動物性代替タンパク質開発企業は1500億円超を調達、微生物発酵技術に投資の波

Perfect Day(パーフェクト・デイ)、Impossible Foods(インポッシブル・フーズ)など、食品、衣類、化粧品、化学薬品に使用されている動物性食品の代替品を開発している多くのスタートアップが、今年の上半期までに15億ドル(約1570億円)という巨額の資金を調達している。

持続可能な食品への投資の成長を追跡しているThe Good Food Institute(GFI、グッドフード・インスティテュート)の新しい報告書によると、発酵技術が基礎技術の第3の柱として浮上してきていると指摘しており、そこでは、新しく確立された食品ブランドが動物性食品をほかのタンパク質源と代替する製品を製造しているそうだ。

微細藻類やマイコプロテインなどの微生物を利用した発酵技術は、バイオマスを生産し、植物性タンパク質を改良し、新たな機能性成分を生み出すことができる。これらの技術を開発・展開する企業は、2020年7月末までに4億3500万ドル(約454億円)の資金調達を行っている。これは、食品技術の市場がいかに競争力のあるものであるかを示すもので、GFIによると、2019年全体で投資された2億7400万ドル(約286億円)を60%近く上回っていることを表している。

GFIの科学技術アソシエイトディレクターを務めるLiz Specht(リズ・シュペヒト)氏は声明の中で「発酵は、風味、持続可能性、生産効率の向上のための巨大な可能性を持つ代替タンパク質製品の新しい波を後押ししています。投資家やイノベーターはこの市場の可能性を認識しており、代替タンパク質産業全体のための可能性のあるプラットフォームとして発酵の活動が急増しています」と説明する。「これは始まりにすぎません。この分野では、技術開発の機会はまったく利用されていません。将来の多くの代替的なタンパク質産物は、現在利用可能な大量のタンパク質生産方法を利用し、植物、動物細胞培養、および微生物発酵に由来するタンパク質の組み合わせを利用できます」と続けた。

画像クレジット:Getty Images

15億ドルという数字が示すように、大物投資家が注目している。Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏の支援を受けたBreakthrough Energy Ventures(ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ)、Temasek(テマセック)、Horizons Ventures(ホライゾンズ・ベンチャーズ)、カナダ年金制度投資委員会、Louis Dreyfus(ルイ・ドレフュス)、Bunge Ventures(バンジ・ベンチャーズ)、Kellogg(ケロッグ)、ADMキャピタル、Danone(ダノン)、Kraft Heinz(クラフトハインツ)、Mars(マース)、Tyson Foods(タイソンフーズ)の投資部門からのファンドが、すべてこの業界の企業を支援している。

GFIによると、発酵に特化したスタートアップは、世界の食肉会社の3.5倍、米国の植物由来の食肉、卵、乳製品会社の60%近くの資本を調達してるという。業界が成長するにつれ、英国発祥の肉代替製品Quorn(クオーン)が1985年に発酵由来のタンパク質を使用した最初の企業となって以来、大手の産業企業が注目し始めている。

GFIの報告書によると、代替タンパク質に特化したスタートアップは世界に少なくとも44社あるほか、バイオテクノロジー企業のNovozymes(ノボザイムズ)、DuPont(デュポン)、DSMなどの大手上場企業も代替タンパク質ビジネスのための製品ラインを開発している。

応用範囲の広さを考えると、発酵は代替タンパク質が直面している現在の多くの課題を解決できると考えられる。一方で、バイオマス発酵は、栄養価の高いクリーンなタンパク質を高効率かつ低コストで生産できる。

新しいタンパク質生産技術を開発するスタートアップ支援を専門とするCPT Capitalの投資家であるRosie Wardle(ロージー・ウォードル)氏は「高付加価値、高機能、栄養成分を生産するための高度発酵発酵技術は非常に刺激的であり、植物ベースのカテゴリーに革命をもたらす可能性があります」と語る。そして「投資の観点から見ると、このカテゴリーにおける成長の余地が多く非常に興奮しており、投資を積極的に増やしたいと考えています」と続ける。

GFIの新レポートは、代替タンパク質アプリケーションのための発酵の最初の包括的な概要であり、より効率的で有害性の少ない世界的な食糧システムの構築を望むすべての人にとって必読の書となるはずです」と同氏は締めくくった。

画像クレジット:Alternative protein

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(翻訳:TechCrunch Japan)

ジャックフルーツで人工肉を作るシンガポール拠点のKaranaが1.8億円調達

シンガポールでは植物ベースの代替肉への需要が増しているようだ。事実、Beyond Meat(ビヨンド・ミート)、Impossible Foods(インポッシブル・フーズ)、Quorn(クォーン)といった企業の製品への関心度は、このパンデミックの間にも上昇している。その理由には「消費者が健康重視の選択をするようになったことがある」とシンガポールの大手新聞であるThe Straits Time(ザ・ストレーツ・タイムズ)は書いている。そしていま、この市場に新規参入者が登場した。シンガポールに本社を置くKarana(カラナ)は、米国時間7月9日、シード投資として170万ドル(約1億8000万円)を調達し、最初の製品の発売計画を発表した。ジャックフルーツを原料とする豚肉の代替品が今年中に発売される。

Karanaのシードラウンドには、Quorn Foods(クォーン・フーズ)を2015年に買収したMonde Nissin Group(モンド・ニッシン・グループ)のCEOであるHenry Soesanto(ヘンリー・ソエサント)氏、アグテックの投資企業Big Idea VenturesとGermi8、そして、食品と清涼飲料水の業界で豊かな経験を持つ香港の起業家でエンジェル投資家のKevin Poon(ケビン・プーン)氏とGerald Li(ジェラルド・リー)氏が参加している。Karanaによれば、このラウンドにはさらに、名前は未公開ながらアジアを拠点とするFMCG(日用消費財)の大手卸売り業者も含まれているという。

Karanaは、ジャックフルーツを、すでにそれが代替肉として定着しているスリランカから仕入れている。Karanaの処理技術によって、豚の挽肉や細切れ肉の食感がうまく再現されており、餃子、肉まん、バインミーといったレシピに簡単に使える。

2018年、Dan Riegler(ダン・リーグラー)氏とBlair Crichton(ブレア・クライトン)氏によって創設されたKaranaは、有機栽培のジャックフルーツを、独自の機械的技術によってポークの代替肉に加工する。同社によれば、化学処理は一切行っていないという。この代替ポークは、今年中にレストラン向けに出荷される。小売店に並ぶのは来年からだ。

リーグラー氏とクライトン氏は、Karanaがジャックフルーツを使う理由は、「天然の肉に似た食感」のみならず、環境に優しい作物だからだとTechCrunchに電子メールで話してくれた。通常これは、間作物として(またはほかの作物と同じ畑で同時に)栽培され、収穫量は多く、水をあまり必要としない。だが、現在収穫されているジャックフルーツのおよそ60パーセントは廃棄されていると彼らは言う。「将来、商品化される余地が十分にあります。つまり、農家の新たな収入源になるということです」。

Karanaの創業者が手始めにポークを選んだのは、それがアジアで最も多く消費されている肉だからだ。今回のシード投資は新製品の研究開発に使われる。また同社は、アジアの戦略的パートナーとの話し合いも進めているという。将来Karanaの製品には、アジアで生産される他の作物を使った別の代替肉も加わる予定だ。

「Karanaは、完全な植物由来肉のメーカーです。私たちの目標は、自然が私たちに与えてくれるものを利用し、その驚くほどに多様な生物食材を最大限に活かしておいしい製品を作ることです。将来、ポーク以外の代替肉の製造を可能にするその他の地産作物を使った製品も発売します」と彼らは話す。「そこが、全般的に加工された農産物製品に依存している他社との最大の違いです」。

画像クレジット:Karana

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(翻訳:金井哲夫)

Impossible Foodsの代替肉バーガーが全米1000店で販売に

4月17日からカリフォルニア、イリノイ、インディアナ、アイオワ、ネバダのスーパーマーケット777店が植物由来の代替肉であるImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)の商品を店頭に並べる。

流通を増やし、製品ラインナップや国内外での取り扱いを拡大するために、同社は3月にクローズした投資ラウンドで5億ドル(約540億円)を調達した。

資金の一部はAlbertsons、Jewel-Osco、Pavilions、Safeway、Vonsといった店舗でのデビューに使われる。

17日にはグローサリーストア計1000店で取り扱われることになる、と同社は述べた。この中には、Albertsons全店、Vons、Pavilions、南カリフォルニアのGelson’s Markets、北カリフォルニアとネバダの全Safeway、シカゴとアイオワ東部、そしてインディアナ北西のJewel-Osco、東海岸のWegmans、ニューヨークとその周辺のFairway marketsが含まれる。

2019年9月の店頭デビュー以来、東海岸、西海岸の購入可能な店において最も売れたアイテムだった、と同社は述べた。

同社の12オンス(約340グラム)パッケージは8.99〜9.99ドル(約970〜1070円)で販売されており、間もなく取り扱い店舗を全米に広げる計画だ。

「我々は常に2020年の小売での取り扱い増加を計画してきた。しかしより多くの米国市民が家庭で食事するようになり、小売と消費者の両方から似たようなリクエストが届いた」とImpossible Foodsの社長Dennis Woodside(デニス・ウッドサイド)氏は声明で述べている。「既に提携している小売店はここ数週間、記録的なImpossible Burger販売を達成している。小売業者とともに販売を全米に拡大するために、可能な限り迅速に取り組む」。

拡大の発表とともに、同社は製造施設のプロセスに対する消費者の懸念を緩和する取り組みを明らかにした。

同社はテレワークができる全従業員に在宅勤務を義務づけ、同社の施設や共同メーカーが運営する施設への訪問や移動を伴う全業務を禁止している。そして職場での新たな殺菌・消毒対策を導入した。

「我々が最優先するのは従業員や顧客、消費者の安全だ」とウッドサイド氏は話した。「全サンフランシスコ・ベイエリアを含む我々のコミュニティやグローバルサプライヤー、顧客ネットワーク、何百万という顧客、そしてこの必要とされる時期に食品製造者に頼っている何十億という人々の福祉に責任を負っていることを認識している」。

同社は製造施設の増設、そしてImpossible SausageやImpossible Porkの広範にわたる商業展開などのために研究・開発を進めていると語った。

Impossible FoodsはこれまでにMirae Asset Global Investments、Khosla Ventures、Horizons Ventures、Temasekといった投資家から13億ドル(約1398億円)を調達している。

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(翻訳:Mizoguchi

代替肉のImpossible Foodsが約537億円を調達し製造拡大へ

株式公開会社であるBeyond Meat(ビヨンド・ミート)と競合する代替肉製造の非公開企業Impossible Foods(インポッシブル・フーズ)は直近のラウンドでおおよそ5億ドル(約537億円)を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドで、9年前の創業からこれまでに同社が調達した資金は13億ドル(約1395億円)になる。

本ラウンドはMirae Asset Global Investmentsがリードし、既存投資家であるKhosla VenturesHorizons VenturesそしてTemasekも参加した。

同社の声明によると、調達した資金は製造の拡大、国内外のスーパーや小売店への納入の増加、新たなプロダクトの商業化のスピードアップに使われる。新プロダクトは植物由来のインポッシブル・ソーセージやインポッシブル・ポークだ。

「我々のミッションは、食糧生産で動物を利用するという世界で最も破壊的なテクノロジーを2035年までに代替のものに置き換えることだ」とImpossible Foodsの創業者でCEOのPatrick O. Brown(パトリック・O・ブラウン)博士は声明で述べた。「それを実現するために我々は今後15年間、毎年平均して生産を倍増させる必要があり、研究やイノベーションにも集中的に投資しなければならない。マーケットは流動的だが、世界の食糧需要は常に存在し、早急なミッション達成が求められている。投資家は我々のミッションに信頼を寄せているだけでなく、世界のフードシステムを変えるプラットフォームに投資する類稀な機会だと認識している」

同社はまた、新型コロナウイルス感染拡大に対応するためにオペレーションを変更している、と述べた。

Impossible Foodsは、テレワークが可能な従業員には在宅勤務を義務化した(4月末まで)。また、同社施設や製造パートナーへの外部からの訪問を制限する。加えて衛生・安全基準を維持するために、製造施設は毎日徹底的に清掃・消毒されるとも述べた。

「直近の資金調達でImpossible Foodsは成長を加速させるためのリソースを手に入れる。COVID-19感染拡大を含め、不安定なマクロ経済学的環境においても成長を続ける」と同社のCFOであるDavid Lee(デイビッッド・リー)氏は話した。

「我々の最優先事項は従業員、顧客、消費者の安全だ」とブラウン氏は述べた。「そしてサンフランシスコのベイエリア全体、我々のグローバルサプライヤー、顧客ネットワーク、何百万という顧客、必要とされるものをつくるために食品製造に頼っている数十億の人々を含む、我々のコミュニティの福祉にも責任を持つと認識している」

資金調達の完了時点で、Burger King(バーガー・キング)はインポッシブル・ワッパーを全7000店で販売することを約束している。またDoorDash(ドアダッシュ)もImpossible Foodsのアイテムを提供するレストランだけを集めた「Impossible Cuisine」カテゴリーを立ち上げた。

2019年のBurger Kingでの販売急増により、Impossible Foodsはオークランドにある施設での製造を4倍に増やした、と同社は述べている。

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(翻訳:Mizoguchi

代替肉製造Beyond Meatのファーストフードチェーン開拓は試行錯誤

植物由来の食肉向け代替タンパク質の生産者で上場会社のBeyond Meat(ビヨンド・ミート)は現在、代替肉分野に進出する企業が消費者の舌に訴えることの難しさを学ぶ教材となっている。

カナダのレストランチェーンであるTim Hortons(ティムホートンズ)がメニューからBeyond Meatの商品を外したのと同じ日に、フライドチキンチェーンのKFC(ケンタッキーフライドチキン)はBeyond Meatの鶏代替肉の試験販売を米国ノースカロライナ州シャーロット、テネシー州ナッシュビル、ケンタッキー州全域の新店舗に拡大すると発表した。KFCが行う消費者需要測定のための試験販売は、昨年8月にアトランタの店舗で1日限定で実施したのが最初だ。

Beyond Meatは1月29日、KFCの66のレストランが鶏代替肉を受け取ると語った。最高経営責任者のEthan Brown(イーサン・ブラウン)氏はYahoo Financeに対し、Beyond MeatにはKFCのすべての店舗からの需要に十分対応する能力があると述べた。

「アトランタで得た反応は、高品質でおいしい植物由来代替肉に対する消費者需要の高まりを裏付けた。KFCのチームと共に、見た目、味、食感が鶏むね肉と変わらない植物由来の鶏肉を開発した。研究開発チームが成し遂げたことを非常に誇りに思っており、植物由来の鶏肉の今後の開発継続も楽しみにしている」と、Beyond Meatの創業者兼最高経営責任者であるブラウン氏は声明で述べた。

いいニュースだが投資家が鶏を数え始めるのは孵化するのを待ってからが賢明だろう。もしくは、エンドウタンパクと他の成分の混合物が鶏肉に似た食品として形になってからだ。

実際、Tim HortonsがBeyond Meatの取り扱いを中止したタイミングは、Beyond MeatのライバルであるImpossible Foods(インポッシブルフーズ)がBurger King(バーガーキング)に提供するImpossible Whopper(インポッシブルワッパー)の売り上げ低下と同時期だった。これらの動きは、ファーストフードチェーンにおける消費者の代替肉への関心低下の可能性を示している。

ただ、Tim Hortonsのドアが閉まっても、Beyond Burgerを喜んで迎えてメニューの幅を広げる飲食店でドアが開く。1月27日、新たにDenny’s(デニーズ)が全店舗でBeyond Meat Burgerの取り扱いを始めた。この提携により同社は、提携中止の決定がほかにあったにもかかわらず、資金が豊富なライバルであるImpossible Foodsを突き放しつつある。

Beyond Meatの生産能力は、McDonald(マクドナルド)との提携を決めた要因の1つだったようだ。Impossible Foodsの最高経営責任者であるPat Brown(パット・ブラウン)氏が今月初めロイターとのインタビューで言及した。

Denny’sは昨年、ロサンゼルスの複数のレストランでBeyond Burgerを導入し、今後は全米1700カ所以上の店舗に展開する予定だ。

画像クレジット: Beyond Meat

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(翻訳:Mizoguchi

3DプリントステーキのNovameatが新たな資金調達

肉市場で代替タンパクの開発を推進するスペインのスタートアップNovameat(ノバミート)が、大手フードテック投資会社のNew Crop Capitalから新しい資金を得て、その動きを加速する。

生物医学工学の専門家であるGiuseppe Scionti(ジュゼッペ・シオンティ)氏によって創業されたNovameatの技術は、これまでカタロニア工科大学、ロンドン大学、チャーマーズ大学、そしてミラノ工科大学でバイオエンジニアリングの助教授を務めたシオンティ氏の10年に及ぶ研究に基いている。

同社は、世界初の3Dプリントされた植物ベースのビーフステーキの生産で、2018年に有名になった。今回New Crop Capitalからの新しい資金を使って、鶏むね肉などの繊維質の質感を持つ、ステーキのような肉の開発を加速するための、さらなるプラットフォーム開発を行う予定だ。

同社は、ビーフステーキ、鶏むね肉、魚の切り身といった、繊維質の肉の質感、外観、栄養、感覚特性を模倣するための、新しい基本技術を開発したところだ。

シオンティ氏は、このテクノロジーを、植物ベースで実験室で開発されてきた、これまでの代替タンパク質開発の次のステップと位置付けている。多くのクリーンミートや植物ベースの食品会社が、本物と同様の味と質感を持つ品質の挽き肉代替品を市場に出すことに成功してきたが、ステーキや切り出された筋肉を複製することは難しいことが証明されている。

Novameatにはその問題を解決できる可能性がある。

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「私は生物医学および獣医学用途のバイオプリンティング技術を通じて、動物組織の再生について研究して来ましたが、その中で肉の質感を実現するために様々な植物ベースのタンパク質の3Dマトリックスの構造を、バイオハックする方法を発見したのです」とシオンティ氏は発表の中で述べている。

Novameatの技術の中核は、企業がステーキを作るための必要な種類の繊維組織を作成できるようにする、カスタマイズされたプリンターだ。「私たちは、そうした企業とのライセンス契約に基づいて、機器や機械を提供します」とシオンティ氏は語る。「植物ベースの食肉メーカーが、ステーキの食感と味を作り出す手段にアクセスできるのです」。

従来の成型技術では、Beyond MeatやImpossible Foodsからの材料を用いてステーキをプリントすることはできなかったが、Novameatの創業者は同社の技術を使えばそれが可能になると主張している。

この技術は、拡大しつつある肉代替品市場で、最も経験豊かな投資家の1つであると思われるNew Crop Capitalの注意を引きつけることができる位に有望なものだった。このベンチャーファームが扱うポートフォリオには、Memphis Meat、Beyond Meat、Kite Hill、Geltor、Good Dot、Aleph Farms、Supermeat、Mosa Meat、New Wave、そしてZero Eggなどが含まれている。

「私たちは、グローバルな食糧サプライチェーンが壊れていると考えいます、そしてこれらの課題の1つである、動物性タンパク質の解決に注力しています」と、New Crop CapitalのDan Altschuler Malek(ダン・アルツシュラー・マレク)氏は語る。「消費者のみなさんによる動物タンパク製品の消費を削減し、みなさんが払いたいと思える価格の商品へのシフトを起こすチャンスがあると思っています」。

マレク氏は、肉代替製品の作成時間を短縮するNovameatがコストの削減に役立つと考えている。

シオンティ氏によると、同社のマイクロ成型技術を使えば、企業は時間がかかりコストが増大する可能性のある培養期間をとることなく、3次元構造を手に入れることができるということだ。「Novameatのバイオプリンティング基盤技術は、柔軟で調整可能な植物ベース肉の生産手段を提供します。また、さまざまな食材からさまざまな質感を一片の肉の中に形成するユーティリティを提供します」と彼は言う。

Good Food Instituteの科学技術ディレクターであるDavid Welch(デビッド・ウェルチ)氏は声明の中で以下のように述べている。

「植物タンパクを使って肉の質感を生成するために、現在業界で主に使われている手段は、高低水分押出成型機によるものです。この押出成型がうまくいく応用もありますが、全てのタイプの動物肉を模倣する手段としては理想的なものではないとも思っています。このとき、Novameatのような代替技術は、植物ベースの食肉メーカーに、あらゆる種類の肉や魚介類を模倣するための幅広いツールを提供してくれるのです」。

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(翻訳:sako)

代替タンパク質の次なる大きな波は植物由来や細胞培養のシーフード

国連食糧農業機関(FAO)によると、魚は、世界で消費される動物性タンパク質の16%を占めており、その需要は高まっているという。その原因は、可処分所得の大幅な増加にある。

しかし、乱獲の問題は深刻だ。持続可能性がないため、今ある姿を保てなくなっている。本来の数の4%までに数が減少した太平洋クロマグロをはじめ、魚の個体数は減少している。産業漁業では、大型の機械を使ったトロール漁を行っており、クジラやイルカなど、魚以外の生物も捕獲し殺してしまう。

他の国々と比較して水産物の需要が飛び抜けて高い中国においてすら、需要は急速に伸びている。その原因のひとつに、アフリカ豚コレラが養豚業者を襲ったことがある。豚肉の流通量が減り、人々が他のタンパク源に目を向けたのだ。加えて、拡大を続ける中国の遠洋漁業業界が水産資源を激減させ、紛争を引き起こしていることも関係している。

しかし、私たちが食べる魚は、2030年までには、ほとんどが養殖になる。管理の悪い養魚場では、化学物質による水質汚染を引き起こしたり、バクテリアや病気を拡大させて結果的に自然の生態系に影響を及ぼすことがある。養殖の鮭は、野生の個体と混じったときに貴重な生態系を乱す恐れがあり、環境に深刻な被害をもたらす。

魚は、人口が増加し、食糧不足が深刻化した際に、非常に重要なタンパク源となる。しかし、天然資源を枯渇させず、水域環境を破壊せずに魚を安定的に供給することは、継続的な課題だ。魚は、プラスティック、水銀、抗生物質で汚染されている。しかも魚の養殖は、食糧不足にはあまり貢献していない。本当に必要としている地域には魚が届いていないのだ。

また、以前から続いてきた魚の幸福に関する論議もある。魚には知覚力があるのか。また、捕らえられたときや殺されたときに苦痛を感じるのかという問題だ。だが研究により、この議論には終止符が打たれた。魚の種の多くに長期記憶があり、社会的なつながりや子育ての技能を持ち、道具を使ったり、伝統を学んだり、他の種と協力し合うこともできることがわかっている。ほとんどの研究者は、痛みや恐れを含む感情を抱く能力があることも認めている。

トルコ、イズミルにて – 4月25日。イズミル県カラブルンの養殖場の航空写真。ここではエゲリー(Egeli)と呼ばれる、タイとヨーロッパレンコダイの交配種が育てられている。1年以内の出荷を予定している(写真:Mahmut Serdar Alakus/Anadolu Agency/Getty Images)

一部の国の養魚場では、人道的な食肉処理のガイドラインに従っているところもあるが、野生の魚に対してはそうした基準がない。しかも、そのガイドラインも名ばかりだ。養殖魚の伝統的な処理方法は、空気中や氷の中で仮死状態にするというものだ。これは長時間にわたり苦痛を与える工程で、やがては失神することもある。

魚は狭い場所に押し込められて、劣悪な環境で生活し、餌も与えられないことが多い。過密状態の魚は病気にかかりやすく、ストレスを感じて攻撃的になり、その結果、喧嘩をして傷つけ合うこともある。囲いの中は、フナムシや病気、または寄生虫の温床にもなる。このように、魚に関する問題は数え切れないほど存在する。それでも、養殖魚は毎年1200億尾が処理されていると見積もられている。

Impossible BurgerやBeyond Burgerといった植物由来の牛肉の代替品、またはImposter Burgerのような鶏肉の代替品が増えてきているものの、魚肉は遅れをとっている。魚は、陸上の動物と同じく大切な食材だ。そのため、植物由来のシーフードという選択肢を、従来品の量を減らしたいと考える人たちに提供することで、それは初めて商売として成り立つようになる。

だが、潮目は変わろうとしている。植物由来の魚肉の代替品が大きく注目され始めているのだ。スタートアップのImpossible Foodsは、植物由来の代替魚肉は「優先度が高い」と話している。他の企業も数多くの魚製品を開発しており、その味はどんどん本物に近づいている。Good Catchは植物由来のマグロを販売している。Ocean Hugger Foodsは植物由来の生のマグロを開発した。New Wave Foodsは植物由来のエビを開発した。植物由来の寿司を提供するレストランも出始めている。

細胞培養による魚肉にも技術革新がある。スタートアップのWild Typeは、鮭の幹細胞を使って研究室内の環境で育てられる鮭を開発した。同社は価格を下げて一般販売することを目指している。シンガポールのShiok Meatsは、エビ、カニ、ロブスターなど細胞培養の甲殻類を開発している。Blue Naluは細胞培養シーフード、Finless Foodsは研究室でクロマグロの飼育に焦点を当てている。同社は、2017年に最初の細胞培養の魚を完成させたが、今年中に高級レストランに向けて出荷したいと話している。これには水銀が含まれないという利点もある。

漁業をより人道的に、より持続可能にするには、まだまだ解決すべき課題が数多くあるが、同時に需要を減らす努力も必要だ。植物由来または細胞培養の肉を製造する企業は、牛肉や鶏肉の摂取量を減らしたい人たちを奨励しサポートを続けているが、同じことを魚でも行おうと視野を広げつつある。ぜひとも代替魚肉を普及させ、魚の需要の高まりによるダメージに気がついた人々を取り込まなければいけない。

【編集部注】著者のBrian Kateman氏は、
Reducetarian財団の共同創設者であり理事長。

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(翻訳:金井哲夫)

代替食品のImpossible、ハンバーガーの次は植物由来のソーセージ

今年は Impossible にとって大きな年になりそうだ。サンフランシスコ・ベイエリアの食品スタートアップは、植物由来のハンバーガーで今年業界に参入した。そしてBurger King(バーガーキング)での販売が発表された先週、3億ドルの調達ラウンドを完了した。

この会社の次期製品については、植物由来代替肉の世界に詳しい人にとって驚きではないだろう。Engadgetが同社のレッドウッドシティ本社の裏側で見つけたImpossibleメニューはソーセージだった。

話の流れからして、(イミテーション血液も含めて)そのソーセージが同社のハンバーガーパティと同じ材料で作られている可能性は高いと思われる。実際には、材料の配合は異なり、ジャガイモのタンパク質は完全に除去されている。同社は数多くの異なるレシピを開発中で、そのほとんどが同社の「プラットフォーム」製品を再構成したものだ。モジュールメニューだと考えてもらってもいい。なんといったって、いくつかの中心となる同じ材料をローテーションする方法はTaco Bell(タコベル)などのチェーンで十分うまく機能しているのだから、ヘルスフードでできない理由はない。

発売時期やその他の商品の詳細は未定。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

高栄養価の代替食品でチリから革命を起こすNot Company

食料のグローバル化と工業化によってもたらされる栄養不良、資源不足、公害という三重の危機に出資する機会を味わいたい技術系の投資家たちは、新しい持続可能な資源を謳い、スタートアップに投資している。

この5年間、ベンチャー投資家や投資企業は、全世界で2100件、95億ドル(約1兆550億円)を投資しているが、CB Insightsのデータによれば、すべては食料の従来型の栽培、飼育、生産、加工、流通に置き換わるか、それを補完するものを目指している。

サンディエゴのダウンタウンから22分の、街の南東の隅に本社を置くNot Companyは、そうした巨大な代替食品ビジネスの中に現れた有望な新顔たちとは、ちょっと毛色が違う。CEOのMatias Muchnickと2人の共同創設者は、食品革命の恩恵を中南米に、そしてゆくゆくは全世界にもたらしたいと考えている。

いくつもの企業を立ち上げてきたMuchnickにとって、Not Companyは2つめの食品関連事業だ。その前に創設したのは、植物ベースのドレッシングとマヨネーズを販売するEgglessという会社だ。

Egglessで食品関連事業に参入し、その味を知ったMuchnickは、あることを学んだ。食品業界での研究開発が、じつに原始的で非効率であることだ。

その問題を解決しようと、Muchnickはカリフォルニア大学バークレー校で食品業界について研究を始めた。

「バークレーで、そのデータと科学について学ぼうと生物化学学部に入ろうと決めた」とMuchnickは話す。「しかし薬学のほうが、うまく解決してくれるとわかりました。そこで私は、医薬品業界で今何が起きているのかを調べまくり、それを食品業界で研究しました」

バークレーからハーバードに移ったMuchnickは、恒星内部の動きをデータ科学と機会学習とで探っていた宇宙物理学者のKarim Picharaを引き抜いた。データ科学者を仲間に入れたMuchnickは、次にカリフォルニア大学デイビス校で植物のゲノミクス研究をしていたPable Zamoraを第三の共同創設者に加えた。

こうして、Not Companyのドリームチームが結成された。

Not Companyの共同創設者、Karim Pichara、Matias Muchnick、Pable Zamora。

 

Not Companyの活動の中心は、驚くほど潤沢な資金を持ち、一度はトラブルに陥ったアメリカの競合相手Just(かつてはHampton Creekと呼ばれていた)と同じく、機械学習技術を使い、植物の遺伝子的な類似性をマッピングして、その動物体内での結果を調べることにある。

「レンズ豆でもなんでも、遺伝子をマッピングできます」とMuchnick。「どんな種類の豆も、動物性タンパク質をエミュレートできるかどうかを簡単に調べて予測できます」

3人の創設者は、みなアメリカに住んでいるが、故郷のチリに戻ってビジネスを立ち上げることを決めている。Muchnickにとって、サンティアゴに拠点を置くことは、費用も安く済み、研究者も豊富に揃っているところが強みだった。シリコンバレーから離れているから、それを好む求職者もいる。

「我々は目立つ存在となりました」と彼は言う。

しかし、サンティアゴの拠点は、中南米の市場を支配して、喉から手が出るほど欲しがっている人たちに、健康な食品を届けるというNot Companyの最初の戦略的目的を叶えるものでもあった。

栄養不足の形を変える

Muchnickが故郷に拠点を置いた理由は、中南米に溢れている高カロリー、低コストな食品と戦うためでもある。それが世界の国々の栄養不足の原因であり、そこを改善したい。

この新興市場で、栄養不足の問題がどのように作用しているかを知るには、ネスレ、ゼネラル・ミルズ、ペプシコ、ファストフードのマクドナルドやKFC傘下のヤム・ブランズといった企業の状況の変化を見るとよい。

アメリカやヨーロッパではすでに遍在している大手の栄養不足食品企業は、成長を求めて新興市場に目を向け、低収入層の顧客に合わせた製品やビジネスモデルを売り込んでいる。

そうした企業の製品は安価だが、栄養価値はほとんどない。飢えないだろうが、他の健康上の問題が引き起こされる。

「広く信じられている話です。安い食べ物がどこでも手に入るという、実現しうる最高の世界。深く考えなければ、筋が通っています」と、カナダ・オンタリオ州のゲルフ大学食品経済学教授のAnthony Winsonはニューヨークタイムズに語っている。現実はもっと難しいと、Winsonは言う。「厳しい言葉で言えば、食事に殺される、ということだ」

調査結果がそれを示している。The New England Journal of Medicineの2017年の調査によれば、世界人口のおよそ10パーセントが肥満だという。6億400万人の成人と、1億800万人の子どもだ。そして、新興市場では、人の肥満率が急速に増加している。

栄養不足は、工業化された食品ビジネスが新しい土地に進出したときの副作用に過ぎない。それらの企業は、サプライヤーの工業化も目論んでいるとタイムズは伝えている。それは大規模農場への転換を促し、森林伐採を進める。

こうした問題は、ネスレやゼネラル・ミルズといったお菓子メーカーだけに限らない。ファストフード業界の肉の需要は、新興市場の国々の牧畜の工業化も進め、それが地球温暖化の大きな原因となる。

そのような問題を、環境への悪影響がずっと小さい低コストな食品で 、Muchnickの会社は解決しようとしているのだ。

Not製品

Muchnickたちは、2015年の会社設立以来、数多くの製品を開発してきた。同社の当初の目的は、既存の製品に代わる健康な食品を研究開発して企業にライセンスすることにあった。

「私たちは技術系企業です。食品会社ではありません。他の企業のための研究開発に資金を投入したいのです」とMuchnickは2016年に語っていた。

いろいろな製品を熱心に開発するようになったのは、それからだとMuchnickは言う。

「マヨネーズを作りました。チョコレートを作りました。ミルクを作りました。ソーセージ、バーガー、シュラスコ(ローストビーフみたいなものだが、まずい)などの肉の代替品も」と、製品開発に熱くなっておいたころを振り返ってMuchnickは話す。ついには、ハンプトン・クリークの後を追う形で、Not Companyはマヨネーズの販売に乗り出した。

チリは、世界で3番目に大きなマヨネーズの市場なので、そこで販売を始めたのは理にかなっていたとMuchnickは言う。彼らのロードマップに描かれた、より意欲的な製品よりも、簡単に製造できたという点もある。

Muchnickによれば、店に置かれるようになってわずか8ヶ月で、(あまり大きいわけではないが)チリのマヨネーズ市場の10パーセントを獲得したという。ロードマップの次なる製品は、9月に発売を予定しているミルクの代替品だ。2019年にはNotヨーグルトとNotアイスクリームも登場する。

2020年までには、Not Companyはソーセージとひき肉の代替日も発売すると、彼は言っている。

これらの製品の陰では、PicharaとZamoraが開発した、動物と植物のタンパク質のつながりを探る機械学習ソフトウエア「Guiseppe」(ジュゼッペ)が活躍している。

「私たちは7000種類の植物をマッピングしました。もうこれで十分だと思っています」とMuchinickは話す。「それをアミノ酸構造にマッピングしたところ、動物性タンパク質によく似ていました」

Guiseppeは、7つの異なるデータベースと7つの異なるアプローチを操るとMuchnickは説明する。食品とその材料の分子データ、食品とその材料のスペクトル画像、それに、社内の味覚テスターが収集した、味、食感、後味、刺激、酸味といったデータがある。「山ほどのパラメータがあります」とMuchnickは話している。

ロードマップが完成したことで、同社は市場拡大のための追加投資を受けた。チリ国内だけでなく、中南米全体に打って出る。

Not Companyはこのほど、Kaszek VenturesとSOS Venturesから、工場の拡張のための資金として300万ドル(約3億3300万円)の投資を受けた。

ほんの2年前には、あからさまに否定していた方向への大転換だ。「私たちはブランドカンパニーを目指しています」と今のMuchnickは言う。「Not Companyにはソーシャルカレンシーがあるんです」

それを実現させるには、サプライチェーンの開拓が必要だ。同社はすでに毎月64トンのマヨネーズを生産しているが、ミルクやヨーグルトやアイスクリームや、さらには肉の生産を視野に入れると、工場を拡大し続けなければならない。

「私たちは、現地生産のための工場を建てようと決めました」とMuchnickは話している。「これから、ブラジルとアルゼンチンに製品の輸出を始めます。市場シェアが5パーセントから8パーセントに達したら、現地生産に切り替えることにしています」

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(翻訳:金井哲夫)