23andMeにパーキンソン病など10種類の遺伝子リスク情報の提供がやっと許可された

米食品医薬品局(Food and Drug Administration, FDA)が今日(米国時間4/6)23andMeに、一般消費者に対して有料で行った遺伝子テストの結果として、10種類の疾病(下表)のリスクは報告してもよい、と決定した。その中には、後発性アルツハイマー病とパーキンソン病も含まれる。

2013年11月にFDAは、23andMeが個人のゲノム検査をして、その結果としての健康情報を提供する行為の、一時的な停止を命じた。その後2015年10月にFDAは同社に、きわめてまれな遺伝病の遺伝子を子に伝えるかもしれない検体に関しては、彼らの健康および担体(保因者)状態を提供してもよい、とした。この決定のきっかけとなったのは、それより少し前に23andMeが、Bloom Syndromeと呼ばれる遺伝性疾病の検査に成功したことだ。この非常にまれな劣性遺伝子疾患は、低い身長とがんの素因のあることが、その特徴である。

今朝の発表でFDAは23andMeに、以下の10の疾病に関する情報を消費者に提供してもよい、とした:

“消費者は特定の遺伝子リスク情報に直接アクセスできるようになる”、とFDAのDevices and Radiological Health担当ディレクターJeffrey Shurenが声明文で述べている。“しかし遺伝子リスクは大きなパズルのピースの一つにすぎない、と理解することが重要である。遺伝子リスクがあるからといって、必ず疾病を発症するとは限らないのである”。

FDAが23andMeにこれまで情報の提供を禁じていたのも、消費者間における上記のようなネガティブな誤解の蔓延を恐れたからだ。しかしながら消費者は、乳がんなど一部の遺伝子病については、自分がその予防策をとるべきか、知りたいだろう。遺伝子健康リスク(genetic health risk, GHR)検査のねらいも、まさにそこにある。ご存知のように女優のAngelina Jolieは、母からBRCA遺伝子を継承していることを知ってから、乳がん予防のために切除手術を行った。

この発表によって23andMeは、医師の処方がなくても消費者に遺伝性疾患の検査結果を渡してもよい、唯一の企業になる。すでに23andMeの顧客であるアメリカの住人は、今月後半以降に報告を受け取ることができる。ほかの国に関しては、規制の問題などがあるだろう。

23andMeのスポークスパーソンによると、これらの報告提供事業は今後長期にわたるが、今月は後発性アルツハイマー病、パーキンソン病、遺伝性血栓性素因、α1-アンチトリプシン欠乏症、そしてゴーシェ病の担体ステータスレポートの提供が開始される。そのほかの疾患は、そのあとになる、という。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

CubeFitのTerraMatをスタンディング・デスクの下に隠しておくと立ったままストレッチができる

椅子を発明する前の人間は、立ってることが多かった。でもその後は、座ることが多くなった。しかし今でも、ほとんど一日中、立ってる人はいる。そんな人たちのために、TerraMatは作られた。

TerraMatはまるで、猫のおもちゃが自分の足元にあるみたいだ。立ったままでストレッチやエクササイズやマッサージができるための、いろんな凹凸がある。これを作った二組の夫婦は、オフィスのインテリアデザイナーと、個人教授のトレーナー、そして二人のエンジニアのチームだ。

その一人、Gerald Zingrafは、毎日7時間あまり、硬い平らな床の上でスタンディング・デスク(立ち机)を使っていたので、脚の血管を損傷した。

“そこで、立ってる状態で運動ができ、脊椎の圧迫や脚の疲労を防げるために、TerraMatを考えた”、と彼は語る。“ぼくは専攻が機械工学で、トレーナーの協同ファウンダーは、筋肉の平衡失調や姿勢障害について詳しかった。何十時間も試作とテストを繰り返して、TerraMatが完成した”。

チームは10万5000ドルの資金を調達し、Kickstarterでも10万8000ドルを集めた。今彼らは、シンプルなスタンディング・デスクも作っている。

“一発屋で終わりたくはないね。人びとが仕事中でも健康を維持できるための、さまざまな製品を提供していきたい”、と協同ファウンダーのCamille Arnebergは語る。TerraMatを使って立ったままストレッチやマッサージをして気持よくなるための、‘ツボ’のようなポーズが10種類ある。

長時間座ることに疲れて立つことを選んだ人は、TerraMatを使うと良いかもしれない。立ってばかりいた昔の人にも、こんなものがあれば良かったのにね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

HealthTapの人工知能ドクターがAlexaをサポート―手が不自由なユーザーに朗報

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Amazon Alaxaからは音声でピザが注文できる。玄関のドアのカギをかけたり外したりできる。これに加えて今日(米国時間2/20)からAlexaのユーザーは(そう望むなら)ヘルスケアのスタートアップ、 HealthTapのオンライン・ドクターから助言を受けることができるようになった。

HealthTapは同社の人工知能を利用した健康アシスタントがAlexaをサポートを発表したと発表した。ユーザーは“Alexa, talk to Dr. AI.”という音声コマンドでHealthTapのAIドクターを呼び出せる。その後Amazonのスマート・スピーカーは医師の診察をシミュレーションした(あくまで補助であって代替するものではないという)フォーマットに従ってユーザーの健康上の問題を聞き取り、助言を与える。

HealthTapによればこのこのAIドクターは「態度が知的であり安心感を与える。ユーザーの質問をダイナミックに処理して自然言語による回答を生成するインターフェイスを備えている」という。さらに緊急性、必要性が高い場合、現実の医師の診察を予約することもできる。

このシステムのターゲットは移動が困難な高齢者、障害者を想定している。Dr. AIはこれまでiPhoneとAndroidアプリから利用可能だったが、Alexaのサポートが追加されたことで、さらにユーザーフレンドリーになった。HealthTapでは特に手の動きが不自由なユーザーにとって利便性が増したとしている。

〔日本版〕HealthTapなどオンライン・ヘルスケアに関してはTechCrunch JapanでもRemedyはKhosla Venturesが支援するAI利用の低料金遠隔医療サービスなどで紹介している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

RemedyはKhosla Venturesが支援するAI利用の低料金遠隔医療サービス

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現在アメリカではDoctor on Demand、HealthTap、MDLive、American Wellなど多数のオンライン診療サービスが利用可能だ。しかしスタートアップのRemedyはユニークな遠隔診断サービスで、 AIを利用して疾病の原因を低コストで突き止めるが可能だという。

多くの遠隔医療(telemedicine)はやや漠然とした用語だが「AI採用を採用」したとしている。HealthTapは最近Dr. AIという医療に特化したスマート検索アルゴリズムを発表した。 Remedyもこの範疇に入るだろう。ただしこうした「AI採用サービス」のうちどれくらいが本当の意味で人工知能を利用しているかを判断するのは難しい。しかしユーザーが訴える症状に基づいて大量の医療情報を検索し原因を突き止める役に立つスマート・アルゴリズムをAIと呼ぶなら、RemedyはAIを採用しているといっていい。

RemedyにはKhosla Ventures、Greylock Discovery、Alsop Louie Partnersに加えてGoogleのBrain AIチームの責任者Jeff Deanが投資しており、健康保険への加入の有無を問わず1回30ドルでAIを利用した専門医による診断を受け、処方箋を発行してもらうことができる。

Remedyはある意味でIBMのDr. Watsonに似ている。IBMの医療AIは長年医師を悩ませていたきわめて珍しいタイプの白血病を正しく診断することができた。

ただしRemedyは比較的新しいサービスで、ベータテストを終了したばかりだ。今のところ、医師が診断を下せなかった症例の診断には成功していないが、このサービスの大きな目的は、健康保険に加入していなくても低料金で診断を受けられるようにするところにある。

また他の遠隔医療サービスとは異なり、Remedyはその時点で対応可能なランダムな医師ではなく、特定の医師を「かかりつけ」として患者とペアにすることができる。

Remedyのユーザーは医師を選び、症状を入力した後、自分のビデオを撮影して医師に送る。Remedyはこれによって患者の実在を確認できる。医師はこうしたデータにもとづいて訴えがあった症状の原因を診断する。

ファウンダーのWilliam Jackは自身がてんかんの治療で当初誤った診断を受けたことがきっかけでこのサービスをの開発を思い立ったという。

TechCrunchの取材に対してJackは自分の体験を詳しく説明した。「最初にこの発作が起きたとき、病院に行って自分が体験したことを説明した。しかし、偏頭痛という全く誤った診断をされてしまった。私はそこで2つの重要な教訓を学んだ。医師は患者に何が起きたのか正確な情報を得られるよう十分な時間をかけない。第2に、医師がスマート・システムにアクセスできるなら、つまり患者の訴えをそのつど正確に記録し、関連する症状を検索できるなら、確実な証拠に基づいた診断が可能になるはずだということだ。そうしたシステムが利用できるなら、医師はもっと精度の高い診断を下せるようになる」。

医師がこうした検索システムを利用できたなら、自分は長年にわたって原因不明の発作に苦しめられずにすんだかもしれないと考えている。

Remedyのユーザーは10分間のオンデマンド・ビデオによる遠隔診療だけでなく、「かかりつけ」の医師に随時、電話で症状を報告することができる。

遠隔診療ではOne Medicalも同様のオプションを備えている。患者は専用アプリまたはブラウザを通じてオンラインの医療ポータルにログインし、担当の医師にメッセージで症状を報告することができる。さらに患者はメッセージ・システムを用いて医師の援助を受けることができ、必要があれば現実の病院で受診することができる。JackはRemedyも将来はこうした現実の病院での医療にサービスを拡張したいと考えている。

この部分、つまり現実の病院での診療は現在の遠隔医療の大部分が欠いている機能だ。American Medical Association〔米国医師〕によれば、現在の受診の70%はテキスト・メッセージないし通話によって処理可能だという。しかし患者が現実に病院を訪れる必要がある場合も30%ある。

Jackは将来Remedyのサービスが現実の病院における医療にまで拡張された場合、One Medicalその他と直接競合することになる可能性を認めた。

しかしRemedyはスタートしたばかりだ。開発チームも参加医師も小人数だが、Jackによると、医師の一人はNFLのプロフットボール選手を診察しているということだ。いずれにせよJackはAIを利用したスマート検索シテムにより小数の医師で多数の患者を診療できるようになり、運営コストを大幅に下げることができると期待している。Remedytが実際にどれほどの効果をもたらすのか今後の成果が注目される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

データサイエンスで癌に打ち勝つ


【編集部注】著者のNancy BrinkerはSusan G. Komenの創業者であり、癌の啓蒙に関する国際的コンサルタントである。この記事で示された意見は彼女個人による見解である。また共著者のElad Gil博士はColor Genomicsの会長兼共同創業者である。

癌治療の探求の複雑さは、何十年にもわたって研究者たちを困らせてきた。治療法は目覚ましい進歩を遂げてきたものの、癌は世界の主要な死因の1つとして残っているため、まだまだ厳しい闘いは続いている。

しかし、科学者たちはまもなく、その複雑さを別の方法で攻撃できる重要な新しい味方 — インテリジェント・マシン — を手に入れるかもしれない。

ゲームの世界の例を考えてみよう:昨年Googleの人工知能プラットフォームであるAlphaGoは、この宇宙にある星の数よりも多い動きを擁する囲碁という壮大で複雑なゲームの中で、韓国のグランドマスター李世乭(Lee Sedol)をディープラーニングという技術を用いて打ち負かした

機械学習とAIに用いられたものと同じ技術を、癌の治療が必要とする大規模な科学的パズルに適用することができる。

1つのことは確かである。より多くのデータを扱うことができなければ、これらの新しい方法で癌を克服することはできない。しかし例えば医療記録や、遺伝子検査、そしてマンモグラムなどを含む多くのデータセットが、私たちの最高の科学する心と私たちの最高の学習アルゴリズムからは手の届かないところに隔離されている。

良いニュースは、がん研究におけるビッグデータの役割が中心に置かれるようになり、大規模で政府が主導する数々の新政策が次々に進んでいることだ。例えばそうしたものの例には、米国退役軍人省のMillion Veteran Program、英国の100,000 Genomes Project、1万1000人以上の患者のデータを保持していて、あらゆる場所の研究者がクラウドを介して分析することができるNIHのThe Cancer Genome Atlasなどが挙げられる。最近の研究によれば、2025年までに20億ものヒトゲノムが配列決定される可能性がある。

遺伝子検査を含んだ新鮮なデータの需要を促進する他の傾向もある。2007年には、1人のゲノムの配列決定には1000万ドルのコストがかかった。現在はこれを1000ドル以下で行うことができる。言い換えれば、10年前は1人に対して配列決定を行ったものと同じ費用で、今は1万人をまかなうことができるのだ。その意味合いは大きい:特定の種類の癌のリスクが高いという突然変異があることを発見することは、ときに命を救う情報にもなり得る。コストが大衆にも手の届くようになるにつれ、研究もより大規模なものになる。

研究者たち(および社会)の主な課題は、現在のデータセットには、量と民族の多様性が欠けていることだ。さらに、研究者はしばしば制限的な法的条項や、共有パートナーシップを嫌う態度に直面する。組織がゲノムデータセットを共有している場合でも、契約は一般的に個々のデータセット毎に個々の機関の間で行われる。今日では偉大な作業を行ってきた大規模な情報センターとデータベースがあるが、アクセスを加速するためには標準化された規約やプラットフォームに関するより多くの作業が必要だ。

これらの新技術の潜在的な利点は、リスクの特定とスクリーニングを超えて行く。機械学習の進歩は、癌薬剤の開発と治療の選択を促進するのに役立つ。医師が患者と臨床試験を組合わせることが可能になり、癌患者のためのカスタム治療計画を提供するための能力を向上させるのだ(最も初期の成功例の1つがハーセプチンだ)。

私たちは、癌研究やAIプログラムにデータを利用しやすくするためには、3つのことが必要だと考えている。第1に、患者がデータを簡単に提供できるようになるべきだ。これは、医療記録、放射線画像、そして遺伝子検査などが含まれる。検査会社と医療センターは、データ共有が容易かつ合法的に行われるように、共通の同意書を採用する必要がある。第2に、AI、データサイエンス、そして癌の交差点で働く研究者には、より多くの資金が必要だ。チャン・ザッカーバーグ財団が医薬品の新しいツール開発に資金を提供しているように、医療アプリケーションのために新しいAI技術へ資金を提供する必要がある。第3に、すべての民族の人びとに焦点を当てて、新しいデータセットが生成されるべきだ。私たちは、癌研究の進歩にすべての人がアクセスできるようにする必要がある。

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(翻訳:Sako)