マーケティングテクノロジーに注力する投資会社Hawke Venturesが約6億円のファンドをクローズ

マーケティングコンサルタント会社Hawke Media(ホーク・メディア)の投資部門であるHawke Ventures(ホーク・ベンチャーズ)が、初のベンチャーファンドを560万ドル(約6億円)でクローズしたと発表した。

マネージングパートナーのDrew Leahy(ドリュー・リーヒ)氏は、同社が注力しているマーケティング・テクノロジーが、今のところ、他のベンチャーキャピタルの間ではあまり需要がないことを認めている。

「人々はmartech(マーテック)から逃げていますが、【略】それが我々の自信の輪になっています」と、リーヒ氏は筆者に語った。「世界の大企業を見てみると、今ではWalmart(ウォルマート)でさえ、結局のところすべてマーテック企業なのです」。

この表現には異議を唱える人もいるかもしれないが、インターネット上の最も大きなプラットフォームにおいては、マーケティングと広告が中心的な役割を果たしていることは否定でない。それをHawkeは戦略に結びつけた。リーヒ氏によると、同社は各投資先に10万ドルから25万ドル(約1080万円〜2700万円)の小切手を発行しており、追加投資を行う可能性もあるという。

SnapSuits.com(スナップスーツ)の共同設立者でCMOを務めていたリーヒ氏によれば、このファンドはHawke Mediaのために行っていた戦略的なエンジェル投資がルーツであり、最終的に同社のErik Huberman(エリック・ヒューバーマン)CEOとTony Delmercado(トニー・デルメルカード)COO
と連携して、より大きな賭けをするために資金を集めることになったという。

さらに同社では、小切手を切るだけに留まらず、ファンドに出資した51人のリミテッドパートナーのネットワークへのアクセスも提供できると、リーヒ氏は付け加えた。それらのLPには、Deathwish Coffee(デスウィッシュ・コーヒー)の創業者であるMichael Brown(マイケル・ブラウン)氏、MVMT Watches(ムーブメント・ウオッチズ)の創業者であるJack Kassan(ジェイク・カッサン)氏、VaynerMedia(ヴェイナーメディア)の元幹部であるJeff Nicholson(ジェフ・ニコルソン)氏、女優のHolly Robinson Peete(ホリー・ロビンソン・ピート)と元NFL選手のRodney Peete(ロドニー・ピート)夫妻、リアリティ番組「The Real Housewives of New York City(ザ・リアル・ハウスワイブス・オブ・ニューヨークシティ)」のJill Zarin(ジル・ザリン)氏、Video Genome Product(ビデオ・ゲノム・プロダクト)の創業者であるXavier Kochhar(ザビエル・コッチャー)氏、MarketShare(マーケットシェア)の創業者であるJon Vein(ジョン・ベイン)氏などが含まれている。

多くの投資会社が、次世代のFacebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)になる企業に資金を提供したいと言っているが、リーヒ氏は少し異なるところに焦点を置いているという。「私たちは異なるベンチャー企業を作ろうとしています。つまり、次の大きなアイデアは何かと考えるのではなく、自分たちで使える実際的な技術を構築することに力を入れる企業です」。

それは、この投資会社が主に中小企業で使用できる製品に焦点を当てているということでもある。

「私たちは大企業向けのマーテックファンドではなく、中小企業向けのマーテックファンドです」と、リーヒ氏はいう。「私たちは、数十万人のユーザーが関わることのできる技術を探しているのです」。

同社の初期の投資先には、SMSマーケティング会社のPostscript(ポストスクリプト)や、分析会社のYaguara(ヤグアラ)などがある。後者はChord(コード)に買収された

「Hawke Venturesは、Postscriptの初期の投資家の1つとして、設立当初から我々と一緒に仕事をしてきました」と、Postscriptの社長であるAlex Beller(アレックス・ベラー)氏は、声明の中で述べている。「Hawkeの組織全体が、初日から付加価値をもたらしてくれました。当社が会話型コマースの決定的なプラットフォームを構築するにあたり、Hawkeとのパートナーシップを継続できることを誇りに思います」。

