次世代いす型モビリティを手がけるLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など目指す

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

二輪起立構造を実装した次世代型電動車いすを開発するLIFEHUBは3月1日、シードラウンドとして、第三者割当増資による約1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、新規投資家のサイバーエージェント・キャピタル、既存株主のインキュベイトファンド。調達した資金は、「次世代のいす型モビリティ」の製品開発、経営基盤強化に向けた人材採用にあてる予定。また、2023年7月にイニシャルモデルの一般販売をスタートし、その後2024年中にも量産型の市販モデルを投入する予定。

2021年1月設立のLIFEHUBは、ロボティクスなど最先端テクノロジーを駆使し、すべての人が自由で豊かな生活を送ることをためらわない世界を作る「人類の身体的な制約からの解放」というミッション・経営理念を掲げるスタートアップ。

代表取締役CEOの中野裕士氏は、「日本市場および世界市場の車いすユーザーの方々に向けて、モビリティに搭乗したまま立ち上がって屋内や屋外を移動することができ、さらに進行方向を向いたまま健常者が利用するのと同じようにエスカレータを利用できる、電動車いすの少し未来の姿を提示したいと考えています。これは、人体の脚の機能をモビリティで再現するという、技術的にもビジネス的にも大きなチャレンジとなります」と述べている。

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

同社が、次世代いす型モビリティの第1弾プロダクトとしてリリースを目指しているのは、二輪起立構造を実装した次世代型電動車いす「TRANSELLA」(トランセラ。仮称)。一般的な電動車いすに用意されているレバーやボタン、リモコンによる基本的な操作機能を備えるほか、重心移動による操作にも対応するよう研究を進めているという。

また、既存の車いすでは不可能な「歩く、立ち上がる、乗り越える」という動作の実現を目指しているそうだ。例えば起立機能では、車いすユーザーが店舗内の陳列された商品を眺める時や、レジやカウンターで用事を済ませたい時に、座ったままの状態で約60~80cm立ち上がれるようにする。この立ち上がりの実装については、周囲の人や物とぶつからないようレーザーによる接触防止機能や、転倒時にユーザーの身を守るエアバック機能、転倒を検知してスマートフォンに緊急アラートを通知する機能など、もしもの時に備えた安全装備についても実現できるよう準備を進めているという。

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

さらに、テーブルや机の間といった狭いスペースで移動する際に、約1mの道幅でも360度自由に方向転換できる移動性能を持たせるとしている。

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

準天頂起動衛星みちびき利用、車椅子ユーザー向け介助システム「B-SOS」と視覚障害者向け歩行ナビ「あしらせ」実証実験

準天頂起動衛星みちびきを利用、車椅子ユーザー向け介助システム「B-SOS」と視覚障害者向け歩行ナビ「あしらせ」の実証実験

準天頂軌道衛星みちびき(提供:内閣府宇宙開発戦略推進事務局)

車椅子ユーザー向け介助システムを開発するバリアフリーコンソーシアムと、視覚障害者のための歩行ナビゲーションシステムの開発を行うAshiraseは2022年1月24日、大分県大分市の大分駅前にて2つの介助サービスの実証実験を実施した。ひとつは、車椅子ユーザーの突発的な問題に付近の介助者が急行できるようにするシステム「B-SOS」。もうひとつは歩行ナビゲーションを行うシステム「あしらせ」。これらは、Ashiraseが提案し、内閣府と準天頂衛星システムサービスによる2021年度「みちびきを利用した実証事業」に採択された事業だ。

「B-SOS」システムは、車椅子ユーザーが単独で移動している際、段差や側溝にはまって立ち往生してしまったときなどに、付近にいる介助者がすぐに駆けつけられるようにサポートするというものだ。「みちびき」が配信するセンチメートル精度の測位補強情報「CLARCS」(クラークス)を利用して、「B-SOS」アプリに現場までのナビゲーション情報を示す。

準天頂起動衛星みちびきを利用、車椅子ユーザー向け介助システム「B-SOS」と視覚障害者向け歩行ナビ「あしらせ」の実証実験

B-SOSシステムのアプリ画面(ラムダシステム)

実証実験は、植え込みで車椅子が脱輪、歩行度までの坂を登れない、店の車椅子専用路に段ボール箱が置かれていて入店できないという3つの場面を想定し、社会福祉法人太陽の家の車椅子ユーザーと、大分東明高等学校の看護学生が参加して行われた。介助を求める人から、100メートル、200メートル、300メートルの各地点でSOSを受信した看護学生が、「B-SOS」のナビゲーションに従って駆けつけた。

B-SOSシステムでSOSを受信した介助役の看護学生により救出される様子

B-SOSシステムでSOSを受信した介助役の看護学生により救出される様子

もうひとつは、Ashiraseが2022年度に提供開始を予定している視覚障害者向けの歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」を使った実験。ここでは「みちびき」のサブメーター級測位補強情報の配信サービス「SLAS」(エスラス)と組み合わせて、社会福祉法人大分県盲人協会の協力により視覚障害者に300メートルのコースを歩いてもらった。このシステムは、視覚障害者向けに特化した誘導情報を生成し、靴に装着した独自の振動インターフェイスで足に信号を伝える。音声を使わないため、聴覚を邪魔しないというメリットがある。また、目的地に到着しても建物の入口がわからないとった問題も想定し、被験者が目的地に近づいたときに人が出迎えて誘導する「あしらせお出迎え」サービスの検証も行った。

視覚障害者向けの歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」

視覚障害者向けの歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」

あしらせ実証実験の様子

あしらせ実証実験の様子

バリアフリーコソーシアムは、おおいたサテライトオフィスラムダシステム宇宙システム開発利用推進機構minsoraで構成される団体。大分を中心に企業の支援事業を展開するおおいたサテライトオフィスは、大分県の車椅子ユーザーの窓口を担当。ラムダシステムは、システム開発を担当。宇宙システム開発利用推進機構は「CLARCS」利用の技術サポートを担当。minsoraは、この事業のとりまとめを担当している。バリアフリーコンソーシアムは、大分県内での「B-SOS」システムの事業化を目指すとしている。また今回、「CLARCS」の配信プロバイダーサービスを2022年4月に開始する予定のminsoraは、宇宙システム開発利用推進機構との業務提携を発表した。

車いすユーザーや運動障害を持つ人々の自立歩行を支援する外骨格ロボットメーカー「Wandercraft」

Wandercraft(ワンダークラフト)は2012年、車いすユーザーのモビリティを向上させることを目指して設立された。同社のソリューションは、ロボットエクソスケルトン(外骨格)によってもたらされ、着用者にロボットの助けを借りて歩く能力を提供できる。2019年、パリに拠点をおく同社は、12の自由度を持ち、歩行アルゴリズムに依存してユーザーの足取りを決定する自己バランス外骨格「Atalante」を発表した。

米国時間1月19日、同社は、これまでに調達した3050万ドル(約34億8000万円)の倍以上となる4500万ドル(約51億3500万円)のシリーズCをクローズしたと発表した。今回のラウンドは、既存の投資家であるBpifranceに加え、米国を拠点とするQuadrant Managementが主導した。特にQuadrantの参加は、WandercraftがAtalanteを欧州だけでなく、米国にも展開することになるという点で注目される。

同社のMatthieu Masselin(マチュー・マセリン)CEOは、リリースの中で次のように述べている。「当社の開発プログラムを進めるために、米国と欧州から世界トップクラスの投資家を引きつけることができ、非常に興奮しています。患者、医療関係者、ディープテックコミュニティの支援を得て、Wandercraftのチームは、リハビリケアを向上させる独自の技術を生み出しました。近い将来、車いすに乗っている人々が自立性を取り戻し、日々の健康を向上させることを可能にするでしょう」。

米国には、ReWalk Robotics、Ekso、SuitX、Sarcosなど、名の知れた外骨格企業で市場が混雑しており、これらの企業はこれまでに多額の資金を調達し、注目度の高いパートナーシップを発表している。しかし、Wandercraftが他と異なる点のひとつは、競合他社の多くが力仕事をする労働者や軍事用途を対象としているのに対し、ユーザーのモビリティーを重視していることだ。

この場合それは、病院やその他の医療機関との提携の可能性を意味する。

画像クレジット:Wandercraft

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)