Facebookの投票者威嚇ポリシー改定でトランプ氏は「武装した」選挙立会人を募集できない

Facebook(フェイスブック)は米国時間10月7日の投稿で、今後同社は「軍事的」表現の使用、および「選挙管理者あるいは有権者に対する威嚇、支配、権力行使」を意図した選挙立会いを促すコンテンツを今後一切認めないことを表明した。Facebookは今回の規則改定について、ポリシー作成に関わった公民権運動専門家らを称えた。

Facebookのコンテンツ・ポリシー担当副社長を務めるMonika Bickert(モニカ・ビッカート)氏は記者会見で新ルールの詳細を説明し、改定規則が「Army」(軍隊)や「Battle」(戦争)などの単語を用いた投稿を禁止していることを挙げた。この単語の選択は、トランプ陣営が投票日の選挙立会いのために「Army for Trump」(トランプのための軍隊)を募集していることに直接狙いをつけたものと見られる。先月、ドナルド・トランプ・ジュニア氏はFacebookなどのソーシャルプラットフォームに投稿したビデオで「トランプ選挙防衛作戦」に「今すぐ参加せよ」と支援者に呼びかけた。

「新しいポリシーの下では、もしあのビデオが再び投稿されれば間違いなく削除します」とビッカート氏は明言した。「『組織的妨害』あるいは武器を携帯して投票所に行くことを求める呼びかけは以前から削除対象であり、拡張されたポリシーは投票者への脅威への対処をさらに完全にするもの」だと同氏。Facebookは拡張ポリシーを今後適用していくが、すでに掲載されているコンテンツは、トランプ・ジュニア氏の投稿を含めて影響を受けない。

選挙立会いは公正な選挙を保証するための正当な手続きだが「『不正投票』や『仕組まれた』選挙などという根拠のない主張の証拠探しのために立会人を武装させる」という話は前例がなく、むしろ投票者への威嚇行為に近い(ロイター記事)。選挙立会いの法律は州によって異なり(NSCL記事)、立会人の人数や身分証明の方法について制限を設けている州もある。

トランプ氏は、破れた時に選挙結果を受け入れるかどうかの発言を何度も拒んできた。これは米国における平和的な権力の移行に対する前例のない脅威をもたらす行為だ。投票日が近づくにつれ、ソーシャルメディア会社や投票の権利擁護団体が不安で目を離すことができない数多くの懸念の一つでもある。

「ドナルド・トランプは選挙の公正性に興味などない、興味があるのは投票者の抑圧なのです」と VoteAmericaの創業者であるDebra Cleaver(デブラ・クリーバー)氏がトランプ陣営の選挙立会いへの取組みを評してコメントしてている。「武装した自警団員を投票時に送り込むというのは存在しない問題を解決する方法です。肌の色が黒や茶色の人が投票することを問題だと信じているなら別ですが」とも続けた。

Facebookは政治広告に関する規則にも変更を加えている。同社は選挙直後の政治広告を許可しないこととした。混乱や虚偽の主張を避けるためだ。

「広告は意見を表現する重要な方法の1つですが、11月3日の選挙終了後、米国内での社会問題、選挙管理、および政治に関わる広告の掲載をすべて一時的に停止する予定です。これは混乱と乱用を減らすためです」とFacebookの公正性担当副社長を務めるGuy Rosen(ガイ・ローゼン)氏はブログに書いている。「これらの広告が再び許可されたときにはFacebookから広告主に知らせる」と同氏は付け加えた。

さらにFacebookは、いつもと異なる選挙日の夜に、同社アプリがどのように見えるかを見せてくれた。同社はInstagramとFacebookアプリのトップに、選挙の状況を示す通知を表示し、誤った主張の事実確認作業を強化する。

画像クレジット:Facebook

これらのメッセージは「開票作業が終わっていない」ことをユーザーに再認識させ、結果について信頼ある合意が得られたあと「勝者の当選が確実になった」メッセージに切り替える。今年は当日中に選挙結果が明らかになるかどうかわからないため、ユーザーは11月3日より後にもこれらのメッセージを見る可能性がある。もし候補者が早まった勝利宣言を行った場合、Facebookは警告ラベルを付加する。