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Zoomが同社プラットフォームでの事業立ち上げを支援する108億円のZoom Apps投資ファンド開設

2020年、Zoom(ズーム)がZoom Apps(ズームアプス)とそのアプリを販売するためのMarketplace(マーケットプレイス)をローンチしたのは、人気ビデオ会議アプリだけでは終わらないという強いメッセージだった。同社が目指すのは、開発者たちがZoom上でアプリが開発できるプラットフォームだ。

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米国時間4月19日、同社は1億ドル(約108億円)の投資ファンドを開設し、有望なスタートアップがZoomのプラットフォーム上で同社のツールセットを使った事業を立ち上げられるよう、資金を提供して支援すると発表した。同時に、その他の開発者たちにもプラットフォーム上のツールをジャンプ台として活用するよう奨励している。

「私たちは、実現性の高い商品と、アーリーステージの市場けん引力を持ち、Zoomエコシステムでの開発に関与し、そこへ資本投下している企業を探しています」とZoomのColin Born(コリン・ボーン)氏は、今回の新プログラム発表のブログ記事に書いている。

Zoomの幹部チームが強く関与する経営企画部門は、ポートフォリオ企業の選択と管理を任されることになる。同社では、ポートフォリオに加えられた企業には、それぞれ25万ドル(約2700万円)から250万ドル(約2億7000万円)の投資を行うことにしている。

「その大部分は、それらアーリーステージ企業が成長し成功するよう、事業推進を促し、Zoomの資源とコネクションが活用できるようにするのが狙いです」とZoomのCTOであるBrendan Ittelson(ブレンダン・イッテルソン)氏は私に話した。

投資の成功を望んではいるものの、その目的の大きな部分を占めるのは、Zoomが提供するプラットフォームを有効に利用するよう資金提供によって開発者たちを励ますことだ。「それらの企業が価値ある魅力的な体験を構築できるよう支援し、それを手にし、そこに投資することで、ソリューションの獲得とエコシステムのさらなる拡大を助け、ひいては顧客がそこから恩恵が得られるようにできると感じています」と彼はいう。

Zoomには、新参起業家たちがZoom機能を利用したアプリ構築に利用できる開発ツールが揃っている。2021年3月、同社は、プログラマーがZoom機能を開発中のアプリに組み込めるようにするSDK(ソフトウェア開発キット)を公開した。

また同社は、教育や医療など特定の目的のためにデザインされたアプリをZoomに埋め込むためのツールも提供している。さらに、その方法を集中的に学べる場所をdeveloper.zoom.usに開設した。

Zoomプラットフォームのためのアプリを開発する企業に投資しているのは、Zoomだけではない。Sequoia(セコイア)、Maven Ventures(メイベン・ベンチャーズ)、Emergence Capital(エマージェンス・キャピタル)といった企業も、すでにZoom上でアプリを開発するスタートアップ企業に投資を行っている。Mmhmm(ンーフー)、Docket(ドケット)、ClassEdu(クラスエデュ)などがそうだ。

このファンドは、スタートアップ創設者に、アイデアを実現に近づけるための資金調達に、新たなオプションを追加するものだ。イッテルソン氏は、投資はすべて創設間もない企業に向けたシードレベルのものであり、Zoomからは、若い企業の製品開発と流通を手伝う開発者とビジネス資源も提供すると話している。

現在、ポートフォリオに加えるべき有望なスタートアップを探している最中だと彼は話しているが、興味のある起業家のみなさんは、こちらからzoom.com/fundへ直接申し込むことも可能だ。

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(文:Ron Miller、翻訳:金井哲夫)

消費者直販スタートアップを支援するBrandProjectが約46.5億円を調達して新ファンドを設立

Freshly(Nestléに買収された)、Persona(Nestléに買収された)、Chef’s Plate(Hello Freshに買収された)など、消費者直販型のスタートアップ企業を支援してきたBrandProject(ブランドプロジェクト)が、同社によれば初の伝統的なベンチャーファンドになるという4300万ドル(約46億5000万円)の調達を発表した。

BrandProjectは、Virgin Mobile Canada(ヴァージン・モバイル・カナダ)の共同設立者であり、LEGO Americas(レゴ・アメリカズ)の社長を務めたAndrew Black(アンドリュー・ブラック)氏によって設立され、BrandProject Studio(ブランドプロジェクト・スタジオ)と連携した1200万ドル(約13億円)のファンドから投資を行ってきた。だが、資金は同社が提供するもののほんの一部に過ぎない。BrandProjectの8人のチームメンバーのうち6人はスタートアップ企業のサポートに専念しており、事実上のCTO、CFO、CMOを務めることも少なくないからだ。ちなみに、前述のFreshlyとPersonaはNestlé(ネスレ)に、Chef’s PlateはHello Fresh(ハロー・フレッシュ)に買収されている。

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新たに設立されたBrandProject Capital(ブランドプロジェクト・キャピタル)ファンドによって、同社はより(ある程度)成熟した企業に、より大きな投資を行うことができるようになる。ブラック氏は、この新しいファンドが100万ドル(約1億800万円)から300万ドル(約3億2400万円)の小切手を発行することになると予想している。目標は案件の半分を新規投資に、残りの半分をBrandProject Studioのスタートアップ企業へのフォローオン投資にすることだ。

「BrandProject StudioでもCapitalでも、同じようなタイプのビジネスをサポートしていきますが、Studioでは、私たちにとって早すぎるということはありません。私たちは何よりチームを重視します」と、パートナーのHayden Williams(ハイデン・ウィリアムズ)氏は述べている。「しかし、Capitalの案件であれば、たとえ小規模であっても、何かがうまくいっているという証拠を探すことになるでしょう」。

その対象は引き続き、消費者直販ブランドが中心となる。新型コロナウイルスの影響で、eコマースは膨大に拡大しているが、BrandProjectの戦略は変わらないと、ブラック氏はいう。

画像クレジット:BrandProject

「新型コロナウイルスのために投資対象を調整したことはありません」と、同氏はいう。「私たちは常に、世界が必要としていると思われるカテゴリー、ブランド、セグメントに投資してきました」。

新しいファンドに投資したリミテッドパートナーの1人は、おそらくBrandProjectがこれまで支援した企業で最も成功を収めたFreshlyの共同設立者でCEOを務めるMichael Wystrach氏(マイケル・ウィストラック)氏だ。自身が起ち上げた健康的な食事を提供するスタートアップをネスレに15億ドル(約1620億円)で売却したウィストラック氏は、BrandProjectのことをTechCrunchで読み、同社を調べた後、ニューヨークにいるパートナーのJay Bhatti(ジェイ・バッティ)氏に、いきなり食事を送ったことを回想した。

その時点では、Freshlyは友人や家族からしか資金を調達しておらず「誰からでも小切手を受け取っていた」とウィストラック氏は認めている。しかし、バッティ氏が料理を気に入り、同社が投資を決めてくれたことは幸運だったと述懐する。ブラック氏はFreshlyの暫定的な共同CEOとなり、バッティ氏は暫定的なCTO、そしてパートナーのAndrew Bridge(アンドリュー・ブリッジ)氏は暫定的なCMOを務めた。

「私がBrandProjectで好感持ったところは、我々のところにやって来てビジネスにああしろこうしろと口出ししなかったことです」と、ウィストラック氏は続けた。「『これをやるべきだ』と言われることはありませんでした。それは私たちのビジネスであり、彼らは私たちがビジネスを構築するのを支援するチームメンバーだったのです」。

新しいファンドの背景にある考え方を説明するために、ウィストラック氏は投資のエコシステムを米国の学校に例えた。「アンドリューとチームが入って来るところは幼稚園から小学校で、とても手がかかります。新しいファンドでは、おそらく中学校になるでしょう」。

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タグ:BrandProjecteコマース資金調達ベンチャーファンドFreshly

画像クレジット:BrandProject

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米国スタートアップの日本進出を支援するSIPグローバルパートナーズが164億円のファンドの一次募集を完了

