ゲームや書籍、CD、DVDなどのバーコードを読み取る(ピコる)だけで即座に現金化できるアプリ「PICOL(ピコル)」。約1年前に紹介したこのサービスが11月をもって終了となった。
PICOLはいわゆる“メディア系商材”に特化した即時買取サービスだ。ゲーム感覚で商品のバーコードをピコり状態を選択すると、すぐに金額の査定が開始。査定後にユーザー情報と集荷日時を登録すればアプリ内のウォレットにお金がたまるというスピード感とお手軽感をウリに、2018年2月よりサービスを開始していた。
「もともとはユーザーが“いかに安心して物を売れる仕組みを作れるか”を模索した結果生まれたサービス」と話すのは、開発元のウリドキネットで代表取締役CEOを務める木暮康雄氏。商品を渡す前に買取金額が確定するようにすることで、買取の不安をなくす狙いがあった。
同社では複数の買取業者を比較してモノを売れる買取プラットフォーム「ウリドキ」を以前から展開していたけれど、モノを売ることに慣れていないユーザーや、スピーディーに手続きを済ませたいユーザーが気軽に使える選択肢を作りたいという考えもあったのだろう。立ち上げの背景などは冒頭で触れた過去の記事でも詳しく紹介している。
ただPICOLに限った話ではないけれど、即時買取サービスは基本的に性善説に基づいたビジネスだ。従来の買取サービスとは接点のなかったユーザーにリーチできる可能性がある一方で、虚偽の申込(査定金額を振り込んだにも関わらず、商品が送られてこない)など悪用される恐れもある。
実際4月にジラフがスマホの即時買取サービスから撤退した際には「最も高い時で80%が虚偽申込だった」という話も出ていたが、PICOLの場合もピーク時には申込の6割ほどが不正利用だったという。
対策として金額が合意に至ればアプリ上のウォレットにはすぐに入金されるものの、運営側で商品が確認されるまで引き出せない仕組みに変更。試行錯誤しながら運営を続けてきた(一時期虚偽の申込みが約2%まで下がるなど効果は出ていたとのこと)。
それでも悪質なユーザーは一定数存在し「結果的にそのようなユーザーの悪意を刺激してしまうような構造になっているのではないか」(木暮氏)という考えも頭に浮かんだという。経営的な軸でも期待していたほどサービスを伸ばせなかったこともあり、最終的にクローズするという決断に至った。
「前提として自分たちの力不足で目標としていた数字を出せなかった。加えて悪意を断ち切るための方法を考えると、どうしても買取金額を引き出す工程を後ろに持っていかざるを得ない。それではウリドキ本体と差別化が難しく、ウリドキを尖らせた方が優良なユーザーに価値を提供できると考えた」(木暮氏)
PICOLでは買取の依頼を10月17日でストップ。買取金額のやりとりなども含めサービスの提供を11月末で終了している。運営期間中に査定されたアイテムは累計で71万8021点、査定金額は3億5459万6376円に上ったという(実際に買取に至ったアイテム数・金額は非公開)。
即時買取サービス関連ではPICOLや上述したジラフのサービスだけでなくメルカリも「メルカリNOW」を8月に終了。それぞれ背景が異なるので一概には言えないが、「CASH」の登場以降盛り上がっていたこのモデルを、ビジネスとしてしっかり成立させるのは簡単ではないようだ。
なお結果としてPICOLはクローズすることになったけれど、現在ウリドキネットはPICOLで得た知見を基に新しい取り組みを始めている。
商品の名前や状態、写真などを入力するだけでサクッと数社に査定依頼ができる「一括無料査定」機能をウリドキ本体に実装中。今の所はプロトタイプとして運用していて、すでに申込数の増加に繋がっているそう。今後は実際の買取価格に近い金額を即座に出せる仕組みを作ることが目標だ。
「(PICOLを通じて)手元にあるアイテムがいくらになるのか、買取価格を知りたいというニーズがあることはわかった。買取価格の透明化という原点に戻り『いかに実際の買取価格との差額をなくせるか』『その金額をスピーディーに出せるか』にこだわってサービスを改善していきたい」(木暮氏)