ドローンを使って森林をモニタリングするTreeswiftが約5.9億円のシードラウンド調達

過去10年間で、ドローンは森林モニタリングの重要なツールになりつつある。自然のバランスを大きく崩すことなく、多くのデータを一度に収集できる、迅速で効果的な方法だからだ。2020年にペンシルバニア大学のGRASP(General Robotics, Automation, Sensing and Perception)研究所からスピンオフして設立されたTreeswift(ツリースイフト)は、その可能性を推進するために活動してきた。

共同創業者のSteven Chen(スティーブン・チェン)氏、Elizabeth Hunter(エリザベス・ハンター)氏、Michael Shomin(マイケル・ショミン)氏、Vaibhav Arcot(ヴァイバヴ・アーコット)氏は、ドローン群と林業に関する専門知識を結集し、フライスルーで広範囲のデータを収集できるシステムを構築した。搭載カメラやセンサーで収集された情報は、森林減少のモニタリング、二酸化炭素回収の測定、森林火災の防止など、さまざまな用途に活用することが可能だ。

「私たちのミッションは、自然界のためのデータエコシステムを構築することであり、森林の林冠の下から重要なデータを取得することでそれを達成します」と、このスタートアップのCEOであるチェン氏はリリースで述べている。「より透明性が高く検証可能、かつ正確な地球の姿を底辺から観るのにTreeswiftの技術が役立つと期待しています」。

今週、同社は、それにふさわしく、シードラウンドを発表した。Pathbreaker Venturesが主導したこの480万ドル(約5億9400万円)の資金調達で、累計調達額は640万ドル(約7億9200万円)になった。

画像クレジット:Treeswift

「Treeswiftのソリューションは、これまで不可能だった方法で自然界を測定することができます」とPathbreaker VenturesのRyan Gembala(ライアン・ジェンバラ)氏はいう。「商業林業や二酸化炭素回収などに大きな影響を与えるでしょう。彼らの技術導入から得られたデータは、今後数十年にわたり自然ベースのソリューションとマネジメントにおける最大のチャンスの基盤となると考えています」。

フィラデルフィアを拠点とする同スタートアップの主要製品は「SwiftCruise」で、樹木単位でメトリックを収集することができるハードウェアとソフトウェアの組み合わせのソリューションである。この情報は、搭載された機械学習(ML)アルゴリズムによって処理され、クラウドベースのデータダッシュボードに収集される。これは、従来、衛星や飛行機の画像で収集されていたものよりも、より詳細な画像である。

画像クレジット:Treeswift

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

気候変動対策として、砂漠に木を植えるべきか

森林再生は、気候危機と戦う最良の手段の1つだ。熱帯地方では、森林が毎年1000万トンの二酸化炭素を吸収しているという報告がある。成長した木は、1年で約48ポンド(約454グラム)の二酸化炭素を吸収する。非営利団体American Forests(アメリカンフォレスト)によると、米国では、森林が毎年排出される二酸化炭素の14%を吸収している。森木と樹木なくして、気候中立(クライメイトニュートラル)への道はない。

Salesforce(セールスフォース)やMicrosoft(マイクロソフト)など多くの企業が、山火事の焼け跡や農地における植林に資金を提供している。しかし、ステルスフェーズのスタートアップUndesert(アンデザート)は、森林再生のためのまったく新しいフロンティアに取り組んでいる。

その名前から推測できるように、同社は砂漠、特にニューメキシコ州アラモゴード地域の砂漠低木地帯に植樹することに重点を置いている。CEOのNicholas Seet(ニコラス・シート)氏は、自社を「気候のトリアージ」と呼んでいる。世界の他の地域が追いついてくる間に、今、排出量を減らすために何かをすることを指している。

しかし、砂漠に木を植える必要があるのだろうか。

「現在、地球規模の気候緩和を目的とした森林再生に乾燥地が適しているかどうかという議論があります」とニューメキシコ州立大学植物環境科学部の乾燥地生態学教授であるNiall Hanan(ニール・ハナン)氏は話す。

シート氏は低木地帯を「利用されていない、何もない空間」と呼んだが、ハナン氏は独自の生物多様性を持つ有効な古代の生態系であり、単なる劣化した森林ではないことを強調した。そして、砂漠に木がないのには理由がある。

「もし砂漠が樹木に適した場所であれば、おそらく樹木があるはずです」とハナン氏は言う。木が生きていくためには、太陽と二酸化炭素と水が必要だ。砂漠はそのうちの1つが極端に不足しているため、ほとんどの木が自然に育つことができない。しかし、Undesertはこの問題でイノベーションを発揮している。

同社は海水淡水化技術に手を加え、24時間あたり20リットルの水を生成できるようにし、以前は塩分が高すぎて逆浸透膜では使えなかった塩水でも使えるようにしたのだ。

「逆浸透膜技術の問題点は、ろ過しきれない塩水が大量に出ることです」とシート氏は話す。「逆浸透膜の塩水を私たちのシステムに通すと、純水と塩を得ることができます」

Undesertは、従来の太陽熱温室淡水化技術からボトルネックを取り除いた。従来の技術では、塩水プールを太陽で温めて蒸発させ、温室の屋根で凝縮させた純水を作る。Undesertは、水を取り込むためのモジュールデザインを開発し、プール蒸発方式の5倍もの効率を達成した。屋根の上で凝縮させるのではなく、冷水を循環させたチューブで冷却した別の部屋で凝縮する。このシステムでは、塩水中の93%以上の水がきれいな水として回収される。プロセス全体は二酸化炭素の排出が少ない太陽光のマイクログリッドを利用する。

Undesertは、ナバホ族と協力して、同社の淡水化技術向けに、塩分が濃縮されて飲めなくなった汽水域の地下水を調達する。そして、その淡水化した水を、同社が森林再生に使うと決めたアフガンパインに点滴灌漑で供給する。これまでに16本を植樹した。アフガンパインを選んだ理由は、砂漠に強く、水をあまり必要とせず、成長が早く、背が高く、まっすぐ伸びるからだ。また、ポンデローサパインは根の張り方が乾燥に適しているため、50本を散水システムで育てている。しかし、たとえ十分な水量が確保されたとしても、気温など苗木の生存を妨げる環境要因は他にもある。

森林や樹木なくして、クライメイトニュートラルへの道はない

Undesertによると、太陽光淡水化によって生み出される樹木の小規模な実証実験は2021年9月から稼働しており、健全な発育を見せている。この地域には強烈な太陽エネルギーがあり、地下の塩水も利用できる。そして、実証実験が行われているアラモゴード地域は、ダグラスファーやポンデローサパインの森林があるサクラメントレンジャー地区に隣接しており、列車の線路やその整備のために撤去される前はもっと多くの森林があった。以上のことから、同社は自分たちの木が成功すると確信している。

しかし、次にスケーラビリティの問題がある。大規模な森林のために灌漑システム全体を整備することは、現実的ではない。また、ニューメキシコ州では汽水域の地下水を使うことができるかもしれないが、ハナン氏は、ほとんどの砂漠は海が近くになく、地下水に簡単にアクセスできないと指摘する。コスト、労力、メンテナンスもすぐにかさむ。たとえ苗木が1本10ドル(約1150円)でも、樹木だけで1平方マイル(約2.6平方キロメートル)あたり100万ドル(約1億1500万円)の費用がかかるという。世界中の砂漠に住む人々のほとんどは、それほどの資金にアクセスすることはできない。

また、苗木を調達するだけでも、森林再生活動にとってはすでに大きな問題だ。

「最初の1ヘクタール分の400本を確保することさえ難しいでしょう」とハナン氏はメールで述べた。「南西部(あるいは米国西部)の苗木業界が、1平方マイルあたりに必要な10万本の苗木を供給できるとは思えませんし、それ以上の広さとなればなおさらです」

しかし、戦術的なことの他にも、まだ疑問がある。

「米国南西部のような水不足が深刻な場所で、かなり安価に、低炭素で水を浄化する技術があるならば、砂漠で木を育てることがその水の最善の利用法なのでしょうか」とニューメキシコ大学の森林・火災生態学教授であるMatthew Hurteau(マシュー・ハートー)氏は言う。

植林によって二酸化炭素を削減し、地域社会にも利点があれば、水の貴重な利用法だと言える。しかし、ハナン氏やハートー氏のような専門家は、次のような質問に答える詳細な費用対効果の分析を求めるだろう。

  • その土地は植林に適しているのか。
  • 植林に適した植物なのか。
  • その植物は在来種なのか、外来種なのか。
  • 既存の生態系にどのような影響を与えるのか。
  • 木を植えることで失われるものは何か。

そして、吸収する炭素は、炭素の問題を解決するのに十分な量になるのだろうか。ハナン氏は懐疑的だ。砂漠で育つ木は、熱帯雨林のような巨木にはならないだろうし、バイオマス量もほんのわずかだからだ。砂漠の木が地球の肺になることはないだろうが、その過程で小さな吸気口になりえるだろうか、あるいはなるべきだろうか。

画像クレジット:James O’Neil / Getty Images

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(文:Jesse Klein、翻訳:Nariko Mizoguchi

衛星データで世界中の森林伐採の状況を可視化できるアプリGRASP EARTH ForestをRidge-iが開発

衛星データで世界中の森林伐採の状況を可視化できるアプリ「GRASP EARTH Forest」をRidge-iが開発、違法な伐採を自動検出

AI・ディープラーニング領域のコンサルティング・開発を手がけるテックイノベーションファーム、Ridge-i(リッジアイ)は12月6日、衛星データを利用した森林伐採の進行状況を可視化できるアプリケーション「GRASP EARTH Forest」を開発したことを発表した。ヨーロッパの光学衛星Sentinel-2の観測データを利用し、約1週間の周期で全地球の変化を捉えることができる。

衛星データで世界中の森林伐採の状況を可視化できるアプリ「GRASP EARTH Forest」をRidge-iが開発、違法な伐採を自動検出

Ridge-iでは、GRASP EARTH Forest利用の実例として、千葉県南部の大規模開発を検出した様子を写真で示している。下の写真では、Google Map上で赤く塗られた箇所が森林伐採された地区を示している。2018年1月から2021年1月にかけて伐採が行われたと思われる場所だ。

GRASP EARTH Forestでは、伐採状況の時間的変化もグラフで示してくれる。下の写真は、指定した伐採箇所のグラフが表示されている。グラフの縦軸が植生指数(植物の量)、横軸が時間。これを見ると、2019年の一時期に急激に植生が減少している。そのことから、この時期に森林が伐採されたものと推測できる。

このアプリケーションで、違法な森林伐採や、許可量を超えた伐採などの自動検出が可能になるとRidge-iは話している。また、関心のある地域の状況のレポートを、ウェブアプリやPDFで定期的に提供することも可能とのことだ。下記リンクからトライアル版の申し込みができる。

https://deep-space.ridge-i.com/contact

山火事後の森林再生にカスタムメイドのドローンで取り組むDroneSeedが約40億円調達

DroneSeed(ドローン・シード)は、大規模な植林という過酷な作業に代わる技術的な代替手段としてスタートした。しかし、この重要な作業は森林再生のほんの一部にすぎず、そのインフラは山火事によって限界点に達しつつある。新たに3600万ドル(約40億円)の資金を調達した同社は、近代的で垂直統合された方法により、森林再生を根から樹冠に至るまで再考しており、カーボン先物とAIを100年の歴史を持つ機械や物流に移植しようとしている。

筆者がDroneSeedのことを最初に記事にしたとき、同社はちょうどデビューしたばかりで、カスタムメイドのドローンや森林再生の取り組みを加速するシステムを披露していた。記事で取り上げたすべての問題とソリューションは進行中である。同社は事業を拡大しているが、そのコアプロダクトであるドローンを使って山火事で被害を受けた森林に種を届けることは(名前から想像できるように)決して変えていない。

種子、ドローンに出会う

左からDroneSeed共同創業者のGrant Canary(グラント・カナリー)氏(CEO)とBen Reilly(ベン・ライリー)氏(CTO)。手にしているのは自社のドローンのペア(画像クレジット:DroneSeed)

簡潔に述べると、DroneSeedは、貴重な仕事を行い、それを見事にこなしている人間の植樹者に取って代わるものである。しかしながら、彼らは仕事の難しさと低賃金のために次第に数が少なくなっており、またその一方で、遠い昔に発生した火災による荒廃の規模は肉体労働の能力を超えるものであった。同社は、人間の代わりに、特別に設計された種子パケット(種子に肥料などを混ぜた特殊カプセル)とディスペンサーを装備した自動ドローンを採用している。地表の低高度を飛行し、種子パケットに最適な場所、つまり岩が多すぎず、傾斜が浅い場所など、さまざまな条件を特定して、種子パケットを発射する。ドローンは何十個もの種子パケットを運ぶことができ、さらに攻撃的な負荷をかけて、火災の後、木が根付く前に必ず現れる侵入植物に除草剤などを散布することもできる。

このアプローチには無数の利点がある。低高度ヘリコプターでの作業が恐ろしく危険である植樹作業員と操縦士の望ましくない危険な仕事を置き換えるものだ。遺伝子操作された種子パケットは、進取的なリスのような捕食者に耐性がある。ドローンを積んだトラックは人間のオペレーションより迅速に(年単位ではなく1カ月のうちに)動員でき、はるかに広い範囲(約6倍)をカバーできる。データ量の多いプロセスは、容易に監査と追跡を行うことができる。

当時、チームはまだ初期のパイロットプロジェクトに取り組んでいたが、今ではこのモデルはいくつかの大規模な展開で実証されている。それだけではなく、技術面、研究面、規制面の改善によって、その方法はさらに強化されている。データ処理能力の向上、種子「パック(puck)」のためのより大きな貯蔵所、そしてドローン群や視界外への飛行に対するFAA(連邦航空局)の認可は、同じ数のドローンが最初に空を飛んだときよりもはるかに多くの仕事を、より速く、より良くできることを意味している。

しかし、共同創業者のGrant Canary(グラント・カナリー)氏とBen Reilly(ベン・ライリー)氏、そして増え続けるチーム(筆者が最後に話をしたときは10人ほどだったが、現在では60人以上に増えている)は重要なことに気が付いた。ドローンを使った植栽は、その効果の程度にかかわらず、継続的に発生し激しさを増す山火事により限界まで引き伸ばされている多くの産業が関与する複数年のプロセスにおいて、唯一無二のステップであるということだ。

火災による平方マイル数は過去20年間で倍増しており、火災自体は、折れた枝や枯れ木を一掃し、森林の自然発生的な回復メカニズムを活性化する過去の健全な自然発生火災をはるかに超えて、より強力なものとなっている。今日猛威を振るっているものは、より多くの地面を覆い、灰と炭以外は何も残さない。「ある時点で自然は枯渇してしまいます」と、DroneSeedで成長部門責任者を務めるMatthew Aghai(マシュー·アガイ)氏はいう。

消防士の英雄的な仕事が終わる頃には、森林当局や民間の植林業者による何年にもわたる追跡調査が始まるが、彼らの努力は予想外の障害、すなわち木の不足によって妨げられている。

火災発生後の苗床

画像クレジット:DroneSeed

公的にも民間にも存在するシードバンクや苗床業者は、ここ何年も需要に追いつけていない。この記事の範疇を超えた市場価格(そしておそらく操作や放置)のために、数え切れないほどの土地を毎年伐採し直すのに必要となる数百万本の苗木が手に入らないのだ。

官民の関係と市場を研究したDroneSeedは、結局のところそれが真実であると判断した。仕事をきちんとやり遂げたいなら、自分でやらなければならないこともある。そこで彼らは、約150年間太平洋北西部でビジネスをしてきた種子と樹木のサプライヤー、Silvaseed(シルバシード)を買収した。

Silvaseedは、1世紀前から世界中の顧客に供給しており、常に成功を収めてきたものの、この分野の資本が限られているため控えめな運営を続けていた。つまるところ、ごく最近まで、苗木を育てている企業が利益を上げて事業を2倍、3倍にすることを示唆するような動きは見られなかった。

同社の種子選別施設は、技術的な機械であふれている……20世紀半ばからのものだ。だが、DroneSeedのチームはそれでも驚きを隠せなかった。産業規模の種子選別・貯蔵施設は、分解、洗浄、油処理をただ待つばかりであった。そして、21世紀に向けていくつかの改良が加えられた。彼らはSilvaseedのチームを維持すること、さらに実質的に拡大することをコミットしており、そこが彼らのゴールではなかった。それにしても、最初のクルー以外に誰が機械の中身を知っているだろうか、何十年もの買い物を追跡する年代ものの包括的なカードカタログはあるだろうか?

画像クレジット:DroneSeed

しかしながら、さらに重要なことは、これはDroneSeedが単なる植栽プロバイダーになるだけでなく、彼らが取り組もうとしている国内、おそらく世界規模の森林再生活動における唯一のワンストップショップになるための一歩であるということだ。今日、もしあなたが大きな森林の所有者あるいは管理者であり、5000エーカー(約2000万平方メートル)の森林を破壊しようとする野火が猛威をふるっているとすれば、おそらく1、2年をかけて、州政府機関、保険会社、種子ども給業者、植林業者、その他の半ダースほどの機関に電話をかけ書類を提出することになるだろう。DroneSeedはワンコールを目指しており、すべてがうまくいけば、数カ月以内に種子(栄養分をたっぷり含んだ、リスに耐性のあるパックに詰め込まれたもの)が地面に降り注ぐことになる。

「気候変動の深刻な影響を緩和するために森林再生を真に活用するには、全国で6倍の採種スペースと2倍の苗床スペースが必要だという研究結果が最近報告されました」とカナリー氏。「私たちはその仕事をしています。Silverseedを西海岸最大の民間シードバンクにまで拡大しました。また、毎年数百万本の苗木を育てており、生産能力を倍増しています」。

もちろん資金がなければ木は存在し得ない。また、森林再生のための既存のパイプラインは、何十年も前の官民パートナーシップと同じように遅くて手間のかかるものだ。ただし、その作業自体が最近燃え上がったばかりの遠隔地や野生地域で行われているという付加的な問題は別である。道路を再舗装するのは大変なことだろう。一世紀前に開拓された方法で1万エーカー(約4000万平方メートル)の荒野を再植林することを考えてみよう。

事前カーボン

画像クレジット:Ryan Warner / DroneSeed

森林を焼失した土地所有者は、過去には、これらの森林が15〜20年で再生すればその評価額が実現することを期待して、再植林のために国の資金と保険金に頼ってきた。多くの人々は森林をまったく復元せず、代わりに残った森林を皆伐して牧草地にすることで、火災で始まった仕事を完了することを選んだ。

近年、これらのプロジェクトの新たな資金源としてカーボンクレジットが登場している。排出量を相殺することを目指しており、自らのプロセスを変えることを望んでいないか、変えることができない企業が、植林のための費用を支払うというものである。問題は、これらのクレジットの量が非常に限られていることと、成熟するまでに数年から数十年かかることにある。企業はそれらの購入をめぐって競い合い、隔離された二酸化炭素1トン当たりの価格を押し上げている。

世界最大手の富裕企業各社は、自分たちがどれだけ環境に配慮しているかを示そうと躍起になっており、資金さえあれば、現在の10倍以上の金額を二酸化炭素削減プロジェクトに投じるだろう。

DroneSeedが確信している金融イノベーションであり、同社の仕事を支え、倫理的に見せかけようと奮闘する業界の膨大な金庫を空にするだろうと考えられるのが、カーボン先物、つまり「事前」クレジットだ。「今日の資金調達のために、未来の森をあなたのために喜んで育てます」というものだが、多くの独立した監視が存在する。

Climate Action Reserve(クライメート・アクション・リザーブ、CAR)のような組織が標準的なアプローチを開拓し、普及させてきた。事前クレジットは、成長や確認を待つ必要なく、今すぐ植林を開始するための努力に対して支払われる。木が植えられ、その土地は伐採されないことを法的に保証するために長期の地役権が与えられる。植林した木の本数や健全性を確認するために、1〜2年後に独立した森林管理チームが調査を行う。DroneSeedは、このプロセスをさまざまな方法で改善している。主に、種を採取した瞬間から(種の位置、種類、標高などの属性が記録される)、種が植えられた時間と場所、分単位、メートル単位まで、文字通り膨大な量のデータを収集して追跡する。その後、そのデータを使用することで、成長と植栽の成功をより簡単に測定できるようになる。

筆者は当初、ここでの貨幣の動きを理解するのに苦労した。金融商品は私の得意分野ではなく、何といっても抽象的である。だが、森林再生のために費やされるのを待っている何十億ドル(約何千億円)もの資金が、それを行うための構造化された方法がないために保留されているという事実があるようだ。確かに、Appleは苗木や林業に5000万ドル(約56億円)を寄付することもできるが、それは単なる昔ながらの慈善事業であり、5000万ドルが確実に有効に使われるようにするための監視はほとんど行われていない。誰かがやってきて、そのお金で何ができたのかと尋ねると、彼らは責任を転嫁するしかないのだ。

コンプライアンスと規制の目的においては、公的なカーボンクレジットは依然として唯一の選択肢であるが、事前クレジットはLEED(米国グリーンビルディング協会が開発・運用する環境性能評価システム)やUL規格(米国保険業者安全試験所が策定する製品安全規格)のようなものを目指している。例えば、CARのClimate Forward計画で認証されたプロジェクトは、成長と監督の保証を満たしているため、5000万ドルが費やされると、LEED認証を受けた建物が一定レベルのエネルギー効率を持つのと同水準の二酸化炭素削減に確実に向かっていくことになる。

このようにして、企業はグリーンウォッシング予算からもう少し具体的なものを得ることができる。自社が何千エーカー(何千万平方メートル)もの森林再生をカバーし、その過程で何百万トンもの二酸化炭素に相当するものを取り除いたことを伝え、証明できることは、有意義なバリュープロポジションである。そして、実際の採種、選別、栽培、植栽、検査などを行う人々は、より大規模に行うための手段を切実に必要としている。そうでなければ、破壊の速度が回復の速度を上回ることになる。誰も遭遇したくない転換点だ。

一方、土地所有者は、火災で破壊された土地を引き受け、それを債務から資産に転換することができる。それは、基本的には、元の信用購入者に復旧資金を提供させ、その結果として得られる樹木を20年間、50年間、100年間そのままにしておくことに同意することである。その間、保険や助成金は、土地を失って手放すことのないように、先手を打つべきであろう。

DroneSeedにこうしたことすべてを可能にする3600万ドルのAラウンドは、Social Capital(ソーシャル・キャピタル)とSeven Seven Six(セブン・セブン・シックス)が主導し、他の多くの企業も参加した。Tesla(テスラ)とSpaceX(スペースエックス)の初期投資家だったDBL Partners(ディービーエル・パートナーズ)は、Shopify(ショッピファイ)のCEOのTobi Lütke(トビー・リュトケ)氏、Resilience Reserve(レジリエンス・リザーブ)、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏のTIME Ventures(タイムベンチャーズ)、Spero Ventures(スピロ・ベンチャーズ)、Marc Tarpenning(マーク・ターペニング)氏らと並ぶ大手投資家だ。また、Gaingels(ゲインジェルズ)はFlight.vc(フライト.vc)、HBS Lady Angels(ハーバード・ビジネス・スクール・レディ・エンジェルズ)、Julia Lipton(ジュリア・リプトン)氏のAwesome People Ventures(オーサム・ピープル・ベンチャーズ)、そしてAshley Mayer(アシュリー・メイヤー)氏を含むCoalition angels(コアリション・エンジェルズ)と提携している。これはいい考えだと思っている人が多くいるようだ。

「木は気候変動への特効薬ではありませんが、時間を稼ぐことができます」と林業サービスのベテランであるアガイ氏は語っている。それでも、太陽光発電や自動車の電化、その他の気候に焦点を当てた取り組みと同様に、森林再生に対し、失われた時間を補うための巨額の先行投資が必要であるといえよう。

画像クレジット:DroneSeed

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)