虫歯治療をサポートする歯科AIソフトOverjet、前回からわずか4カ月で約48億円のシリーズB完了

Overjetの診療情報プラットフォームがX線写真と歯科AIの検出結果を表示している(画像クレジット:Overjet/PR Newswire)

2700万ドル(約31億円)のシリーズAラウンド発表からわずか4カ月後、歯科治療人工知能ソフトウェアを開発するOverjet(オーバージェット)は、既存投資社の支援を受けて4250万ドル(約48億円)のシリーズBラウンドを完了し、さらに前進した。

同社のシリーズA以前、TechCrunchは2020年に同社が785万ドル(約9億円)調達した時に紹介記事を書いた。直近のラウンドをリードしたのはGeneral CatalystとInsight Partnersで、Crosslink CapitalとE14 Fundも参加した。これまでの調達総額は8000万ドル(約91億円)をわずかに下回る。十分な資金を得たことで、Overjetの企業価値は4倍近い4億2500万ドル(約483億円)になった、とOverjetの共同ファウンダーでCEOのWardah Inam(ワーダー・イナム)博士はいう。

「前回のラウンドの評価額は1億1500万ドル(約131億円)ですから、これは非常に大きな伸びです」と彼女は付け加えた。「歯科企業でこの節目を達成したところは多くありません」。

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ラウンドを終えたばかりのイナム氏は、これは急なシリーズBで予定外のタイミングだったが、投資家からの問い合わせが多かった結果だとTechCrunchに話した。新規の投資家が興味を示したが、同社は既存出資者だけのラウンドにすることに決め、それは将来に向けた条件が満たされたからだった。

ボストン拠点のOverjetが開発した歯科AIソフトウェアは、歯科医がスキャン結果を見て虫歯の特定と進行を判断する手助けをする。同社の製品、Dental Assist(デンタル・アシスト)はFDA(食品医薬品局)の認可を取得している。10月に発表した50カ所の歯科医院からなるNew England Family Dentistry(ニューイングランド・ファミリー・デンティストリー)との提携など、多くの歯科が参加している団体をターゲットにする戦略の同社は、現在自社ソフトウェアを数千か所の施設に導入するのに忙しくしているとイナム氏は語った。

保険に関しては、同社の顧客には主要保険会社16社がいる。シリーズA時点で5000万人のメンバーをカバーし、現在は約7500万人になっている、とイナム氏はいう。

「調達した資金は歯科クリニックへの導入を進めるためです。十分な雇用が達成されたので、これから大量の受注残をこなしていきます」と付け加えた。「1年かかると思っていた節目が、結局数カ月で達成されてしまいました」。

12月にOverjetの従業員は50名になった。2021年初めは20名だった。次の6カ月間で人員を3倍にして、カスタマーサクセス(顧客を成功に導く)とエンジニアリングを強化する予定だとイナム氏はいう。同社はリモート優先の業務形態に切り替えたので、幅広く人材を集められるようになった。新たな資金は新製品開発にも使う計画だ。

今度も同社は、口腔衛生と口腔ケアの改善と技術開発に焦点を当てていく。歯科データをコンピューターで分析することで疾病の進行をより正確に判断し、価値に基づく治療にむけて結果を判断できるようする。このようなテクノロジーは「史上初めて」だとイナム氏は確信している。

歯科業界はテクノロジーの導入が遅いほうだが、過去10年間、伝統的に手作業だった部分を自動化して患者と医師を支援するべく多くのスタートアップが参入した。具体的には、クリアアライナー(透明歯列矯正)とデンタルスキャン、歯科衛生教育などだ。

2021年、X線画像を変換して虫歯を見つけやすくするAdra(アドラ)などの会社が資金調達を完了した。歯科保険のBeam Dental(ビーム・デンタル)もそうだ。

「歯科医院の経営は急速にビジネス的になり、彼らは治療と収益を改善するためにテクノロジーやその他のツールに投資する用意があります」とイナム氏は言った。「この分野で優秀なスタートアップが次々とでき上がっているのはそれが理由です。だれもが口腔衛生の価値を軽視しているからです。そして今、そこにはもっとすばらしいテクノロジーを提供するチャンスがあります」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nob Takahashi / facebook

曲がった笑顔を矯正、3Dプリントされたカスタムメイドの歯列矯正用ブラケットを提供するLightForce Orthodontics

歯並びは人それぞれ異なることから、従来の歯科矯正学は芸術性と医学的な魔術性を兼ね備えるものだった。1990年代後半、インビザラインはカスタマイズ可能なアライナーで業界を一変させたが、結局アライナーは歯科矯正患者の30%にしか対応していないことがわかった。それ以外の患者には、あまり革新的な技術はなかったーだがLightForceが登場し、状況を一変させた。LightForce Orthodonticsは「あなたにフィットするカスタムサイズ」という洒落たスローガンを掲げ、3Dプリントされたカスタムメイドの歯列矯正用ブラケットと装着トレーを製作している。カスタマイズの程度が大きければ大きいほど良い。患者にとっては治療期間が短縮され、矯正医にとっては1000分の1mm単位の精度の矯正治療計画を提案できるようになるからだ。

LightForce Orthodonticsは、過去1年間で収益が500%、チームが300%成長するなど高度な成長を遂げた。これには投資家も注目しており、特にある投資企業は、この会社に食いつき、資金調達に参入したがった。その名もKleiner Perkinsで、同社は25年前に歯科矯正ビジネスに参入し、インビザラインへの投資で巨額の資金を得た。同社は今回のチャンスにも参加しており、今回のシリーズCラウンドでは、Matrix Partners、Tyche Partners、AM Venturesなどの過去の投資企業の参加を得て、LightForceに5000万ドル(約56億7300万円)を投入した。

LightForceのCEO・共同設立者であり、今でも矯正歯科医として月に4日診療しているAlfred Griffin III(アルフレッド・グリフィンIII)博士(DMD、PhD、MMSc)はこう説明する。「当社でいつも話していることは、すべての決定において患者さんを第一に考えるということです。私たちが行うすべてのことは、常に『患者さんにとって最善かどうか』という観点で考えられています。全員参加のミーティングでさえも患者さんから始まり、どうやって誰かを助けたのかを考えます。私たちが開拓している市場は、米国の全症例の75%を占める10代・思春期の市場です。思春期の心理を考えてみてください。子どもたちは自己意識を形成する時期です。矯正歯科医として個人的に見てきた中で、母親があれやこれやのせいで『うちの子がいじめられているんです』といってくるケースをどれだけ見てきたかわかりません。LightForceを使えば、そのような患者さんをより早く治療することができ、診療回数や学校を休まなければならない期間を減らすことができます。テクノロジーを活用することで、より良い結果を得ることができるのです」。

同社はちょうど1年前に1400万ドル(約15億8800万円)のシリーズBラウンドを実施したばかりで、さらなる資金を求めていたわけではなかった。しかしKleiner Perkinsからの連絡を受け、LightForceはその声に応え、資金調達の可能性があるかどうかを探ることにしたのだ。

LightForceのカスタムブラケット(左)は、歯に合った形状であることに加えて、サブミリ単位の精度で配置・整列できる。右は従来のブラケット(右)(画像クレジット:LightForce Orthodontics)

グリフィンによると「当社は、計画していたよりも少し早く資金調達を行いました。過去に当社を知った非常に有名なベンチャーキャピタルが見守ってくれていましたが、彼らと取引するのは私たちには少し早すぎました。Kleiner Perkinsは、ぜひ一緒に仕事をしてみたいと常に思っていた会社の1つです。特にWen Hsieh(ウェン・シェー)氏は、3Dプリンティングやハードテクノロジーに精通しており、ハードテック分野の優れた案件を数多く手がけています。Kleiner Perkinsは、歯科矯正分野で大きな実績を残している唯一のベンチャーキャピタルグループでもあります。20年前のことですが、Align Technologyは歯科矯正を良い方向に変えたと思います。Align Technologyでは2つの価値が生まれました。1つは審美的なメリットで、これにより成人層の需要が高まりました。2つ目は、彼らが行っていることのデジタル性です」。

「このようなイノベーションの多くは、業界の人間ではない人から生まれます」と、今回の投資を主導したKleiner Perkinsのパートナー、シェー氏はいう。「アルフレッドは自分自身が歯科矯正医であり、それが世界を変えることになりました。アルフレッド自身が歯科医であるため、ワークフローのどこに導入すればいいのかをすでにわかっているのです。通常のワークフローのどの部分が不要になるのか、どの部分が強化されるのか、時間配分をどうするのか、歯科技工士にどのような影響を与えるのか、クリニックの面積にどのような影響を与えるのか、患者さんの来院頻度にどのような影響を与えるのか、などなど。一方でアルフレッドは、シミュレーションや3Dプリントなど、他の分野の知識も取り入れています」。

なぜインビザラインだけを使って矯正を終わらせることができないのかと頭を悩ませている人がいるかもしれない。私も非常に似たような疑問を持っていた。分かったのは、アライナーは押すだけで、引っ張ることはできないということだ。歯を引っ張って他の歯と並べるのは、歯科矯正が得意とするところだが、アライナーにはそれができない。もう1つはコンプライアンスの問題だ。アライナーは1日22時間装着しなければなりませんが、人間にとってはこれは苦手なことだ。グリフィンは次のように指摘する。「母親は、治療が遅々として進まない場合、子どもを怒ることはありません。親子して、歯科矯正医を責めるでしょう」。

LightForceのブラケットやトレーは3Dプリントされる。これにより、矯正医はブラケットを歯の上の必要な位置に正確に装着することができる。新しいブラケットは半透明であるため、歯と同じ色に見え、目立ちにくくなっている(画像クレジット:LightForce Orthodontics)

この投資は、歯のある人にとって朗報だが、3Dプリントファンにとっても朗報だ。歯科矯正は、3Dプリント技術の世界最大の商用ユーザーの1つであり、現在、インビザラインは世界最大の3Dプリント企業だ。LightForceが膨大な数のプリンタを自ら購入できるだけの資金力を手にした今、この傾向は変わらないだろう。

今回の5000万ドル(約56億7300万円)の資金投入により、歯科矯正のための戦いが本格的に始まる。この新しい資金は、LightForceの運営と市場開拓のために使用される。当社は米国内の多くの歯科矯正医院が、アライナー治療のデジタルな利点と、歯列矯正の歯を動かす効率と質を組み合わせることができるように取り組んでいく予定だ。これはワクワクするが、複雑な過程になるだろう。ハイブリッドのセラミック矯正装置を顧客ごとにカスタムプリントする事業を拡大することは、論理的にも運営的にも非常に困難だ。

「規模拡大やマスカスタマイゼーションは、理論的には語られることはあっても、実際に取り組んだことのある人はほとんどいない、非常にユニークな問題です」とグリフィンは認める。「今、当社には約200人の社員がいますが、来年にはおそらく倍になるでしょう。営業とエンジニアリングが最大の経費となるでしょうが、人員の面では、物理的な製造とデジタル製造の両方において、製造技術者を一番に増やす必要があります」。

画像クレジット:LightForce Orthodontics

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

サブスクベースの歯ブラシ交換サービスからフロス、マウスウォッシュなど製品を拡大、口腔内ケア市場に基盤を築くQuipが約110億円調達

個人および歯科医向けの大規模口腔ケアプラットフォームを目指すQuip(クイップ)が新たに1億ドル(約110億円)を調達し、目標実現に向けて資金源を獲得した。

Cowen Sustainable Investments(CSI)主導の今回のシリーズB新ラウンドは、2020年4月にQuipが黒字化を達成したことを受けて開始された。これで同社の2015年創業以来の資金調達総額は合計1億6000万ドル(約176億円)を超えることになる。前回発表された調達額は2018年の4000万ドル(約44億円)だった。Quipは2015年のTechCrunch Disrupt NYのStartup Alleyで同社のサービスをプレゼンテーションしている。

当時Quipはサブスクリプションベースの歯ブラシ交換サービスとして有名だったが、その後数年で、フロス、マウスウォッシュ、デンタルガム、スマート電動歯ブラシなどを製品ラインに追加し、4350億ドル規模の口腔内ケア市場で着実に基盤を築いてきた。最近では、歯列矯正医対応バーチャル歯列矯正器具サービスを4月に開始している。

Quipの共同創業者兼CEOであるSimon Enever(サイモン・エネバー)氏はTechCrunchの取材に答え、同社の長期ビジョンは「口腔ケアのカテゴリで持続的なグローバルビジネスを構築し、事業を適正な規模に維持すること」だと語っている。Quipは、成長、イノベーション、世界100カ国におよぶ750万人の顧客からなるコミュニティの構築に重点を置いている。

「この時期に新しいラウンドを実施し、このような大きな資金を調達したのは、意図的な戦略です」と同氏はいう。「我々は、口腔ケアアプリに必要な基本ピースをまず揃え、そして数カ月前に歯列矯正器具などのサービスを開始しました。こうして今、世界的に注目される利益を出すことができるコアビジネスを展開していることを証明したかったのです」。

6年前にQuipが創業し資金を調達した頃は、口腔ケアスタートアップはほとんどなく、同分野での資金調達もあまり行われていなかった、とエネバー氏はいう。そもそも同氏がQuipを起業しようと決断したのも、8年前の歯科検診で歯科口腔分野における投資が極めて低調であることを知ったからだ。その後、デンタルケアの分野に革新を起こすスタートアップが次々に登場し、個人と専門医の両方に向けた投資が行われるようになった。歯列矯正や予約システムなど、Quipが現在取り組んでいる分野は特に注目されている。

Quipは、今回調達した資金で、すでに750万人のユーザーがいる個人向け口腔ケアプラットフォームをさらに拡充し、そのユーザーを5万人を超える歯科医師のネットワークに接続できるようにする。また、新しい分野にも参入し、グローバル事業の拡大も図って、口腔ケアコンパニオンモバイルアプリに新しい機能を導入する予定だ。

アプリユーザー数は2022年には100万人を超えると予想している、とエネバー氏はいう。新機能により、コーチング、ヘルス監視による口腔ケア習慣の追跡という同社のミッションが補完されることになる。アプリのメンバーは習慣と健康を改善することでポイントを獲得し、獲得したポイントをQuipやパートナー各社の製品やディスカウント券と交換できる。

エネバー氏はQuipの従業員数(ニューヨークとソルトレイクシティー)を2022年末までに現在の200人から2倍に増やす計画だ。

「当社には野心的でやる気に満ちたチームがあります。現在の地位を築けたのもこのチームがあったからです。このチームを拡大して、次の段階への事業展開をサポートできることにワクワクしています」と同氏は付け加えた。「当社のチームのパフォーマンスには目を見張るものがあります。ここ数年で目標を達成し、4つの個人向けの口腔ケア新製品を導入して、Walmart(ウォルマート)への製品提供を開始して黒字化を達成しました。パンデミックの中、こうした実績を残した当社チームは本当にすばらしいと思います」。

小売売上高は2020年比で100%以上の伸びを達成しているという。また、Walmartへの製品提供に加え、Target(ターゲット)への製品提供も始まっており、提供先小売店舗数は1万店を超えている。

CSI社長のArtem Mariychin(アルチョーム・マリチン)氏は、今回の投資の一環として、Quipの取締役会に参加する。環境持続可能性を重視した成長投資戦略を掲げているCSIは、ゴミ対策など、世界の環境に好影響を与える企業をさがしている。同社がQuipに興味を持った理由もそこにある。

Quipでは、紙の包装とリフィル可能製品のリサイクルプログラムによって、1億個の使い捨て部品が埋立地に向かわずに済むと推測している。目標は、今後12カ月で約45万キログラムのプラスチックを削減または再利用することだ。

マリチン氏は他の消費財企業と比較したQuipの成長率、および同社の資本効率の高さと消費者中心型志向にも惹きつけられたという。これは口腔ケアビジネスにしかない特徴だ。

「Quip製品は高価ではないが、高品質で消費者ニーズに応え、難題を解決します」と同氏はいう。「サイモン氏のそもそもの目的はブラッシング効果を向上させることでした。現在、1日2回ブラッシングする人は50%しかいないからです。しかし、Quipは歯ブラシの製造だけではなく、フロスやマウスウォッシュにまで取扱製品を拡大しました。驚いたことに、サブスクリプション契約者は歯ブラシ以外の製品も購入するようになっています。Quipは歯列矯正器具など、他のデンタル製品も扱うようになっています。これはeコマース企業では例外的です」。

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画像クレジット:Quip

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

すべての歯科医を虫歯を迅速に見つける「スーパー歯科医」にすることを目指すAdra

ヘルスケアのさまざまな分野がそうであるように、歯科も着々とテクノロジーを取り入れている。その多くは歯科矯正の分野だが、Adraなどのスタートアップは歯科医の日々のワークフロー、特に虫歯の発見にAIを活用しようとしている。2021年に世界の歯科医療の市場規模は4350億8000万ドル(約47兆6800億円)になると見られている。

シンガポールを拠点とするAdraは2020年に構想を開始し、2021年に創業した。共同創業者のHamed Fesharaki(ハメド・フェシャラキ)氏は歯科医として10年以上のキャリアがあり、シンガポールで2カ所の医院を経営している。

フェシャラキ氏によれば、歯学部でX線画像の読み方は習うがきちんと読めるようになるには数年かかるという。また歯科医は患者の間を飛び回っているので、X線画像を読む時間が数分間しかないこともしばしばだ。

こうしたことから、共同創業者のYasaman Nematbakhsh(ヤサマン・ネマトバクシュ)氏によれば、歯科医は最大40%の確率で虫歯を誤診するという。同氏のバックグラウンドはイメージングで、見えにくいガンをAIで特定する機器を開発していた。フェシャラキ氏はこれを歯科にも応用できるのではないかと考えた。

フェシャラキ氏はTechCrunchに対し、Adraは経験豊富な歯科医のような見方を提供することですべての歯科医を「スーパー歯科医」にしようとしていると語った。同社のソフトウェアを使うと歯科のX線写真から虫歯などの歯の問題を短時間で検出でき精度は25%向上するため、歯科医院ではその分患者により良い医療を提供し収益を増やせる。

Adraのソフトウェアのサンプル(画像クレジット:Adra)

フェシャラキ氏は「我々は経験豊富な歯科医の視点を活かし、X線写真を画像に変換することによって問題点を表示して、何に着目すればいいかを理解できるようにします。最終的に判断するのは歯科医ですが、我々が経験的な要素を取り入れることで歯科医が比較検討をするのに役立ち、助言を提供できます」と述べた。

問題のある箇所とその程度をすばやく示すことで、歯科医は治療法を決めることができる。例えば詰め物をするのかフッ素を使うのかしばらく様子を見るのか、ということだ。

もう1人の共同創業者であるShifeng Chen(シーファン・チェン)氏とともにAdraはYコンビネーターの夏学期を終了し、これまでに25万ドル(約2700万円)を調達した。フェシャラキ氏は、正式にシード資金調達を実施しエンジニアを増やしてユーザーエクスペリエンスの向上や機能の追加に取り組む意向だ。

同社はいくつかの歯科医院で試験運用をしており、米国食品医薬品局の認可取得に向けて試験をする医院をさらに増やしたい考えだ。フェシャラキ氏は認可を受けるまで6〜9カ月かかるだろうと予測している。認可の後、2022年後半か2023年前半に製品として販売を開始できるだろう。

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画像クレジット:Adra

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(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)

5GとVR・AR技術、3Dプリンティング技術を活用し東京の指導医が大阪の若手歯科医による歯科手術を遠隔支援

5GとVR・AR技術、3Dプリンティング技術を活用し東京の指導医が大阪の若手歯科医による歯科手術を遠隔支援Holoeyesは、Dental Predictionとソフトバンクの協力のもと「5GネットワークにおけるXR歯科手術支援の有効性の検証」に関する実証実験を7月12日から実施します。

5GとXR技術、3Dプリンティング技術を活用した実験で、東京にいる指導医が大阪にいる若手歯科医に、VR・AR映像を通して診断・治療の指導と手術を支援をするといった内容です。

具体的には、歯が欠損した場合に行うインプラント手術の症例を扱います。インプラント手術は、知識的にも技術的にも比較的難易度の高い処置です。5GとXR技術、3Dプリンティング技術を活用して、物理的な場所の制約を受けずに若手歯科医への知識や技術の伝授ができるかを検証します。

5GとVR・AR技術、3Dプリンティング技術を活用し東京の指導医が大阪の若手歯科医による歯科手術を遠隔支援

3Dモデル/3Dプリンティング模型

実験では患者のデータを基に作成した頭蓋骨の3Dモデルを使い手術に必要な3次元の動きをVR空間で共有します。診断と検討の後、指導医は3DモデルをAR空間で操作しながら、同じ患者の顎骨の3Dプリンティング模型を使って指導します。

若手歯科医はAR映像を見ながら模型にドリルで穴を開けるなどの実習を行うことで、インプラント手術の一連の流れを体験できます。最終的には、指導医が東京からAR映像を通して支援しながら、若手歯科医が大阪市内の歯科クリニックで実際の患者の手術を行います。

なお、遠隔指導および遠隔手術支援に当たっては、現役の歯科医であるDental Prediction代表の宇野澤氏が、診断を行う上で重要なポイントや解剖に関する手順を解説します。

各種デバイスに対応したHoloeyesの医療用画像表示サービス「Holoeyes XR」と、オンライン遠隔共有カンファレンスサービス「Holoeyes VS」を活用し、ソフトバンクの5GネットワークでVR・AR映像を送受信することで、指導や手術支援を行います。

以降リリースより転載です。

実証実験の概要

  1. 名称:5GネットワークにおけるXR歯科手術支援の有効性の検証
  2. 実施期間(予定):2021年7月12日~9月
  3. 実施場所:東京会場:ソフトバンク本社(東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝 オフィスタワー)、大阪会場:5G X LAB OSAKA(大阪市住之江区南港北2-1-10 ATCビルITM棟 6階「ソフト産業プラザTEQS」内)

実施の流れ

  • ステップ1(7月12日実施予定):過去に手術を受けた患者のデータを基に作成した3Dモデルで症例検討と解剖手順の確認を行った後、同じ患者の3Dプリンティング模型を使って、若手歯科医が手術の一連の流れを体験します。複数の若手歯科医へ同時に遠隔指導することで、その有用性を検証します。
  • ステップ2(8月実施予定):これから手術を受ける患者のデータを基に作成した3Dモデルで症例検討と解剖手順の確認を行った後、同じ患者の3Dプリンティング模型を使って、若手歯科医が手術の一連の流れを体験します。今後予定している手術を、複数の若手歯科医が同時に疑似体験できることを検証します。
  • ステップ3(9月実施予定):東京の指導医が遠隔支援しながら、若手歯科医が大阪市内の歯科クリニックで実際の患者(ステップ2の患者)の手術を実施します。若手歯科医が、指導医の遠隔支援の下で安全かつ確実に手術ができることを検証します。

(Source:ソフトバンクEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)XR / xR(用語)遠隔医療(用語)拡張現実 / AR(用語)仮想現実 / VR(用語)歯 / 歯科(用語)3D / 3Dモデル(用語)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)ソフトバンク / SoftBank(企業)Dental Prediction(企業)5G(用語)HoloEyes(企業)日本(国・地域)

電動歯ブラシや3Dプリント製マウスピースを安価で提供するシンガポールの審美歯科D2C「Zenyum」

審美歯科をもっと手頃な料金で提供したいと考えるZenyumが、シリーズBで4000万ドル(約43億8000万円)を調達した。これには、非上場の消費者ブランドに投資をしているL Cattertonからの2500万ドル(約27億4000万円)が含まれている。この投資ラウンドに参加したその他の投資家は、Zenyum自身がそのアクセラレーター事業Surgeに参加したSequoia Capital India、RTP Global、Partech、TNB Aura、Seeds CapitalそしてFEBE Venturesなどとなる。L Catteron Asiaの成長投資部門のトップであるAnjana Sasidharan(アンジャナ・サシダラン)氏がZenyumの取締役会に加わる。

これでZenyumの調達総額は5600万ドル(約61億3000万円)になり、これには2019年の1360万ドル(約14億9000万円)のシリーズAが含まれる。発表声明でサシダラン氏は「Zenyumはビジネスモデルを差別化して、競争で優位に立つことができました。成長意欲の強い創業者たちの経営チームも、投資家にとって心強い」と述べている。L Catteronが投資している歯科関連の企業には、他にIdeal Image、ClearChoice、dentalcorp、OdontoCompany、Espaçolaser、そして98point6などがある。

2018に創業された同社の製品には、電動歯ブラシ「ZenyumSonic」や3Dプリントで作った透明なアライナー(マウスピース)「Zenyum Clear」、もっと複雑な矯正が可能な「ZenyumClear Plus」などがある。

創業者でCEOのJulian Artopé(ジュリアン・アルトペ)氏によると、アライナーであるZenyum Clearはその他の矯正器よりも最大で70%安いという。患者の歯の状態や彼らの希望により、これまでは金属製や舌側矯正器、Invisalignのような透明なアライナーなどが使われてきた。Zenyum Clearは約1800ドル(約19万7000万円)、ZenyumClear Plusは2500〜3000ドル(約27万4000〜32万8000万円)弱というお値段だ。

同社の透明アライナーが実質的に低価格なのは、技術力のある歯科医や歯科技工士のパートナーのネットワークがあり、患者があちこちのクリニックを訪ねなくても済むからだ。

患者はまず自分の歯の写真をZenyumに送り、ZenyumClearやZenyumClear Plusが有効かチェックしてもらう。OKなら次は歯科医の面接検査となり、X線検査や3Dスキャンが行われる。その費用90〜130ドル(約9400〜1万2400円)はクリニックへいく。透明アライナーが完成すると、患者は再び歯科医へ行き、装着してもらう。その後歯科医は、Zenyumのアプリを使って患者の歯の状態の改善をモニターする。そのとき歯科医が患者にいうのは、もし問題があったらまた来てくださいということだけだ。

現在、ZenyumClearを利用できる区域はシンガポールとマレーシア、インドネシア、香港、マカオ、ベトナム、タイ、そして台湾だ。

Sequoia IndiaのトップPieter Kemps(ピーター・ケンプス)氏は次のように述べている。「Zenyumの主力市場である東南アジアと香港、台湾には3億の顧客がいます。彼らが美容に費やす可処分所得は日に日に増えています。透明アライナーへの支出も、今よりずっと増えるだろうが、しかし複雑な製品が消費者に選ばれるためには強力な業務実行体制が必要です。その点で優れているのがZenyumです。実行体制は優れており、新製品も強力、NPSもこのクラス最高です。成長力はあるし、経済も好調、シリーズBがそれを証明しています。この先には、もっと大きな商機があることも確実です」。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Zenyumシンガポール資金調達D2C

画像クレジット:Zenyum

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

3DプリントのDesktop Metalが「健康」にフォーカスする事業を開始

3Dプリントの未来は大量生産かもしれないが、健康関連製品はまさに現在のトピックだ。歯列矯正から人工関節まで、医療ニーズはまさに積層造形のスイートスポットといえる。プロトタイピングは上限のあるカテゴリーだが、真の大量生産はこれらのシステムでまだ不可能な領域である。医療・歯科分野はより大きな市場でありながら、カスタマイズが必要な分野でもある。

米国時間3月15日にDesktop Metalは、医療関連製品に特化した事業であるDesktop Healthのローンチを発表した。このビジネスにはバインダージェッティング、3Dバイオプリンティングおよび各種材料などを含むさまざまな技術が含まれている。

画像クレジット:Desktop Health

「現在、世界では毎年850億ドル(約9兆3000億円)を超える医療用および歯科用インプラントが製造されています」とDesktop MetalのRic Fulop(リック・フロップ)CEOはリリース文で述べている。「2010年代の終わりまでにこれらの部品の大部分が印刷され、患者に合わせて作られるようになると考えており、この市場はDesktop Metalにとって重要な機会になると考えています」。

歯科 / 歯科矯正(リテーナーやインビザラインスタイルの歯列矯正など)は依然として最優先課題であるが、現在および将来の用途はそれだけではない。将来の事業としては組織や移植片のプリントなどが含まれており、Desktop Metalはこのプロセスがどのように成長するかを検討している。

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同部門を率いるのは、Michael Mazen Jafar(マイケル・マゼン・ジャファル)氏だ。Evolusの元COOであるジャファル氏はCEOとして参加する。「Desktop Healthは革新的な技術と科学的根拠に基づいたソリューションにより、患者がパーソナライズされたヘルスケアを体験する方法を変えることを使命としています」とリリースで述べている。

Desktop Healthは2020年8月にSPACを通じて上場する計画を発表した。また2021年1月にはEnvisionTECを3億ドル(約330億円)で買収している。EnvisionTECはドイツの企業で、歯科用の重要な新技術であるフォトポリマープリンティングを専門としている。同社はSmile Direct Clubを含む1000社の歯科関連顧客を有しており、その中には新部門の重要な基盤となるSmile Direct Clubも含まれている。

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タグ:Desktop Metal3Dプリント

画像クレジット:Desktop Health

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter