水素燃料電池車によるオフロードレース「Extreme H」、2024年より開催予定

2024年には、水素燃料電池自動車を使ったオフロードレースシリーズが始まる見込みだ。この「Extreme H(エクストリームH)」と呼ばれるシリーズは、2021年初開催された電気自動車によるオフロードモータースポーツ「Extreme E(エクストリームE)」の姉妹大会となる。これら2つのシリーズは、同じ場所で、同じ日に、同じフォーマットでレースを開催することになる。シリーズの創設者兼CEOで、Formula E(フォーミュラE)の創設者でもあるAlejandro Agag(アレハンドロ・アガグ)氏によると、主催者は水素の統合に関して、合同レースと完全移行という2つの選択肢を検討しているという。

Extreme Hの競技用車両の開発は現在進行中で、計画では2023年初頭までにプロトタイプが完成することになっている。この車両には、Extreme Eで使用されているものと同じパワートレインとシャシーが使用される予定だが、主な違いは、中心となる動力源が、バッテリーではなく水素燃料電池になることだ。

Extreme Hの主催者によると、この燃料電池には水と太陽光発電で電気分解して作られるグリーン水素が使用されるとのこと。Extreme Eでも同様のプロセスでバッテリーを充電し、レース開催場所のパドックでは、バッテリーとグリーン水素を組み合わせて電力を供給している。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者Kris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Extreme H

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

レベルラリーでポルシェ・カイエンSの耐久テスト実施、オフロード競技で見せるオートモーティブグレードの真髄

優秀なアプリというのは、私たちの生活をより便利に、より快適にしてくれるものである。クルマに搭載されたGPSは渋滞の際にレストランへの最適ルートを見つけてくれるし、クルーズコントロールがあれば高速道路で切符を切られないよう速度を設定することができる。こういった車両機能は現代生活の必需品となっているが、あまりにも当たり前の存在のためそれがなくなってみない限りそのありがたみを感じることはない。Rebelle Rally(レベルラリー)の場合なら「その機能が禁止されない限り」と言ったところか。

Rebelle Rallyとは、年に一度開催される女性のためのオフロードナビゲーション競技だ。参加者は8日間にわたってテストエンジニア体験を行い、オートモーティブグレードというものへの理解を深めながら、砂漠に隠されたチェックポイントを見つけてポイントを獲得するというものである。

ハイテク製品を技術的に不利な環境下で限界に近い状態で走らせるというのは、自動車メーカーが生産前に行うテストの1つである。自動車メーカーは気候や気温の厳しい世界各地でテストを行い、氷点下、雪、泥、雨、猛暑、砂、風など、あらゆる環境下で車が極限に近い状態でも走ることができるかを試すのである。

こんなプロセスを意識する人などほとんどいないだろう。しかし2020年、Porsche Cayenne S(ポルシェ カイエン S)のハンドルを握り、砂嵐や砂漠の中を走り抜けた筆者はそれを肌で感じることになる。この経験は、オートモーティブグレードがいかに堅牢であるかを示すと同時に、消費者の手にクルマが渡るまでにどのようなテストが行われているかをほんの少しだけ教えてくれたのだった。

極限状態での競争

Rebelle Rallyはジオキャッシングとオフロード競技を組み合わせたイベントで、毎年10月に米国西部の砂漠地帯のさまざまな場所で開催される。ベテランのラリードライバー兼ナビゲーターであるEmily Miller(エミリー・ミラー)氏が考案したもので、2021年で6年目を迎える。女性が自分の家にあるクルマの限界を試すため、特に普通乗用車(険しいオフロードに挑むために改造されていないクルマ)を対象にこのラリーを始めたとミラー氏は語っている。

大会では52チームが毎日、紙の地図とコンパス、地図定規だけを使い、風景の中に点在するジオフェンスで囲まれた隠れたチェックポイントを探しに出る。チェックポイントには旗が立っているところもあれば、目印がまったくないところもあり、それぞれのチェックポイントには開始時間と終了時間が設定されている。

競技者は携帯型GPSロケーター(Iridium Yellowbrickトラッキングデバイス)を使って各チェックポイントでチェックインし、場所、オフロード走行の難易度、ジオフェンスで囲まれた正しいポイントにどれだけ近づいたかなど、さまざまな要素に基づいてポイントを獲得する。競技終了時に最も多くのポイントを獲得したチームが表彰台に上がることになる。

