「デスクを持たない労働力」管理HRプラットフォームのSnapshift、市場拡大に向け約51.9億円調達

このいわゆる「大量自主退職時代」には、多くの現場作業員(看護師、トラック運転手など)が新型コロナウイルス感染流行をきっかけに自分の生活を見直しており、その一方で旧来の企業はこの新しい世界秩序に苦心している。従業員はまた、より良いコミュニケーションも求めているため、このようなコミュニケーションをアプリ化することは理に適っている。

フランスを拠点とするSnapshift(スナップシフト)は、レストラン向けのスタッフ管理ウェブソリューションとしてスタートし、Bpifrance(ビーピーアイフランス、フランスの政府系投資銀行)とFemmes Business Angels(フェム・ビジネス・エンジェルズ)から390万ユーロ(約5億1000万円)の資金を調達した。しかし、この会社は明らかに賢いアイデアを思い付いていた。そしてそれは、私たちが今、生きている時代に合わせて作られたようなものだ。

今やこのHR(人的資源)プラットフォームは、いわゆる「デスクレスワークフォース(デスクを持たない労働力)」を管理するためのプラットフォームとして生まれ変わった。これは、かつてブルーカラーやフロントラインワーカーと呼ばれていた人々のことを指す今風の言葉である。

Snapshiftは今回、4500万ドル(約51億9000万円)のシリーズAグロースエクイティ資金を調達した。このラウンドはHighland Europe(ハイランド・ヨーロッパ)が主導し、既存投資家であるBpifranceとUL Invest(ULインベスト)も参加した。

Snapshiftは、2021年に同社のサービスに対する「大きな需要」があったことを受け、現在はSubway(サブウェイ)、Pizza Hut(ピザハット)、Spar(スパー)、Amorino(アモリーノ)、Biocoop(ビオコープ)、Fitness Park(フィットネスパーク)、Columbus Cafe(コロンブス・カフェ)、Carrefour(カルフール)など、6000社以上の顧客を抱えているという。

今回の資金調達は、欧州のレストラン、ホテル、小売業など、すべての中小企業にサービスを拡大するために使用される予定で、スペインが最初の国際ターゲット市場となる。

Snapshiftのオリジナル製品は、スタートアップ企業やレストランの起業家であるOlivier Severyns(オリヴィエ・セヴェリンス)氏が、自身のスタッフ当番表を管理するために作ったものだった。その後、同氏は他の企業向けにSnapshiftを起ち上げることを決めた。現在では70名以上の従業員を抱えているが、2022年には150名に増員することを目指している。

セヴェリンス氏は、次のように述べている。「私たちの使命は、中小企業が人事関連のあらゆる事柄を理解し、最適化するための支援をすることです。給与管理やスタッフのスケジュール管理を簡素化し、刻々と変化する社会法や雇用法などの複雑な問題についてガイダンスを提供します。Snapshiftの顧客の多くは、新型コロナウイルスが招いた持続的な人材確保の問題から影響を受けています。Snapshiftの製品によって、顧客は管理システムを近代化し、信頼と透明性を促進することで、従業員にとって『働きがいのある会社』にすることができるのです」。

Highland EuropeのパートナーであるJean Tardy-Joubert(ジャン・タルディ・ジュベール)氏は、次のように述べている。「私たちは、広範なホスピタリティおよびサービス業界で、Snapshiftが解決しているまさにそのようなペインポイントに悩む無数の企業と話をしました。多くの業界が、ますます深刻さを増している人材不足の問題に直面している今、Snapshiftのミッションクリティカルなプラットフォームを他の業界に導入する大きなチャンスがあると、私たちは確信しています。オリヴィエと彼のチームが、このような短期間で成し遂げたことに非常に感銘を受けています」。

セヴェリンス氏は「当社の最大のライバルはExcel(エクセル)です。当社の顧客の80~90%は、Excelから初めてのデジタルスケジューリングソリューションに移行しています」と付け加えた。

しかし、SnapshiftにはSkello(スケロ)とPlanday(プランデイ)というSaaSの競合企業が存在する。

同じくフランスを拠点とするSkelloは、これまでに5440万ドル(約62億7000万円)を調達しており、デンマークのPlandayは、7310万ドル(約84億2000万円)を調達している。このように、HR機能をシンプルなアプリにするための競争が繰り広げられているのだ……。

画像クレジット:Snapshift founder Olivier Severyns

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

倉庫のフォークリフトをロボットで自動化するVecnaが74.5億円調達

倉庫の自動化を急ぐ中で、フォークリフトの存在を無視することはできない。重い荷物を持ち上げるためにはもちろん重機が必要だが、こうしたシステムは事故に巻き込まれることで有名で、米国だけでも毎年数万件のフォークリフト事故が報告されている。

マサチューセッツ州に本社を置くVecna Robotics(ベクナ・ロボティクス)は、パレット移動などのフォークリフト中心の倉庫作業に自動化を導入しようとしている企業の1つだ。パンデミックが米国で流行する直前の2020年1月に実施したシリーズBですでに5000万ドル(約57億2000万円)を調達し、結果資金調達額は6000万ドル(約68億7000万円)を超えていた。この数字は今回のシリーズCで倍以上となった。

(ということで、もちろん)Tiger Global Managementが6500万ドル(約74億5000万円)のラウンドをリードし、既存の投資家であるBlackhorn Ventures、Highland Capital Partners、Tectonic Ventures、Drive Capital、Fontinalis Partnersに加え、新たにLineage Logistics、Proficio Capital Partners、Impulseなどが参加した。

同社は前回のラウンドの資金で、CEOのCraig Malloy(クレイグ・マロイ)氏やCMOのJosh Kivenko(ジョシュ・キベンコ)氏を含むかなりの数の人材を採用していた。この新たな資金が何に使われるのかについて、キベンコ氏は次のように語っている。

世界中で50億台以上のパレットが500万台以上のフォークリフトと500万人近くの手動オペレーターによって動かされているので、自動化された資材ハンドリングには成長の余地が十分にあるのです。今回のような著名で支援的な投資家グループが主導するこの投資を使うことで、工場や倉庫のような資材ハンドリング環境におけるスループット向上への飽くなき要求に応えるために、ロードマップを加速しより迅速に市場にソリューションを提供することが可能になります。

Vecnaによれば、今回の資金はソフトウェアおよびハードウェアの研究開発、注文の確実な処理、事業の拡大に使用されるという。同社が、新型コロナウイルスのパンデミックと広がる人材不足のために、投資家から関心が高まっているロボット企業の1つであることは間違いない。

画像クレジット:Vecna Robotics

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(文:Brian Heater 、翻訳:sako)

ボストン・ダイナミクスの倉庫ロボットがDHLから約17.2億円の業務を受注

2021年3月、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は同社2番目の商用ロボット「Stretch(ストレッチ)」を発表した。箱を動かす見事なHandleコンセプトを元に作られたこのシステムは、同社の先進ロボティクス技術を倉庫・物流の舞台へと推し進めるために作られた。現在、ロボティクスで最も注目されている分野だ。

関連記事:Boston Dynamicsが恐竜的2輪ロボットで倉庫業務をデモ

米国時間1月26日、Hyundai(現代、ヒョンデ)傘下のBoston Dyanamicsは、同社初の法人顧客となる大物企業との提携を発表した。物流の巨人DHL(ディー・エイチ・エル)は、Boston Dynamicsのロボットを北米の事業所に配置する、1500万ドル(約17億2000万円)の複数年契約(両社にいわせると「投資」)を完了した。購入されるロボットの台数は明らかにされていないが、Boston Dynamicsは、今後3年間にわたり、DHL物流センターにロボット「集団」を納入するという。

Stretchは、トラックから積荷を降ろす作業から始める。発表時に製作者たちが主要な部分として強調していた機能だ。その後、他の作業も加えていき荷物処理システムの自動化を推進していく予定だ。

CEOのRobert Plater(ロパート・プレーター)氏は次のように語った。「StretchはBoston Dynamicsの最新型ロボットで、倉庫内の課題解決に特化して作られています。DHL Supply Chain(DHLサプライ・チェーン)とともに当社のロボット集団を展開し、倉庫作業の自動化を進め、そこで働く人たちの安全性を高める取り組みができることを大変うれしく思っています。私たちはStretchがDHLの事業活動に意味のある影響を与えると信じており、大規模なロボット集団が仕事をするところを見るのを楽しみにしています。

この提携は、Boston Dynamicsが現在推進している四足歩行ロボットSpot(スポット)を超えるビジネス目標の土台を築く鍵となる。荷物処理は労働集約的で極めて反復の多い重労働であり、長時間の緊張を強いられ障害点も多い。これは、商業化推進を目論むHyundai傘下の同社にとって大きな試金石だ。

一方、DHLにとっては、肉体労働力確保が困難な時期に、物流作業の一部を自動化できる好機だ。これは、配送事業を侵食しつつあるAmazon(アマゾン)らと競合する中、同社が完全オートメーション化を進めるチャンスでもある。

画像クレジット:Boston Dymamics

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook