欧州の研究者団体がFacebookに政治広告の透明性を調査できるAPIを要求

Facebookは、そのプラットフォーム上で政治広告がどのように拡散し増幅してゆくかを調査可能にするAPIを、誠実な研究者に提供するよう求められている。

Mozillaが率いる欧州の学者、技術者、人権団体、デジタル権団体の連合は、5月に行われる欧州議会選挙の前に、政治的な宣伝の拡散と増幅の様子がわかるようFacebookにその透明性の拡大を要求する公開書簡に署名した。

我々は、この公開書簡に対するFacebookの反応を探った。

Facebookは、それ以前に、欧州において独自の「選挙セキュリティー」基準を設けることを発表していた。具体的には、政治広告の承認を行い透明性を持たせるというものだ。

元欧州議会議員でありイギリスの副首相を務めたこともあるFacebookの新しい国際広報担当責任者Nick Cleggは、翻訳された政治ニュースが同社のプラットフォーム上でどのように配信されるかを人間の目で監視するオペレーションセンターを、来月にもEUに複数ある中のアイルランドの首都ダブリンにあるセンターに立ち上げ、運営を開始すると先月発表した。

しかし、公開書簡に署名した人々は、Facebookが盛んにPRする政治広告の透明性に関する基準は甘すぎると主張している。

さらに彼らは、Facebookがとってきたいくつかの手順が、同社が断言する政治広告の透明性を外部から監視しようとする取り組みを拒んでいると指摘している。

先月、ガーディアン紙は、Facebookが同社のプラットフォームに加えた変更により、政治広告の透明性を外部から監視できるよう求める団体WhoTargetsMeの、同プラットフォームでの政治広告を監視し追跡する行動が制限されたと伝えた。

イギリスを本拠地とするその団体は、公開書簡に署名した30を超える団体の中のひとつだが、彼らが言うところの「貴社のプラットフォームでの宣伝の透明性を高めるためのツールを構築しようとする誠実な研究者への嫌がらせ」を止めるよう訴えている。

署名した団体には、Center for Democracy and Technology、Open Data Institute、国境なき記者団も含まれている。

「Facebookユーザーに用意された広告を透明化するツールへのアクセスを制限することは、透明性を低下させ、政治広告の分析に役立つツールをインストールするというユーザーの選択を奪い、貴社プラットフォーム上でのデータの評価を目指す誠実な研究者を支配下に置くことである」と彼らは書いている。

「貴社がこうしたサードパーティー製ツールの代わりに提供しているものは、単純なキーワード検索機能であり、それではレベルの浅いデータにしかアクセスできず、有意義な透明性をもたらすことはできない」

この書簡は、Facebookに対して「高度な調査と、EUのFacebookユーザーに向けられた政治広告の分析ツールの開発を可能にする、実用的でオープンな広告アーカイブAPI」を公開するよう求めている。そしてその期限を、欧州議会議員選挙の前に外部の技術者が透明性ツールを開発する時間が得られるよう、4月1日までと定めた。

書簡の署名者らはまた、政治広告が「他の広告と明確に区別」できるようにすること、さらに「広告主の身元やEU加盟国全体で同プラットフォームに支払われた金額など、鍵となるターゲティング・クライテリア(設定)」を添えることをFacebookに求めた。

昨年、イギリスの政策立案者たちは、ネット上のデマが民主主義にどれほどの影響を与えるかを調査し、政治広告のターゲティング・クライテリアに関する情報として何をユーザーに提供しているのかを教えるようFacebookに圧力をかけた。また、政治広告を完全に拒否できる手段をなぜユーザーに与えないのか問いただした。FacebookのCTO、Mike Schroepferは、明確な答を出せず(あるいは出そうとせず)、代わりにFacebookが提供すると決めたデータのほんの一部を繰り返すことで質問をかわす作戦に出た。

1年近く経過した今でも、欧州市場の大半のFacebookユーザーは、政治的透明性の初歩的な段階すら与えられていない状況だ。同社は自社の規定を採用し続け、対応はマイペースだ。困ったことに、「透明性」の定義(つまり、ユーザーにどこまで提示するか)も自分で決めている。

Facebookは、昨年の秋、イギリスにおける政治広告に関して、「広告料の支払者」の提示機能を加え、広告はアーカイブに7年間保管されることを発表するなど(非常に簡単に回避できることを示されて検証方法を見直すはめになったが)、独自の透明化対策の一部を適用し始めた。