画像クレジット:Regine Trias / Rebelle Rally

カリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州の1500マイル(約2400km)を超えるオフロードコースで開催された2021年のレース。Porsche(ポルシェ)、Rivian(リビアン)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Jeep(ジープ)、Nissan(日産)、Toyota(トヨタ)などのメーカーが自社のクロスオーバー、SUV、トラックの性能を誇示するために、女性チームをOEM車に乗せて送り出す。2021年は各メーカーがスポンサーとなった11のチームが参加した。

この大会は、筆者にとってもPorsche North America(ポルシェ・ノースアメリカ)にとっても初めての試みだ。

このラリーは「実験場として設計されています。エンジニアが自分の設計したクルマで実際に走って競争するために参加している企業もあれば、ジャーナリスト、社員教育、顧客開拓、インセンティブのための本格的でハードコアなテストドライブと考えている企業もあります。そして、どこよりも美しい風景の中で競技が行われるのです」とミラー氏は話している。

砂と現代のクルマが出会うとき

画像クレジット:Regine Trias / Rebelle Rally

2021年のイベントは、天候の影響で例年よりもさらに厳しいものとなった。

最低気温が一桁となり、雨や雪、みぞれが降ったり、ネバダ州ビーティ近郊のビッグデューンで24時間続いたすさまじい砂嵐があったりと過酷な状況にさらされた。一晩中突風が60mphを超えて完全なホワイトアウト状態となり、筆者とチームメイトのBeth Bowman(ベス・ボウマン)を含むほとんどの選手が安全対策のために車中泊を余儀なくされた。

風と砂嵐がテントを破壊し、50人以上の競技者に毎晩燃料を供給している燃料トラックが非常に危険な状態になっていた。

これこそが、PorscheでCayenneのテストを担当するRalf Bosch(ラルフ・ボッシュ)氏のような人たちが、車両テストの際に望む気象条件なのである。「現代の自動車にとって、砂はとてつもない拷問です。砂丘で故障しないように、冷却装置やクラッチ、ドライブシャフトなどを特別に設計しなければなりません」とボッシュ氏は話している。

ボッシュ氏と同氏のチームは、フィンランドからアフリカまで世界各地を訪れ、燃焼エンジンとハイブリッドエンジンの両方を搭載したCayenneの試作車を過酷な天候の中でテストしている。

「極端な寒さ、極端な雨や霧雨、塩分や泥、雪を含んだ厳しい気温などでテストし、これらの条件がクルマにさほど影響を与えないことを確認しています。砂嵐の中で何日もクルマを走らせた後、雪と氷と寒さの中ですべてが凍るまで追い込み、その上で故障の兆候が出ないことを目指しています」。

冬季の過酷なテスト地として自動車メーカーにとって人気の高い、カナダのイエローナイフの荒野に、クルマの持ち主がCayenneを連れて行くことはまずないだろうが、このような厳しいテストは業界では日常茶飯事だ。こういったテストにより、自動車メーカーは車内外のテクノロジーがオートモーティブグレードであることを確認しているのだ。つまり、クルマに搭載されているGPS、オートストップ&スタートシステム、エンジンやモーターなどのすべてのものが、あらゆる条件のもとで故障したり完全に壊れたりすることなく動作するのである。

テック:諸刃の剣

画像クレジット:Regine Trias / Rebelle Rally

Rebelle Rallyは特にハイテク化が進む現代の自動車にユニークな課題を突きつける。同レースではGPSやデジタルコンパスの使用が禁止されているため、その緋色の内装からルビーという愛称が付けられた筆者達のCayenne Sには、Porscheの指導のもと、大会の規則や規定を満たすため、ナビゲーションシステムが完全に混乱して不正確なデータを表示するようにするための大掛かりな作業が施された。

「Cayenne SのGPS機能を無効にするために、すべてのアンテナ(GPS、GSM、WiFi)を取り外し、さらにPCMが米国以外の衛星を検索するようにプログラムして、米国の衛星ネットワークに接続しないようにしました」と、システムを担当したPorscheのプレスフリートテクニシャンのKyle Milliken(カイル・ミリケン)氏は伝えている。

つまり、我々が砂漠の奥地を運転している間ずっと、車両のシステムは自分たちが太平洋上にいると勘違いしており、デジタルコンパスもまったく役に立たないのである。

最新のクルマの多くがそうであるように、Cayenne Sにも気候から最低地上高、トラクションまですべてをコントロールする単一のスクリーンが配置されている。後者2つの機能は、全輪駆動車で困難なオフロードに挑戦する際に車高とパワー配分を積極的に管理、制御する必要があるため絶対に欠かせないものだ。もしPorscheがGPSを適切に無効化しなかった場合は、レース主催者側がCayenne Sのスクリーンを物理的にブロックし、車をドライブ、リバース、パーク、ニュートラルに入れる以上のことができない状態に設定する。

画像クレジット:Regine Trias / Rebelle Rally

堅牢な車体を持ち、デフロックやトランスファーケースを物理的なボタンで操作できるなど、オフロードの名に恥じない性能を持つ初代Cayenneとは異なり、最新のCayenneのオフロード機能やプログラムは、センターコンソールのメインスクリーンからしかアクセスできないようになっている。

それに加えて、ルビーも同様だったのだが、エアサスペンションを装備した最新のCayenne Sのタイヤ交換をするためには、スクリーン(およびそのメニュー)にアクセスできなければならない。また、クルマのオンロードとオフロードを快適にするオートレベリング機能をオフにしないと、ジャッキアップできないのである。もしGPSのために画面が遮られていたら、かなり苦戦していただろう。

Cayenne Sのエアサスペンションに装備されている優れたオフロード設定(筆者のお気に入りの設定は「Sand 」と「Rocks」で車体の高さが「Terrain」)のいくつかは、我々が行った耐久テストでは少々スマートすぎたようだ。

8月下旬にオセアノ砂丘でトレーニングをしていたとき、ベスと筆者はラリーで必要となるであろうセルフレスキューのスキルを練習するため、柔らかい砂にわざとはまってみることにした。エンジンをふかして抜け出そうとすると、Cayenneのトラクションコントロールシステムがホイールスピンをオーバーライドして止めてくれた。幸いにもラリー中にスタックすることはなく、タイヤがパンクしたり、クルマのどこかが破損したりすることもなかった。その頑丈さを証明したCayenneは、グラミス砂丘でスタックした他のクルマを救出したことさえある。

画像クレジット:Nicole Dreon / Rebelle Rally

これらはすべて、オートモーティブグレードの技術や部品、特に新Cayenneに搭載されているそれの開発過程における、過酷なテストに耐えた頑健性の証だ。大規模な砂嵐(さらに8日間の滞在中に小さな砂嵐が2回)、厳しい環境、そしてトリッキーな運転にもかかわらず、Cayenne Sは毎日期待通りのパフォーマンスを発揮してくれた。

毎朝、ルビーは快適なエンジン音とともに目覚め、私たちを快適に暖かく(あるいは涼しく)保ってくれた。不調だって一度もない。エアフィルターやブレーキが壊れることもなく、20インチのタイヤに空気を入れる以外何もすることなく、不気味なグラミス砂丘からハイウェイに入り、混沌としたロサンゼルスへと直行することができたのである。

これぞまさに、いかなる天候や環境下でも道路を走り続けることができるようにするための「オートモーティブグレード」テストの真髄だ。

「路上であれだけ優れていても、砂だらけのぐちゃぐちゃな状態ではそれほど優れているはずがないと考えるのが普通でしょう」とボッシュ氏。「Cayenneではオンロード性能を向上させることでオフロード性能も維持しようと努めており、その結果非常に高性能なクルマに仕上がっているのです」。

画像クレジット:Regine Trias / Rebelle Rally

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

フォーミュラEが「地球上で最も効率的なレースカー」となる第3世代のマシンを発表

電動フォーミュラカーによるレースシリーズを展開しているFormula E(フォーミュラE)が、地球上で最も効率的なレースカーを発表した。各チームはこの新しい第3世代(Gen3)のマシンを2022-23年シーズンで使用することになっており、2022年春に納車された後、テストを開始できるようになる予定だ。

Gen3は、第2世代のマシンよりも軽量・小型化されているだけでなく、レースで使用するエネルギーの少なくとも40%は回生ブレーキによって生成されると、フォーミュラEと国際自動車連盟(FIA)は述べている。そのため、Gen3は、リアに油圧ブレーキを持たない初のフォーミュラカーとなる。

また、Gen3は車体の前後両方にパワートレインを搭載した初のフォーミュラカーでもある。フロントに250kW、リアに350kWのパワートレインを搭載しており、合計でGen2の2倍以上に相当する600kWの回生能力を備える。

さらに、電気モーターは最大で350kW(470bhp)の出力を発揮し、最高速度は320km/hに達する。フォーミュラEとFIAによれば、そのパワーウェイトレシオは、同等の最高出力を発生する内燃機関の2倍の効率になるという。

画像クレジット:Formula E

Gen3は持続可能性を念頭に置いて設計されたマシンだ。ネット・ゼロ・カーボンとなり、壊れた炭素繊維製部品はすべてリサイクルされる。タイヤには26%の持続可能素材が使用されている。

「第3世代のマシンを設計するにあたり、私たちは高性能、効率性、持続可能性が妥協せずに共存できると実証することを目指しました」と、フォーミュラEのJamie Reigle(ジェイミー・ライグル)CEOは、声明の中で述べている。「FIAと協力して、私たちは世界で最も効率的で持続可能な高性能レーシングカーを開発しました。Gen3は、これまでで最も速く、軽く、パワフルで、効率的なレーシングカーです」。

フォーミュラEは、まだGen3のデザインを完全に披露しているわけではない。いくつかのティーザー画像が公開されただけだ。しかし、数カ月後には各チームがテスト走行を開始する予定であるため、我々がこのマシンの全貌を目にする日もそれほど先のことではないはずだ。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したKris Holtは、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Formula E

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新しいレーシングカーのためにF1がデータを収集した方法とは

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

こんにちは!立ち寄っていただいたことに感謝したい。今日は材料がてんこ盛りだ。資金調達ラウンドのダイジェストや、スタートアップ市場のデータ(DocSend[ドックセンド]に感謝する)などをお届けする。だが、最初は個人的に大好きなものから始めよう。レースだ。

The Exchangeは、テクノロジーマネーがF1の世界に流れ込むことに関する、さまざまなジョークを飛ばしてきた。Splunk(スプランク)、Webex(ウェベックス)、Microsoft(マイクロソフト)、Zoom(ズーム)、Oracle(オラクル)というた企業が、チームやレース、そしてリーグそのものを後援している。

F1のパートナーとして注目されているのがAmazon(アマゾン)だ。例えば同社のパブリッククラウドプロジェクトのAWS(アマゾン・ウェブサービス)は、F1中継の画面上に現れるグラフィックを動作させている。もちろん、ファンの目からはAWSグループの計算機クラスターがどのようにして特定の指標を出しているのかが正確にはわからないこともあるが、AWSによるタイヤの摩耗に関するメモは有用でタイムリーなものだ。

しかし、F1の世界の舞台裏では、Amazonがこれまで私が理解していた以上に活躍していたことがわかった。要するに、これまで述べてきたテクノロジー企業とF1のお金の話は、大きなパズルの一部に過ぎなかったのだ。それはどのようなものなのだろう?実はF1の新しい2022年型マシンの設計過程で、AWSが重要な役割を果たしていたことがわかったのだ。

マシンはこんな感じだ。

画像クレジット:フォーミュラ・ワン

なかなかいいんじゃない?

なぜこんなにスラリとした形状なのか気になっていると思う。その答えは、この車両が非常に特殊な空力目標を持って設計されているからだ。例えばF1マシンの後ろに流れる空気の影響で、後続車のコースどりが難しくなる「ダーティエア」現象を減らすことなどだ。

現在のF1マシンは、現行世代のF1ハードウェアとしては最後のシーズンを迎えているが、大量のダーティエアを発生させている(頑張れランド!)。そのため、大切なダウンフォースを失うことを恐れて、コース上のクルマ同士が近づくことができないという、少々厄介なレースになっている。ご存知のようにダウンフォースは、クルマが壁にぶつからずコース上に留まることを助ける。