日本は米国のスタートアップの進出ターゲットとして考慮されることは少なかったが、同国はここ数年Slack(スラック)、Salesforce(セールスフォース)、Twitter(ツイッター)、直近ではCLubhouse(クラブハウス)といった会社の有力市場となっている。米国時間3月10日、SIP Global Partners(エス・アイ・ピー・グローバルパートナーズ)は、日本をはじめとするアジア市場や湾岸協力会議(GCC)各国に進出の可能性のある米国のアーリーステージスタートアップに特化した新たなファンドの設立を発表した。同ファンドは目標である1億5000万ドル(約164億円)の第一次募集7500万ドル(約82億円)の調達を完了し、すでに5つの会社に投資している。

SIPの新ファンドはレイトシードからシリーズB段階までの、プロダクトがすでにあるか近々市場に登場する予定で、世界展開の準備が整っている会社が対象だ。同社は投資先企業と密に連携をとり、日本その他アジア市場での事業立ち上げを手助けする。

マネージングパートナーのJustin Turkat(ジャスティン・ターカット)氏は、日本は海外スタートアップにとって有望な市場であり、理由の1つはベンチャーキャピタルエコシステムが未発達なために起業家の数が少なく、国の有数な人材の多くが大企業や政府に就職することを選ぶからだとTechCrunchに語った。

日本のスタートアップ市場には大きな可能性があるが、まだ発生期にあると彼は付け加えた。一方、現在、日本は海外直接投資の世界最大の原資であり、約1億2500万人の消費者とスケーラブルなソリューションを必要とする大企業のいるこの国は、新技術のための成熟市場である。

「過去数年に起きたことを見てみると、日本は米国スタートアップとのビジネスに関してオープンで、これまでみたことがないほどの切迫感があり、私たちにとって大きな追い風が吹いていると思っています。米国スタートアップへの投資や提携を見ると、過去5年間は記録的な水準であり、契約件数も毎年増えています」とターカット氏は言った。

ファンドは日米4人の投資家が立ち上げた。ターカット氏と創業マネージングパートナーで元日本ベンチャーキャピタル協会前会長の齋藤茂樹氏は東京に、ゼネラルパートナーのJeffrey Smith(ジェフリー・スミス)氏と創業マネージングパートナーのMatthew Salloway(マシュー・サロウェイ)氏はボストンとニューヨークにそれぞれ拠点を置く。

「この事業を始めた理由はこのチームに関係があります。私たちは全員が国境を越えて仕事をすることにキャリアを捧げ、米国とアジアにわたり事業者と投資家両方を経験してきました」とターカット氏はいう。「パートナー4人全員がこの仕事で約20年以上の経験をもっています」。

過去数年、スタートアップの初期段階で海外展開が行われているのを見たきと彼は付け加えた。「かつては、米国のスタートアップがベンチャー支援を受けている場合、シリーズDラウンドまでは海外展開を考えないのが普通でした」。しかし今や企業は早ければシードラウンドの段階で海外市場を見据えている。

SIPの新ファンドは3つの分野でスタートアップを探している。クリエイティビティ(拡張・仮想現実、合成メディアおよびウェブベースプラットフォーム)、プロダクティビティ(人工知能と機械学習、エッジコンピューティング、モノのインターネットおよび半導体)、およびセーフティ(デジタル医療と情報セキュリティ)だ。

ターカット氏は、最先端技術の基幹インフラや経済レイヤーを提供する会社に焦点を絞っていくと語った。

例えば「インフラ・レイヤーでは、5Gが世界で同時に展開されている現状、エッジコンピューティングや半導体、セキュリティとAI・機械学習はすべてこのインフラストラクチャレイヤーの周辺にあります」と彼はいう。現在同ファンドの投資先でそのカテゴリーに入るのは、OpenRANのスタートアップ、Parallel Wireless(パラレル・ワイアレス)と超低遅延コラボレーション・プラットフォームのCroquet(クロッケ)がある。

「そして、さまざまな最新技術とそれに基づくプラットフォームとアプリケーションからなる経済レイヤーがあります」とターカット氏は付け加えた。同ファンドがこれまでに投資した3つの会社がこれにあたる。ブラウザーベースのノーコードモーションデザインプラットフォームのFable(フェイブル)、ARゲーミングプラットフォームのTilt Five(ティルト・ファイブ)、職場の安全に特化した産業用IoTのスタートアップであるKinetic(キネティック)だ。

戦略的投資家として、SIPは新しい国に進出するスタートアップと密に連携をとっている。これには、人材雇用や流通チャネルやジョイントベンチャーの候補として初期のビジネスパートナーを見つけることも含まれている。

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タグ:SIP Global Partners日本ベンチャーファンド

画像クレジット:SIP Global Partners

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インディアナポリスのVC「ハイアルファキャピタル」が約120億円のファンドを発表、起業初期のSaaS会社に投資

スタートアップのエコシステムを形成するには、さまざまな要素が必要だ。沿岸部の主要なハイテク中心地に属さない都市では、そのようなシステムを立ち上げるために計画的な努力を必要とする。インディアナ州のインディアナポリスでは、2000年にExactTarget(エグザクトターゲット)が設立されたことがきっかけだった。2013年にExactTargetがSalesforce(セールフォース)に25億ドル(約2730億円)で買収されたことで、インディアナポリスのスタートアップシステムに大量の現金がもたらされた。

そのExactTargetの買収から誕生したベンチャーキャピタル、High Alpha Capital(ハイアルファキャピタル)は米国時間3月11日、新たに1億1000万ドル(約120億円)のファンドを発表した。同社はB2BのSaaSスタートアップに注力しているVCだ。High Alphaのパートナーで共同設立者であるKristian Andersen(クリスチャン・アンダーセン)氏は、このファンドを新型コロナウイルスとそれがもたらした事業運営方法の変化という文脈で捉えている。

「私たちは今、かつてないほど混乱の時代に生きており、個人、企業、そして社会全体に多くの困難をもたらしています。このような困難な時代にもかかわらず(あるいはそのような困難な時代だからこそ)、私たちは、起業家精神とテクノロジーの融合によって世界を変革しようとする次世代の創業者たちを支援することに、これまで以上に確信と意欲を感じています」とアンダーセン氏は述べている。

もちろん、スタートアップシステムのレシピには資金が欠かせない。ExactTargetの創業者たちは買収によってそれを得た。彼らは教育、起業家精神を奨励するシステム、数学のスキル、エンジニアリングの才能のプール、そしてもちろん投資を促進するベンチャーキャピタルなど、ゼロからシステムを構築したかったと、同社創業者の1人であるScott Dorsey(スコット・ドーシー)氏は語っている。

「そのために必要なのは、才能、資本、サポート、メンターシップです。中でも才能を最も重視しなければなりません。High Alphaではもちろん、インディアナポリスの市場全体で、才能を重視しています。2番目は資本です。インディアナポリスのような市場では資本にアクセスできないことが多いので、自分たちで資金を調達することが重要なのです」とドーシー氏はいう。そして次のように続けた。

「3番目はサポートとメンターシップで、実際そのためにHigh Alphaが作られました。当社には、デザイン、マーケティング、プロダクト・エンジニアリング、財務、人事など、SaaS企業を起ち上げて成長させるために必要な40人のセンター・オブ・エクセレンスがチームに揃っています」。

High Alphaという会社は2つの部分に分かれている。1つはHigh Alpha Studioで、これは本当に初期段階の創業者のためのインキュベーターのようなものだ。もう1つのHigh Alpha Capitalが、今回の発表の中心である。

これは同社にとって3番目のファンドとなる。最初のファンドは2100万ドル(約22億9000万円)のHigh Alpha Oneで、2番目のHigh Alpha Twoは8500万ドル(約92億8000万円)だった。3つのファンドを合計すると、調達額は2億1600万ドル(約235億8000万円)となる。最初の2つのファンドの投資先は主にインディアナ州内だったが、今回のファンドでは、少なくとも一部の投資先を同州外にも拡大する計画だ。

High Alphaは、企業向けB2B SaaSの会社を対象に、プレシードからシリーズAまでの投資を行っており、ExactTargetを成功させた経験から、育成と学習を支援できるアーリーステージの企業に注力している。

同社が投資した企業には、Attentive(アテンティブ)、SalesLoft(セールスロフト)、Zylo(ザイロ)、Terminus(ターミナス)、The Mom Project(ザ・マム・プロジェクト)、Lessonly(レスオンリー)、LogicGate(ロジックゲート)、MetaCX(メタCX)、Socio(ソシオ)などがある。

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

長崎に世界からスタートアップを呼び込むためジャパネットとペガサスが約54億円の投資ファンドを設立

企業のスタートアップ投資ファンドの立ち上げを支援するPegasus Tech Ventures(ペガサステックベンチャーズ)は米国時間3月9日、日本最大級のテレビショッピング企業であるジャパネットとの新たな提携を発表した。両者は5000万ドル(約54億円)のベンチャー投資ファンドを設立し、長崎の大規模な地域新開発を含め、世界のスタートアップに投資する。

ジャパネットは、新たな分野への進出を支援するスタートアップを募集している。2024年にオープンする長崎のスタジアムシティという建設プロジェクトもその1つだ。これはスポーツスタジアムを中心にオフィス、商業施設、ホテル、イベント会場など、周辺の複合施設が含まれる。ジャパネットはまた、高齢者向けの新しいサービスや子どもたちへの教育支援にも力を入れていく計画だ。

ペガサステックベンチャーズのジェネラルパートナー兼最高経営責任者であるAnis Uzzaman(アニス・ウッザマン)氏がTechCrunchに語ったところによると、スタジアムシティは長崎経済の活性化を支援し、世界中からテックを含む新しい製品やサービスを同市に呼び込むことが目的だという。ジャパネットの計画は「初期段階のスタートアップと時間をかけてソリューションを共同開発することと、後期段階のスタートアップがスタジアムシティでローカライズして展開するのを支援することの両方を計画しています」と、ウッザマン氏は語った。

ペガサステックベンチャーズのチームは、ジャパネットが北米、イスラエル、ヨーロッパ、アジアを含む世界中のスタートアップをスカウトするのを支援する。同社は現在、15億ドル(約1630億円)の資産を運用している。同社が「Venture Capital-as-a-Service(ベンチャーキャピタル・アズ・ア・サービス)」プログラムを通じて協力してきた企業には、台湾のAsus(エイスース)や、日本ではジャパネットの他に、セガサミーホールディングス、サニーヘルス、インフォコム、アイシン精機などがある。同社の投資先には、SpaceX(スペースエックス)、23andMe、SoFi(ソーファイ)、Bird(バード)、Color(カラー)、App Annie(アップアニー)などのスタートアップが含まれる。

ジャパネットの投資ファンドによるアーリーステージのスタートアップに対する典型的な投資額は、10万ドル(約1090万円)から100万ドル(約1億900万円)の範囲となる。後期のスタートアップは、100万ドルから500万ドル(約5億4500万円)の間で投資を受ける。同ファンドの支援を受けたスタートアップ企業は、ジャパネットの他、三菱地所設計、JLLモールマネジメント、MSCクルーズジャパンなどの企業パートナーと綿密に連携することになる。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

海運業界の技術革新を支援する新ファンドMotion VenturesをRainmakingが起ち上げ

左からRainmakingの共同設立者Michael Pomerleau(マイケル・ポマーロー)氏、ディレクターShaun Hon(ショーン・ホン)氏、Wilhelmsenのオープンイノベーション担当副社長Nakul Malhotra(ナクル・マルホトラ)氏

シンガポール政府の支援を受け、海運業界の技術革新を支援する新しいファンドが発足した。Motion Ventures(モーション・ベンチャーズ)と呼ばれるこのファンドは、3000万SGD(約24億円)を目標としており、世界最大級の海事ネットワークを持つWilhelmsen(ウィルヘルムセン)と物流会社のHHLAがアンカー投資家として参加し、最初のクロージングを完了した。

Motion Venturesは、アクセラレータープログラム「Startupbootcamp」を運営するベンチャー構築・投資会社のRainmaking(レインメイキング)が起ち上げたもので、政府機関Enterprise Singapore(シンガポール企業庁)の投資部門であるSEEDS Capital(シーズ・キャピタル)と共同でスタートアップに投資する。

SEEDS Capitalは2020年6月、海運系スタートアップに5000万SGD(約40億円)を投資する計画を発表した。その目標は、より弾力性のあるサプライチェーンを構築し、新型コロナウイルス感染流行で強調された問題を修正することだ。

Motion Venturesのジェネラルパートナーで、RainmakingのディレクターでもあるShaun Hon(ショウン・ホン)氏がTechCrunchに語った話によると、同ファンドはAI、機械学習、自動化に注力している20社程度のアーリーステージのスタートアップに投資する計画で、投資額の規模は50万SGD(約4000万円)から200万SGD(約1億6000万円)の間であるとのこと。

「脱炭素化、サプライチェーンの回復力、安全性の向上など、我々は海事バリューチェーンにおける最大の課題のいくつかに目を向けています。ほとんどの場合、この業界の課題に対応する技術はすでに存在していますが、それらのソリューションを企業にどのように適用するかという工夫が欠けているのです」と、ホン氏はいう。

「Motion Venturesが目指しているのは、そこの対処です。業界で選出された者からなるコンソーシアムを結成し、プロセスの早い段階で起業家とつながることができれば、誰もが成功する可能性を最大限に高めることができます」。

Motion Venturesは、出資するだけでなく、Wilhelmsenのような老舗の海運会社と引き合わせ、スタートアップ企業の事業化とその技術をサプライチェーンに統合するための支援を行う計画だ。また、Motion Venturesのスタートアップは、Ocean Ventures Alliance(オーシャン・ベンチャーズ・アライアンス)からメンタリングを受けることもできる。Rainmakingが2020年11月に起ち上げたこのアライアンスには、現在40社以上の海事バリューチェーン業界のリーダーが参加している。

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画像クレジット:Rainmaking

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

2つの新しい取り組みがベンチャーファンドに直接投資する人々の範囲を広げる可能性

Acrew Capitalのメンバー。彼らはDiversity Capital Fundと呼ばれる最初のグロースファンドのメンバーでもある

ベンチャーファンドは歴史的に自身の投資資本について限られた種類のリミテッドパートナー(LP)に頼ってきた。1つのグループは年金基金、大学基金、病院システムなどの機関投資家だ。2つ目は企業。3つ目は裕福な個人と、多くの場合そのファミリーオフィスだ。

つまり、かなり狭い世界だが、今週発表された新しい、非常に異なる2つのイニシアチブがいずれもその方程式を変えようとしている。そしてまもなく同様の取り組みの先駆けとなる可能性がある。

Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏が最初にニュースを発表した。同氏は有色人種、女性、LGBTQコミュニティのメンバーが創業したスタートアップへの投資に特化するベンチャーキャピタルのBackstage Capitalの創業者だ。要するに、Backstageの中心には多様性がある。しかし、自身が黒人であるハミルトン氏は、多様な創業者だけに資金を提供することに興味はない。社会経済的にもさまざまなバックグラウンドを持つ多くの人々が、アセットクラスとしてのベンチャーキャピタルに投資できる環境づくりにも関心を持っている。

そのために同氏は今週初め、未公開企業への投資プラットフォームのRepublicで新しいファンドを開いた。非適格投資家を含む誰もが、Reg CFまたはRegulation Crowdfunding(レギュレーションクラウドファンディング)と呼ばれる証券取引委員会の規則の下で投資できる。

ハミルトン氏は、Reg CFで企業が調達可能な上限、すなわち12カ月の期間内で107万ドル(約1億1300万円)に達した。わずか100ドル(約1万600円)の投資に招かれた2790人の投資家にとっては数時間に感じられたはずだ。しかし次の展開があるかもしれない。この規則は2020年11月に元SEC議長のJay Clayton(ジェイ・クレイトン)氏の下で変更され、2021年3月から企業は最大500万ドル(約5億3000万円)をクラウドソーシングできるようになる。

このプロセスは次期SECチーフの下で進みが遅くなる可能性がある。バイデン大統領は、規制当局出身で元ゴールドマンパートナーのGary Gensler(ゲイリー・ゲンスラー)氏を任命した。同氏は上院の承認を受ける必要がある。新政権はまた、トランプ政権の後半に進められた措置の多くを見直している。ただし、すべてのシステムが機能すれば、もうすぐ非適格投資家が他の大規模なベンチャーファンドに出資するよう招待されるだろうと容易に想像できる。

機会がやってきた

今週2つ目のイニシアチブは、ハミルトン氏にとって同じ目的を持っている。つまり多様な投資家をLPに迎えることができる。ただしアプローチは異なり、適格投資家のみを対象としている。適格投資家とは、基本的に年間20万ドル(約2100万円)の収入があるか100万ドル(約1億600万円)以上の純資産を持つ個人を意味する。

ベテランベンチャーキャピタリストのTheresia Gouw(テレジア・ゴウ)氏が率い、パロアルトとサンフランシスコを拠点とするアーリーステージのベンチャーキャピタルであるAcrew Capitalが始めたファンドが米国時間2月3日、従来のグロースステージのファンドにひねりを加えて立ち上げていると明らかにした。現在のLPに新しいファンドへの投資機会を与えることに加え、レイターステージのプライベートビークルに投資する機会が必ずしもなかった多くの女性、有色人種、過小評価された個人にビークルを開放する。

ここで重要なのは、グロースステージの投資にAcrewが力を入れていることだ。より多くの女性や有色人種がシードステージ投資の仲間入りをしている一方で、アーリーステージの資金調達から収益を生み出すには長い時間がかかる。一方、グロースステージのファンドは投資先企業が通常「エグジット」に近いため、より独占的だ。そのため、ミューチュアルファンドやヘッジファンドなどにとって非常に魅力的であり、Acrewが現在、招き入れようとしている種類の個人が入り込む余地はほとんどない。

Backstageと同様、多様性はAcrewのDNAに組み込まれている。Acrewは、ゴウ氏が以前在籍したファンドで、Aspect Venturesの同僚のLauren Kolodny(ローレン・コロドニー)氏、Vishal Lugani(ビシャル・ルガーニ)氏、Asad Khaliq(アサド・カリク)氏、Mark Kraynak(マーク・クレイナク)氏と共同で創業した。

Acrewはチーム全体の88%が女性で、63%が過小評価された経歴を持っているという。そんな同社が多様なエンジェル投資家、取締役会メンバー、経営幹部をレイターステージの投資の世界に引き込むことに率先して公に取り組むことに驚きはない。

新しい取り組みを通じて投資のための新たな資本を獲得するBackstageのように、フィンテックとサイバーセキュリティに焦点を当て、他の多くの中でも高いバリュエーションを得たチャレンジャーバンクのChimeに出資したAcrewの新しい取り組みは包摂的かつ戦略的だ。

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コロドニー氏が説明するように、役員室の多様性を高めることに力を入れるスタートアップが増えている。多様な個人から成るLPの基盤を持ち、そうした個人を興味深い取締役会のポジションにつなげられれば、Acrewだけでなく、新しくLPになる企業にとっても、さらにすべての関係者にとって上手く機能するはずだ。

実際、Acrewのパートナーらはこのアプローチのために同社がこの先も他社と異なる存在でいることを望んでいない、とコロドニーはいう。「私たちの希望は、5年後、多様で独立した取締役会メンバーと多様な経営幹部が企業で増えることを支援するベンチャーキャピタルが他に例がない戦略になってしまわないことです」。

「その希望は」と同氏はつけ加えた。「この取り組みにより、ベンチャー企業への期待に関する新しい基準を人々が受け入れることです」。

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タグ:Backstage CapitalAcrew Capital

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi