NTT・NTTドコモ・スカパーJSAT・エアバスがHAPS早期実用化の覚書締結、衛星も組み合わせた大規模ネットワーク構想

NTT・NTTドコモ・スカパーJSAT・エアバスがHAPS早期実用化の覚書締結、衛星とHAPSを組み合わせた大規模ネットワーク構想

NTTは1月17日、HAPS早期実用化に向けた研究開発、実証実験などの推進を検討する覚書を、NTTドコモスカパーJSATエアバスとの4社で締結したことを発表した。HAPSの接続性、HAPSを利用した通信システムの有用性の発見、技術やユースケースの開発を4社で進めるという。

HAPSとは、地上約2万mの成層圏を飛行する高高度プラットフォーム(中継基地局)のこと。昨年、NTTとエアバスは、エアバスが所有する高高度無人機「Zepher S」(ゼファーエス)を用いた実証実験を行い、通信サービスの実現可能性をすでに実証している。今回の覚書により4社は、5Gのさらなる高度化と6Gに向けた取り組みとして、空、海、宇宙を含むあらゆる場所への「カバレッジ拡大」を目指す。

さらにこの覚書には、静止軌道衛星(GEO)、低軌道衛星(LEO)も含めた非地上ネットワーク技術を用いたアクセスサービス「宇宙RAN(Radio Access Network)」事業の促進も含まれている。「宇宙RAN」が実現すれば、災害対応、離島やへき地へのサービス、飛行機や船舶などの通信環境の飛躍的改善が期待できるという。

宇宙RANシステム構成

宇宙RANシステム構成

今後は通信技術の開発のみならず、HAPSの機体開発や、HAPSの運用に向けた標準化と制度化への働きかけも行い、HAPSによるネットワークサービスの商用化に向けたビジネスモデルに関する検討も行う。さらに、HAPS、衛星、地上局の連携による「宇宙RAN」事業を促進し、NTTの技術を活用したネットワーク構築の実証実験を視野に入れた協力体制も構築してゆくとしている。

NTT・東大・理研がラックサイズの大規模光量子コンピューターを実現する基幹技術「光ファイバー結合型量子光源」開発

NTT・東京大学・理化学研究所がラックサイズの大規模光量子コンピューターを実現する基幹技術「光ファイバー結合型量子光源」開発

日本電信電話(NTT)は12月22日、東京大学理化学研究所と共同で、ラックサイズで大規模光量子コンピューターを実現するための基幹技術となる光ファイバー結合型量子光源(スクィーズド光源)モジュールを開発したことを発表した。これは、冷凍装置や真空装置を必要とせず、実用的な小型化が可能な量子コンピューターとして期待される光量子コンピューターの実現に欠かせない技術だ。

光量子コンピューターは、時間的に連続的な量子もつれ状態を作ることで、集積化や装置の並列化なしに量子ビット数をほぼ無限に増すことができるというもの。光の広帯域性を活かした高速な計算処理が可能で、多数の光子で量子ビットを表す手法を使えば、理論的には光子数の偶奇性を用いた量子誤り訂正が可能になるという。

しかしこれまで、光量子コンピューターの実現に必要となる光ファイバー結合型の高性能な量子光源、つまりスクィーズ光源が存在しなかった。たとえば、大規模量子計算を実行できる時間領域多重の量子もつれ(2次元クラスター状態)の生成には、65%を超える量子ノイズ圧搾率が必要となる。

NTT・東京大学・理化学研究所がラックサイズの大規模光量子コンピューターを実現する基幹技術「光ファイバー結合型量子光源」開発

実際のサイズ感

そんな中、NTTなどからなる研究グループは、低損失な光ファイバー接続型量子光源モジュールを開発し、光ファイバー部品に閉じた系において、6THz(テラヘルツ)以上の広帯域にわたって量子ノイズが75%以上圧搾された連続波のスクィーズ光の生成に世界で初めて成功した。これにより、光ファイバーと光通信デバイスを用いた安定的でメンテナンスフリーの「閉じた系におけるラックサイズの現実的な装置規模」での光量子コンピューターの開発が可能になるという。この方式は光通信技術と親和性が高く、通信波長帯の低損失な光ファイバーや光通信で培われた高機能な光デバイスを用いることができるため、飛躍的な発展が期待できるとのことだ。

今回の実験では、1つ目のモジュールでスクィーズ光を生成し、2つ目のモジュールで光量子情報を古典的な光の情報に変換するという新しい手法を用いた。量子信号を光のまま古典的な光信号に増幅変換できるため、非常に高速な測定が可能になった。これは将来の全光型量子コンピューターに適応が可能で、「テラヘルツクロック周波数で動作する圧倒的に高速」な全光型コンピューターの実現に大きく貢献するという。

東京大学、量子コンピューターでも解読できない多変数公開鍵暗号のデジタル署名技術「QR-UOV署名」を開発

東京大学、量子コンピューターでも解読できない多変数公開鍵暗号方式のデジタル署名技術「QR-UOV署名」を開発

東京大学は11月24日、量子コンピューターでも解読できない多変数公開鍵暗号のデジタル署名技術「QR-UOV署名」を開発し、公開鍵のデータサイズを既存方式と比較して約1/3まで削減することに成功したと発表した。「多変数多項式問題の難しさ」を安全性の根拠にしているとのこと。多変数多項式問題とは、n個の変数を持つm個の2次多項式の共通解を計算する問題で、nとmを同程度の大きさで増加させた場合に計算が困難となることが知られている。

東京大学、量子コンピューターでも解読できない多変数公開鍵暗号方式のデジタル署名技術「QR-UOV署名」を開発

これは、東京大学大学院情報理工学系研究科の高木剛教授と古江弘樹氏、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所日本電信電話(NTT)の共同研究によるもの。現代の情報社会では、暗号技術はきわめて重要な存在だが、現在多く使われているRSA暗号(素因数分解の難しさを安全性の根拠とする暗号方式)と楕円曲線暗号(楕円曲線といわれる幾何的な構造を利用した暗号方式。ECDSAなど)という2つの技術は、大規模な量子コンピューターが実現すると解読されてしまうことがわかっている。そこで、量子コンピューターでも解読できない多変数多項式問題の難しさを安全性の根拠としたRainbow署名という方式が開発されたが、検証に利用する公開鍵のサイズが大きくなるという課題があった。

Rainbow署名は、多変数多項式問題を基にし、20年以上も本質的な解読法が報告されていない安全な方式とされるUOV署名を拡張したものだが、今回開発されたのは、数値の行列で表現されていたUOV署名の公開鍵を剰余環といわれる代数系の多項式で表現しデータサイズを削減した「QR-UOV署名」というもの。Rainbow署名と比較して、公開鍵のデータサイズは約66%削減できた。

QR-UOV署名は、大規模な量子コンピューターが普及した社会でも、安全で効率的なデジタル署名方式として利用でき、特に「長期的な安全性が必要であり通信負荷の低減が求められるセキュリティーシステムへの応用」が期待されるという。

研究グループは、安全な暗号方式の標準化プロジェクトを進める米国標準技術研究所(NIST)が2022年に行う予定のデジタル署名技術の公募に応募し、標準規格への採択を目指すとのことだ。

話し方・表情・言葉の内容からモテ因子「魅力的な個性」を見つけるアプリMOTESSENSEをNTTが開発・実証実験を開始

話し方・表情・仕草からモテ因子・魅力的な個性を見つけるアプリ「MOTESSENSE」をNTTが開発・実証実験を開始NTT(日本電信電話)は11月15日、人の個性をAIで診断し、その人の個性的な魅力を発見するアプリケーション「MOTESSENSE」(モテッセンス)を開発したことを発表した。多様なジャンルの個性的な人たちに使ってもらい、個性の発見に役立つかどうかを検証する実証実験も開始する。

シチュエーションに応じたロールプレイを行い、その様子をカメラとマイクが記録する。そこから、話し方、表情、仕草、言葉の内容などを総合的にAIで診断することで、「モテ因子」(魅力的な個性に関する因子)を見つけ出すという。魅力は、NTTによれば「見た目や地位などに対して、画一的に定義される」ことがあるが、このアプリケーションは、他人と比較して個性的な点にこそ魅力があると考える。この自動診断には、先日NTTが発表した、音声音響、画像映像、自然言語といったマルチメディアを統合的に扱うことで、人間に近い情報処理機構を実現する次世代メディア処理AI「MediaGnosis」(メディアノーシス)が使われている。

これは、多様性の尊重が「互いを受け入れ、個性や価値観の違いを受け入れるだけでなく、それらを融合させ、高め合うことで、社会を前進させるための鍵になる」と考えるNTTが、多様性の時代における個人の幸福の形成を目指すものとして開発したものだ。実証実験では、「診断結果について世の中の人に知ってもらうことにより、社会の多様性を再認識してもらう」ことを目指すとNTTでは話している。