F1が次の時代の競争で求めていた、ダーティエアを削減しよりクルマ同士が接近したレースを可能にするベースカーを設計するためには、CFD(Computational Fluid Dynamics、計算流体力学)に多くのコンピューターパワーが投入されなければならなかった。そのとき、AWSがF1のコンピューティングニーズに対応していることがわかったのだ。

今回、初めてAmazon Chime(アマゾン・チャイム、Amazonのウェブ会議システム)を利用して、F1のデータシステム担当ディレクターであるRob Smedley(ロブ・スメドレー)氏とこうした統合について話をすることができた。元フェラーリとウィリアムズのエンジニアだったスメドレー氏によれば、F1とAmazonは2018年から新型車のプロジェクトを進めているそうだ。F1には自社の問題を解決するための多くの頭脳が集まっており、一方Amazonはトリッキーな計算をするために大量のコアを提供した。

スメドレー氏によると、もし彼のチームが、個別のF1チームに許されているものと同じコンピューティングパワーを使っていたとしたら、2台の車が前後を走る新しいモデルを計算するのに1回あたり4日かかっていただろうという(なにしろF1レースというスポーツには、チームをある程度平等にするための、あるいはメルセデスの足を引っ張るための規制がたくさんあるのだ)。

しかし、Amazonが2500個の計算コアを提供したことで、スメドレー氏とF1のデータ科学者たちは、同じ作業を6時間または8時間で終わらせることができた。つまり、F1グループはより多くのシミュレーションを行い、より良いクルマを設計することができるのだ。時にはより多くの計算パワーを使用することもある。スメドレー氏は2020年のある時点で、彼のチームが十数種類の繰り返しシミュレーションを同時に実行したこともあるとThe Exchangeに対して語っている。これを可能にしたのは、約7500個のコアによるデータ処理だ。このシミュレーションの実行には30時間かかった。

つまり、F1にはテック系の資金が多く投入されていて、各チームが仕事をすることを助けて、財政的に余裕がある状態にさせていることは事実だが、しかし、F1の本質的な部分にも多くの技術が投入されているのだ。また、F1オタクの私にとって、自分の好きなことが仕事に結びつくのはとてもうれしいことだ。

さて、いつもの話題に戻ろう。

中西部の最新ユニコーン

M1 Finance(M1ファイナンス)は、私の取材活動の中に何度も登場する会社だ。その大きな理由は、彼らがずっと資金を調達し、新しいパフォーマンス指標を発表し続けているからだ。今週、同社は1億5000万ドル(約165億円)のラウンドを実施し、評価額は14億5000万ドル(約1595億7000万円)に達した。この消費者向けフィンテックスーパーアプリの最新の資金調達ラウンドは、ソフトバンクのVision Fund 2が主導した。

関連記事:フィンテックM1 Financeがソフトバンク主導のシリーズEラウンドでユニコーンに

さて、なぜ私たちがこの会社気にするのか?M1の超おもしろい点は、同社の収益の成長を時間軸に沿って追跡する方法を教えてくれたことだ。私がこのスタートアップを取材しはじめた頃、同社のCEOは、運用資産(AUM)の約1%程度の収益を挙げたいと語っていた。つまり、AUMの増加を追跡することで、会社の収益成長を追跡することができるのだ。

そして、同社はAUMの数字を発表し続けている(世の広報担当のみなさん、長期的なデータを提供することは、私たちにスタートアップへの興味を持たせ続けるためのすばらしい方法なのだ!)

M1のAUMを時系列で見てみよう。

1%の目標値で換算すると、年間収益はそれぞれ1450万ドル(約15億6000万円)、2000万ドル(約22億円)、3500万ドル(約38億5000万円)、4500万ドル(約49億6000万円)となる。言い換えれば、2020年6月から実質的に収益が3倍になっている。これはとても良い数字で、投資家が支持したいと思うような成長だ。それが今回のラウンドとなり、そして、M1の新しいユニコーン価格となった。

Truveta

Truveta(トゥルベータ)を覚えているだろうか? 以前、同社が計画を発表したときに、記事を書いている。Microsoft(マイクロソフト)の元幹部であるTerry Myerson(テリー・マイヤーソン)氏がチームの一員であり、私もかつてMicrosoftの取材を生業としていたため、このスタートアップには初期の頃から注目していた。Truvetaは「医療機関から大量のデータを収集し、それを匿名化して集計し、第三者が研究に利用できるようにしたい」と考えていることを、前回お伝えした。