Facebookは、現在同社がバイラル・コンテンツ審査システムを使用していることも話した。誤情報などの有害コンテンツが最終的に削除される前に何千回も閲覧されてしまうことを防ぐための対策だ。Facebookによると、同社は「選挙シーズンを通して」このツールを活用しており、同社がルールを破ったコンテンツを検出し、拡散を食い止めるための対策を講じるセーフティーネットとして役立てている。

選挙前最後の月に、Facebookは誤情報を始めとする有害な選挙コンテンツの監視に対するためらいがなくなっている。同社は10月6日、過去4年間蔓延していたQAnon(キューアノン)と呼ばれる親トランプ陰謀論のコンテンツを禁止することを発表した。またFacebookは、トランプ大統領が複数日の入院を終えた直後にCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)はインフルエンザより「はるかに致死性が低い」と主張した投稿も今週削除した

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タグ:Facebook、ドナルド・トランプ、2020 Election

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Facebookは米国選挙結果の「非合法性を主張する」広告を受け付けない

米国時間9月8日の第1回大統領討論会で、2020年米国選挙に対する脅迫のひときわ陰湿で鮮明な態度が見られた後、Facebookは選挙関連広告に関する新しいルールをさらに明確化した。

Facebookは同サービスの政治広告規則を拡張し「選挙結果の非合法性を主張する」あらゆる広告を禁止した。「投票方法を不正あるいは誤っていると主張する、あるいは投票者の個別事象を取り上げて選挙結果の非合法性を主張する」行為もこれに含まれる。

Facebookのプロダクト管理責任者で同社の事業整合性チームを率いるRob Leathern氏が、Twitterでこの変更を宣言した。

Facebookは、ユーザーの投票意欲をそぐ広告、郵送による投票その他の合法的方法を攻する広告、不正投票が蔓延していると暗示する広告、偽の医療情報で安全な投票を脅かす広告、および結果が投票日の夜すぐにわからないから選挙は無効だと示唆する広告を禁止することも述べた。

TwitterとFacebookはいずれも、選挙結果前の勝利宣言の扱いについて 新たなガイドラインを最近発表した。しかしFacebookの規則は、そのような主張が広告の中でなされた場合だけに適用されるようだ。TechCrunchはFacebookに、広告以外に候補者の通常アカウントで発言された場合の扱い方について質問している。

Twitterが政治広告を全面禁止した(The Daily Beast記事)に対して、Facebookはどのような政治広告をいつ許すかについてルールを微調整している。Facebookは、選挙、社会問題、および政治に関する広告を10月27日以降受け付けないと以前発表したが、それ以前から掲載されている政治広告は継続が許される(Facebookビジネスヘルプセンター)。

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すでにFacebookは、トランプ大統領とその支持者に端を発する、11月米国選挙の完全性に対する攻撃の氾濫に取り組んでいる。29日夜の討論会でトランプ大統領は、郵送方式はすでに信頼があり不在者投票に広く用いられている郵送方式はすでに信頼があり不在者投票に広く用いられているが、郵送による投票に再び疑問を投げかけ(CNN記事)、もし負けたときに選挙結果を受け入れるかどうかを約束することを拒んだ。

前例のないパンデミックで移動が困難になる中、郵送による投票は新しい発想ではない。コロラド、オレゴンなど複数の州が郵便を利用した選挙をすでに実施しており、郵便による投票はすでに全国で行われている不在者投票の拡大バージョンにすぎない。


9月30日、トランプ大統領はニューヨーク州で業者の印刷ミスによる不完全な投票用紙が配布されたことに関する陰謀論の種(NPR記事)をまいた。州は投票用紙を再発行することを決めているが、トランプ氏はこの事象を郵便による投票が「ペテン」である証拠だと主張した。その証拠に裏付けはない。(未訳記事)。

トランプ大統領の米国選挙への攻撃は、ソーシャルネットワークにとって前例のない挑戦であるが、それは国全体にとっての挑戦でもあり、近代において行政権の平和的移行が現職大統領によって脅かされる事態は起きたことがない。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Facebook、Donald Trump、2020 ELECTION

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型コロナ禍の中でカリフォルニアは大統領選挙に向け住民の安全のために郵便投票を採用

米国時間5月8日、米国カリフォルニア州知事のGavin Newsom(ギャビン・ニューサム)氏は、11月の大統領選挙に向けて登録済有権者全員に郵便投票用紙(未訳記事)を発行すると発表した。ニューサム氏はこの決定を、他のカリフォルニア州機関と調整の上、行政命令として下した。

この命令は、すべての郡の選挙担当者に、有権者へ郵便投票用紙を提供することを要求するものだが、同時に障碍者、住所をもたないホームレス、英語以外の言語での投票資料を必要とする人たちのために対面式投票所の設置も設定することも求めている。

カリフォルニアは、郵便投票州になりました。
登録されている有権者の皆さまに、11月の選挙のための郵便投票用紙が送られます。
安全な対面投票オプションも提供します。
投票権は私たちの民主主義の基盤です。その権利を行使するために健康を危険にさらすことを強いられてはなりません。

命令によれば、対面投票を可能な限り安全にするために、知事は州務長官およびカリフォルニア州議会と調整を行う。カリフォルニア州では、州務長官が選挙の最高責任者であり、投票設備、セキュリティ、そしてアクセシビリティの監督を行っている。

Alex Padilla(アレックス・パディラ)州務長官はこの決定について「全登録有権者に投票用紙を郵送することで、カリフォルニア州は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックに対応する国内で最初の州になります」と語った。「私たちは今年11月の選挙で、アクセスしやすく、安全で、安心な選挙を提供するという義務を果たします。登録されているすべての有権者に、郵便で投票用紙を送ることは賢明な方針ですし、この新型コロナウイルスパンデミック期間で行うこととしては絶対に正しい行動です」。

11月の選挙が迫る中、パンデミックの真っ最中の総選挙が突き付ける独自の課題に、各州は迅速に対応しようとしている。この先投票システムを再考できない州に起き得る混乱を、既に行われた予備選挙戦が予め示したからだ。特にウィスコンシン州では、長い列と混雑した投票所が報じられた。他の多くの州が予備選挙を遅らせて(未訳記事)時間を稼ぐ中、ウィスコンシン州は健康専門家からの警告と有権者からの懸念にもかかわらず、当初の日程で対面投票を進めたのだ。

一部の政治家(特にトランプ大統領はその筆頭)たちは郵便投票を党派的な問題だと片付けようとしているが、現実には、赤い州(共和党支持が多い週)と青い州(民主党支持が多い州)どちらの選挙担当者も、11月には投票用紙を住民に郵便で送ることを検討している。

オレゴン州、ワシントン州、コロラド州、ユタ州、ハワイ州では、すでに郵便投票を主要な投票手段として安全に利用しており、これらの州(ならびに不在者投票を認めている他の州)での投票者の不正行為は、統計的に無視できる程度のものである。

関連記事:Vote-by-mail should be having its moment.Will it?(郵便投票が、いままさに脚光を浴びるのか?、未訳記事)

画像クレジット: Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:sako)

3月3日はスーパーチューズデー、バイデン復活のカギはシリコンバレーでの資金調達

いよいよ米国時間3月3日にスーパーチューズデーを迎える。民主党大統領候補を目指すJoe Biden(ジョー・バイデン)元副大統領はサウスカロライナ州でBernie Sanders(バーニー・サンダース)候補に大勝した勢いを維持して復活を図ろうとしている。シリコンバレーが今後のバイデン候補の民主党予備選における資金を調達する生命線となる公算は高い。

バイデン候補を支持する政治行動委員会(スーパー PAC)のUnite the Country(我が国を統合しよう)にはシリコンバレーの成功者が多数含まれている。委員会の財務責任者、Larry Rasky(ラリー・ラスキー)氏はCNBCのインタビューで、「我々はスーパーチューズデーに放映する広告枠を購入している」と述べている(米国時間2月28日のFederal Election Committeeの文書で公開ずみ

これまでのUnite the Country委員会のFECデータにはLinkedInのファウンダーでGreylock Partnersのベンチャー・キャピタリスト、Reid Hoffman(リード・ホフマン)氏 の50万ドル(約5420万円)、エンジェル投資家のRon Conway(ロン・コンウェイ)氏の25万ドル(約2710万円)などが記録されている。

FEC提出文書

バイデン候補は劣勢を続けていたが、サウスカロライナ予備選でサンダース候補に28.5%ポイントの差をつけて勝った。しかしバイデン候補はアイオワ、ニューハンプシャー、ネバダの予備選で連敗し、 資金調達が困難になっていると報じられていた。

直近に公開されたFEC(連邦選挙活動)報告書によればサウスカロライナ予備選でバイデン候補の手持ち資金は710万ドル(約7億6910万円)だったのに対し、サンダース候補は1700万ドル(約18億4150万円)近かった。

サウスカロライナ予備選以降、民主党の大統領候補指名争いはサンダース対バイデンに絞られた感がある。一時ブームとなったPete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)氏が撤退し、大富豪のTom Steyer(トム・スタイヤー)氏も去った。元ニューヨーク市長でBloombergグループの創立者、Mike Bloomberg(マイク・ブルームバーグ)氏は今回初めてスーパーチューズデーに挑戦するが、同氏が期待しているようなブームを起こせるかどうかは不透明だ。

指名獲得に必要な代議員数ではサンダース候補がバイデン候補を引き離している。バーモント州上院議員のサンダース候補はスーパーPACによる資金調達を拒否して1億2600万ドル(約136億4700万円)という巨額の選挙資金を小口の寄付のみで調達してきた。

NBCニュース

共和党が弱い巨大州(ニューヨーク、カリフォルニアなど)は、本選で民主党候補が取れることが確実であり非常に重要な地域だ。ここでの選挙活動に十分な資金調達をできるかどうかは、大きな意味を持つ。サンフランシスコ周辺やマンハッタンなど富裕層がいる地域は民主党候補にとっていわば貯金箱として機能してきた。

しかし、シリコンバレーでバイデン・グループが資金調達活動に力を入れることは、テクノロジー企業内部の政治的亀裂を明るみに出すリスクがある。つまり成功したファウンダーや企業上層部が穏健で全国区で勝ち目のあるバイデン候補を推す一方で、中下層の有権者は「バーニーはすごいぞ」というキャンペーンスローガンに傾く。

LA TimesCenter for Responsive PoliticsのFEC文書の分析によれば、ハイテク企業の労働者による小額寄付は圧倒的にサンダース候補に集中している。LA Timesは「サンダース候補はGoogle、Amazon、Apple、Microsoft、Facebookの社員からの少額寄付のみでバイデン候補の4倍近い100万ドル(約1億1000万円)以上を集めた」と報じている。た。

テクノロジー系大企業内部の分裂は、候補者の政策の差異によるものだ。バイデン候補の立場は、全般に穏健で各種のイニシアチブにも現実性がある(のに対して)、サンダース候補は奨学金問題に焦点を絞っており、Facebookなどの大企業に亀裂を持ち込む可能性がある。サンダース候補は、ハイテク企業内の賃金格差に厳しく対処し、FacebookとAmazonを分割すべきだと強く主張している。

しかし資金調達がどうであれ、カリフォルニア州のファウンダーも社員も3月3日の火曜日には投票所で自分の意見を表明するチャンスがある。カリフォルニア州は、予備選のスーパーチューズデーを構成する13州の1つだ。この結果は今後の予備選および選挙資金調達の行方に反映されるだろう。民主党の大統領選挙候補者は2020年7月にミルウォーキーで開催される党全国大会で決定される。

画像: Alex Wong / Getty Images

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滑川海彦@Facebook

アイオワ州の集計アプリ問題は起こるべくして起こった

アイオワ州民主党党員集会の投票結果をアナウンスするために作られたスマートフォンアプリは結局正常に機能せず、ほぼ丸1日におよぶ膨大な遅れをもたらした。

伝統的にアイオワ州党員集会は、州内各群の集会を利用して、どの大統領候補者を支援するかを決めるために用いられてきた。結果の監査には紙の投票用紙が使われる。民主党候補を指名するための1990票のうち、アイオワ州にはわずか41票分の代理人しかいないが、それでも全米で誰が立候補を勝ち取るかのバロメーターと見られている。

そのためのプロセスを近代化し、スピードアップをはかるべく、アイオワ州民主党はアプリを発注した。

しかし、Shadowという会社が作ったそのアプリは、壮大な惨事を招いた。電話で結果を報告することになった選挙区もあった。

アイオワ州民主党広報担当者、Mandy McClure【マンディー・マクレア)氏はアプリの障害を「報告機能の問題」でありセキュリティーやハッキングではないと説明した。後にマクレア氏は、「コーディングの問題」だったと語った。集計結果は米国時間2月3日の夜遅くには発表される予定だったが、2月4日の午後まで延期されるとアイオワ州民主党は説明しているり

果たしてこれを予測できた人はいたのか?実はかなりの人数がいた。「そもそもアプリなど必要なかった」とノースカロライナ大学のZeynep Tufekci准教授がツイートで語った。

アプリについてはほとんど情報がなく、1月にNPR誌が概略紹介した後でさえ秘密に覆われていた。これは米国大統領候補指名プロセスで使われる初めてのアプリであり、電子投票やアプリを利用することはハッカーに露出する恐れがあることが懸念されていたにもかかわらず決行された。

わかっているのは、ハッカーにシステムを悪用されることへの恐怖から、セキュリティーの詳細が秘密に覆われていたことだ。これは「隠蔽によるセキュリティー」は誤りであると主張するセキュリティー専門家らから批判を浴びていた。国土安全保障長官のChad Wolf(チャド・ウルフ)氏は火曜日のテレビ出演で、アイオワ州民主党はアプリのセキュリティー欠陥をテストする同省の申し出を拒否したと語った。そして、秘密であるゆえにアプリが十分なテストを受けたことを示す証拠はない。テストしたとして、どんなレベルのテストや検査だったのかも不明だ。

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不吉な前兆はあったという人たちもいる。「正直なところ、アイオワ州党員集会でこの新アプリに起きたことについて、陰謀論や不正行為を疑う必要はない」とテスト会社であるMobile LabsのCEOであるDan McFall(ダン・マクフォール)氏がメールで私に話した。「これは、当社の企業ユーザーの間でで何年も前から起きている話だ。注目を集める重要な締め切りに向けて、新しいアプリケーション開発が強引に推し進められる。モバイルアプリはみんなが思う以上に難しく、初期リリースは遅れるのが普通であり、納期を守るために実践的テストのプロセスを省けばカオスが約束されている」。

テスト会社のApplauseを率いるDoron Reuveni【ドロン・レウベニ)氏も同意する。開発者自身には見えないことのある「盲点」を見つけるために十分なテストとリアル世界でのテストが必要だと語った。サイバーセキュリティー会社のCyberVistaのCEOで元国防総省アナリストのSimone Petrella(シモーネ・ペトレア)氏は、単純な問題に高度なソリューションは必要ないと語った。

「Googleスプレッドシートか何かの共有ドキュメントで十分」とペトレラ氏は語った。「セキュリティーを守りつつエンドユーザーが操作しやすいソリューションを開発、提供することは驚くほど困難で高くつく」とPetrella氏は言う。「この種の課題を解決するソリューションやアプリを作るのなら、設計当初からセキュリティーを考慮し、開発プロセス全体を通じて厳重なプロダクトテストと検証を行い、すべてが保存され、データは正しく安全に操作されていることを保証する必要がある」

今回の大失敗が、7月の民主党全国集会までにそれぞれの大統領候補を選ぶ党員集会を予定している他の選挙区や州に警鐘を鳴らすことは間違いない。

ネバダ州は2月に行われる党員集会で同じアプリを使うと言われていたが、計画は破棄された。

「我々はアイオワ州党員集会で使用されたアプリやデベロッパーを使わない」と広報担当者は言った。「すでに代替手段や冗長性のある報告システムを開発しており、現在最善の手段を評価しているところだ」。

Shadowは、ツイートでアイオワ州党員集会の問題について「遺憾の意」を表明し、「この教訓を将来に活
生かす」と語った。

そんな重要な事案になぜアプリを使うのか、というのが今多くの人々が自問している疑問だ。アイオワ州が選挙でテクノロジーを使ってはいけない典型例になったことは、少なくとも明るい話題だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米大統領選アイオワ民主党集会は集計アプリのバグで混乱続く

大統領の座を巡って共和党候補(ほぼ間違いなくドナルド・トランプ現大統領)と戦う民主党の大統領候補が決定するのは今年末になるはずだが、アイオワ州の民主党党員集会は長い予備選の幕開けとなるため、極めて重要な意味を持つ。このチャンスを生かしてブームを作れるかどうかが予備選の勝利に直結する。全国の有権者、メディアの関心も集中していた。

それだけにアイオワ党員集会をめぐる2月3日の混乱は非常に憂慮される事態だ。いまだに集計結果が発表できず、いったい誰がどれほど勝ったのか不明だ。

この混乱の中心はShadowという営利企業によって開発されたといわれるモバイルアプリだ。New York Timesの記事によれば、アイオワ州民主党が利用したアプリは「この2カ月で大急ぎで作られた」プロダクトで、「これほど重要な政治イベントで集計に用いられるアプリなら当然要求される綿密なテストを経ていない」という。アイオワ民主党は Shadowに6万3000ドル(約690万円)を2回分割で支払い、「安くて簡単に使えるツール」の開発を依頼したと報じられている。

TechCrunchでは2月3日の夜、集計用モバイルアプリがクラッシュして結果発表が遅れていることを報じた。アイオワ民主党の広報担当、Mandy McClure(マンディ・マクルーア)氏は声明で「結果に関する3種類の数値の間に矛盾がある(ため精査している)。基礎となる報告、またそのデータにはまったく問題がないので結果発表が若干遅れるだけだ」と述べた。

同氏は「ハッキングや悪意ある侵入などの形跡はない」と付け加えた。2016年の選挙にロシアのハッカーの介入があったという報道が繰り返されたことを考えると重要な点だ。

アプリを開発したShadowの背景にはいくぶん不明な点がある。民主党進歩派のNPO組織であるACRONYMは自サイトでShadowを「ローンチした」としていた。しかし昨夜の混乱の後、広報担当のKyle Tharp(カイル・タープ)氏は「単に投資しただけ」と距離を置き、「アイオワ民主党にいかなるテクノロジー上の援助もしていない」と述べた。ACRONYMの声明によれば「我々は、皆と同様、アイオワ民主党からさらに情報が明かされるのを待っていると声明した。

ACRONYMのサイトのAboutページには当初、「2019年1月、我々はShadowをローンチした。これは選挙運動の組織者がキャンペーンを効率的に実施するためのテクノロジーを開発する企業だ」と書かれていた。これが事件後には「 2019年1月にわれわれはShadowに投資した」と修正されていた。

アイオワ民主党の委員長、Troy Price(トロイ・プライス)氏は問題発生に続く声明で、「プログラミング上の問題」によるものだとした。

我々の調査によれば、(問題の)アプリが収集してデータは自体は正常でありまったく問題ないと判明した。 アプリはデータを正しく記録したものの、データの一部分しか集計出力されないという問題が起きていた。調査の結果、これはアプリの結果出力部分のプログラミング上の問題だと結論した。問題は同定され、すでに修正されている。アプリの結果出力の問題は各地区の責任者が報告した数値の健全性になんら影響を当たるものではない。

(…)地区責任者からの結果報告は現在もアイオワ民主党に送られ集計されつつある。われわれは即日、可能な限り早く結果を公開する予定だったが、データの整合性と正確さを最重点とする立場から、集計発表は延期された。

またプライス氏は「システムはセキュリティ専門家がチェックした」と述べ、ハッキングや侵入の試みがなかったことが確認されていることを繰り返した。

【略】

LA Timesの報道によれば、Shadowは当初Groundbaseと呼ばれ、 2016年の大統領選でヒラリー・クリントン候補のデジタルキャンペーンのスタッフだったGerard Niemira(ジェラルド・ニーミラ)氏とKrista Davis(クリスタ・デイビス)氏によって創立されたという。正確な状況や原因が不明であるため、民主党員の間には、当然ながら、このデジタル集計システムに対する不信が高まっている。

画像:Tim Hynds/Sioux City Journal / Getty Images

【Japan編集部追記】 「3種類の数字」は「参加党員の最初の選択、2回目の選択、最終の選択」。MSNBCの報道によれば、これは前回の大統領選のアイオワ集会で勝利したヒラリー・クリントン候補と次点となったバーニー・サンダース候補の差が0.3%しかないことで紛糾したため。各地区の責任者はモバイルネットを通じてこのアプリで3組の数値をアイオワ民主党本部に送ることになっていたが、トラブルが多発して電話連絡を利用するなどしている。

ShadowのCEOであるニーミラ氏のLinkedin登録ページによれば、彼はACRONYMのCOOでGroundBaseの共同創業者兼CEO、「ヒラリー・フォー・アメリカ」のプロダクト・ディレクターを歴任している。それ以前の職歴は、途上国向けマイクロファイナンスのKiva.orgに7年8カ月在職している。ボストン大学卒業となっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook