画期的なドローン重心制御技術を擁するエアロネクストが空飛ぶロボ開発に向けセンシンロボティクスと提携

エアロネクストセンシンロボティクスは9月30日、産業用ドローンの次世代コンセプト「空飛ぶロボット」(Flying Robots)の具現化に向けて、顧客・用途開発に関する戦略的業務提携を進めることを発表した。

写真向かって左より、エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏、 センシンロボティクス代表取締役社長の北村卓也氏

エアロネクストは、独自のドローン向け重心制御技術「4D GRAVITY」を有する2017年4月設立のスタートアップ。4D GRAVITYを搭載したドローンは、ペイロードにかかわらず安定飛行ができるのが特徴。すでに360度のVR撮影が可能な「Next VR」、水平輸送用の「Next DELIVERY」、次世代産業用として「Next INDUSTRY」、ピンポイントランディング対応VTOL宅配向けとして「Next VTOL」などの各種用途向けのドローンの原理試作機を発表済み。ドローンの量産化に向けては、農業機械製造大手の小橋工業やPCでおなじみのVAIO、中国産業用ドローンメーカー大手のMMCと提携している。

センシンロボティクスは、設備点検、災害対策、警備・監視などの業務をロボットによって完全自動化し、少子高齢化による人手不足やコスト高、危険地域で作業といった社会問題の解決を目指す2015年10月設立のスタートアップ。現在は、ドローンとリアルタイム映像コミュニケーション技術を組み合わせたソリューションを提供している。同社が開発した「SENSYN FLIGHT CORE」は、特別な知識や技術がなくてもドローンによる業務自動化を簡単に実現させる総合プラットフォーム。簡単なフライト設定を行えるほか、フライトプラン・実績データの一元管理、複数機での同時飛行、UTM(Unmanned Aerial System Traffic Management、無人航空機管制 )への接続など、業務の自動化かかわる機能を備えている。

両社は今回の提携により、相互のノウハウや技術を利用して産業用ドローンの次世代コンセプト「空飛ぶロボット」(Flying Robots)の企画・研究・開発・整備・設計・運用を進めていく。具体的には、エアロネクストの4D GRAVITYとセンシンロボティクスのSENSYN FLIGHT COREを組み合わせて、ドローンの安定を飛行させつつ、操縦や撮影などの各種操作を自動化することで、熟練したオペレーターがいなくてもさまざまな業務の自動化を目指す。まずはセンシンロボティクスが得意とする、送電線、 鉄塔、 ダムなどの社会インフラの保守・点検分野において4D GRAVITYとSENSYN FLIGHT COREの技術が搭載されたドローンが活躍するようだ。

【スタートアップバトルへの道】「今秋には新発表も予定」2018 Finalist / エアロネクスト #2

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も1114日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。TC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

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連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、スタートアップバトル出場後の社内外の変化や今後の同社の展望について話を聞く。
(バトル出場までの経緯や準備などについて聞いた、インタビュー前半はこちらから)

バトル後にドローン関連のほぼ全企業からアプローチ

TC Tokyo 2018 スタートアップバトルでは、書類選考に通過した20社の中から、ファイナルラウンド進出6社に勝ち残ったエアロネクスト。同社は、ドローンの機体軸がブレることなく飛行するための重心制御技術「4D GRAVITY®」をはじめとした技術の研究開発を行っているドローンスタートアップだ。

中国・深センで開催された国際ピッチ大会に出場するため不在だった田路氏の代わりに、TC Tokyoでは、エアロネクスト 空力研究所 上席研究員の大河内雅喜氏が登壇。その模様を田路氏をはじめとした訪中メンバーは、リアルタイムのオンライン中継で応援していた。

前編でも紹介したとおり、エアロネクストは惜しくもTC Tokyoでは優勝を逃したのだが、バトルで大河内氏とともに戦い、最優秀賞を獲得したムスカの代表取締役CEO流郷綾乃氏について、田路氏は「すばらしいプレゼンだった」と感想を述べている。流郷氏とは、ほかの場面でも交流があるという田路氏は「その後の活躍もすばらしい」と続け、「彼女とは今でも交流があるが、TC Tokyoをきっかけに勢いがついた、ひとつの節目だったと聞いている」と明かす。

そんなエアロネクストも、バトル出場後に環境が「激変した」という。「国内開催の4つのピッチイベントに集中参加したことが、狙い通りに効果を上げた」と語る。

エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏

「僕らは技術と特許ポートフォリオの会社。メーカーではないし、サービスプロバイダーでもない。最終的なエンドユーザーは事業者だが、彼らに直接僕らの技術を売るわけではない。ドローンメーカーに採用してもらい、そのメーカーがつくった機体を使うサービスプロバイダーが、点検事業者や物流事業者にサービスを導入していくという構造だ。だからドローンメーカーに技術を採用してもらう必要はあるのだが、メーカーに技術を売りに行くのではなく、最終ユーザーである事業者に、僕らの技術が欲しい、必要だと言わせたかった。事業者からメーカーへ『4D GRAVITY®を搭載したドローンを早くつくってくれ』と言わせるための戦略が、ピッチで優勝することだった」(田路氏)。

ふたを開けてみると「本当にそうなった」と田路氏。「4つのピッチが終わった後、日本でドローンに関わる会社のほぼ全社から僕らのところにコンタクトがあった。『あなたのところの技術を搭載したドローンが買いたい』『どこにいけば買えるのか』という問い合わせがたくさんあって、結果としてドローンメーカーに対して『4D GRAVITY®を搭載したドローンを早く提供して欲しい』という空気になった」という。

「ドローン産業の中で僕らの技術が注目されたこと、スタートアップの中で注目され知名度が上がったこと。その点ではピッチの成果は非常にあった」(田路氏)。

ドローン大国・中国でも評価、資金調達にも影響

エアロネクストの技術を搭載したドローンをつくる企業は現在、複数社出ており、ちょうど4D GRAVITY®の採用製品が作られているとのこと。「来年ぐらいになれば、複数のドローンメーカーから僕らの技術を積んだドローンが出荷されることが見えている」と田路氏はいう。

さらにTC Tokyoと同日開催だった国際ピッチ大会での入賞の反響も大きく、今年5月には深センに現地法人を設立した。コンシューマードローンでは同じ深センのDJIが有名だが、産業ドローンでは科比特航空科技(MicroMultiCopter Aero Technology:MMC)が最大手のひとつ。このMMCがエアロネクストの技術を評価し、6月に戦略的提携も発表された。

「こうして、中国・深センでも僕らの技術を搭載したドローンがつくられ始めている。僕らが目指す『産業ドローンの標準技術として、僕らの重心制御技術が採用される』という流れは、日本のみならず、世界で最も進んだドローン大国である中国でも評価されるところまで来た」(田路氏)。

そのほか、資金調達にもピッチコンテストへの参加、入賞が影響していると語る田路氏。現在はシリーズAラウンドのクローズに向けて調達を進めているところで「大きな調達もでき、何とか次のステージへ進めるかな、というところ」だと述べている。

「守りの特許」から「技術を流通させるための特許」へ

TC Tokyoで紹介され、注目を集めたドローンの重心制御技術4D GRAVITY®。だがエアロネクストでは、それだけではなく、さらに次の展開を睨んでいる。「僕らは無人航空機という領域で、未来へ向けて何世代も先の機体フレームを発明している」という田路氏。「今年の秋ぐらいには、新しい機体フレームの発表を控えている」とのことで、新しい機体フレームの中には人が乗ることができるものも含まれるという。

「僕らのビジネスモデルではまず、発明がある。無人航空機の機体フレームの何十年か先を予測して、発明をし、特許を出願する。特許出願と同時にプロトタイプを開発し始め、世の中にプロトタイプを発表する頃には、コア特許がほぼ成立する見込みが立っている。プロトタイプが市場から評価され、量産したいという話になる頃には、技術をライセンスするのに必要な、およそ50〜100件ぐらいの特許がポートフォリオとして構築されていて、世界各国の企業にライセンス可能な状態になっている、という構造だ」(田路氏)。

田路氏は「僕らの会社は特許という経営資源の存在を、大きく変えようとしている」と語る。「これまでの特許は、自分たちの製品が他人から侵害されたり、刺されたりしないように取得する『守りの特許』だった。製品を作り続けるためのものなので、一度に1つか2つの特許しか取らない。僕らは特許を『技術をメタ化したもの』と捉えている。技術を流通させるには、時間がかかり、エネルギーがすごく要る。それを特許という形式にメタ化して、技術の流通スピードを高めることができる。技術を流通させるために特許を使う、というのが僕ら独特のアプローチだ」(田路氏)。

「だからビジネスモデルはライセンスになる」と田路氏。「僕がなぜライセンスというビジネスモデルが好きかというと、世界シェア100%が狙えるから。自分で製品を作ると100%シェアは絶対に起こりえないが、唯一100%シェアを達成できるのがライセンスモデル。実際にシェア100%というのは難しいかもしれないが、理論上シェア100%が実現可能な仕組みなので、好んでビジネスモデルに採用している」と述べている。

「ピッチの結果もあり、何とかいいところまで来た。ここからまた新しいチャレンジが続いていくが、チーム全員で頑張っていきたい」(田路氏)。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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【スタートアップバトルへの道】「もう一段レベルアップを図って出場」2018 Finalist / エアロネクスト #1

例年11月に実施される、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。通算9回目となる今年も11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエでの開催が決定している。TC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。

関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は9月16日、本登録は9月末まで

スタートアップバトルの応募はこちらから

連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。

今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、エアロネクスト代表取締役CEOの田路圭輔氏。2回に分けてお送りするインタビューの前半では、出場までの経緯や準備などについて話を聞く。

国内ピッチ4大会で優勝を狙っていた

エアロネクストは、UAV(無人航空機)やマルチコプターの機体フレームのあるべき姿を追求するドローンスタートアップ。TC Tokyo 2018登壇から約8カ月前の2018年3月に新技術「4D GRAVITY®」を発表している。4D Gravity®は、機体の軸がブレることなく飛行する重心制御技術だ。発表には大きな反響があり、エアロネクストでは2018年6月、プレシリーズAラウンドで資金調達も実施している。田路氏がスタートアップバトルへの応募を決めた背景には、こうした流れの中で「もう一段階、レベルアップを図りたい」との意図があったという。

「エアロネクストは、R&Dスタートアップだ。自分たちから売り込みに行くというよりは、ドローンに対する世間の考えや常識、空気を変えたいと思っていた。ドローンへの先入観や期待を壊しに行こうと考えていた折、ちょうど日本でいくつかのスタートアップ向けピッチコンテストがあったので、集中的に出場しようと計画した」(田路氏)。

田路氏は、2018年秋冬に行われたICC Kyoto 2018、B Dash Camp Fall 2018、TC Tokyo 2018、IVS 2018 Winterの4イベントを1つのパッケージと考え、「すべてのピッチコンテストで優勝を目指していた」と話している。実際に、TC Tokyo以外の3イベントでは同率1位も含め、優勝を獲得している。

実はTechCrunch Tokyo 2018の当日、田路氏は中国・深センにいた。この地で行われていた国際ピッチ大会「創業之星2018」に出場するためだ。「本来は9月に開催予定だったのだが、開催時期がずれ込み、TC Tokyoと重なってしまった。そこでTC Tokyoのほうは、大河内(同社空力研究所 上席研究員の大河内雅喜氏)に託して、自分は中国へ向かうことになった」(田路氏)。

創業之星では3位に入賞。知財戦略を評価され、知的財産賞も受賞した田路氏。TC Tokyoについては、リアルタイムで配信される中継を深センに来ていた他のメンバーと見ていたが、惜しくもファイナルラウンド進出で終わってしまい、「とても悔しく、残念だった」と振り返る。

直前で予期せぬプレゼンター交代

TC Tokyoに登壇したのは、エンジニアである大河内氏だったのだが、もともと自身が出場するつもりだった田路氏は、他のピッチコンテスト同様にプレゼンの準備をしていた。

エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏

プレゼンでは「みんなが信じていることに対して、最初に疑問を投げかける」ことにこだわっている、という田路氏。いつも「今飛んでいるドローンでは産業にならない」というところから、話をスタートさせるという。

「今あるドローンを、僕は『空飛ぶスマホ』『空飛ぶカメラ』と呼んでいる。みんなドローンに興味があるし、その可能性に盛り上がっているようなところがあるが、このままだと、みんなが期待しているようなドローンの市場は生まれない。それはなぜか……というところを解説していくのが、いつものプレゼンの流れだ」(田路氏)。

「漠然とみんなが感じているけれど、言葉にしていない課題を言葉で提示し、その上で、僕らの技術4D Gravity®がどう有用に働くかということを訴えていく。この流れだけは初めから決めている」と田路氏。自身が登壇する際には、この流れに沿いながら「オーディエンスの反応を見て、プレゼンテーションのトーンやワードは変えている」という。なんとイベントに先立って「練習もしていないし、原稿を書くこともない」そうだ。

「大きな枠組みはあるが、あとは(会場の)雰囲気や感じを見て、ストーリーやトークの強弱を決めている。プレゼン資料づくりも僕自身というより、チームで行っている。役者と脚本家のようなもので、その方が僕はうまくプレゼンができる」(田路氏)。

昨年秋はピッチのパフォーマンスがピークにあった、という田路氏は「TC Tokyoにも、優勝する自信があった」ともらす。プレゼンファイルは田路氏のために用意していたものを、大河内氏が使って登壇したとのこと。「結局、僕のプレゼンストーリーを彼がそのままやる形になり、ちょっとかわいそうだったかなと思う。もう少し時間が取れて、彼が独自のストーリーで、自分のファイルをつくって話せたら、また違った結果になったかもしれない」(田路氏)。

 

インタビュー後半では、スタートアップバトル出場後の社内外の変化や今後の同社の展望について聞く。

 

なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。

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画期的ドローン開発のエアロネクスト、量産化に向け農業機械メーカーの小橋工業と強力タッグ

独自の重心制御技術「4D Gravity(R)」を搭載するドローン「Next」シリーズを開発しているエアロネクストは2月19日、農業機械メーカーの小橋工業との業務提携を発表した。

写真左から、エアロネクスト代表取締役/CEOの田路圭輔氏、小橋工業代表取締役社長の小橋正次郎氏

エアロネクストは、2018年に開催されたTechCrunch Tokyo 2018の「スタートアップバトル」ファイナリスト。最終選考に残った6社のうちの1社だ。そのほか、同年10月に開催されたB Dash Campの「PITCH ARENA」、12月に開催されたInfinity Ventures Summit 2018の「LaunchPad」ではいずれも優勝するなど、2018年のスタートアップ業界で最も注目された企業といえる。

小橋工業で製造予定の原理試作機「Next DELIVERY(R)」

同社が開発中のドローン「Next」シリーズの特徴は、プロペラ、モーター、アームといったドローンの飛行部と、カメラ、積載物といった搭載部を物理的に切り離し、機体を貫通するジンバルを1本通すことで機体バランスを制御している点。従来のドローンは主にソフトウェア制御で機体のブレを制御していたが、「Next」シリーズは構造上軸がぶれないため、容易に安定飛行が可能となっている。

現在のところ、VR撮影用ドローン「Next VR(R) 」、水平輸送を可能にする宅配専用ドローン「Next DELIVERY(R) 」、対象物への接近や狭い空間への侵入が可能な「Next INDUSTRY(R) 」の3機種が発表されている、同社が公開している動画を見るとその構造がよくわかる。

今回の小橋工業との業務提携の狙いは「Next」シリーズの量産化にある。出合いは、小橋工業が「千葉道場ドローン部2号投資事業有限責任組合」(Drone Fund2号)へ出資したタイミングだったそうだ。その後、両社で産業用ドローンの市場創造について意見交換を重ね、ドローン前提社会を実現する戦略パートナーとして、商品化・量産化を目的とした提携にいたったという。実際に連携が始まるのは2月末で、共同で商品の企画・開発・製造・販売などを進めていくとのこと。

Drone Fund2号は、投資家の千葉功太郎氏が率いるドローン特化型ファンド。金額は公表されていないが、小橋工業は同ファンド最大の出資者でファンド総額は37億円。そのほかの出資者としては、みずほ銀行、KDDI、マブチモーター創業家、セガサミー、大和証券グループ、電通、松竹、そしてプロサッカー選手の本田圭佑氏などが名を連ねている。

 

小橋工業は岡山を拠点とする農業機械メーカー。1910年に鍛冶屋として創業し、1960年に現社名で設立。主力製品として、耕うん爪、トラクタ用ロータリー、トラクタ用代かき機、野菜収穫機などがある。2018年5月には、田んぼで水と土を混ぜてならす代かき作業の度合いを検知できるセンサーを販売するなど、農業の効率化を推進している。

池井戸 潤氏の小説「下町ロケット ヤタガラス」編のモデルになった企業でもあり、テレビドラマ放映を記念して限定500台で発売されたオートあぜ塗り機のコラボモデル「下町ロケットモデル ガイア」が記憶に新しいところだ。オートあぜ塗り機とは、田と田の間で土がもり上がっている部分である「あぜ」を整備して水もれを防ぐための「あぜ塗り」作業に特化した農業機械。

オートあぜ塗り機「下町ロケットモデル ガイア」(写真はXRS751R)

今回の提携にあたりTechCrunchでは、エアロネクスト代表取締役/CEOの田路圭輔氏に話を聞いた。

TechCrunch:提携先に小橋工業を選んだ理由を教えてください。
エアロネクスト田路氏:まず、エアロネクストが目指す「ドローンと共生する社会の実現」と「新しい空域の経済化」に共感していただけたことです。さらに当社取締役CTO鈴木が初めて小橋工業を訪問したとき、同社のものづくりへの真摯な姿勢と品質、安全性への強いこだわり、そしてその思いを実現するのに十分な技術力と施設に対し「量産するならここしかない!」と高く評価をいたしました。

我々が地上から150mまでの空域という今まで手付かずの領域に価値を見出し耕しているように、小橋工業の小橋社長も「地球を耕す。」というビジョンをお持ちです。我々の考え方の方向性は一致していると感じています。何より小橋社長の決断力や物事を判断するスピードの速さ、オーナー企業であることから長期のパートナーシップが期待できることが大きな理由となりました。

TC:Nextシリーズのどのようなタイプを量産するのですか?
田路氏:小橋工業は、エアロネクストが発表した原理試作を設計、製造するパートナーです。今回小橋工業で作るのは物流用の「Next DELIVERY(R)」が主体となります。

TC:量産化のメド、時期を教えてください。
田路氏:2019年6月までに量産試作機を発表、年内には量産を開始する見込みです。

TC:エアロネクストがドローンで解決したい社会的な問題を教えてください。
田路氏:多くの社会的問題が解決できると考えています。例えば、低炭素社会の実現、高齢化社会における移動や配送の問題、省人化・省力化に関わる産業課題の解決などです。

TC:今後の展開を教えてください。資本提携なども考えていますか。
田路氏:今回の小橋工業との業務提携以外にも、エアロネクストからライセンスを受けて「4D Gravity(R)」を搭載したドローンを製造する複数社との話し合いが進んでいます。小橋工業との資本提携については現時点ではお答えできる段階にはありませんが、前向きであるとお答えさせてください。

TC:小橋工業は今回の提携でどれぐらいの人員を割り当てるのでしょうか。ドローンの製造拠点(工場)はどこに置くのでしょうか。
田路氏:製造拠点は小橋工業本社がある岡山県岡山市になりますが、詳細は現在検討中です。

個人的には、2018年10月に開催されたB Dash CampのPITCH ARENAで「4D Gravity(R)」のテクノロジーを初めて知り、これまでのドローンの常識を覆す機体構造に衝撃を受けた。まずは仕様を確認するための原理試作機の製造となるが、物流向けのNext DELIVERY(R)の量産化が進めば、各地で実証実験が進められている山間部の荷物配送におけるドローンの実用化がかなり前進するはずだ。