今週、このスタートアップは、新しいパートナーシップと9500万ドル(約104億5000万円)の資金調達を発表した。これはかなり大きな調達額だ!このスタートアップは現在、17のパートナーヘルスグループを抱えている。

多くのデータを1カ所に集めることで、医療の世界をより良く、より公平にすることを目指している。そして今、その目標を達成するために大金を手に入れたのだ。この先何ができるあがるのかを見ていこう。

関連記事:データは米国の不公平なヘルスケア問題を解決できるだろうか?

その他の重要なこと

文字数を適度に抑えて編集の手間を減らしたために、他の記事では紹介しきれなかった重要なものを紹介しよう。

Cambridge Savings Bank(CSB、ケンブリッジ・セービング・バンク)がフィンテックに参入:Goldman(ゴールドマン)が一般庶民向けのデジタル銀行Marcus(マーカス)を立ち上げたことを覚えているだろうか?同じこと狙うのは1社だけではない。今回はCSBが独自のデジタル・ファースト銀行のIvy(アイビー)を構築しローンチを行った。率直に言って、長い営業の歴史と、古典的な技術スタックとサービス群を持つ銀行から始めるというアイデアを私は気に入っている。そして、そのすぐ隣にもっとモダンなものを建てるのだ。古い銀行そのものに新しい技術を習得させるよりも、その方が良い解決策となるだろう。また、多くの銀行がこのようなことをすれば、ある程度ネオバンクの勢いを削ぐこともできるだろう。だよね?

Code-X(コードX)が500万ドル(約5億5000万円)を調達、評価額を公表しても大騒ぎにはならないことを証明:「ラティスベースのデータ保護プラットフォーム」を構築したフロリダのスタートアップ、Code-Xが、最新の増資により4000万ドル(約44億円)の価値を持つことになった。いや「ラティスベースのデータ保護プラットフォーム」が何であるかは知らない。しかし、Code-Xがアーリーステージ ラウンドの一環として評価額を発表したことは知っている。それは拍手喝采に値する。よくやった、Code-X。

最後にDocSendのデータ:その名の通り「文書を送る」同社が今週新しいデータを発表したので、ご紹介しよう。以下がその主たる内容だ。

DocSendのStartup Index(スタートアップインデックス)中の2021年第2四半期のデータによると、スタートアップのピッチ資料に対する投資家の関心とエンゲージメント(需要の代名詞だ)は、前年同期比で41%増加している。一方積極的に資金調達を行っているファウンダーが作成したピッチ資料へのリンク(供給の指標だ)は、2021年第2四半期に前年同期比で36%増加している。

なぜこれがおもしろいのかって?需要が供給を上回っているからだ!あははっ!それがすべてを物語っているような気がする。

ここ数週間、ベンチャー企業の第2四半期決算を調べてきたが、どうにも簡潔にまとめることができなかった。なぜスタートアップの評価額が上がっているのか?なぜ スタートアップ企業はより多くの資金を、より早く調達しているのか?なぜなら、ベンチャーの後援対象となる企業たちに対して、投資家の需要が供給をはるかに上回っているからだ。

それが2021年だ。

きょうのみなさんは素晴らしく、楽しそうで、とてもすてきだ!

来週は、バッテリーに特化した2つのSPAC、つまりEvonix(エボニックス)とSESについてご紹介する。バッテリー技術、エネルギー密度、そして未来について、多くのことを語ることができるだろう。そして、もちろんお金についても。

ではまた。

カテゴリー:その他
タグ:The TechCrunch Exchangeレース自動車F1AmazonAWSユニコーンM1 Finance

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

「スター・ウォーズ」のポッドレースを彷彿とさせるeVTOLレースが2021年開催、Airspeeder主催

eVTOL(電動垂直離着陸機)産業の大半が都市エアタクシーや貨物輸送に目をつけている一方で、起業家のMatthew Pearson(マシュー・ピアソン)氏は別のアイデアを持っていた。空飛ぶ電動レース機だ。ピアソン氏は2019年に2つの会社を興した。機体を製造するAlauda Aeronautics(アラウダ・エアロノーティクス)と、機体を競わせるインターナショナルシリーズのAirspeeder(エアスピーダー)だ。そして現在、Airspeederは初の電動飛行レース機のテストフライトを完了し、2021年EXAシリーズの最初のレースを開催する準備が整っていると話す。

飛行レース機である電動Alauda Mk3は南オーストラリアでテストフライトを実施した。機体認証を行うオーストラリアの民間航空局がフライトを確認した。ピアソン氏のビジョンは、Airspeederの映画のようなトレーラーを観るとわかるが、パイロット座席に人間が座っていない、「スター・ウォーズ」に出てくるポッドレースを彷彿とさせるレースだ。

2021年に開催されることになっている最初の3つのレースには、リモート操作される機体が参加する。Airspeederは2022年にもパイロットが乗り込んでのレースを計画している。

パイロットなしのMk3の最高速度は時速200km、重量は130kgだ。停止した状態から時速約100kmに達するまで2.8秒だと同社は話し、TeslaのModel SやPorscheのTaycanになぞらえた。フォーミュラ1やNASCAR(ナスカー)に忠実に、Mk3はピットに入っている間にすばやく取り替えられるバッテリーを搭載している。ピットクルーは、Alaudaがデザインしたバッテリーを20秒もかけずに取り替えることができる。Mk3は1つのバッテリーパックで10〜15分飛行することができる。そのため45分間のレース中、地上のパイロットは遠隔操作で約3回、機体をピットに着陸させることになる。

Mk3は、ピアソン氏がいう衝突回避システムを構成するLiDAR、レーダー、そしてマシーンビジョンを搭載している。同社は各機体に備わっているセンサーの数を明らかにせず、また専有情報だとしてシステムについてのさらなる詳細の提供についても却下した。しかし飛行レース機のための安全システムのデザインに関する課題は、機体が互いにぶつかることなく可能な限り近づけるよう十分なフレキシビリティを持たせることだ。競い合うパイロットにとってこれは問題だが、Airspeederのシステムについてもそうだ。

ピアソン氏は次のように説明した。「機体は互いに通信して、相手がどこにいるかを把握しており、同じアルゴリズムを使って同じ方法で衝突回避の問題を解決します。ですので、機体は互いの行動を予測することができることを知っています。それが衝突回避のフレームワークのようなものです。その中でパイロットに可能な限り多くの自由とコントロールを与えたいと考えています。パイロットとマシンの間にある壁をどこまで高くするのかという点が、本当におもしろいところです」。

エアタクシーサービスを開発しているメジャーなeVTOL企業と比べても興味深いものだが、電動飛行レース機のためのエコノミクスと商業化への道は異なる。「商業化モデルはかなり急速に進んでいます」とピアソン氏は話した。「商業展開が可能な他の誰よりも我々は真っ先にレースすることができます」。

Airspeederがそのように身軽に動ける理由の1つに、認証に向けた道が人々を輸送するエアタクシーとはかなり異なることが挙げられる。一部の推定によると、そうしたスタートアップはデザイン、認証、機体モデル1つの製造に数億ドル〜10億ドル(数百〜約1100億円)も使う。Mk3は特定の安全・対空性基準を満たす必要がある実験のための認証をオーストラリアの民間航空局から取得して飛行しており、重量規制は客を乗せる機体よりもかなり少ない。

「当社のプログラムに関して重要なことは、機体を一定の開発サイクルに維持することです。1つの機体を製造して、その後10年以上認証する代わりに、当社は毎年新しい機体を作ります」とピアソン氏は説明した。「航空がいかに普通に機能するかではありません。そして、乗客向けに応用したいのなら、どのようにするかではありません」。

Airspeederは2020年4月に額非公開で初の資金調達を行った。そのラウンドはオーストラリアの投資家Saltwater CapitalとJelix Venturesがリードした。ピアソン氏は自身も資金を注入し、ロジスティック企業DHLと高級腕時計メーカーIWC Schaffhausenとの提携を獲得したと述べた。Airspeederは、どのようにスモールスケールの航空機製造オペレーションの資金を賄ったのかについて詳細は明らかにしなかった。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:AirspeedereVTOLレース

画像クレジット:Airspeeder

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi