確定しない限り、彼らを訊問するべきではないと警告している。

だが10月13日、このフェイスブック従業員がスレッドに戻ってきて、こう意見を述べた。「データポリシーの違反がいくつかあるようだ」。

電子メールによる討論は、その当時、フェイスブックのプラットフォームを利用していた別の政治パートナーや代理店に関する問題に広がってゆく。そこには、フォーアメリカ(ForAmerica)、クリエイティブ・レスポンス・コンセプツ(Creative Response Concepts)、ネイションビルダー(NationBuilder)、ストラテジック・メディア21(Strategic Media 21)といった名前が並ぶ。「怪しげ」とされる政治活動が明らかに広がっていたとすれば、おそらくこれはフェイスブックのケンブリッジ・アナリティカに対する警戒が足りなかったことを示している。

12月11日、さらに別のフェイスブック従業員は、「残念ながら……この問題は知れ渡ってしまった」としながら、ケンブリッジ・アナリティカの迅速な調査を求めるメールを書いている。

同じ日、一人のフェイスブック従業員はこうメールに書いている。ケンブリッジ・アナリティカは「現時点で最優先課題」であり「できる限り速やかに対処すべき」と。このとき、最初に疑惑が浮上してから1カ月半が経過していた。

同じ12月11日、あるフェイスブック従業員は、フェイスブックのユーザーデータを抽出するためにケンブリッジ・アナリティカが採用したケンブリッジに拠点を置く開発企業GSRのことは、ガーディアンの記事で名指しされるまで知らなかったと書いている。しかし、他の数人のフェイスブック従業員が割って入り、ケンブリッジ・アナリティカとGSRのアレクサンドル・コーガン(Aleksandr Kogan)博士が開発したサイコグラフィックによるプロファイリング技術のことを個人的に知っていたと明かした。コーガン博士はケンブリッジ大学で、彼ら博士研究員の指導教官だったという。

別の人間は、ケンブリッジ・アナリティカが票の操作のために使用していた技術の基礎をなす人格モデリングに関する論文の著者、ミハウ・コジンスキー(Michal Kosinski)氏と彼らは仲が良かったと話している。彼らはその技術を「きちんとした科学」と呼んでいたという。

別の従業員は、フェイスブックがコーガン氏と協力していた可能性を指摘している。まったく皮肉なことに、それは「プロテクト・アンド・ケア・チームでの研究のため」だった。「Wait, What」というスレッドや他の電子メールを引用しているが、引用元は今回の「Exhibit 1」(添付書類1)には含まれていなかったようだ。

したがって私たちは、2015年9月ごろ、コーガン氏のGSRの共同創設者ジョセフ・チャンセラー(Joseph Chancellor)氏を雇うというフェイスブックの決断が、「Wait, What」スレッドの議題として登場しているかどうかは推測するしかない。

こうした内部の電子メールをブログ記事として公開したフェイスブックだが、「データ抽出に関する未確認の報告」と「アレクサンドル・コーガン氏のポリシー違反」は別々の問題だとする主張を変えることなく、こう書いている。

この文書は、ケンブリッジ・アナリティカに関する私たちの知見を取り巻く2つの異なる出来事を混乱させる懸念をはらんでいます。この文書には実質的に新事実は含まれておらず、ここにある問題はすでに報告済みのものです。先週の英国議会委員会での説明を含め、これまで再三申し上げてきたとおり、この2つの問題はまったくの別物です。ひとつは、情報抽出に関する未確認の報告です。私たちの製品から自動的な手段を用いて公的データにアクセスして収集を行ったというものです。もうひとつは、アプリ開発者のアレクサンダー・コーガン氏がケンブリッジ・アナリティカにユーザー情報を売却したという、ポリシー違反の問題です。この文書は、これらの問題は別々のものであることを示しています。この2つを結びつけてしまうと、誤解が生じる恐れがあります。

フェイスブックは、ケンブリッジ・アナリティカの疑惑が浮上した際に、それを「噂」と主張していた。

「フェイスブックは、コーガン氏がケンブリッジ・アナリティカにデータを売り渡していたことを、2015年12月まで知りませんでした。それは、私たちが宣誓の上証言した事実です。それは、私たちが主要な規制機関に説明してきたことであり、今日までその立場をとり続けています」と同社は書いている。

また、ケンブリッジ・アナリティカがデータを抽出していたとする問題を技術者が調査したが、証拠を見つけられなかったとも話している。「たとえ、そのような報告が確認されたとしても、その事件はコーガン氏が関わった職権乱用の規模を即座に示すものではありません」とフェイスブックは書いている。

フェイスブックは、ケンブリッジ・アナリティカ事件に関連して、個人データ不正利用の疑いでワシントンD.C.による訴訟を避けたいと考えているが、今のところ思い通りにはなっていない。

ワシントンD.C.の申し立ては、フェイスブックが同プラットフォームでのアプリを提供させるために、第三者のアプリ開発者に、消費者のインターネット上の行動を含む個人情報へのアクセスを許可したにも関わらず、消費者のデータとプライバシーを守るための適切な対策を取らず、有効な監視を怠り、プラットフォームのポリシーを遵守させなかったというものだ。さらに、フェイスブックはケンブリッジ・アナリティカへの情報漏洩をユーザーに知らせなかったことも申し立てている。

しかもフェイスブックは、ワシントンD.C.のカール・ラシーン(Karl Racine)司法長官からの同様の訴訟の回避に失敗した。こちらでは、プライバシーの軽視と、不明瞭なプライバシー保護基準が申し立てられている。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Facebookが商標侵害で中国企業4社を告訴

Facebook(フェイスブックは、FacebookInstagramでの偽のアカウントや「いいね」、フォロワーを売る数々の中国ウェブサイトに対し法的措置を取る。Facebook金曜日午後遅くに投稿した短いブログで告訴することを発表した(我々の関心を少ししか集めないための普通では考えられない動きだ)。もちろん、中国ではFacebookは禁止されているという事実は、ベゾス氏の言葉で言うところの事態を複雑にするものだ。

訴状は、米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提出された。訴状では、2017年から中国企業4社と中国を拠点とする個人3人がFacebook(例えば偽の名前や偽のIDを使用する)と不確実なアカウント(例えば本当でないアクティビティに使用される)の販売を促進するウェブサイトを運営し」、その過程でFacebookInstagramの商標と利用規約を侵害したと主張している。

訴状では、4社と、4社でサイト運営に関わった個人3人の名をあげている。4社はXiuネットワークサイエンス・テクノロジー、 Xiu Feishuサイエンス・テクノロジー、Xiufei Bookテクノロジー、Home Network Fujianテクノロジーだ。TechCrunchFacebookに、詐欺行為の範囲の明確化と、こうした行為に対する懸念を募らせた理由について問い合わせたが、明確には示されなかった。

商標侵害は、最大のソーシャルネットワーク企業であるFacebookにとって特段新しいものではない。なので、我々が想像するに、Facebookの怒りを買うほど侵害行為がかなり大規模だったのだろう。Facebookは商標侵害、利用規約違反、Facebookの名称を使ったドメイン名のサイバースクワッティングがあったとして6つのウェブサイトに対しそれぞれに10万ドルの賠償を求めている。この記事執筆時点で、指摘されたドメインのほとんどはまだ使用されていて、これはFacebookが法的措置を決めた理由の一つだろう。そうしたウェブサイトのいくつかはまた、GoogleTwitter、他の米国テック企業のサービスのアカウントも販売している。

Facebookは訴状に「そうしたウェブサイトによると、被告人らはさまざまなソーシャルネットワーキングサイト向けのアカウントの登録と販売を大量に行なっている」と記している。我々がそうしたサイトの19xiufacebook.comを見てみたところ、中国語でFacebookアカウント購入と入力して検索するとヒットする状態であることがわかった。

訴状はこちらのリンクから閲覧できる。


イメージクレジット: Photo by Stephen Lam/Getty Images / Getty Images

原文へ、翻訳:Mizoguchi)

若者に金を払い彼らをスパイするアプリをインストールさせるFacebook

競合他社のデータが欲しくてたまらないFacebookは、内密に人々に金を払い、Facebook ResearchというVPN(仮想プライベートネットワーク)をインストールさせていた。ユーザーのスマートフォンやウェブでの活動情報をすべて吸い上げるというものだ。これは、Appleによって6月に禁止され、8月に排除されたFacebookのOnavo Protectアプリとよく似ている。そこでFacebookはApp Storeから離れ、ティーンエイジャーや大人たちに報酬を支払ってResearchアプリをダウンロードさせるようになった。Facebookはこのアプリにルート権限を持たせ、おそらくAppleの規約に違反して、スマートフォンを使ったユーザーの活動の暗号解読と解析を行っていることがTechCrunchの調査で確認された。FacebookはTechCrunchに対して、Researchプログラムでユーザーの行動に関するデータを集めていたことを認めたが、止めるつもりはないとも話している。

2016年より、Facebookは、13歳から30歳までのユーザーに最大で月20ドルと紹介料を支払い、iOSまたはAndroid版の「Facebook Research」アプリをインストールさせて、彼らの個人情報を買い取っていた。Facebookは、Amazonの購入履歴のスクリーンショットの提出も要求していた。この計画は、ベータテストを請け負うApplause、BetaBound、uTestといった企業を通して運営され、Facebookの関与は隠されていた。一部の資料では、計画名が「プロジェクト・アトラス」とされていて、世界の流行やライバルをマッピングしようとするFacebookの思惑を見事に表現している。

我々が、Guardian Mobile Firewallのセキュリティー専門家であるWill StrafachにFacebook Researchアプリの解析を依頼したところ、彼はこう教えてくれた。「もしFacebookが、ユーザーにCertificate(証明書)のインストールを要求して、最高レベルまでアクセスを可能にした場合、次のようなデータを継続的に収集できるようになります。ソーシャルメディア・アプリでのプライベートなメッセージ、インスタントメッセージ・アプリでのチャット(互いにやりとりした写真や動画も含まれる)、電子メール、ウェブ検索、ウェブ閲覧、位置情報を追跡するアプリがいずれかでもインストールしてあれば、そこからリアルタイムの位置情報もわかります」 。この中でFacebookが本当に欲しい情報がどれなのかは不明だが、このアプリをインストールさせれば、ほぼ無制限にユーザーのデバイスにアクセスできるようになる。

この戦略から、Facebookが、その拠り所であるAppleのiOSプラットフォームの規約を破ってまでして、どこへ行こうとしているのか、また今の独占状態を保つためにどれだけ支払う気があるのかが見てとれる。Appleは、FacebookにResearchアプリの配布を止めさせる手段を講じたり、社内使用限定アプリの提供許可を取り消すなどしてきたが、両者の関係はどんどん悪化する恐れがある。AppleのTim Cookは、Facebookのデータ収集活動を再三批判してきた。iOSの規約に従わず、さらなる情報を吸い上げ続けるFacebookの問題は、新しい段階に入ろうとしている。TechCrunchは、この問題の認識についてAppleにコメントを求めたのだが、記者発表の前に話を聞くことはできなかった。

「とても専門的に聞こえますが、『私たちのRoot Certificate(ルート証明書)をインストールしてください』というステップにはゾッとします」とStrafachは私たちに話した。「これにより、Facebookは私たちのもっともセンシティブなデータに継続的にアクセスできるようになります。そしてほとんどのユーザーは、同意書にサインはしても、これに本当の意味で同意することはできません。同意した時点で、どれだけの権限をFacebookに譲り渡すのか、はっきりとわかる方法がないからです」

Facebookの調査アプリ

Facebookがデータを嗅ぎ回るビジネスを開始したのは、2014年に1200万ドル(約13億円)でOnavoを買収したときからだ。そのVPNアプリによって、ユーザーはモバイル機器のデータプランの利用状況を確認し節約することが可能になったのだが、同時に、ユーザーがどのようなアプリを使っているかという深いところまで解析する権利をFacebookに与えてしまった。BuzzFeed NewsのCharlie WarzelとRyan Macが入手した内部資料によれば、Facebookは、WhatsAppから1日に発信されるメッセージの量がFacebookのMessengerの2倍であることをOnavoを使うことで知ったという。OnavoはFacebookに、急速に成長するすスタートアップWhatsAppの存在を知らせ、2014年に同社を190億ドル(約2兆754億円)で買収する理由を与えた。それによりWhatsAppのユーザー基盤は3倍になり、Onavoはその優れた先見性を示すこととなった。

それから数年間、OnavoはFacebookに、どのアプリを真似するべきか、どのような機能を作り、どんな失敗を避けるべきかを提言してきた。2018年までFacebookは、メインのFacebookアプリのProtect」ボタンでOnavo Protectアプリを推奨し、情報源となるユーザーを増やそうとしていた。さらにFacebookは、監視中にパスコードや指紋でアプリをロックするOnavoのBolt App Lockアプリの配布を開始したが、プライバシー上の批判を受けてすぐに取り下げている。Onavoのメインのアプリは、今でもGoogle Playにあり、1000万回以上ダウンロードされている。

3月、ユーザーが画面をオンオフしたこと、またVPNがオフのときでもWi-Fiとスマートフォンのバイト単位のデータ利用状況をOnavo ProtectがどのようにFacebookに報告しているかをセキュリティーの専門家Strafachが詳しく解説すると、大きな反動が起きた。6月、Appleは開発者向けの規約を改定し、他のアプリの利用状況や、自身のアプリの機能とは関係のないユーザーの情報の収集を禁じた。8月、Appleは、Onavo Protectがデータ収集に関する規約に違反していること、そしてApp Storeでの配布を止めるようFacebookに伝え、Facebookはそれに従ったと、WSJのDeepa Seetharamanは伝えている。

しかし、それでもFacebookのデータ収集は終わらなかった。

プロジェクト・アトラス

TechCrunchがこのほど入手した情報から、Onavo ProtectがApp Storeから追い出されても、Facebookは似たようなVPNアプリを「Facebook Research」という別名で、ユーザーに報酬を支払う形でApp Storeとは別のところから配布していることがわかった。我々の調査で判明したのは、BetaBound、uTest、Applauseというベータテストを請け負う3つの企業に依頼して、FacebookがResearchアプリを配布しているということだ。Facebookは、2016年にResearch VPNアプリの配布を開始している。これは2018年中ごろから「プロジェクト・アトラス」と呼ばれるようになった。ちょうど、Onavo Protectの問題が騒がれ、AppleがOnavoを締め出すために規約を改定した時期だ。しかしFacebookは、一般ユーザーのスマートフォンの使用状況に関するデータの収集をあきらることはなく、Onavo ProtectがAppleによって排除された後も、Research計画を継続した。

uTestが運営するプログラムのInstagramとSnapchatの広告(下の写真)は、「有償ソーシャルメディア調査」と称して13歳から17歳の若者に参加を訴えかけている。Applauseが管理するFacebook Researchの申し込みページでは、Facebookの名前は出てこないが、「対象年齢:13-35(13-17歳の方は保護者の同意が必要です)」のユーザーを求めている。未成年者が申し込もうとすると、保護者の同意書の記入フォームが表示され、そこにはFacebookの関与がこう記されている。「当プロジェクトに参加することによるリスクは報告されてませんが、当プロジェクト固有の性質上、お子様がアプリをご使用になる際に個人情報が追跡されることをご理解ください。お子様のご参加には、Applauseより報酬をお支払いいたします」。お金が欲しい子どもたちは、報酬と聞けば自分のプライバシーをFacebookに売ってもいいと思うだろう。

Applauseのサイトでは、Facebook Researchアプリによって収集される可能性のあるデータの種類が次のように説明されている(私に該当する部分は太字にしてある)。

「このソフトウエアをインストールすることにより、あなたは私たちの依頼主に、あなたの携帯端末から収集したデータ、および、携帯端末にインストールしているアプリの機能の利用状況に関する情報の提供を許可したものとみなします。……つまり、あなたは以下のような情報の収集を、私たちの依頼主に許可します。あなたの携帯端末に入っているアプリは何か、いつどのようにそれを使っているか、あなたの利用状況およびそのアプリに含まれるコンテンツに関するデータ、それらのアプリを通じて、他の人たちがどのようにあなたやあなたのコンテンツに関わっているか。また、あなたは私たちの依頼主に、インターネットでの閲覧状況(どのウェブサイトを見たか、そして、あなたのデバイスとそれらのウェブサイトとの間で交わされたデータを含む)と、他のオンラインサービスの利用状況に関する情報の収集も許可することになります。私たちの依頼主は、アプリが暗号化されているとき、または保護されたブラウザーの利用中でも、これらの情報を収集することがあります

一方、URLの最後に「Atlas」と付いているBetaBoundの申し込みページでは、「アプリをあなたの携帯端末にインストールしてバックグラウンドで実行すると、1カ月に20ドル(eギフトカード)が支払われます」と説明されている。このサイトでも、最初にFacebookの名前は出てこないが、Facebook Researchのインストール説明書でFacebookの関与がわかる。

Facebookは、Appleの審査が必要で、参加者が1万人に限定されるApple公認のベータテスト・システムTestFlightは意図的に避けているようだ。その代りに、説明書では、ユーザーはアプリを「r.facebook-program.com」からダウンロードし、Enterprise Developer Certificate(企業向け開発者証明書)とVPNをインストールして、ユーザーのスマートフォンにFacebookがルートアクセスすることに加えて、大量のデータ転送を許可してFacebookを「信頼する」ことになっている。Appleでは、従業員に向けた社内用アプリの配布にのみこの証明書システムを使うよう、開発者に同意を求めている。テスターを無作為に募り、月額で報酬を支払うというのは、この規約の精神に反する。

インストールしても、VPNを常に実行状態にして、Facebookにデータを送り続けなければユーザーは報酬を受け取れない。Applauseが管理するプログラムでは、ユーザーのAmazonの注文履歴のスクリーンショットの提出も求めてくる。Facebookはこのデータを使って、ユーザーのネット閲覧の習慣とアプリの利用状況を、買い物の好みや買い方にが結びつけることができる。その情報は、ターゲットを絞ったピンポイントの広告を打ったり、どんなタイプのユーザーが何を買うのかを知る役に立つ。

TechCrunchは、Facebook Researchアプリの解析と、データの送り先の特定をStrafachに依頼した。彼は、データがOnavoのIPアドレスに関連付けられた「vpn-sjc1.v.facebook-program.com」にルーティングされていることを確認した。さらに、MarkMonitorによると、このfacebook-program.comドメインはFacebookに登録されているという。このアプリは、App Storeを介さなくても自動的に更新され、PeopleJourney@fb.comへのメールアドレスがリンクされている。さらに、企業向け証明書は、2018年6月27日にFacebookによって更新されていることをStrafachが突き止めた。これは、同類のOnavo ProtectアプリをAppleが禁止すると発表した数週間後だ。

「Facebookが実際にどのデータを(彼らのサーバーにアクセスせずに)保存しているかを探るのは困難です。今わかっている唯一の情報は、アプリのコードに基づいてFacebookが何にアクセスできるかだけです。それを見ると、とても不安になります」とStrafachは言う。「彼らの返答や主張によると、非常に限られた一部のデータのみを留め、または保存しているとのことです。それは本当かも知れません。どれだけFacebookの言葉を信じるかによりますが。この状況を、できる限り大目に見るなら、Facebookは自分たちに許しているアクセス権限の大きさを、あまり深く考えていないということになります。……もしそうであれば、衝撃的なまでに無責任な話です」

Appleの規約に対する目に余る反抗

TechCrunchの質問にFacebookの広報担当者は、これは人々がどのようにスマートフォンや他社のサービスを使っているかを調査するプログラムだと答えた。広報担当者はこう話している。「他の企業と同じように、私たちも事業の改善に役立つものを特定するために、人々に調査への協力をお願いしています。この調査は、人々がモバイル機器をどのように使っているかをFacebookが知るためのものなので、私たちがどのようなタイプのデータを収集するか、そしてどのように参加していただけるかに関する情報を、できる限り多く提供しています。ここで得られた情報を他者に漏らすことはありません。また、参加者はいつでも脱退できます」

Facebookの広報担当者は、Facebook ResearchアプリはAppleの企業向け証明書プログラムに準拠していると主張している。その逆であることを示す証拠を提示しても、弁解はなかった。彼らによると、Facebookが最初のResearchアプリを公開したのは2016年とのこと。このプログラムはフォーカスグループと同じだとの論を展開し、NielsenやcomScoreも同じことをしていると彼らは主張したが、NielsenもcomScoreも、VPNのインストールやルートアクセス権を求めたりしない。Facebook Researchプログラムは、たしかにティーンエイジャーを募っているが、世界中の他の年代の人々も募っていると広報担当者は語る。OnavoとFacebook Researchとは別物だと言うが、コードがそっくりだとの指摘に対して、どちらも同じ部署が担当ているからだと認めた。

Facebookは、Appleの企業向け証明書の規約には違反していないと言うが、規約の条件には真っ向から矛盾している。規約によれば、開発者は「プロビジョニング・プロファイルは貴社従業員の間でのみ、また開発およびテストの目的により社内で使用するアプリケーションと連結されている場合のみ配布できる」ことになっている。さらに「貴社の顧客に対して使用、配布、またはその他の形で提供してはならない」となっている。ただし、従業員の直接の管理下、あるいは会社の敷地内であればその限りではない。Facebookの顧客は、企業向け証明書に裏付けされたアプリを従業員が管理していない状況で使わせているので、Facebookが違反しているのは明らかだ。

Facebookは、これほどあからさまにAppleに反抗すれば、両社の関係は傷ついてしまう。「このiOSアプリに含まれるコードは、禁止されたOnavoアプリの単なる稚拙な焼き直しであることを強く示していて、Facebookは、Appleの規約に直接違反するFacebook所有の企業向け証明書を使い、このアプリをAppleの審査を受けないまま、好きなだけ多くの人に配布しています」とStrafachは我々に話した。ONVというプレフィックスと「graph.onavo.com」というメンション、そして「onavoApp://」や「onavoProtect://」というカスタムURLを使う手法で、彼らはアプリをばら撒いている。「これはいろいろな意味で甚だしい違反です。Appleは、署名した証明書を無効にして、このアプリを使えなくするために迅速に行動してくれるよう望みます」

ティーンエイジャーがソーシャルネットワークを離れ、SnapchatやYouTubeやFacebookが買収したInstagramに流れていく今、その年代がスマートフォンで何をしているのかは、Facebookが大いに知りたいところだ。中国の動画音楽アプリTikTokの人気の秘密と、そこでシェアされている話題(ミーム)を研究したFacebookは、Lassoというクローンアプリを立ち上げ、LOLというミームをブラウズする機能を開発していたことは、TechCrunchが最初に伝えている。しかし、Facebookがメディアで散々な批判を受けている最中も、ティーンエイジャーのデータを欲しがる同社に批評家たちはイライラを募らせている。明日のFacebookの収支報告会では、重要な情報を収集できる別の方法はないのかと、アナリストたちは質問すべきだ。

昨年、Tim Cookは、もしCambridge Analyticaスキャンダルの渦中にいるMark Zuckerbergの立場に立たされたらどうするかと聞かれたとき、こう答えている。「私は、そんな状況は決して招きません。……実際、お客様を金に替えれば、またはお客様が私たちの製品だったら、莫大な利益が得られます。私たちは、それをしないために任命されています」。ZuckerbergはジャーナリストのEzra Kleinに、Cookのコメントに対する感想として「まったく口先だけだ」と話している。

Appleが警告を発しても、Onavo Protectを排除しても、Facebookはそれでも貪欲にAppleのiOSプラットフォームを使って競合他社のデータを集めまくっている。「App Storeの開発者で、これほどあからさまなAppleの規約違反を見たことがありません」と、Strafachは締めくくった。AppleがResearchプログラムを排除しても、Facebookは、このプライバシーにうるさい状況下でまた別の方法で我々の行動を調査するか、あるいは闇に消えるかするだろう。

追加取材:Zack Whittaker

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

中間選挙はボットに歪められた2016年の大統領選挙の尾を引くのか?

[著者:Tiffany Olson Kleemann]

Distil NetworksのCEO。SymantecとFireEyeの元役員であり、ジョージ・W・ブッシュ大統領の下でサイバーセキュリティー・オペレーション首席補佐官代理を務めていた。

ロシアのボットがソーシャルメディアに侵入し、2016年の米大統領選挙に影響を与えたという事実は、これまでにも数多く報道されてきたが、いまだにその手口の詳細を伝えるニュースが後を絶たない。

実際、10月17日、Twitterは、2016年に4611件のアカウントによる海外からの妨害があったと発表している。そのほとんどは、ロシアのトロル集団であるInternet Research Agencyによるもので、100万件を超える疑わしいツイートや、200万件を超えるGIF画像、動画、ペリスコープ動画配信があった。

現在、もうひとつの重要な選挙が行われているが、最近の世論調査では、アメリカ人の62パーセントが、2018年の中間選挙は人生でもっとも重要な中間選挙になると考えているという(公的機関も一般市民も、2016年の教訓を学んでいるのかを疑うのは自然なことだ)。こうした国家単位の不正行為を撃退するために、何ができるのだろうか。

ここに、いいニュースと悪いニュースとがある。まずは悪いほうからお話ししよう。

2016年の大統領選挙から2年が経ったが、ソーシャルメディアはいまだに『熱狂する広告塔』というリアリティー番組を流し続けているように見える。自動化されたボットが、特定の観点を誇張するコンテンツを生成し増幅させることなくして、この世界では大きな地政学的イベントは起こりえない。

10月中旬、Twitterは、ジャーナリストのジャマル・カショギ失踪に関するサウジアラビア寄りの話題を一度に大量にツイート、リツイートしたとして、数百件のアカウントを停止した。

10月22日、ウォール・ストリート・ジャーナルは、NFLの選手が国歌演奏中に片膝をついて抗議の態度を示したことに関する論争を、ロシアのボットが煽っていたと報じた。クレムソン大学の研究者が同紙に伝えたところによると、Internet Research Agencyに属する491のアカウントから、1万2000件以上の投稿があり、2017年9月22日、トランプ大統領が、国歌演奏中に片膝をついた選手はチームのオーナーがクビにすべきだと話した直後に、その数はピークに達している。

この問題はアメリカ国内だけにとどまらない。2016年のイギリスのEU離脱に関する国民投票にボットが影響を与えたと指摘された2年後、スウェーデンの総選挙を目前にした今年の春と夏に、移民に反対するスウェーデン民主党を支持するTwitterのボットが急増した

この他にも、ボットによる偽情報の問題は続いている。しかし、そんなに悲観することもない。前進している部分もある。

写真提供:Shutterstock/Nemanja Cosovic

第一に、問題解決には意識を変えることが第一歩となる。ボットによる妨害が新聞の大見出しを騒がせるようになったのは、ここ2年ほどのことであることを認識しよう。

ピュー研究所が今年の夏に、成人のアメリカ人4500名を対象に行った調査では、アメリカ人のおよそ3分の2がソーシャルメディアのボットについて聞いたことがあり、その人たちの大半が、ボットが悪用されることを恐れているという(ただし、偽アカウントを見破る自信があると答えた人は非常に少なかったことは気がかりだ)。

第二に、政治家も行動を起こしている。カリフォルニア州知事ジェリー・ブラウンは、9月28日、人工物であることを隠してボットを使用すること禁止する法律に署名した。これは2019年1月から発効される (選挙民の判断に影響を与えないように、またその他のあらゆる目的での使用を阻止するのが狙いだ)。これは、チケットを自動的に購入するボットを禁止する全国的な動きに追随するものだ。アメリカにおいて、チケット購入ボット禁止の先駆けとなったのは、ニューヨーク州だった。

政治家がこの問題を認識し関心を高めるのは良いことだと思うが、カリフォルニアの法律には穴があるように思える。通常、ボットネットワークを操っている人間を特定することは非常に困難であるため、この法律の実効性が疑われる。罰則も曖昧だ。国家的な、または国際的な事柄に攻撃を加える者に対して、ひとつの州ではそもそも力が及ばない。とは言え、この法律はよい出発点になるだろう。この問題を真剣に考えているという政府の態度を示すことにもなる。

第三に、2016年のボットの活動に適切に対処できなかったソーシャルメディア・プラットフォームは、議会の厳しい調査を受けることで、悪質なボットをピンポイントで特定し排除することに積極的に取り組むようになった。

TwitterもFacebookも、ある程度の責任はあるものの、それらも被害者であることを忘れてはならない。こうした商用プラットフォームは、悪い人間に乗っ取られて、彼らの政治理念や信条の宣伝に利用されたのだ。

TwitterやFacebookは、人間か、人間ではない偽の存在が人間を装っているのかを見破るための努力をもっと早く始めるべきだったと言う人もいるが、ボットは、つい最近知られるようになったサイバーセキュリティー上の問題だ。従来のパラダイムでは、ハッカーがソフトウエアの脆弱性を付いてセキュリティーを突破するという形だったが、ボットは違う。ボットはオンラインビジネスの処理過程に攻撃を仕掛けるため、通常の脆弱性検査方式では検出が難しいのだ。

Twitterの10月17日のブログには、2016年の偽情報の不正操作の範囲に関する情報が書かれていて、その透明性には素晴らしいものがあった。「情報操作と組織的な不正行為が収束することはないことは明らかだ」と同社は話している。「この種の戦術は、Twitterが生まれるずっと前からあった。地政学的な地域が世界に広がり、新しい技術が登場するごとに、彼らはそれに順応して形を変える」

これが、私が楽観視する第四の理由につながる。技術の進歩だ。

1990年代後半から2000年代前半にかけてのインターネットの黎明期においては、防護技術が未発達だったため、ネットワークは、ワームやウイルスといった攻撃を受けやすかった。今でも侵入事件は起きているが、セキュリティー技術はずっと進歩し、攻撃を許してしまう理由は、防護システムの不具合よりも人間の操作ミスのほうが多いという状況になっている。

ボットを検出し被害を抑える技術は進化を続けている。今日のメールのスパムフィルターのように、自動的に効率的にボットを排除できる技術がいずれ確立されるものと、私は思っている。今はネットワークの中だけで働いているセキュリティー機能の統合が進み、プラットフォーム全体に及ぶようになれば、より効率的にボットの脅威を検知し排除することが可能になる。

2018年のうちはまだ、ボットに気をつけなければならないが、世界はこの課題に本気で取り組でいて、明るい未来を予感させる素晴らしい行動が見え始めている。

健全な民主主義と、インターネットでの企業活動は、そこにかかっている。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

フェイスブックを超える大きなデジタルドリーム「オープンブック」

大手ソーシャル系技術企業は、自身の強力なプラットフォームが持つ特性と、的確な舵取りと価値の創出に失敗したこと(自ら設定したと主張する規定にすら準拠できていないことが明らかになっている)の結果の両方によって生じたと反社会的な魔物と格闘を続けているが、それでも、よりよい方法があると夢見ている人たちがいる。人の怒りを食べて成長する広告技術の巨人、フェイスブックやツイッターを超えるソーシャルネットワークだ。

もちろん、「よりよい」ソーシャルネットワークを作る試みは数多くあったが、そのほとんどは沈没している。成功や利用度には差があるものの、今でも使われているものもある(スナップチャット、エロー、マストドンの3つは元気だ)。だが当然ながら、ザッカーバーグの王座を強奪できる者はいない。

その原因は、そもそもフェイスブックがイスンタグラムとワッツアップを買収したことにある。フェイスブックはまた同様に、自分たちよりも小さな成功の芽を持つライバル企業を買収して潰している(tbh)。そうやって、ネットワークのパワーと、そこから流れ出るリソースを独占することで、フェイスブックはソーシャルの宇宙に君臨している。それでも、もっと良いものを想像する人々の気持ちは止められない。友だちが作れて、社会に大きな影響を与えることができる、倫理的に優れ、使いやすいプラットフォームだ。

そんな、二面性のある社会的使命を持った最新の夢想家を紹介しよう。オープンブック(Openbook)だ。

彼らの理想(今はそれだけなのだが、自己資金で立ち上げた小さなグループと、宣言と、プロトタイプと、間もなく終了するキックスターター・キャンペーンと、そしてそう、希望に満ちた大志がある)は、ソーシャルネットワークを再考して、複雑で不気味なものではなく、より親しみやすく、カスタマイズができるオープンソースのプラットフォームを作ることだ。

営利目的のプラットフォームとしてプライバシーを守るという彼らのビジョンは、常に利用者を監視する広告やトラッカーは使わず、公正な料金設定(そしてプラットフォーム上で通用するデジタル通貨)によるビジネスモデルに立脚している。

彼らの中核にある考え方は、とくに新しいものではない。しかし、巨大プラットフォームによる大量にして目に余るデータの不正利用にさらされていると、その考え方が理にかなっていると思えるようになる。そのため、おそらくここではタイミングがもっとも重要なエレメントになる。フェイスブックは、度重なる舵取りの失敗、知覚評価の低下、さらに退陣する幹部役員のなかの少なくとも一人が、人を操作することに長け倫理に無関心であることから営業哲学が攻撃されるなど、これまでにない厳しい調査にさらされ、利用者数の伸び悩み知覚価値の低下を招いている。

より良い方向を目指すオープンブックのビジョンは、Joel Hernández(ジョエル・ヘルナンデス)が描いたものだ。彼は2年間ほど夢想を続けている。他のプロジェクトの傍らでアイデアのブレインストーミングを行い、周囲の似た考えを持つ仲間と協力して、彼は新しいソーシャルネットワークの宣言をまとめた。その第一の誓いは、正直な関与だ。

「それから、データスキャンダルが起きて、繰り返されるようになりました。彼らはチャンスを与えてくれたのです。既存のソーシャルネットワークは、天から与えられたものでも、不変のものでもありません。変えたり、改良したり、置き換えることができるのです」と彼はTechCrunchに話してくれた。

Hernándezによるとそれは、ちょっと皮肉なことに、昼食時に近くに座っていた人たちの会話を聞いたことから始まった。彼らは、ソーシャルネットワークの悪い点を並べ立てていたのだ。「気持ち悪い広告、ひっきりなしに現れるメッセージや通知、ニュースフィードに何度も表示される同じコンテンツ」……これに推されて、彼は宣言文を書いた紙を掴み取り、新しいプラットフォームを実際に作ろうと(というか、作るための金策をしようと)決意した。

現在、この記事を執筆している時点では、オープンブックのキックスターター・キャンペーンのクラウドファンディングは残り数日となったが、集まっているのは(控えめな)目標額の11万5000ドル(約1270万円)の3分の1程度だ。支援者は1000人をわずかに超える程度しかいない。この資金集めは、ちょっと厳しいように見える。

オープンブックのチームには、暗号文の神と呼ばれ、メール暗号化ソフトPGPの生みの親として知られるPhil Zimmermann(フィル・ジマーマン)も加わっている。開始当初はアドバイザーとして参加していたが、今は「最高暗号化責任者」と呼ばれている。そのときが来れば、プラットフォームのために彼がそれを開発することになるからだ。

Hernándezは、オランダの電気通信会社KPNが内部的に使うためのセキュリティーとプライバシー保護用のツールをZimmermannと一緒に開発していたことがある。そこで彼はZimmermannをコーヒーに誘い出して、彼のアイデアに対する感想を聞いたのだ。

「私がオープンブックという名前のウェブサイトを開いた途端、これまで見たことがないくらいに彼の顔が輝いたのです」とHernándezは話す。「じつは、彼はフェイスブックを使おうと考えていました。家族と遠く離れて暮らしていたので、フェイスブックが家族とつながるための唯一の手段だったのです。しかし、フェイスブックを使うということは、自分のプライバシーをすべて捧げるということでもあるため、彼が人生をかけてきた戦いで負けを認めることになります。だから、彼はフェイスブックを使いませんでした。そして、実際の代替手段の可能性に賭けることにしたのです」

キックスターターの彼らのキャンペーンページに掲載された動画では、Zimmermannが、営利目的のソーシャルプラットフォームの現状について彼が感じている悪い点を解説している。「1世紀前は、コカコーラにコカインが含まれていて、私たちはそれを子どもに飲ませていました」とZimmermannは動画の中で訴えている。「1世紀前の私たちの行動はクレイジーです。これから数年先には、今のソーシャルネットワークを振り返って、私たちが自分自身に何をしていたのか、そしてソーシャルネットワークで互いに傷つけ合っていたこと気づくときが来るでしょう」

「今あるソーシャルネットワークの収益モデルに代わるものが、私たちには必要です」と彼は続ける。「深層機械学習のニューラルネットを使って私たちの行動を監視し、私たちをより深く深く関わらせようとするやり方を見ると、彼らがすでに、ユーザーの関わりをさらに深めるものは、激しい憤り以外にないと、知っているかのようです。そこが問題なのです」

「こうした憤りが、私たちの文化の政治的な対立を深め、民主主義制度を攻撃する風潮を生み出します。それは選挙の土台を崩し、人々の怒りを増長して分裂を拡大させます。さらに、収益モデル、つまり私たちの個人情報を利用する商売で、我々のプライバシーが破壊されます。だから、これに代わるものが必要なのです」

Hernándezはこの4月、TechCrunchの情報提供メールに投稿してくれた。ケンブリッジ・アナリティカとフェイスブックのスキャンダルが明るみに出た直後だ。彼はこう書いていた。「私たちは、プライバシーとセキュリティーを第一に考えたオープンソースのソーシャルネットワークを作っています」と。

もちろん、それまでにも似たような宣伝文句は、ほうぼうから聞かされていた。それでも、フェイスブックは数十億という数の利用者を集め続けていた。巨大なデータと倫理のスキャンダルにかき回された今も、利用者が大挙してフェイスブックから離れることは考えにくい。本当にパワフルな「ソーシャルネットワーク」ロックイン効果だ。

規制は、フェイスブックにとって大きな脅威になるだろうが、規制を増やせば、その独占的な地位を固定化することになるだけだと反対する人もいる。

オープンブックの挑戦的なアイデアは、ザッカーバーグを引き剥がすための製品改革を敢行することにある。Hernándezが呼ぶところの「自分で自分を支えられる機能を構築すること」だ。

「私たちは、プライバシーの問題だけで、今のソーシャルネットワークから多くのユーザーを引きつけることは不可能だと、率直に認めています」と彼は言う。「だから私たちは、もっとカスタマイズができて、楽しくて、全体的なソーシャル体験ができるものを作ろうとしているのです。私たちは既存のソーシャルネットワークの道を辿ろうとは思っていません」

この夢のためであったとしても、データの可搬性は重要な材料だ。独占的なネットワークから人々を乗り換えさせるには、すべての持ち物とすべての友だちをそこに残してくるよう言わなければならない。つまり、「できる限りスムーズに移行ができるようにする」ことが、もうひとつのプロジェクトの焦点となる。

Hernándezは、データ移行のためのツールを開発していると話している。既存のソーシャルネットワークのアーカイブを解析し、「そこに自分が持っているものを開示し、何をオープンブックに移行するかが選べる」ようにできるというものだ。

こうした努力は、欧州での新しい規制が助力になっている。個人情報の可搬性を強化するよう管理者に求める規制だ。「それがこのプロジェクトを可能にしたとは言わないけど……、以前の他の試みにはなかった特別なチャンスに恵まれました」とHernándezはEUのGDPR(一般データ保護規制)について話していた。

「それがネットワーク・ユーザーの大量移動に大きな役割を果たすかどうか、私たちには確かなことは言えませんが、無視するにはあまりにも惜しいチャンスです」

製品の前面に展開されるアイデアは豊富にあると、彼は話している。長いリストを広げるように教えてくれたものには、まず手始めに「チャットのための話題ルーレット、インターネットの課題も新しいコンテンツとして捉え、ウィジェット、プロフィールアバター、ARチャットルームなど」がある。

「馬鹿らしく思えるものもあるでしょうが、これはソーシャルネットワークに何ができるかを見極めるときに、現状を打破することが狙いなのです」と彼は付け加えた。

これまでの、フェイスブックに変わる「倫理的」なネットワーク構築の取り組みが報われなかったのはなぜかと聞くと、みなが製品よりも技術に焦点を置いていたからだと彼は答えた。

「今でもそれ(失敗の原因)が支配的です」と彼は示唆する。「舞台裏では、非常に革新的なソーシャルネットワークの方式を提供する製品が現れますが、彼らは、すでにソーシャルネットワークが実現している基本的な仕事をするための、まったく新しい技術の開発にすべての力を注ぎます。数年後に判明するのは、既存のソーシャルネットワークの機能にはまだまだ遠く及ばない彼らの姿です。彼らの中核的な支持者たちは、似たような展望を示す別の取り組みに乗り換えています。そしてこれを、いつまでも繰り返す」

彼はまた、破壊的な力を持つ取り組みが消えてしまうのは、既存のプラットフォームの問題点を解決することだけに集中しすぎて、他に何も生み出せなかった結果だと推測している。

言い換えれば、人々はそれ自身が大変に面白いサービスを作るのではなく、ただ「フェイスブックではないもの」を作ろうとしていたわけだ(しかし最近では、スナップが、フェイスブックのお膝元で独自の場所を切り開くという改革を成し遂げたことを、みなさんもご存知だろう。それを見たフェイスブックがスナップの製品を真似て、スナップの創造的な市場機会を潰しにかかったにも関わらずだ)。

「これは、ソーシャルネットワークの取り組みだけでなく、プライバシーを大切にした製品にも言えます」とHernándezは主張する。「そうしたアプローチが抱える問題は、解決した問題、または解決すると宣言した問題が、多くの場合、世間にとって主流の問題ではないということです。たとえば、プライバシーがそうです」

「その問題を意識している人にとっては、そうした製品はオーケーでしょう。しかし、結局のところ、それは市場のほんの数パーセントに過ぎません。この問題に対してそれらの製品が提供する解決策は、往々にして、人々にその問題を啓蒙することに止まります。それでは時間がかかりすぎます。とくに、プライバシーやセキュリティーの問題を理解させるのは、そう簡単ではありません。それを理解するためには、技術を使いこなすよりも、ずっと高度な知性が必要になります。それに、陰謀説論者の領域に入って実例を挙げなければ、説明が困難です」

そうして生まれたオープンブックの方針は、新しいソーシャルネトワークの機能や機会を人々に楽しんでもらうことで、そしてちょっとしたおまけとして、プライバシーが侵害されず、連鎖的に人の怒りの感情に火をつけるアルゴリズムも使わないことで、世の中を揺さぶろうというものとなった。

デジタル通貨に依存するビジネスモデルも、また別の課題だ。人々に受け入れてもらえれるかは、わからない。有料であることが、すなわち障害となる。

まずは、プラットフォームのデジタル通貨コンポーネントは、ユーザー同士の不用品の売り買いに使われると、Hernándezは言っている。その先には、開発者のコミュニティーが持続可能な収入を得られるようにしたいという展望が広がっている。すでに確立されている通貨のメカニズムのおかげで、ユーザーが料金を支払ってコンテツにアクセスしたり、(TIPSを使って)応援したりできる。

つまり、オープンブックの開発者たちが、ソーシャルネットワーク効果を使い、プラットフォームから発生する直接的な支払いの形で利益が得られるという考えだ(ユーチューブのクリエイターなど、広告料金にだけ依存する形とは違う)。ただしそれは、ユーザーがクリティカルマスに達した場合だ。当然、実に厳しい賭けとなる。

「既存のソリューションよりも経費が低く、素晴らしいコンテンツ制作ツール、素晴らしい管理機能と概要表示があり、コンテンツの表示方法が細かく設定でき、収入も安定して、予測が立てやすい。たとえば、毎月ではなく、5カ月に一度といった固定的な支払い方法を選んだ人には報償があるとか」と、現在のクリエイターのためのプラットフォームと差別化を図るためのアイデアを、Hernándezは並べ立てた。

「そんなプラットフォームが完成して、人々がその目的のためにTIPSを使うようになると(デジタルトークンの怪しい使い方ではなく)、能力が拡大を始めます」と彼は言う(彼はまた、計画の一部としてデジタル通貨利用に関するその他の可能性についてMedium誌に重要な記事を書いている)。

この初期のプロトタイプの、まだ実際に資金が得られていない段階では、彼らはこの分野での確実な技術的決断を下していない。誤って反倫理的な技術を埋め込んでしまうのも怖い。

「デジタル通貨に関しては、私たちはその環境への影響と、ブロックチェーンのスケーラビリティーに大きな不安を抱えています」と彼は言う。それは、オープンブックの宣言に明記されたグリーンな目標と矛盾することになり、収益の30パーセントを「還元」プロジェクトとして、環境や持続可能性への取り組み、また教育にも役立てるという計画を、絵空事にしてしまう。

「私たちは分散化した通貨を求めていますが、じっくり調査するまでは早急に決めるつもりはありません。今はIOTAの白書を研究しているところです」と彼は言う。

彼らまた、プラットフォームの分散化も目指している。少なく部分的には分散化させたい考えだ。しかしそれは、製品の優先順位を決める戦略的決断においては、第一の焦点ではない。なので、彼らは(他の)暗号通貨コミュニティーからファンを引き抜こうとは考えていない。もっとも、ターゲットを絞ったユーザーベースのほうがずっと主流なので、それは大きな問題にはならない。

「最初は、中央集権的に構築します。そうすることで、舞台裏を支える新技術を考え出す代わりに、ユーザー・エクスペリエンスと機能性の高い製品の開発に集中できます」と彼は言う。「将来は、特別な角度から、別のもののための分散化を目指します。アプリケーションに関することで言えば、回復機能とデータ所有権です」

「私たちが注目しているプロジェクトで、私たちのビジョンに共通するものがあると感じているものに、Tim Berners LeeのMIT Solidプロジェクトがあります。アプリケーションと、そこで使われるデータを切り離すというものです」と彼は話す。

それが夢なのだ。この夢は素晴らしくて正しいように思える。課題は、独占的なプラットフォームの権力によって競争の機会が失われ、別のデジタルな現実の可能性を信じられる人がいなくなったこの荒廃した市場で、十分な資金と幅広い支援を獲得することだ。これを「信念の価値」と呼ぶ。

4月上旬、Hernándezはオープンブックのオンライン・プライバシーに関する説明と、技術コミュニティーから意見を聞くための簡単なウェブサイトへのリンクを公開した。反応は、予想どおり悲観的なものだった。「返事の90パーセントは批判と、気持ちが折れるような言葉で占められていました。夢を見ていろとか、絶対に実現しないとか、他にやることはないのか、とかね」と彼は話す。

(米議会の公聴会で、独占していると思うかと尋ねられたザッカーバーグは、「自分ではそんなつもりはない!」とはぐらかした)

それでも、Hernándezは諦めていない。プロトタイプを作り、キックスターターで資金を募っている。ここまで辿り着いた。そしてもっともっと作ろうと思っている。しかし、より良い、より公正なソーシャルネットワークが実現可能だと信じる人を必要な数だけ集めることは、何よりも厳しい挑戦だ。

しかしまだ、Hernándezは夢を止めようとはしない。プロトタイプを作り、キックスターターで資金を集めている。ここまで辿り着いた。もっともっと作りたいと彼は考えている。しかし、より良い、より公正なソーシャルネットワークの実現が可能だと信じる人たちを十分な数だけ集めることは、これまでになく大変な挑戦となる。

「私たちはオープンブックを実現させると約束しています」と彼は言う。「私たちの予備の計画では、補助金やインパクト投資なども考えています。しかし、最初のバージョンでキックスターターを成功させることが一番です。キックスターターで集まった資金には、イノベーションのための絶対的な自由があります。紐付きではありませんから」

オープンブックのクラウドファンディングの詳しい説明は、ここで見られる

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(翻訳:金井哲夫)

フェイスブックのない世界を目指して

親愛なるブロックチェーン派のみなさん。今はみなさんの時代だ。透過的で、強欲で、一攫千金型のスキームを捨て去り、現代の事実上の投機的安物株の賭博場から手を引いて、分散型の力を、世界の人々が求めているものに向けるのだ。ブロックチェーンの人々よ! あのフェイスブックの災厄から我らを救い給え! すべてを分散化し給え!

というのは、もちろん冗談だ。今のところは。

毎年、新しい「新たなるフェイスブック」が現れては、膨らんで、しぼんで、消えていく。どれもほぼ数週間の単位でだ。Diaspora、Ello、Mastodon、Veroを覚えておいでだろうか? 彼らは「ゲーム・オブ・スローンズ」の「壁」に挑んだ盗賊団だったと想像しよう。メンローパークの「冥夜の守人」に気づかれたが……、立ち去るまで完全に無視された。クリティカルマスを握った、200億人に貴重な機能を提供するための強力な兵器一式を生み出す高価で複雑なインフラ、それがフェイスブックの高さ210メートルに及ぶ氷と魔法の「壁」なのだ。

しかし、ConsensusやTokenFestといった人たちの会合では、陰でこう囁かれている。壁には秘密の抜け穴がある。それは根本的な欠陥だと。ユーザーが自分自身のデータを所持し、自分で暗号化し、自分で決めた場所に保管し、自分の意志によってのみ、また明確な許可の元においてのみそれを共有する分散型という黒魔術に直面したとき、フェイスブックの巨大なスケールによる優位性は溶けて流れてしまうという。それはピアツーピアで接続され、無数のノードを通してトークン型のプロトコルで仲介され支払いが行われる。そう、ご想像のとおり、これはある種のブロックチェーンだ。

今はまだホラ話だ。その根本的な欠陥は、非常に大規模な分散型ブロックチェーンという考え方にある。つまり、それは過剰であり、過大であり、誇大妄想的であり、時期尚早なのだ。彼らは、現存する秩序を丸ごと奪い取ろうとしている。金だろうが、金融セクターだろうが、民主的な統治だろうが、ソーシャルメディアだろうが、ともかく今みんなが頑張っている分野だ。おそらくその分野に関する白書では、トークンベースの分散型システムが、私たちがこれまで積み重ねてきたものに取って代わると書かれているに違いない。

親愛なるブロックチェーン派のみなさん。どうかやめてほしい。私もみなさんと同じく大きなことを考えるのが好きだが、物事を叩き壊すだけでは現実は変えられない。新たなビッグバンで何年間も燃え続けている松明を吹き消すことは不可能だ。現実的に考えるなら、熱心な仲間を集めて、小さく始めて、より大きな社会が目を向けてくれる魅力を身につけるまで、もしかしたら長期間にわたるだろうが、技術を磨き続けることだ。宿屋に冒険家たちを集めて、即席の軍団を作り「壁」に立ち向かうなどという行為を繰り返すのは、やめていただきたい。

とくに、一般消費者向けのアプリでそれを行うのは危険だ。「ブロックチェーンは新しいLinuxであって、新しいインターネットではない」と私は主張している。この数カ月間、そう主張する私の声は次第に強くなっている。ブロックチェーンの愛好家たちは、財布が膨らむ様子を見て、またどれだけの数のERC20トークンが存在するかを数えては楽しんでいるだろうが、実際、それには使い道がない。せいぜい投機的安物株ぐらいなものだ。一般人にとっては、何も面白くない。

比較的「マシ」なトークンであるUXも、根本的な問題を解決することはできない。インターネットでの少額取り引きは、分散型のトークンがまだ使い物にならなかったために失敗を繰り返したわけではない。その認識的負荷が大きすぎて、使用を継続できなかったからだ。トークンがあったからといって、それは一寸とも変わらない。もし、あなたが作った一般消費者向けの分散型のアプリを使って、一般のユーザーが意図的にトークンの貯蓄、消費、やりとりをし始めたら、その分散型アプリは失敗する。

しかし、それだけだろうか? この記事の冒頭に書いたことは単なる悪ふざけではない。親愛なるブロックチェーン派のみなさん。もしそれに気づいてさえいれば、今はあなたたちの時代だ。だが、みなさんの目的は中央集権型サービスに対抗することでも、それに取って代わることでもない。それは目的にはなり得ない。それでいいのだ。むしろ、現在目指すべきは、既存の中央集権型サービスを使いたくない人のための有効な受け皿だ。その人数の多い少ないは関係ない。

そもそもビットコインは、そういうものだった。中央集権的な金融に対する風変わりでちっぽけな代替手段だったのだ。それが10年の間に、びっくりするほどの生存力を得て、便利になり、自給自足が可能になり、世界的に成功した。しかし、それは今でも風変わりでちっぽけな代替手段に変わりはない。この先、想像できる範囲の将来にわたって、そうあり続けるだろう。

そんな、ビットコインが立てた波の中で、私たちは決済だけに留まらない分散型のアプリを開発するためのツールを得た。たとえばブロックスタックは、入門用チュートリアルの中に「分散型のマイクロブログ・アプリ」を含んでいる。COSMOSは、ブロックチェーン同士の相互運用が可能になるようデザインされている。チェーンの分散型ウェブ、つまり彼らが呼ぶところの「ブロックチェーンのインターネット」だ。そしてもちろんイーサリアムは、信じるか信じないかは別として、ICO専用ではない。任意の分散型コードを実行できる。さらに重要なことに、スループットを大幅に拡大できるように計画されているのだ。

私たちは、こうしたツールが集まって、たとえば小規模な分散型ソーシャルネットワークを構築するっといった状況を迎えつつある。いや、もうその時が来ているのかもしれない。それでも、クリティカルマスの問題にはぶち当たるだろう。しかし、それはアート集団、教会、マニアたちといった熱烈な支持者やコミュニティにフォーカスすることで解決できる。また、「一般人はトークンなんて使わない」問題もある。しかしそれも、各ノードにトークンを扱う管理者を置くことで対処できる。オンライン・コミュニティにかつて電子メール管理者やローカルのUsenetシスアドがいたのと同じことだ。一般ユーザーに必要なのは、URLとユーザーIDとパスワードのみ。そして、有料会員になるか広告を表示してもよいかを決断するだけだ。

荒唐無稽に聞こえるだろうか? そうかもしれない。しかし、私はかなりの量の最新の分散型システムのコーディングを行ってきたから言えるのだが、ツールもネットワークも、かなりいい線を行っている。もう一歩のところだ。もうすぐだ。ユーザーが自分のデータを自分で管理できるローカルなソーシャルネットワークが構築されたなら、それがノードの高次分散型ネットワークの一部となれば、すべてのコミュニケーションが共通のトークン化されたプロトコルで行われるようになる。それでやっと、まったく新しい、面白い世界が訪れる。そこではスケーリングの問題に頭を悩ませることがない。

だが私が思うに、実用的な代替手段になるために、フェイスブックほどのスケールを持つ必要はない。小さく考えよう。「壁」は動かない。しかし、その壁を乗り越える必要もないかもしれない。これからもフェイスブックは世界に君臨するだろうが、フェイスブックにみなさんの世界の一部を奪わせる必要はない。とくに、風変わりで、不格好で、可愛らしいほどボロボロの代替手段が現れ、そこに大きな感情的価値や実用的な価値が見い出せたなら、そしてそれがきちんと働いてくれたなら、「壁」を乗り越えなくても向こう側の人たちと会えるようになる。そのうち、あっちからも訪れてくるだろう。

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(翻訳:Tetsuo Kanai)