Woojarというのはウェアラブルなモバイルアクセサリーで、音楽を「感じる」ことができるようになるデバイスだ。聴覚的刺激だけでなく、触覚によるフィードバックを行うことで、身体で音楽を感じられるようにするわけだ。お気に入りのアーティストの音楽を聴く場合のみならず、モバイルデバイスでゲームや映画等のオーディオビジュアル系コンテンツを愉しむ場合にも活用することができる。
このWoojerを開発したのはイスラエルの企業で、年初には60万ドルのエンジェルラウンドを完了している。開発に着手したのは2011年で、現在はワーキングプロトタイプが出来上がっている。来月には製品出荷資金を調達するため、Kicstarterにも登録する考えだ。Kickstarterでの調達がうまくいけば、2014年春にも製品出荷を始めたいとしている。
ところでWoojerとはそもそもどのようなものなのか。開発者はこのデバイスを「触知変換装置」(tactile transducer)とお呼んでいるそうだ。音を複数のバイブレーションに分解して、ヘッドフォンから聴こえてくる音を拡張して利用者に届けるようになっている(ヘッドフォンはWoojerに備えられた3.5mmのヘッドフォンジャック経由で繋ぐことになる)。
同様の仕組みを持つプロダクトとしてはsubpac やbassAware Holster といったものがある。しかしそれらはいずれもバックパック状のデバイスを装着したり、特別のヘッドセットを使う必要がある。Woojerはマッチ箱サイズのデバイスであり、またヘッドセットも従来から使っているものを使うことができる。低周波バイブレーションをうまく使って、ライブ会場やサラウンドシステムが充実した映画館におけるのと同様な効果を提供する。少なくとも理論的にはそのように設計されている。
開発者による解説を見てみよう。ちなみに現物は来週のPepcom in San Franciscoにも出展される予定だ。
Woojerのキーとなる技術は触知変換装置と呼んでいるもので、音を複数の振動波に変換するものです。可聴域のみならず非可聴域についても変換を行うようになっています。そしてデバイスのクリップから洋服、身体の特定部分を伝わって振動が伝わるようになっているのです。そして振動は、身体の各部位から脳に伝わります。すると脳による感覚補完機能(Perceptual Inference)が働き、全身が音に晒されている状態であると認識するわけです(つまりは全身で音楽を感じている状態になるわけです)。デバイスのサイズもコンパクトで、ローコスト。エネルギー効率もよく、拡張性もあります。ワイヤレス版と有線版を用意しています。
こうした説明に加えて、WoojerのファウンダーであるNeal Naimerは「スマートホンやタブレットで、ヘッドフォンを付けてゲームをしていると、音はどうしても二次元的で平板なものになってしまいます。しかしWoojerを使えば、大音量スピーカーを前にしているときと同様に、“音を感じる”ことができるようになります。利用者は、まさにクラブやサラウンドシステムを採用した映画館にいるときのような感じだと言ってくれています」とも述べている。
「用途もいろいろと考えられるでしょう。たとえばゲームの中で、はっきりとした音は聞こえないながら、誰かが後ろをついてくる「感じ」をシミュレートしたりすることもできると思うのです。あるいは地鳴りのようなものもゲーム内で表現できるようになります」。
ライバル機に比べれば、やはりコンパクトさゆえのポータビリティに注目が集まるだろう。また、価格も安価におさえられ(最終的な小売価格についてはまだ検討中であるものの、Naimer曰くだいたい70ドル程度で提供したいと考えているようだ。ライバル機の価格は300ドル程度となっている)。ただ振動させるだけでないポリフォニックな仕組みも、利用者からの注目を集めることになるだろう。反応速度も向上し、視覚によるエクスペリエンスとずれることもなくなっているようだ。さらに同種デバイスの中では比較的長時間利用できる(Woojerの動作時間は4時間以上程度)のも優れている点なのだと、Naimerは言っている。
ゲーム企業やヘッドセット企業などとのパートナー契約を結んでプロダクトを世の中に出していくよりも、Kickstarterを利用する方が迅速に行動できるのだそうだ。
「OEM(ゲームでもヘッドセットでも)なども考えています。いろいろな企業から打診があるのも事実です。しかし、どうも判断の速度が遅すぎるように感じてしまうのです」と、Naimerは以前から言っていた。「どこかと正式に協力関係になるということが重要なわけではないのです。そもそも従来のヘッドセットやモバイルデバイスを自由に使えるわけですからね」とのことだった。
今年はじめにNaimerがWoojerのコンセプトについてプレゼンテーションしていた様子を掲載しておこう。
VIDEO
[原文へ ]
(翻訳:Maeda, H )