今年の初めには、Facebookは、アイルランドでの中絶を巡る国民投票の間、一時的に海外団体が出資する広告の掲載停止も行っている。

しかし、地方選挙など、その他の欧州での選挙では、表示された政治広告に関して、または誰が広告料を支払っているのかといった情報がユーザーに示さないまま、Facebookは広告の掲載を続けていた。

EUの高官は、この問題を注視していた。先月末、欧州委員会は、先月発表された政治的偽情報に対する自主規制の実施に署名したプラットフォームや広告代理店からの進捗状況を知らせる月間報告の第一号を12月に発表した。

欧州委員会によれば、とくにFacebookには、消費者エンパワーメントのためのツールをどのように展開するか、さらに、どのようにしてEU全域のファクトチェッカーや調査コミュニティーとの協働を強化してゆくかについて「さらなる明確性」を求めた。とくにジュリアン・キング委員は、外部の研究者へのデータアクセス権の提供をしなかった企業としてFacebookを名指ししている。

本日(米国時間2月12日)送られた学者や研究者からの公開書簡は、Facebookの最初の消極的な対応に対する欧州委員会の評価を援護するものであり、翌月の月次評価に向けて力を添えるものとなる。

欧州委員会は、プラットフォームが政治的偽情報の問題に自主的に取り組む努力を拡大できないのであれば、法制化の可能性もあると警告を出し続けている。

プラットフォームに自主規制を迫ることには、もちろん批判的な人もいる。彼らは、それを行っても、強大な力を持ちすぎたというプラットフォームの根本的な問題には、そもそも対処できないと指摘している……。

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この書簡は左派でリバタリアニズムがどう働いているかを示している。Zuckerbergに彼の力を合法化する民主主義を守れと求めている。それは彼が決めることではない。

Facebookに関する事実(本文は英語)

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(翻訳者:金井哲夫)

欧州議会、著作権をめぐる改革案を否決ー議論続行へ

312対278で、欧州議会はデジタル著作権改革案をめぐる議論を続行させることを決めた。法令化するのに最短ルートをとるのではなく、今後さらなる議論や綿密な調査が行われることを意味する。

大議論を巻き起こした提案を改めるチャンスがあるというのは、重要な意味を持つ。

先月、欧州議会の法務委員会は著作権についての法案の最終文案を承認したがー最も議論を巻き起こしている2つの条項の承認も含むー“リンク税”、“検閲マシーン”に反対する人々は、欧州議会議員に議論を再度行うよう、そして法案を改めるよう最後まで運動を展開した。

著作権改革案では主に2つの条項が議論を起こしている。

・第11条ーGoogle newsのようなニュースアグリゲータービジネスモデルを標的にするために、報道コンテンツスニペットの著作隣接権をつくる。メディアは長い間、自分たちのコンテンツからニュースアグリゲーターが不正に益をあげていると主張してきた。

似たような著作権の法律がドイツとスペインで施行されている。スペインではライセンス取得がフレキシブルではなく、Google ニュースは見出しや批評、交通情報に至るまでスペイン語版全てを閉鎖した。

・第13条ーユーザーがアップロードするコンテンツを大量に扱うインターネットプラットフォームが、著作権違反に問われるようになる。これは、例えばYouTubeのようなプラットフォームは、ユーザーがコンテンツをアップロードした時点で事前にフィルターをかける必要に迫られる。もしアルゴリズムが著作権のある作品を使用しているのを見落とした場合は大変な事態となるかもしれない。

どちらかというと、第13条の方が議論の対象となる要素が強く、これについて改革案反対者は特に抗議している。しかしながら、この改革案はミュージシャンや音楽業界からは支持されている。彼らは、Youtubeはミュージックビデオ視聴に関してプラットフォーム上で法的に保護せず、本来より少ないロイヤリティしか払っていないと何年も訴えてきた。

反対キャンペーンでは、デジタル権利団体、スタートアップグループ、インターネット企画者、コンピューターサイエンティスト、研究者、ウェブ制作者らで構成する連合ーSir Tim Berners-Lee、Vint Cerf、Bruce Schneier、Jimmy Wales、そして先月のオープンレターに名を連ねたMitch Kaporも含むーは第13条が“インターネットを、シェアやイノベーションのためのオープンプラットフォームから、ユーザーを自動監視したりコントロールしたりするためのツールへと変えてしまう、その変化へ一歩を踏み出すものになる”と主張している。

欧州委員会は、オンライン百科事典は第13条適用外としていたにもかかわらず、今週、Wikipediaのいくつかの欧州言語版が改革案反対の姿勢を表すためにコンテンツを黒く表示した。

しかしながら、反対を唱える人々の主張は…

欧州議員に法案を改めることができるように投票するよう求めるオンライン請願には、投票までに85万超の署名が集まった。

投票の直前、欧州議員は改革案についての賛否の概要を聞いた。

賛成派の議員Axel Vossー先月改革案を可決した法務委員会の報告者ーは「インターネット上で欧州アーティストが搾取されている状態に終止符を打つのが狙いだ」と述べた。

「我々は、欧州で創造されたもので莫大な利益を得てきたGoogleやFacebookといったメジャーな米国のプラットフォームについて話をしている。我々はこうした行いをやめさせなければならない」。そして「アメリカ第一主義というのはデータや我々の偉大な作品の乱用だと言う人々がいる一方で、別の人々はこのインターネット資本主義をサポートするというのはまったく不可解だ。我々は欧州のクリエイターの側に立つべきであり、さもなければクリエイターたちは破産してしまうリスクがある」とも述べた。

「著作権違反を防止するのになぜ反対するのか。クリエイターたちが真っ当な報酬を得ることになぜ反対するのか。そして巨大なプラットフォームに、より責任を持ってもらうのになぜ反対するのか」「我々が向かってきている反対運動は、Googleや、欧州議員の子供たちの目に触れるFacebookによるものだ。このキャンペーンの全てが嘘に基づいている。ユーザー個人に適用される制限などはなく、全ての人がリンクを貼ったり、法的な確証を持ってコンテンツをアップロードしたりできる」と付け加えた。

これに対する改革案反対の主張を展開したのはー“幅広い、事実に基づく議論”と形容するのを許容するとしてー域内市場・消費者保護委員会の報告者、Catherine Stihler議員だ。この委員会は第13条に関してコンピテンシーを持つが、法務委員会の賛同を得られた「必要なバランスを欠いている」という文言にはStihlerの姿勢は考慮されていない。

「欧州のアーティストや文化的多様性を守るという共通するミッションのために我々全員が団結している。委員会では、価値観の違いについて意義ある進展をみながら、と同時に欧州のインターネットユーザー、中小企業、スタートアップを保護するという、幅広い和解に至った」と Stihlerは述べている。

「表現の自由への第13条の影響について本当に懸念されることは、国連の特別報告者David Kayeからワールドワイドウェブ発明者sir Tim Berners-Leeに向けて注意喚起された。法務委員会の権限に反対する100万人近くの署名が集まった請願を私は昨日受け取ったばかりだが、真の懸念は市民の声の中にある。私が思うに、この法律の背景には意見の一致というゴールがある。現段階では正しいものではなく、その提案された手法について大きな議論がまだ残る。幅広いサポートを得るために、我々は専門家や株主、市民に対し、必要な議論を提供する義務を負っている」。

今日の採決の結果は、賛成派、反対派どちらの著作権ロビイストたちにとって忙しい夏になることを意味している。改革案の改正や次の投票のチャンスがあり、欧州議会での投票は9月に行われる。

欧州消費者機関BEUCは、今日の採決結果を評価している。

Monique Go総裁は発表文の中で「大規模かつシステマティックなオンラインコンテンツのフィルタリングを防ぐ戦いを展開してきた中で、今日の採決は大きな決定だ。立法府の議論の方向性をすぐさま正す必要がある。インターネットは引き続き、消費者が自分の作品や意見、アイデアを自由にシェアできる場所であり続けるべきだ。欧州議員は、著しくバランスの欠いたレポートを改め、著作権がコンシューマーとクリエイターの両方にとって機能するものとなるようにするチャンスがある」。

全くハッピーでない人たち:著述家ソサエティや、作曲家と音楽出版社(Sacem)だ。Sacemの事務局長David El Sayeghは「逆行しているが、終わりではない」と表現した。

「Sacemは引き続き、クリエイターの権利が認識され、彼らの作品価値に対して相当の報酬が払われるように努力する」と彼は発表文で述べた。「我々は今日の採決結果で落胆することはなく、音楽業界の未来を保護する、正当な合意に至るという希望を持って、世界中のミュージシャンや音楽愛好家のサポートを駆り集め続けるつもりだ」。

「我々は、21世紀のデジタル環境の中に身を置くクリエイターの権利を十分認識するようなフレームワークを、欧州議会がゆくゆくはサポートするものと確信している」。

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(翻訳:Mizoguchi)

ザッカーバーグはどうやら欧州で味方をつくれなかったようだ

欧州連合の議員との会合で、Facebook創設者のザッカーバーグはEU一般データ保護規則(GDPR)の“コントロール、透明性、責任”という原則に言及した。この新たな規制GDPRは25日金曜日に施行され、そこには、反した場合に科す罰則も盛り込まれている。FacebookはGDPRを遵守すると、とザッカーバーグは明言した。

しかしながら、今回の会合では透明性や責任というものはほとんど見られなかった。会合に出席した議員からかなり突っ込んだ質問が1時間にわたって出されたが、ザッカーバーグは黙って顔をひきつらせながそうした質問を聞いたのち、そこから答えやすいものばかりを選んだ。

議員からの質問は多岐にわたり、その多くはFacebookの企業倫理について深く掘り下げるようなものだった。情報の不正使用によるプライバシーの侵害の影響はどの程度あったのか、Facebookが会社分割を必要とする独占状態にあるかどうか、データの不正使用についてユーザーはどのように償われるべきか、といったものだ。

Facebookは本当にGDPRを遵守しようとしているだろうか、という質問が何回も投げかけられた(当然のことだが、データ保護を専門とする懐疑派の議員からだ)。Facebookはなぜ15億人にものぼる世界のユーザーのデータ操作ステータスを変更し、GDPRの効力が及ばないようにしたのか。ユーザー情報をもとにしたターゲット広告をやめることを必死に回避してきた同社だが、そうしたターゲット広告のシステムを人々が拒否できるプラットフォームを提供する用意があるのだろうか。

そもそも、なぜ欧州議会との会合を公にすることを拒んでいたのか。EUのプライバシー規則に反対するロビー活動に、なぜ何百万ドルもの金を費やしたのか。サービスを運営している国で税金を払うのか。フェイクアカウントを防止するためにどんな取り組みをしているのか。いじめを防ぐ取り組みはどうか。コンテンツを規制するのか、それともニュートラルなプラットフォームなのか。

矢継ぎ早に厳しい内容の質問がなされ、ザッカーバーグは集中砲火を浴びた格好だった。しかしいざ質問に答える段になると、それは応答の体をなしていなかった。自分が選んだテーマで話したいことだけを話し、しかもそれは事前に準備されたものだった。

ここに、なとびきりの皮肉がある。人々の個人情報は、あらゆるトラッキング技術やテクニックを介してFacebookに大量に流れている。

Cambridge Analyticaによるデータ不正使用スキャンダルの詳細が物語っているが、個人情報はFacebookから大量にリークされたのだ。そのほとんどがユーザーの知らないところで行われ、もちろん同意を伴うものでもなかった。

Facebookの運営の話しになると、同社はかなりの秘密主義を展開している。ほんのわずかな’ニュースフィード“を公開し、どんなデータをどういう目的で収集しているのか詳細は一切明らかにしない。

先月もザッカーバーグは米国議会との会合に臨んだが、そこでもやはり基本的な運営についての質問にまともに回答することを避けた。もし今回の会合で真の透明性や責任の所在が明らかになることを期待していた議員がいたとしたら、完全に失望しただろう。

Facebook ユーザーは、Facebookに自らアップロードしたデータは、ダウンロードできる。しかし、Facebookがあなたについて収集した全情報をダウンロードできるわけではない。

欧州議会の会派の代表らの関心はいまやFacebookのビジネスに集中しているようだ。そして、今回のザッカーバーグの黙り芝居を、Facebookに罰則を適用するためのさらなる証拠としてとらえる向きもある。

EUの規則はお飾りではない。GDPRの欧州外への影響と、有力なパブリックプロファイルはさらなる政治的な論争を展開しそうな勢いだ。

ザッカーバーグが欧州議会の声に耳を傾け、これまで同様のことを語ることで、CEOがブリュッセルでの会合に出た、という事実を作ることをFacebookが今回望んでいたのなら、これは大きな誤算だったようだ。

「まったくザッカーバーグの対応には失望させられた。議員からの詳細な質問に答えなかったことで、欧州の市民の信頼を取り戻すチャンスを失った。それどころか、出席議員に‘より強い規則と監督が必要’との印象を与えた」と、欧州自由連盟議員でGDPR報告者でもあるJan Philipp Albrechtは会合後、我々にこう語った。

Albrechtは会合で、FacebookはWhatsAppとデータの共有をどう行なっているのか、とただした。この問題はデータ保護当局の怒りをかっている。当局がFacebookに対し、そうしたデータフローを止めるよう促しているのにもかかわらず、Facebookはいまだにデータ共有を続けている。

また議員は、そうした2つのアプリ間でのデータ交換はしないことを約束するよう迫った。しかし、ザッカーバーグは頑として約束は口にしなかった。

欧州議会で人権委員会(Libe)の委員長を務めるClaude Moraesは会合後、極めて厳しいトーンではあったものの、そつのないコメントをしていた。

「データ漏えいの結果、Facebookの信用は地に落ちた。こうした状況を打開し、Facebookは欧州のデータ保護法を完全に遵守していると人々に納得してもらうためには、ザッカーバーグ氏とFacebookは真摯に努力しなければならない。’私たちはユーザーのプライバシー問題を真剣に考えている‘といった一般的なコメントだけでは不十分だ。Facebookはそれを行動で示さなければならない。差し当たり的なものであってはならない」と述べている。

「Cambridge Analyticaスキャンダルの件はすでに現在のデータ保護ルールに違反しており、間もなく施行されるGDPRにも反するものだ。この法律に従い、欧州データ保護当局はしかるべき対応をとることになるはずだ」とはっきり語ったのは英国議会の文化・メディア・スポーツ省の委員長Damian Collinsだ。

同委員会はこれまでに3度ザッカーバーグを召喚しているがいずれも実現していない。完全にザッカーバーグに拒絶され、容赦ない姿勢は当然だろう。ザッカーバーグの代理として英国議会で証言に立ったCTOが質問に対してあいまいにしか答えなかったことでもFacebookを非難している。

Collinsはまた「欧州議員からの極めて重要な質問について綿密に調べる機会を逸したのは残念だ。シャドープロファイルやWhatsAppとのデータ共有、政治広告を拒否できるかどうか、データ不正使用の実際の影響度合いはどうだったのか、といったことに関する質問は図々しくも回避された」と指摘した。「残念ながら今回とった質問形式ではザッカーバーグに質問の選り好みをさせる結果になり、各指摘についての回答はなかった」。

「出席議員の、今回の会合はまったく意味をなさなかったという明らかな不満をここに代弁する」とも付け加えた。“ユーザーが知りたいこと”を議会で明らかにするという点では、今回の会合は結局4回目の失敗に終わった。

今回の会合の最後の方では何人かの議員が明らかに激昂した様子で、これまで答えなかったことについて再度ザッカーバーグを質問攻めにした。

ザッカーバーグが話しを次に移そうとするタイミングで、1人の議員は「シャドープロファイル」と言葉を挟んだり、ザッカーバーグが鼻息荒く笑ったり時間を稼ぐためにあらかじめ用意したメモをみたりすると別の議員が「賠償」と叫んだりといった具合だった。

そうした後に、やや不満な態度をあらわにしたザッカーバーグが追求する議員の1人をみて、議員のシャドープロファイルについての質問に答えると言い(実際のところ、認識していなかったというのを理由に、ザッカーバーグはシャドープロファイルという言葉を使わない)、Facebookはセキュリティ目的でそうした情報を収集する必要があると持論を展開した。

議員の1人が、Facebookは非ユーザーの情報をセキュリティ以外の目的で使用することがあるのかと質問したのに対し、ザッカーバーグは明確に答えなかった(後付けしたセキュリティ目的というのは、隠そうとしていることを逆に明らかにするようなものだ)。

ザッカーバーグはまた、非ユーザーはどうやって“データの収集をやめさせる”ことができるのか、という再三の質問も無視した。

話すべきポイントについて隣にいる弁護士の方を向く前に(“他に話しておくべきことはあるだろうか”と尋ねた)、ザッカーバーグは「セキュリティという面で、私たちは人々を守ることは大変重要だと考えている」と素っ気なく述べた。

FacebookにとってCambridge Analyticaの件は、将来あるかもしれないデータ強盗を未然に防ぐのにどうやってプラットフォームを厳重に監視するかということをPRする材料となった。弁護士は、話がCambridge Analyticaに戻るのに不満を表したものの、すぐさまそうしたスキャンダルの危機PR術を行動に移した。

今回の会合ではっきりとしたのは、Facebook創業者のコントロール方法の好みだ。それは、彼が現在訓練中のものだ。

Facebookが欧州の議員と会うことについて同意するのに先立って決められた会合形式の制限により、議員に追及を許可しないというのは明らかにFacebookにとっては好都合なことだった。

ザッカーバーグはまた、それとなくほのめかしたり、時間になったようだと言ったりして何度も会合をたたもうとした。議員はこうしたザッカーバーグのたたみ掛けを無視したため、自分の言うことがすぐさま実行に移されなかったザッカーバーグはかなりの不快感を露わにしていた。

議員から出されたそれぞれの質問について、Facebookから書面による回答を受け入れるかどうかという、議会議長と議員との間で展開されたやり取りをザッカーバーグは見守り、その後に書面で回答することにAntonio Tajani議長とその場で合意することになった。

あらかじめCollinsが議員に警告していたように、Facebookは自らのビジネスのプロセスについての質問に対し、多くの言葉を語りながらその実は何も語っていないという回答方法を十分に練習している。その回答方法というのは、質問されていることの意図や目的を巧みに避けるというものだ。

ザッカーバーグが演じた会合でのショーで見られた自制というのは、明らかに欧州議員がソーシャルメディアに必要だと考えているようなガードレールではない。何人かの議員がザッカーバーグの顔から感じた自制は、効果的ではなかったようだ。

最初に質問した議員はザッカーバーグに謝罪が十分でないとせまった。他の議員は、15年悔恨し続けることになる、と指摘した。

Moraesは、Facebookは欧州の基本的価値観に対し“法的そして道義的責任”を果たす必要があると発言した。Libeの委員長であるMoraesはさらに「GDPRが施行されるEUにあなたは今いることを忘れてはならない。EUのデータ保護法を確認し、また電子上のプライバシーについて考え、EUのユーザーならびに何百万ものEU市民、非ユーザーのプライバシーを守るために、法的そして道義的責任を果たしてほしい」と述べた。

自制、もしくはザッカーバーグがいうところの次善の策であるFacebook流の規則は、欧州議員の規制の話に対し、米議会で述べた言葉で答えるというものだった。その言葉とはこうだ。「ここでの問いは、規制があるべきかどうかだと考えていない。何が正しい規制なのか、ということだと思う」。

「インターネットは人々の暮らしにおいてとても重要なものになりつつある。ある種の規則が重要であり、不可欠のものでもある。ここで重要なのは、この規制を正しいものにすることだ」と彼は続けた。「人々を守る規則体系を有すること、革新の余地があるようフレキシブルであること、今後さらに進化するAIのような新技術を妨げるようなものでないことを確認しておく必要がある」。

彼はスタートアップのことも引き合いに出した。’好ましくない規制‘は将来のザッカーバーグの登場を妨げるものになると言っているのだろう。

もちろん、ザッカーバーグは自身が所有するFacebookというプラットフォームが注意を十分にひく存在であり、我こそはというエントレプレナーがひしめく次世代の中でも飛び抜けた存在であることに言及していない。

ブリュッセルでの会合で、味方をつくったり人々に影響を与えたりする代わりに、彼は欠席するよりももっと失うものがあったようだ。Facebookに適用されるEUの規則を刷新するのを仕事とする人たちを怒らせ、遠ざけたのだ。

皮肉にも、ザッカーバーグが答えたいくつかの質問の一つに、Nigel Farageによるものがある。Facebookが“政治的に中立なプラットフォーム”なのか、1月にアルゴリズムに変更を加えた後、中道右派の発言を差別しているのではないか、といったものだ。Facebookはフェイクニュース監視を行う第三者のファクトチェッカーの名前を明らかにしていない。

つまり、米国の上院と議会でも明白だったが、フェイスブックはあらゆるところから集中砲火を浴びている。

実際のところ、Facebookはファクトチェックのパートナーシップについて情報を開示していない。しかし、ザッカーバーグが大した意味もない質問に限られた時間を費やしたのは、十分に意味するところがある。

Farageは、彼の持ち時間の3分の間に、「Facebookや他のソーシャルメディアの存在なしには、英国のEU離脱やトランプ政権、イタリアの選挙結果はあり得なかった」と述べた。

ザッカーバーグがこの発言についてコメントする時間がなかったのは、滑稽としか言いようがない。

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(翻訳:Mizoguchi)